ポリッジ・レディオ(Porridge Radio)は2015年、英ブライトンで結成されたポスト・パンク・バンド。Dana Margolin(ヴォーカル、ギター)率いる、Georgie Stott(キーボード、ヴォーカル)、Maddie Ryall(ベース)、Sam Yardley(ドラムス、ギター、ベース)の4人組(女3・男1)。2ndアルバムはPatti SmithやPJ Harveyを想わせるダナ・マゴリンのエモーショナルなヴォーカルとタイトなアンサンブルが素晴しい(ポスト・パンク版ステレオラブかしら?)。「Thank you for making me happy」と執拗に繰り返す〈Born Confused〉、Sonic YouthやPixes風ヘヴィ・ノイズ・ロックの〈Sweet〉、浮游感のあるシューゲイズからカオス化する〈Lilac〉、回転木馬ワルツの〈Circling〉、フィル・コリンズの〈夜の囁き〉みたいな〈Homecoming Song〉‥‥最後までリスナーの胸を鷲掴みにして離さない。全11曲・42分。三面見開き紙ジャケ仕様。歌詞はインナーに記載されている。
オバケのP子から、骸骨娘に変身しちゃった?‥‥デビュー・アルバム《Stranger In The Alps》(2017)のカヴァは少女時代のスナップショットを白いペイントで塗り潰し、2ndアルバムでは黒地に白い骨格をプリントしたスケルトン・スーツを着ている。フィービー・ブリジャーズ(Phoebe Bridgers)はオバケやガイコツなど、この世ならざる存在に強く惹かれているように見える。来日した折りの休日に古都を観光する〈Kyoto〉、Elliott Smithへのオマージュ・ソング〈Punisher〉、病室で瞑想する〈Halloween〉など、浮游感のあるサウンドがファンタジー・ワールドへ誘う。Julien BakerとLucy Dacusがヴォーカルで参加した〈Graceland Too〉〈I Know The End〉はBoygeniusの再演となった。全11曲・41分。見開き三面紙ジャケ仕様。南アフリカ生まれのイラストレータ・絵本作家クリス・リデル(Chris Riddell)によるイラスト入り歌詞ブックレット(24頁)も素敵です。
バナナガン(Bananagun)は豪メルボルン出身のアフロビート・バンド。デビュー・アルバム。メンバー6人がアマゾン流域を小舟に乗って遊覧しているようなアルバム・カヴァからも、愉しげなトロピカルなサウンドが聴こえて来る。元々はNick Van Bakel(ヴォーカル、ギター、フルート、トランペット、ハープシコード、パーカッション)のソロ・プロジェクトに、従兄弟のJimi Gregg(ドラムス)が加わったことからバンド形態に進化したという。トロピカリア・ムタンチス調の〈Bang Go The Bongos〉。ガレージ・サイケ風の〈The Master〉。フェラ・クティを髣髴させるアフロ・ファンクの〈People Talk Too Much〉。野鳥とコンガのジャングル・インスト〈Bird Up!〉。ステレオラブを想わせるドリーミーなポップ・ソングの〈Out Of Reach〉。サイケデリック・ロックの〈Mushroom Bomb〉など‥‥全11曲・40分。見開き紙ジャケ仕様。
Kanye Westの《MBDTF》(Def Jam 2010)以来、「Pitchfork」 で10年振りに10点満点を獲得したことで騒然となったフィオナ・アップル(Fiona Apple)の5thアルバム。 彼女のヴォーカル、ピアノ、ドラムスに加えて、病死した愛犬ジャネット(Janet)の鳴き声や遺骨をパーカ ッションに使ったことでも話題になった。同じように若くしてデビューしたKate Bushの〈Running Up That Hill〉に言及した(Shoes that were not made for running up that hill / And I need to run up that hill)アルバム・タイトル曲〈FTBC〉、元Soul CoughingのドラマーSebastian Steinberg(ベース、ギター、パーカッション)のインスト曲〈My Kettle, My Cats〉をサンプリングした〈Relay〉、「あなたは娘が産まれたベッドで私をレイプした」 と赤裸々に歌う〈For Her〉‥‥など全13曲・52分。ジュエルケース仕様、歌詞ブックレット(20頁)入り。年間ベスト・アルバム第1位の最有力候補です。
ウェールズ生まれのケリー・リー・オーウェンス(Kelly Lee Owens)は19歳の時に英マンチェスターへ移住して、癌治療病院で補助看護師として働いていた時に、末期の患者から自分の夢を追い求めるように助言されて音楽の道に進んだ。「私の患者がキャリア・アドヴァイザーだった」 と語るだけあって、彼女は「癒しの音楽」を追究している。コロナ禍で延期になっていた2ndアルバムはRadioheadのシンセ・アルペジオ・インスト〈Arpeggi〉、氷河が溶ける地球温暖化を憂いた〈Melt!〉、「愛が足りません」(Love Is Not Enough)と歌う〈L.I.N.E.〉、同郷のJohn Caleがヴォーカル(英語とウェールズ語)で客演した〈Corner Of My Sky〉‥‥など全10曲・50分。テクノ〜エレクトロ・ポップと心地良いポリリズム。ツアー中にKieran Hebden(Four Tet)から、ブッシェル(bushel)の中に隠すなと促されたという可憐なヴォイスにも癒される。三面デジパック仕様、歌詞はインナーに記載。