♭ クリムトと猫(2019-08-03)『クリムトと猫』(西村書店 2005)は漱石の「吾輩」と同じように、グスタフ・クリムトの愛猫(僕)が主人の人生を一人称で語る絵本。イタリア人女性画家オクタヴィア・モナコ
(Octavia Monaco)の描く鮮やかな色彩や女性の衣服の装飾的な模様はクリムト調だが、人物やネコたちはシュールにデフォルメされている。子供向けに描いたらしく、本来はレオノール・フィニやレオノーラ・キャリントン直系の女シュルレアリストである。クリムトは8匹ものネコを飼い、アトリエの庭に咲く薔薇の手入れをしていた。カラフルな花々は魅惑的な女性たちの肖像画を飾り、風景画にも描かれているが、不思議なことに大好きなネコも自画像も描くことはなかった。ネコ好きの画家バルテュスやフィニは描いているのに。一体どうして描かなかったのかと言わんばかりに、オクタヴィア・モナコはネコたちやクリムトを描き捲っている。「僕」の名前は明かされないけれど、クリムトが抱いている有名な写真のネコはカッツェ(Katze:ドイツ語でネコの意味)と呼ばれていたという。
♭ 猫ゴジラ(2019-08-10)「EL SUR」に立ち寄ると、注文していた
《Catzilla》(Chinese Man 2017)が入荷していた。
《Hot Kats》(2019)は某Dユニオンの「お買い得セール」(新譜を2枚買うと500円引きになる)で入手済なので、「猫ゴジラ」だけ購入した。言うまでもなくネコとゴジラの合体獣で、裏カヴァには「猫コシラ」と表記されている。駄洒落ならば「猫ジラ」とするところだが、フランス人デュオのBaja Frequenciaは日本語が分かっているようで分かってない?‥‥《Hot Kats》はFrank Zappa
《Hot Rats》(1969)のパロディ。アルバム・カヴァに起用された女性モデルはガール・グループ The GTOsのMiss Christine(Christine Frka)で、Zappaの最初の娘(Moon Unit Zappa)のベビーシッターをしていたという。1972年11月、Christine睡眠薬バルビツレートの過剰摂取で急逝している。ハリウッド男優エロール・フリン(Errol Flynn)の所有していた邸宅の空のプールから出ようとしているのだが、今となっては墓場から這い出てくるように見えなくもない。
♭ 真夏のカウワーリー(2019-08-17)「バダル・アリー&バハードゥル・アリー兄弟楽団」のライヴを
「EL SUR」店主のツイッター(8/11)で知った。見逃してしまったのかと思って
「Pakisitan & Japan Friendship Festival」のステージ・スケジュールを確認すると、明日・明後日(12日・13日)も出演することが分かった。お茶の水ディスクユニオンで輸入CD(ブラジル盤未開封品)を2枚購入して、上野公園へ向かう。大噴水広場前の竹の台広場に設置されたテントで行なわれたカウワーリー(Badar Ali & Bahadur Ali Qawwali)‥‥バダル&バハードゥル兄弟を中心に、6人のメンバーが座ってハルモニウムとタブラを伴奏。合唱、手拍子、身振りなどを交えながら神への讃歌を熱唱する。〈Mast Qalandar〉で盛り上がり、日本語(幸せなら手をたたこう)も飛び出す。最後にはステージ前の観客も踊り出し、お布施も舞う大盛況だった。32年前のヌスラット・ファテ・アリー・ハーン(国立劇場 1987)の記憶が甦りました。
♭ 黒猫ワッフル(2019-08-24)『ミスターワッフル!』(BL出版 2014)は殆ど文字のない絵本。女主人がネコに語りかける言葉があるだけで、黒ネコとエイリアンの判読不明な会話が続く。黒猫のワッフルは金魚、ネズミ、キャットニップ、シャトルなど‥‥飼主が購入した市販のネコ用玩具には無関心。ところが全く見向きもされなかった玩具の並ぶ床に紛れ込んでいた小さな円盤(UFO)には興味津々。小型宇宙船を弄ぶワッフルだが、小さな異星人たちにとって地球のネコはゴジラ(猫ジラ?)にも匹敵する大脅威である。隙を窺い、壊された機器を抱えて壁の隙間に逃げ込む。そこはラスコー洞窟の壁画みたいなネコの絵が描かれていたアリたちの棲家だった。エイリアンはアリやテントウ虫と親交を深め、協力して機器を修復する。危機一発、ワッフルから逃れて窓から野外へ脱出した宇宙船‥‥彼らにとっての地球は友好的なアリと狂暴な黒ネコの棲息する惑星だったのだ。メアリー・ノートンの「小人の冒険シリーズ」にも相通じる魅惑的なミニアチュール世界である。
♭ かがみの孤城(2019-08-31)デビュー作
『冷たい校舎の時は止まる』(講談社 2004)が登場人物の「脳内世界」だったように、辻村深月のミステリはSFやファンタジーの要素も濃い。こころ、アキ、リオン、フウカ、マサムネ、スバル、ウレシノ‥‥7人の不登校中学生(リオンはハワイに留学中)が鏡を通り抜けて異世界へ通う
『かがみの孤城』(ポプラ社 2017)も「鏡の国のアリス」や「ナルニア物語」などのファンタジーを思い起こさせる。城主の狼面少女(オオカミさま)は7人の「赤ずきんちゃん」にゲームを仕掛ける。5月から来年3月30日までの開城中に、城内に隠されている "願いの部屋" の鍵を見つけた1人だけが願いを叶えられるという(ただし朝9時から夕方5時までに退城しないとオオカミに食われてしまう)。安西こころ(雪科第五中学校1年生)は「心の教室」の喜多嶋先生と面談する。11月にリオンを除く5人も第五中の生徒であることが分かったのに、なぜか現実世界の中学校では出会えない。パラレル・ワールドなのか、それともタイムスリップなのか、狼面少女の正体は?‥‥師匠・綾辻行人譲りの「叙述トリック」を駆使した驚くべき真実が次々に明かされる。
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クリムトと猫
- 著者:ベレニーチェ・カパッティ(Berenice Capatti)/ 森田 義之(訳)
- イラスト:オクタヴィア・モナコ(Octavia Monaco)
- 出版社:西村書店
- 発売日:2005/03/01
- メディア:大型本
- 内容:愛猫がみたグスタフ・クリムトの人生を、華麗で美しいビジュアルイメージとともに愛情をこめてよみがえらせた絵本です。アンデルセン賞受賞
Catzilla
- Artist: Baja Frequencia
- Label: Chinese Man
- Date: 2017/10/06
- Media: MP3
- Songs: El Palo / Piranha / Que Calor / Badman A Badman / Know Who You Are / Ride On / Shenhai Dance
Hot Kats
- Artist: Baja Frequencia
- Label: Chinese Man
- Date: 2019/04/12
- Media: MP3
- Songs: De La Locura / Windrush Scandal / Se Come Tambien / Crisis / Vitamin P / Mad Grade / O Galop / Hasta El Piso / Colombia / Brindo Mi Carino / Mermaid / Smokin' Loud / La Kumbia Se Baila Asi / Dembowgorgon / Holy Moly (Bonus Track)
Pakistan & Japan Friendship Festival 2019
- 会場:上野恩賜公園 竹の台広場(噴水前広場)
- 日時:2019/08/10~14
- メディア:野外ライヴ(無料)
- 出演:SCRAWLS / Mehndi CNC Performance / Kathak カタックダンス / BANZAI JAPAN / スリジエ&スリジエ候補生 / QAWWALI カッワーリー / 保科まり(Hoshina Mari)/ 織彩色舞(しきさいしきぶ)/ 三味線奏者 川上浩市 / 紅桜剣舞会 / SUNAO / JEWEL.&黒猫ダンサーズ / Rili. / RYO / 仮面女子候補生 / 杉原下神管弦楽団 / 月元英里 / jazzdanceREIKA / 株式会社令和応援団
ミスターワッフル!
- 著者:デイヴィッド・ウィーズナー(David Wiesner)
- 出版社:BL出版
- 発売日:2014/05/01
- メディア:大型本
- 内容:くろねこのワッフルは、毎日たいくつしています。ご主人が次々と買ってくるおもちゃにも、ちっとも興味がわきません。そんなある日、ワッフルは、格好のおもちゃを見つけました。それは‥‥。コールデコット賞オナーブック
かがみの孤城
- 著者:辻村 深月
- 出版社:ポプラ社
- 発売日: 2017/05/11
- メディア:単行本
- 目次:様子見の一学期(五月・六月・七月・八月)/ 気づきの二学期(九月・十月・十一月・十二月)/ おわかれの三学期(一月・二月 ・閉城・エピローグ)