PR誌「波」に1年間連載されていた「遊興一匹」を中心に編んだ「純文学的ネコバカエッセイ」(荒川千尋)。ある日、金井姉妹の住んでいるマンションに、1匹の仔猫が迷い込んで来た。「迷い猫あずかってます。クロトラ、オス、生後6ヵ月くらい、トイレの躾も出来てお行儀良し、12月18日の昼ごろから、この近辺で迷子になって泣いていました。連絡先 金井美恵子」という文面に猫のイラストを添えたポスターを近隣に張り出したものの、何の音沙汰もない‥‥。結局、金井...#001
ある春の雨の日、ポリバケツの横に捨てられていたエプロン姿の少女(仔猫)は、傍を通りかかった予備校生の須和野時夫に拾われる。人間には2つのルート、人間の幼児から大人の人間に成長するルートと「猫がある時点で変身して人間になるルート」があると固く信じて疑わないチビ猫(だから少女の姿で描かれる)が須和野一家‥‥「高校時代を暗黒にして大学を目指し」ていたのに、ソ連風邪で受験日を棒に振り自暴自棄になっていた時夫、猫アレルギーの母親・二三子、ユーモア...#004
『ムール・ムール』(1976)に続くフィニの中編小説。オネイロポンプ(Oneiropompe)という名の雄猫を水先案内人に「私」の体験する不思議な夢物語である。R通りのホテルに滞在する「私」、ロビーで膝の上に跳び乗って来た褐色と黒色の斑猫、部屋の窓から見える中庭の黒い女彫顔像、劇場で上演される奇妙な見世物‥‥ホテルの部屋に戻った「私」はベッドの上に「褐色と黒色の縞模様の大きな猫」を発見する。オネイロポンプは「私」に黒人女奴隷の顔像を盗み、トランク...#020
ガミッチ(Gummitch)はハリー&ヘレン・ハンター夫妻に飼われているIQ160のスーパー仔猫だった。2人のことを〈馬肉のせんせい〉〈ネコちゃんおいで〉というニックネームで呼ぶ。ハンター夫婦にはシシーという幼い娘と〈赤ん坊〉、アッシュールバニパルやクレオパトラというネコもいるが、彼らは言葉を喋れない。ガミッチは昆虫が変態するように、自分も毛並みと同じ金色の髪を持った人間の若者へ変貌するはずだと信じて疑わない。雌ネコに変身するのは邪悪で残忍な性...#032
1988年1月18日、米アイオワ州スペンサー公共図書館の返却ボックスの中に1匹の仔猫が捨てられていた。図書館長ヴィッキー・マイロン(わたし)が箱の中から赤茶色の仔猫を救い出す。その時から18年間‥‥「図書館ねこ」として生きることになるデューイ・リードモア・ブックス(Dewey Readmore Books)とヴィッキーの運命的な出会いだった(デューイという名前はデューイ図書十進分類法から採られた)。ヴィッキーが出勤すると、図書館の正面ドアの前で待っていて尻...#033
女性動物写真家レイチェル・ヘイル(Rachael Hale)のネコ写真集。生後13週未満の仔猫たち82匹と、ことわざ46編が並ぶ。水玉模様の壷の中で睡るペルシャ、ピンクのハンモックで寛ぐハイランド。毛布、子供用のハンドバッグ、裁縫具(ぼたん、糸巻き)、テディ・ベア、筒、宝石箱、窓辺、白い箱、毛糸玉と編み棒、ガラス瓶、仕切り、金魚鉢、石の塔、紙袋、アンティークの椅子、バケツ、ネズミ、生クリーム,魚の形をしたチョコレート、水差し、釣り道具、ケーキ、ピアノ...#040
絵本『エミリー・ザ・ストレンジ』(2003)の小説版。記憶喪失に陥った少女ハサミムシ(エミリー)はブラックロックという奇妙な町のカフェ〈エル・ダンジョン〉で働くことになった。「あたし」 の住処は冷蔵庫のダンボールハウス。雇われ女主人カラス、超能力少年ジェイキー、〈危ない人形劇〉のアッティコル、サーカス団長ウムラウト、私立探偵シュナイダー、エミリーに瓜二つの少女モリー・メリーウェザーなど、奇妙奇天烈な登場人物たち。キャベッジ(サバス)、ニッツ...#044
スコットランド・グラスゴーからアージル・インヴェラノックへ移り住んだ一家の物語。無神論者の獣医師アンドリュー・マクデューイの1人娘メアリ・ルーダと愛猫トマシーナは友人のヒュー・スターリングと一緒にグラスゴーから来る汽船を見に町の桟橋へ出かけた。汽笛の轟音に驚いたトマシーナはメアリの肩から落下して怪我を負う。メアリは背骨を痛めて歩けなくなったトマシーナを胸に抱いて父親の病院へ行くが、クルマに轢かれたタマス・モファット老人の盲導犬ブルースを...#061
猫画家・樋口裕子の絵本。主人公のニャンコは7歳の男の子に大事にされているネコの縫いぐるみ。子供が成長して自分に飽きてしまうのではないかと心配したニャンコは友達のタコくんとヘビくんにヒゲを集めて躰(綿)の中に入れれば本物のネコに近くなると教えられ、アノマロと一緒に魔力があるというネコのヒゲを集める旅に出る。帽子ネコや本屋のネコから抜けたヒゲを分けてもらう。ところが旅の途中、西の町の雑木林でアノマロがイバラの棘に絡まって身動き取れなくなって...#075
「スミソニアン」誌の女性記者が綴った「洗脳ネコ本」。チェシャネコのエピグラフを巻頭に置き、「エセックスのライオン」 を枕に振る冒頭から惹き込まれる。最新の遺伝子学や動物行動学を難解な学術論文ではなく、飼いネコのチーチーなど私事も含めたエッセイやルポルタージュ風に書いているところがベストセラーになった所以でしょう。人間を食べていた捕食者としての超肉食動物に光を当て、大型ネコ科動物や稀少動物が絶滅の危機に瀕しているのにイエネコだけが増え続ける現...#097
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- 「ネコ本100冊」達成を記念して、特に気に入っているネコ本10冊を選んでみました
- 〈素晴しきネコ本の世界〉へのリンク・ボタン(黒猫アイコン)を右上に付けました
- 小説(4)、エッセイ(1)、ノンフィクション(2)、絵本(1)、コミック(1)、写真集(1)‥‥各ジャンルから偏りなく選びましたが、10冊に絞るのは超難しい。次点は『山のトムさん』(福音館書店 1968)、『夏への扉』(早川書房 1979)、『猫の紳士の物語』(みすず書房 1996)、『オトコのことは猫に訊け』(小学館 2004)、『ファット・キャット・アート』(エスクナリッジ 2017)など‥‥^^;
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