ウィリアム・S・バロウズ 「クロウダディ」
2枚組のデラックス・エディションに付属している「コンパニオン・オーディオ」は全5曲(31分)とリマスター・アルバム中で最も少ない。オリジナル曲の「参照ためのミックス」(Reference Mix)4曲と未発表曲1曲のみ。僅か18日間でレコーディングとリミックス作業を終えたために元々アウトテイクの曲も少なかったのかもしれないが、全然物足らない。〈Two Ones Are Won〉(Achilles Last Stand) はインスト・ヴァージョンで、音質も平坦だ。唯一の未発表曲〈10 Ribs & All/Carrot Pod Pod (Pod)〉もピアノ中心のインストで、〈Royal Orleans〉に至ってはRobert Plant以外の誰かが歌っているのではないかという。しかもデラックス・エディションの裏カヴァは表の反転ソラリゼーション仕様なので、オリジナル・アートワーク(小学生の少年少女と女性教師)が削除されているのだ。熱心なZepファンやマニアでない限り、スタンダード・エディションで充分のような気がする。
*
「コンパニオン・オーディオ」にはオリジナル・アルバム全7曲と同じ曲目・曲順の「作業中のラフ・ミックス」(Rough Mixes Of Work In Progress)が収録されている。中近東風のエキゾチックなイントロから始まる〈In The Evening〉、Jonesのホンキー・トンク・ピアノが際立つサザン・ロック〈Southbound Piano (South Bound Saurez)〉、陽気で底抜けに明るいサンバ・カーニヴァルを思い起こさせる〈Fool In The Rain〉、軽佻軽薄なカントリー&ウェスタン調の〈Hot Dog〉、3つのパートから構成されているテクノ・ポップ風の〈The Epic (Carouselambra)〉、急逝した愛息のカラックに捧げた〈The Hook (All My Love)〉、R&B調のスロー・バラード〈I'm Gonna Crawl〉‥‥ラフ・ミックスに驚くような発見は少ない。総じてZepらしくないアルバムだが、個人的にはソフト・ロック路線の〈All My Love〉が入っているだけで捨て難い。
*
「コンパニオン・オーディオ」はアウトテイク、ラフ・ミックス、ライヴなど、全15曲を収録した2CD仕様(約64分)になっている。解散後の「未発表曲集」にアウトテイクやラフ・ミックス、ライヴ音源などを追加するという屋上屋を重ねるような編集方針には疑問の余地がある。Disc 2には〈We're Gonna Groove〉の異ミックス、〈Bonzo's Montreux〉の作業中ミックス、〈Poor Tom〉のインスト・ミックス、〈If It Keeps On Raining (When The Levee Breaks)〉のラフ・ミックス。スロー・ソウル・バラードの〈Baby Come On Home〉とブルーズ・ナンバーの〈Sugar Mama〉はデビュー・アルバムのアウトテイク。〈Travelling Riverside Blues〉は1969年6月23日に録音したBBCセッション。シングル盤〈Immigrant Song〉のB面曲〈Hey, Hey, What Can I Do〉はアトランティック・レーベルのサンプラー・アルバム《Hot Menu '73》(2枚組・全28曲)に初収録された。
Disc 3には《III》のアウトテイクだったインスト曲〈St. Tristan's Sword〉、〈Desire (The Wanton Song) 〉〈Bring It On Home〉〈Walter's Walk〉〈Everybody Makes It Through (In The Light)〉のラフ・ミックスが収録されているが、注目すべきは1972年10月19日にインド・ボンベイの現地ミュージシャン(Bombay Orchestra)と共演した2曲であろう。インストルメンタルの〈Four Hands (Four Sticks)〉、Pageの変則チューニング・ギターとPlantの妖しげなヴォーカルの〈Friends〉‥‥シタールやタブラ、ストリングスなどと融合した摩訶不思議な中近東サウンドは刺戟的で面白い。アウトテイクやラフ・ミックスはオリジナル曲が収録された各アルバムの「コンパニオン・オーディオ」に振り分ければ、敢えて3CDにすることはなかったのではないか。「最終楽章」で大盤振る舞いの蔵出しをするくらいならば、オリジナル・アルバム8枚の「コンパニオン・オーディオ」を充実させて欲しかった。
*
- 国内盤より千円近く安い輸入盤CD(Swan Song 2015)がお買い得にゃん^^
- 「デラックス・エディション」のアルバム・カヴァは反転した裏面の画像です
led zeppelin 1 / 2 / 3 / 4 / sknynx / 630
- Artist: Led Zeppelin
- Label: Atlantic
- Date: 2015/07/31
- Media: Audio CD(2CD)
- Songs: Achilles Last Stand / For Your Life / Royal Orleans / Nobody's Fault But Mine / Candy Store Rock / Hots On For Nowhere / Tea For One / Two Ones Are Won (Achilles Last Stand) / For Your Life / 10 Ribs & All/Carrot Pod Pod (Pod) / Royal Orleans / Hots On For Nowhere
In Through The Out Door(DELUXE EDITION 2CD)
- Artist: Led Zeppelin
- Label: Atlantic
- Date: 2015/07/31
- Media: Audio CD(2CD)
- Songs: In The Evening / South Bound Saurez / Fool In The Rain / Hot Dog / Carouselambra / All My Love / I'm Gonna Crawl / In The Evening / Southbound Piano (South Bound Saurez) / Fool In The Rain / Hot Dog / The Epic (Carouselambra) / The Hook (All My Love) / Blot (I'm Gon...
- Artist: Led Zeppelin
- Label: Atlantic
- Date: 2015/07/31
- Media: Audio CD(3CD)
- Songs: We're Gonna Groove / Poor Tom / I Can't Quit You Baby / Walter's Walk / Ozone Baby / Darlene / Bonzo's Montreux / Wearing And Tearing / We're Gonna Groove / If It Keeps On Raining / Bonzo's Montreux / Baby Come On Home / Sugar Mama / Poor Tom / Travelli...
ZEP ON ZEP(レッド・ツェッペリン インタヴューズ)
- 著者:ハンク・ボードウィッツ(Hank Bordowitz)/ 五十嵐 哲(訳)
- 出版社:シンコーミュージック
- 発売日:2015/07/15
- メディア:単行本
- 目次:謝辞 / 序文 / プレリュード:未来のロック・スター、生物学の道を検討中 / 胸いっぱいの愛を / レヴィー・ブレイクス / ランブル・オン / 寄稿者 / クレジット / ディスコグラフィー / 索引
- 特集:山下達郎が語る1975年のナイアガラ / レッド・ツェッペリン
- 出版社:ミュージック・マガジン
- 発売日:2015/08/12
- メディア:雑誌
- 目次:山下達郎が語る1975年のナイアガラ / レッド・ツェッペリン リマスタリング・シリーズ最終章 / ポール・マッカートニー アムステルダム公演での考察 / ロジャー・ウォーターズ / ロビン・ギブ / 井上陽水『UNITED COVER 2』川原伸司 インタヴュー / 中井戸麗市 / 夜の番外地 ディスコ歌謡 / ブラウンズウィック/ダガー・ソウル・ストリーム