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真夏のクリアランスセール 2 0 1 3

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  • ◎ Du Monde Tout Autour(Barclay 2011)Louise Attaque
  • 1994年、パリで結成されたLouise Attaqueは2001年に2つのバンドに分裂するものの、4年後に3rdアルバムをリリースして復活した。初のベスト・アルバムは新曲1曲と未発表1曲を含む全17曲を収録。《Louise Attaque》(1997)から6曲、《Comme On A Dit》(2000)から4曲、《A Plus Tard Crocodile》(2005)から5曲という構成になっている。バンド名は19世紀の女性アナーキスト、ルイーズ・ミシェル(Louise Michel)に由来するが、2枚のアルバムをプロデュースしたGordon Gano率いる「Violent Femmes」の仏訳でもあるという。ユニークなのは名前だけでなく、メンバーにヴァイオリニストがいること。いわゆる4ピース・バンドとは異なるヴォーカル・ギター(Gaëtan Roussel)、ヴァイオリン(Arnaud Samuel)、ベース(Robin Feix)、ドラムス(Alexandre Margraff)という編成でノスタルジック&クールな世界を描き出す。アルバム・カヴァに白デカ目少女のイラストを使うことでも知られ、ベスト・アルバムにも赤と黒を基調としたルイーズちゃん(エミリーを意識?)が描かれている。

  • ◎ Anna Calvi(Domino 2011)Anna Calvi
  • Anna Calvi嬢はロンドン郊外トゥイッケナム出身の女性SSW。真紅の唇に赤いドレス、装身用のネックレス(金の鎖)で「Anna Calvi」という名前を綴ったアルバム・カヴァは妖艶だが、堂々とした歌いっぷりでリスナーの度肝を抜く。ジャンゴ・ラインハルト(Django Rheinhart)Calexicoを想わせる乾いたギター・インスト〈Rider To the Sea〉で幕を開けるデビュー・アルバムは全10曲中6曲をRob Ellisと共同プロデュース。ギターだけでなくピアノ、ベース、ヴァイオリン、オルガンも弾くマルチ奏者でもある。〈No More Words〉でDave Okumu(The Invisible)、〈Desire〉と〈Suzanne & I〉の2曲でBrian Enoがゲスト・ヴォーカル参加(後者ではピアノも弾いている)。エモーショナルなヴォーカルとメロディアスなギターが彼女にしか創れない世界を現前させる。同じように頭文字を象ったネックレスをしたErika M. Anderson(EMA)さまにも通じる、男性たちに媚びることのない正攻法のロックである。

  • ◎ Destroyed Room: B-Sides & Rarities(Geffen 2006)Sonic Youth
  • シングル盤のB面やレア・トラックなどアルバム未収録曲を集めたコンピレーション盤(76分55秒)。10分を超えるアウト・テイクの〈Fire Engine Dream〉、レオス・カラックスの映画『ポーラ X』(Pola X 1999)のサントラとして提供した〈Blink〉、モンテ・ヘルマンのロード・ムーヴィ『断絶』(Two-Lane Blacktop 1971)のトリビュート・アルバムに収録された〈Loop Cat〉、国内&UK盤《Sonic Nurse》(2003)のボーナス・トラックだった〈Kim's Chords〉、25分に及ぶ〈The Diamond Sea〉のLPヴァージョンなど‥‥全11曲中7曲がJim O'Rourke在籍時のトラックで占められている。インスト中心ながらノイズや不協和音が渦巻く美しい曲が多い。このアルバムを最後にメジャーからインディーズに舞い戻ったSonic Youthは《The Eternal》(Matador 2009)をリリースするが、Kim GordonとThurston Mooreの離婚(2011)を境に活動停止状態に陥ってしまった。

  • ◎ Rarities(One Little Indian 2010)Emiliana Torrini
  • 《Love In The Time Of Science》(1999)のリミックスやヴァージョン違いなどを集めたコンピ盤(2CD)。Roland OrzabalとAlan Griffiths(Tears For Fears)がプロデュースしたアルバムはBjork似のロリ声がアブスクラクトな空間に浮游していた。全28曲を収録した《Rarities》には〈To Be Free〉と〈Unemployed In Summertime〉が各6ヴァージョン、〈Baby Blue〉は3ヴァージョン、〈Easy〉も5ヴァージョン、〈Tuna Fish〉も2ヴァージョン入っている。なぜ10年も経ってからリリースされたのかは不可解だが、入手困難のレアトラックが2枚組で網羅的にコレクションされたのはファンにとっては嬉しい(オリジナル・アルバムの4曲、〈Fingertips〉〈Telepathy〉〈Summerbreeze〉〈Sea People〉は未収録)。同郷のBjorkと比べると日本では知名度は低いけれど、『ロード・オブ・ザ・リング / 2つの塔』(The Lord Of The Rings: The Two Towers 2002)のエンディング・テーマを歌った歌手と言えば思い当たる人も少なくないでしょう。

  • ◎ Navega(Shagrada Medra 2010)Jorge Fandermole
  • アルゼンチン・ネオ・フォルクローレのSSWが2002年に発表したアルバムの再プレス盤。Jorge Fandermole(ギター、ヴォーカル)にCarlos Aguirre(ピアノ、アコーディオン、ヴォーカル)、Fernando Silva(ベース)、Juancho Perone(パーカッション)という編成。〈Maria〉でRuben Goldinがコーラス参加し、〈Canto Versos〉でJose Maria Blancとデュエットする。5拍子のアルバム・タイトル曲〈Navega〉ではインスト・ギター・トリオのTrio De Guitarras De Rosarioをゲストに迎えている。Jorge Fandermoleの瑞々しいヴォイス(スキャット、コーラス)と軽やかなアクースティック・ギター、Carlos Aguirreの流麗なピアノの美しい調和。裸木のシルエットを背景に舞う1枚の白い羽‥‥頁の右端の曲タイトルが見えるように裁断されたアドレス手帖風のブックレット(歌詞カード)も凝っている。『アルゼンチン音楽手帖』(DU BOOKS 2013)にも掲載されている名盤です。

  • ◎ Musica De Brinquedo Ao Vivo(Rotomusic 2011)Pato Fu
  • おもちゃの楽器で名曲をカヴァした《Musica De Brinquedo》(2010)のライヴ・アルバム。誰でも1度は耳にしたことがあるWingsの〈Live And Let Die〉、Smokey Robinsonの〈My Girl〉、Queenの〈Bohemian Rhapsody〉などのカヴァ10曲に加えて、Pato Fuのオリジナル4曲もトイ・ミュージック・ヴァージョンで披露している。カシオトーン、鉄琴、ラッパ、カズー、カスタネット、タンバリン、ピアニカ、アコーディオンなどの楽器だけでなく、ヴォーカルやコーラスにもアニメやパペット声のようなギミックがある。もちろん大ヒット曲の〈Made In Japan〉も日本語で歌われるのだ(フクシマの原発事故もNASAが解決してくれると良いのにね)。子供たちの歓声も聞こえる。ミニチュアのギター(ストラトキャスター)やベース、子供用のドラム・キットは思った以上に小さくて、演奏するのが難しそう!‥‥ライヴ映像を収録したDVDもリリースされています。マ・ナ、マ・ナ。

  • ◎ Partimpim Dois E Show!(Sony Music 2010)Adriana Partimpim
  • Adriana Calcanhottoの少女時代の渾名だったという変名アルバム第2弾のライヴ・ヴィデオ。2ndアルバム《Partimpim Dois》(2009)と同じく、少女マンガ風のデカ目マスクとピンクの手袋で変装したパルチンピン(セーラームーン?)が右手でV(2)サインをしている。Pat Fuのトイ・ミュージックとは趣きを変えた子供のための「みんなのうた」というコンセプトでカヴァ曲や自作曲を披露する。Partimpim(ヴォーカル、ギター)、Moreno Veloso(ギター)、Davi Moraes(ギター)、Alberto Continentino(ベース)、Rafael Rocha(パーカッション)、Domenico Lancellotti(ドラムス)というバンド編成。パルチンピンはロボットの着ぐるみで登場し、パラソル風のスカートを穿き、頭に蝶々を纏い、赤いマントを羽織り、アフロ・ヘアを被り、チャイナドレスを着て、バナナを投げ、最後には宙を飛ぶ。ステージ前を蒸気機関車が走ったり、ライオン丸(Davi Moraesの仮装)が吼えて威嚇する視覚的な演出も愉しい。全19曲(1stから7曲、2ndから8曲)のライヴ映像にPV3曲を加えたDVD Video(NTSC、ポルトガル語・英語・スペイン語字幕)。

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    出遅れてしまった昨年(2012)を反省して今年は「夏のクリアランスセール」(6. 21~7. 28)に早くから参戦した。でも、ツイッターなどでセールを告知すると駄目ですね。大量に買い占めて行くセドリ(中古業者?)に荒らされて無惨なことになってしまうから(逆に告知していない渋谷が穴場だったりする)。それでも期間中は随時補充しているようなので、タイミングが良ければ掘り出し物を手にするチャンスはある。ここが早い者勝ちの新年恒例のクリアランスと違うところ。たまたまタワレコへ行ったらセールをやっていて、ワゴンの中に探していたアルバムを偶然見つけて小躍り‥‥というのが理想なのだが、こんな幸運は滅多にない。玉石混淆のワゴンの中から「お宝」を掘り出せるかどうかは、音楽の嗜好はもちろん、知識や情報量にも左右される。たとえば、ルイーズ・アタック(Louise Attaque)を知らない(聴いたことのない)人には「玉」も「石」となる。手に取ったアルバムをスマホで検索している人はルール違反でしょう。アマゾンの価格や評価を調べているのかしら?

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    • 1枚(¥290)×7=2030円の出費です^^;
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    Du Monde Tout Autour

    Du Monde Tout Autour

    • Artist: Louise Attaque
    • Label: Barclay
    • Date: 2011/10/18
    • Media: Audio CD
    • Songs: Du Monde Tout Autour / Ton Invitation / Si L'on Marchait Jusqu'a Demain / J'T'emmène Au Vent / L'intranquillité / Si C'etait Hier / Savoir / Léa / Tu Dis Rien / Depuis Toujours / Les Nuits Parisiennes / Sean Penn, Mitchum / La Plume / Amours / Est-Ce Que Tu M'aimes ...Encore? / Du Nord Au Sud / Snark


    Anna Calvi

    Anna Calvi

    • Artist: Anna Calvi
    • Label: Domino
    • Date: 2011/03/01
    • Media: Audio CD
    • Songs: Rider To the Sea / No More Words / Desire / Suzanne & I / First We Kiss / The Devil / Blackout / I'll Be Your Man / Morning Light / Love Won't Be Leaving


    Destroyed Room: B-Sides & Rarities

    Destroyed Room: B-Sides & Rarities

    • Artist: Sonic Youth
    • Label: Geffen Records
    • Date: 2006/12/07
    • Media: Audio CD
    • Songs: Fire Engine Dream / Fauxhemians / Razor Blade / Blink / Campfire / Loop Cat / Kim's Chords / Beautiful Plateau / Three-Part Sectional Love Seat / Queen Anne Chair / The Diamond Sea


    Rarities

    Rarities

    • Artist: Emiliana Torrini
    • Label: One Little Indian
    • Date: 2010/08/30
    • Media: Audio CD(2CD)
    • Songs: Dead Things / Wednesday's Child / Tuna Fish / To Be Free / If You Go Away / Weird Friendless Kid / To Be Free (Futureshock Vocal Mix) / To Be Free (Dillon & Dickens Vocal Remix / To Be Free (Raw Deal Remix) / Baby Blue / Baby Blue (Rae & Christian Remix) / Baby Blue ...(Runaways Mix) / Easy (Tore Johansson mix) / Easy (Album Version) / Flirt (Slow Blow) / Easy (In The Sunshine Acoustic) / Easy (In The Rain Acoustic)


    Navega

    Navega

    • Artist: Jorge Fandermole
    • Label: Shagrada Medra
    • Date: 2010/07/31
    • Media: Audio CD
    • Songs: Cuando / Corazon de luz y sombra / Lo que usted merece / Navega / Marina / Canto versos / El limonero real / Coplas de la luna llena / La mirada / La torcida / Oracion del remanso / Suenero


    Musica De Brinquedo Ao Vivo

    Musica De Brinquedo Ao Vivo

    • Artist: Pato Fu
    • Label: Rotomusic
    • Date: 2011/11/01
    • Media: Audio CD
    • Songs: Primavera (Vai Chuva) / Sonifera Ilha / Rock And Roll Lullaby / Eu / Ovelha Negra / Todos Estao Surdos / Simplicidade / Live And Let Die / Perdendo Dentes / My Girl / Ska / Sobre o Tempo / Made In Japan / Bohemian Rhapsody


    Partimpim Dois E Show!

    Partimpim Dois E Show!

    • Artist: Adriana Calcanhotto
    • Label: Sony Music
    • Date: 2010/11/15
    • Media: DVD Video
    • Songs: Baile Partimcundum / Menina, Menino / Saiba / Ciranda Da Bailarina / Alface / Cancao Da Falsa Tartaruga / O Trenzinho Do Caipira / As Borboletas / Alexandre / O Homem Deu Nome A Todos Os Animais / Um Leao Esta Solto Nas Ruas / Domenico Apresenta A Banda / Gatinha Manhosa / Oito Anos / Bim Bom/ Lig-Lig-Lig-Le / Licao de Baiao / Baile Partimcundum // Fico Assim Sem Voce / Baile Partimcundum / O Trenzinho Do Caipira / Gatinha Manhosa

    サイボーグ 009ノ4

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  • ──はじめに広く大きく口をあけた深い谷(ギヌングガガーブ)があった‥‥すると光と影、暑さと寒さが世界にやってきて──霜のとけたものから巨人の先祖イミールが生まれた‥‥イミールから、巨人のやからが生じ──ブロンドの毛のある男ブーリーから神々が出てきた‥‥神々と巨人は仲が悪く、神々の兄弟オーディン・ヴィリー・ヴェーがイミールと巨人のやからを殺してしまい‥‥その血は世界中に流れた‥‥死んだイミールの体から1つの新しい世界がつくられた。肉から土が、毛から木が、頭蓋の丸天井から天が‥‥雲は脳でまつ毛からは大地──それはあとでは「中央の庭園(ミッドガルド)」をとりまく柵となった‥‥神々は2本の幹を発見した。木に生のいぶきと命のあたたかさと魂をあたえると‥‥アスクとエンプラ──最初の一組の人間ができあがった‥‥。人間と神々の運命を決めるのは3人の不思議な女ノルネ(ウルト・ヴェルダンディ・スクルトという過去と現在と未来)だ。この3人は "宇宙とねりこ" イグドラズイルという巨木の根にすわっていた‥‥この木は──神々の没落といっしょに倒れることになっている‥‥。
    石森 章太郎 「エッダ(北欧神話)編」


  • 「風の都編」(週刊少女コミック 1975)
  • ギルモア博士の許へ1通の手紙が届く。ジャングルに消えてしまった英米2つの探検隊の行方を捜しに南米ボリビアへ旅立ったフランソワーズからの手紙だった。消息を絶ったイギリス探検隊の中にはグレート・ブリテンが売れないシェークスピア役者時代に世話になった友人バン・アレン卿も含まれていた。黄金都市カプラの遺跡で一夜を明かした5人のゼロゼロナンバー・サイボーグたち‥‥島村ジョー(009)、フランソワーズ・アルヌール(003)、アルベルト・ハインリヒ(004)、ジェロニモ(005)、グレート・ブリテン(007)は翌朝調査に乗り出す。009は突如出現した黄金のピラミッドに遭遇し、その中から姿を現わした王女イシュキックと出遭う。004は探検隊の生き残りと思しき男を発見する。正気を失った生存者は003を見て「女だ、怖い」と慄き、005の姿を見て「黄金の巨人‥‥殺される、消される」と叫ぶ。

    王女イシュキックはワタシ1人を残して創造者(ツアコル)たちは何処かへ行ってしまったと009に語り、黄金を盗みに来た侵略者たちは全員死んだと007に答える。黄金の巨人カブラカンが現われて、逃げ出した原住民のポーター2人と生存者を消す。王女を連れ戻しに来たカブラカン。ワタシと一緒に来てと涙を流して009に懇願するイシュキック。カブラカンの目から放射された熱線が009を襲うが、身代わりとなったイシュキックに救われる。熱線攻撃を加速して躱した009が黄金の巨人を倒すと黄金のピラミッドも消え去った。ピラミッドは消えたインカ族の黄金の貯蔵庫であるのと同時に「時空転移装置」でもあったのだ。王女イシュキックはピラミッドの守護者として造られたアンドロイドだった。「恩を知らない人間は化け物だ!」「女の皮は被っていても──心は惨いトラ同然」など、007が引用するシェークスピアからの台詞が会話の中に鏤められている。

  • 「雪のカーニバル編」(週刊少女コミック 1976)
  • ハインリヒに誘われて雪山の駅に降り立ったジョー。雪祭りの予行演習が行なわれている村には毎年カーニヴァルの前後、魔女による犠牲者が出るという伝説があった。山頂から絶壁に近い急斜面やクレバスをスキーで滑降した2人は吹雪に遭う。避難しようとして番犬を宥める城の娘に頼み込むが、城主に拒否されてしまう。その時、階段の手摺りが崩れて娘レナが落下する。加速して娘を救ったジョーがサイボーグ(改造人間)であることを告げ、2人は一晩城に泊ることになる。夜中にジョーの部屋を訪ねた妹レナと立ち聞きしていた姉リンダ。吹雪の夜、また魔女が村人たちを惨殺する。翌朝目覚めたレナは血に染まった両手を見て脅える。宿屋に戻ったジョーとハインリヒは村人たちが殺されたことを知って、魔女の正体は僕らと同じサイボーグではないかと疑う。再び城を訪れた2人は地下室でレナに手術を施そうとする父親を発見する。生まれた時から死の病に取り憑かれていた娘を生かすためにリンダの臓器をレナに移植し、その代わりにリンダを半機械化していたのだ。サイボーグ魔女はレナではなくリンダだった。レナを生かすためだけに引き取られ、育てられて来た孤児リンダの復讐。父親の撃った銃声で雪崩が起き、城が崩壊する。

  • 「グリーンホール編」(プレイコミック 1976)
  • 南米ベネズエラのサリサリマーニャにある巨大な2つの穴。穴の底の土壁にスタッフ以外の手形が残されていたというTVプロデューサの話をフランソワーズがギルモア博士やジョー、張々湖にしたことから調査が始まった。5人のゼロゼロナンバー・サイボーグは穴の底に降りて洞穴でキャンプする。人の気配を感じた003たちは岩の裂け目から地下へ降りる。地下水道の流れる地底で白い吸血コウモリや原始人たちに襲われた009たちの前に1人の女が現わる。女に精神をコントロールされてしまったサイボーグたち。加速装置でコントロール精神波を弱めた009は謎の女と005の後を尾けて行く。細胞の老化を止める「緑の火」を浴びようとする005を阻止しようとして装置を破壊。精神の力を使うことで老化して行く女。コントロール脳波から解放された005たち。老婆が超破壊エネルギー盤のスイッチを入れて自爆する。女の恋人アーガムンに似ていた005が彼女の記憶を語り出す。女は遥かなる太古、星辰の彼方から地球に降り立った宇宙船の科学調査隊の1員だった。未知の危険から身を護るために「穴」を掘り、基地の増設のために2つ目の穴を穿った時に宇宙船が爆発。奇跡的に救かった女は調査用に捕らえた原住民数組と共に残留放射線を逃れて地下へ避難したと。

  • 「ディノニクス編」(月刊少年ジャンプ 1976)
  • アメリカのゴットフリート・ロス博士からギルモア博士に手紙が届いた。「黒い幽霊団」に捕まっていた時に一緒に「仕事」をさせられていた同僚からの便りだった。ロボット工学者から博物学者に転身したロス博士は化石古生物の研究に勤しんでいたところ、研究所近くの峡谷でディノニクスを発見したという。約7千万年前に絶滅したという恐竜生け捕り作戦にゼロゼロナンバー・サイボーグたちの力を借りたいという主旨だった。ジョーはジェットとジェロニモを誘って米モンタナ州にある「化石古生物研究所」を訪れる。ディノニクスだけでなくプテラノドンを発見した009たちは後を追うが、002と005はティラノザウルス・レックスの動く骨の催眠檻に囚われ、009も恐竜たちに逆襲される。尻尾からビームを出し、口から超音波を吐く恐竜たちはチーフ助手のキーリー博士に脅されてロス博士が造ったロボットだった。「黒い幽霊団」の生き残りの幹部キーリーは009たちを捕らえて洗脳し、世界征服と帝国建設の夢の実現のために再び利用しようとしたのだった。

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  • 「エッダ(北欧神話)編」(週刊少女コミック1976)
  • ドイツ、日本、イギリス、アメリカ、アフリカ‥‥世界各地に散っていたサイボーグたちが久々に集結してアイスランドへ旅立つ。東京のギルモア邸で留守番するイワンがテレパシーで予言した「──危険ナ旅ノハジマリ」だった。北欧神話「エッダ」に登場するような巨人イミールを捜しに雪と氷の荒野を行く009たち。放射能が含まれた濃霧の中から1人の女性が現われる。フライアは「やどり木の村」から逃げて来たと言って気を失ってしまう。娘の後を追い駆けて来た黒い大きな犬が009たちに襲いかかる。霧が晴れて丘の上に巨木「宇宙とねりこ」が姿を現わす。「やどり木の村」に着いたサイボーグたちは鷹目のハイムダルの道案内で宿屋へ向かう。2階の窓から侵入したフライアの弟ヴァルドールが003に顛末を語る。族長テックの命令を守らなかった恋人のフリッガが処刑され、姉のフライアは掟に背いて村から逃げ出した。支配者オーディンには何者も太刀打ち出来ないのだと。宿の主人ロキーが009たちに毒入りの食事を用意する。しかし、006が鼻を利かせて見破り、誰も1口も食べなかった。

    村を調査するサイボーグたちと火の馬、大海蛇シュランゲ、コウモリ男、狼男フェリス、鍛冶屋のミェルニール、魔犬ガリア、鎧仮面トールとの闘いが始まる。魔犬ガリアに追いつめられたヴァルドールを救い、コウモリ男に首を絞められたフライアを救ける009。鎧仮面トールの光線銃で負傷して崖から落ちた004。木の下で待機していたヴァルドールもレイガンで撃たれ、003も連れ去られる。族長テックの兵士たちとサイボーグ戦士たちの最終決戦の火蓋が切られる。テックが死の巨人イミールを操る。009は「宇宙とねりこ」の根に縛りつけられた003を救出しようとするが、ロボット兵士たちに迎撃される。「宇宙とねりこ」の中でロボット兵士を操作している男こそが宿の主人ロキー、その女房の族長テック、支配者オーディンという3つの顔を持った25世紀の科学者Xだった。マッド・サイエンティストは超古代の怪物たちの村を「宇宙とねりこ」という「時空転移装置」を使って現代のアイスランドに丸ごと転移させたのだ。「やどり木の村」は未来と現在と過去が入り混じった世界だった。

  • 「怪奇星編」(冒険王 1977)
  • 「釣り船遭難、2人行方不明」という新聞記事を読んだジョーと張々湖の2人は西伊豆へ行き、海岸で泣いている1人の少年に出会う。夜釣りに出かけた父親の舟が「海魔」に沈められたと信じて疑わない浜田雄二に船を借りて海に出た009と006は夜釣りを愉しむが、密航していた少年を発見して急遽引き上げようとする。すると釣り舟の下の海面が明るくなり、光の玉に捕らえられた3人は宇宙へ飛び立つ。光速を超えてワープした宇宙船は地球型の惑星に着陸する。少年の前に父親の浜田雄之助が現われるが、それは異星人の変身した姿だった。牛魔王、フランケンシュタイン、ドラキュラ、ドラゴンなど、009たちの頭の中にある怪物のイメージが作り出したものだった。河童が少年を攫ってい行った先にグロテスクな樹木があった。周囲に転がっている骨の中から父親の骸骨を発見した少年が怒りに燃えると、樹木の邪悪な念波が弱まる。009が加速し、006の火炎で燃やすと不定形生物が姿を現わして2人に感謝する。タタカウココロ(戦闘心)のない彼らは隕石に乗って来て惑星を支配したエイリアンと戦わせるために009たちを連れて来たのだった。

  • 「幻影島編」(週刊少年マガジン 1978)
  • 「復讐の用意ができた。X月X日、あの島まできてもらいた。あの時、呼びもしないのにやって来て私の研究を邪魔した貴様だ! よもやこの「招待」を断る臆病者ではあるまい。待っているぞ!」‥‥5年前、金儲けのために「人殺しの細菌」を作っていたフリードキン教授の研究所を破壊した島村ジョーに挑戦状が送られて来た。島に着いた009が研究所の跡地へ行くと、001を除くゼロゼロナンバー・サイボーグたちが待っていた。手分けして島を探索するサイボーグたち。009と003の2人は落石や弓矢だけでなく、手斧を持った005に襲われる。火炎放射器で攻撃する006、ナイフで跳びかかる002、潜水艇に股がって水中銛を放つ008、自動小銃を撃つ007と004、そして003‥‥009が殺した「仲間」は真っ赤なニセモノだった。第2、第3のゼロゼロナンバー・サイボーグたちが姿を現わす。彼らは復讐に燃えるフリードキン教授の造り出したクローン(複製人間)だったのだ。フリードキン教授の操縦するヘリコプターを撃ち落とした009がギルモア邸に戻ると、「009が死んだ」という知らせを聞いて駆けつけた仲間たちが待っていた。

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  • 「海底ピラミッド編」(月刊マンガ少年 1977-79)
  • 崖から海に飛び込んだ島村ジョーは岩礁に挟まっている巨大なサヤエンドウ(ポッド)を発見する。003曰く「柔らかいようで固いビロードの金属」のような材質の中に入っていた日本人・里中洋平は極度の記憶喪失に陥っていた。張々湖が新聞社とTV局に手配して身元が明らかになり、妻と新聞記者がギルモア邸を訪れる。しかし、2人の記者はシンジケートMの手先で、幼い娘を人質に母親を脅して里中を拉致しようとする。009が捕らえた手先の1人が張々湖の催眠術で自白する。ある海底の遺跡を発掘するために出航した組織Mの船が連絡を絶った。その事情を調査するために潜水夫の里中を連れて来いという指令を受けたと。組織Mの援軍がギルモア邸に集結するが、襲撃の直前に海から現われた怪物によって全滅してしまう。009たちが怪物を撃つと、そのショックで里中は海底のピラミッドを破壊したことを思い出す。現代の墓泥棒が怪物たちを目醒めさせてしまったのだ。事件の重大さに気づいた009は仲間たちを呼び集める。ソ連の小型原子力潜水艦と米軍の軍事ヘリコプターによる監視。そして再び海から現われた怪物たちがギルモア邸を攻撃する。地下へ逃げた009たちと里中親子は空飛ぶ帆船で脱出する。

    H・G・ウェルズのSFに出て来るような怪物マシンを破壊した飛行帆船「イワンのばか」はバミューダ・ピラミッドの調査に向かう。海底ピラミッドの真上に着いた009たちは008を偵察として海中へ送る。ピラミッドを発見した008はエイやウツボなどに襲われて帆船に逃げ帰る。空飛ぶ怪魚を迎撃する帆船。海中からが浮上して虚空に消えたピラミッド。009たちはピラミッドの稲妻攻撃を浴びて海底に沈んだ帆船を修理する。海中を航行する帆船の後を黒い潜水艇が尾行する。空を飛行して海底ピラミッドの後を追う帆船。12個のピラミッドが2列に連なる「緑の地獄」に着くと、黒い潜水艇が空中から爆撃を開始する。浮游したピラミッドが黒い怪船を破壊し、正八面体に連結して月へ向かう。「緑の地獄」で004と007は怪船から脱出した2人の生存者から事情を聞き出し、009と003は生き残りと思しきサイボーグと戦う。密林から飛び出した帆船の後を再び黒い怪船が追う。南海の楽園で待機することにした009とは意見を異にする004は海中から浮游した光る物体が爆発するのを目撃する。海辺に打ち上げられたのは人魚だった。

    約2万年前、ルメル星はガルラ星人の侵略によって滅んでしまった。地球へ逃げ延びた少数のルメル星人に追っ手が飛来する。追跡部隊との戦闘に勝利したルメル星人は海の底で人知れず平和に暮らしていた。ところが海底ピラミッドの中に凍結させて閉じ込めていたガルラ星人が目覚めてしまったという。人魚姫メイムの話を疑う004は航海中に巨大な海ヘビを目撃する。黒いロボット海ヘビの後を尾けた帆船はピラミッドのある島を発見する。海辺に着いた海ヘビが原住民の槍によって爆破される。島に上陸した009たちは原住民と戦って、超科学の産物である「槍」を持ち帰る。人魚メイムをスパイだと見破った004は彼女を問い詰めて、「創造主」の命令だったことを白状させる。サヤエンドウ型の戦闘艇が帆船を攻撃する。母船から脱出用ボートで逃げた009たちも窮地に陥るが、巨大なクジラ型の潜水艇「白鯨号」が戦闘艇を全滅させる。船内へ救助された009たちはスエーデンボルグ伯爵と名乗る人物(モニタに映し出された目)から「白鯨号」を使ってピラミッドを破壊して欲しいと頼まれる。004は条件として正体を明かすこと、戦う理由を説明することを伯爵に要求する。

    時を旅するスエーデンボルグ伯爵は艦内には存在しない。コンピュータのようなものだと嘯く。米・ソ2隻の潜水艦が小型ピラミッドに拿捕される。スエーデンボルグ改めサン・ジェルマン伯爵が2つ目の条件に答える。「カレラは "人類の敵" だからだよ」と。ピラミッドに囲まれた「白鯨号」は全動力をオフにして島へ曳航される。原住民たちに捕まってピラミッドの内部に入った009たちは洗脳されそうになるが、原住民に変身した007の投げた槍によって脱出に成功する。ピラミッドを破壊して「白鯨号」に戻った009たちは操縦を手動に切り替えてメイムの国へ向かう。メイムは気紛れで、お節介な「神」に造られた異世界の異生物だった。遥かな古代、遠い宇宙の何処かで2つの惑星が争う。「創造主」たちとピラミッドの種族。闘いに敗れた「創造主」の種族は地球へ逃げて来た。ピラミッドの種族は監視哨ピラミッドを残して行く。ところが愚かな人間たちがピラミッドを破壊して監視哨を目醒めさせた。地球へ逃げた種族が反旗を翻すための力を得たのかと思ったピラミッドの種族が調査を始める。「創造主」は母星へ結果が報告される前にピラミッドを破壊しようとしたのだ。009たちは「創造主」に地球から出て行ってくれと願う‥‥「代理戦争は御免だ」。

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    • 「石ノ森シリーズ」の第13弾は「サイボーグ・ゼロゼロナイン4」です^^

    • 「石ノ森章太郎萬画大全集」(角川書店 2007)をテクストに使いました
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    サイボーグ 009 13 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 6-1

    サイボーグ 009 13 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 6-1

    • 著者:石森 章太郎
    • 出版社:角川書店
    • 発売日:2007/05/31
    • メディア:コミック
    • 目次:風の都編 / 雪のカーニバル編 / グリーン・ホール編 / ディノニクス編 / エッダ(北欧神話)編 / 第1部 スクルト(未来)/ イラストコレクション


    サイボーグ 009 14 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 6-2

    サイボーグ 009 14 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 6-2

    • 著者:石森 章太郎
    • 出版社:角川書店
    • 発売日:2007/05/31
    • メディア:コミック
    • 目次:エッダ(北欧神話)編 / 第2部 ヴェルダンディ(現在)/ 第3部 ウルト(過去)/ 怪奇星編 / 幻影島編 / イラストコレクション


    サイボーグ 009 15 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 7-1

    サイボーグ 009 15 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 7-1

    • 著者:石森 章太郎
    • 出版社:角川書店
    • 発売日:2007/08/31
    • メディア:コミック
    • 目次:海底ピラミッド編(前編)/ 第1部 パンドラピラミッド / 第2部 シュガーピラミッド / 第3部 バミューダピラミッド / 第4部 グリーンヘルピラミッド / 第5部 ムーンピラミッド / 第6部 ブラックピラミッド


    サイボーグ 009 16 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 7-2

    サイボーグ 009 16 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 7-2

    • 著者:石森 章太郎
    • 出版社:角川書店
    • 発売日:2007/08/31
    • メディア:コミック
    • 目次:海底ピラミッド編(後編)/ サン・ジェルマン伯爵 / イラストコレクション

    F A V O R I T E ー C A T S 5

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    Saki 2010
    八幡神社の境内は一部が駐車場になっている。その方端の植え込みの前で1匹のネコが日向ぼっこをしていた。ネコとの距離感を慎重に保ちながら、これ以上近づくと逃げられるという地点から撮った。まだ寒い冬の午後、左から暖かな陽射しが当たって麗らかな感じ。可愛いネコに出会えて、良い写真が撮れた日は気分も爽やか。ネコに出会った時は必ず「こんにちは」と挨拶することにしている。写真を撮らしてくれて「ありがとう」。別れ...#189


    Kuri 2010
    逆光仮面なので黒ネコのように見えるけれど、実際の毛色は上品なチャコール・グレー。ネコの敏捷性には目を瞠ることが少なくない。クリちゃんも民家の塀の真下から助走なしに垂直に跳び乗る。余りにも見事なジャンプに感銘して、ネコに魅せられた女性パフォーマーの回文(ストーリ)を作ったこともあるくらい。子供時代を思い返してみれば、誰でも1度や2度は塀の上に昇ったり、細い露地(キャット・ウォーク)に入り込んで仲間と...#186


    Ichigo 2010
    「ネコ・ログ」の常連イチゴちゃん。この写真は昨年(2010)の猛暑の夏、民家の車庫で涼んでいるところを撮らせてもらいました。日蔭のコンクリートは冷んやりしていて気持良さそう。隣家のチビネコに苛められては逃げ回っていたけれど、天敵はエアコンの効いた室内にいるらしく最近は姿を見かけません。チビの老飼主によると、大人しそうに見えるイチゴちゃんは、その前に飼われていたネコを追い出して後釜に居坐ったというのだ...#185


    Frio 2010
    8階建てマンションの屋上が大好きなネコちゃん。桜の木に昇ったのは良いけれど、自力で降りられなくなってミャーミャー鳴いていたネコみたいに、屋上から階段を降りて来られずに鳴いているので住人から苦情が出るのだろうか。広い車道に面した商店通りの小さな公園(空地)にいるフリオちゃんは美しいトラ縞模様のネコで人懐っこい。毎朝晩2回ゴハンを運んで来るオバさんがいるので、食事には恵まれている。キャット・フードの上の...#184


    Nagi 2010
    マンションの玄関前に数匹のネコたちがいた。住人らしき若い女性の周りで遊んでいる。初めて出会ったネコは警戒心を解かない。直線的に逃げてしまうネコは見込みがないけれど、弧を描くように遠巻きに移動するネコとは親密になれるチャンスがある。お腹を見せてゴロニャンするネコ、差し出した指の匂いを嗅ごうとするネコ、毛並みに優しく触れると人懐っこく躰をスリスリして来るネコ‥‥1匹のネコと仲良くなった。片平なぎさみた...#181


    Lemon 2010
    個性的なネコたちが棲息する空地、民家が建ち並ぶ地域で何度かネコの写真を撮ったことがある。最近ネコの姿を見かけなくなったけれど、一体どこへ行ってしまったのか、近所にネコを虐待する住人がいる!‥‥など、ネコ好きの主婦と立ち話をした際に、今度ネコ写真を持って来る約束していた。オッドアイの長毛種マミーやマグちゃんの写真を手渡した時、たまたま持っていた「ネコ・アルバム」の中にレモンちゃんを発見した主婦が驚い...#180


    Soran 2010
    舌先を器用に操って水を飲むネコの動作は優雅で見飽きることがない。左手前にある青いポリバケツの中の水を飲んでいるソランを撮った。ちょうど吸水を止めてカメラ目線で見つめているところ‥‥ソラリゼーション機能+フラッシュ撮影の合せ技である。なぜかしらネコは汲みたての新鮮な水よりも、清潔とは言い難い溜め置きの水を好んで飲む傾向があるらしい。スーパー仔猫ガミッチ(Gummitch)も図書館ねこデューイ(Dewey)も飼...#179


    Zino 2010
    ネコの耳の大きさは年齢に反比例する。子ネコは「小顔」なので、相対的に耳が大きく見えるから。たとえば、諏訪野チビ猫の耳が次第に大きくなって、逆に幼い顔立ちになったように。ヘッドフォンやカチューシャ(ヘアバンド)のように頭に着装するコスプレ用の「ネコ耳」を最初に発案したのは一体誰なのか。ミッキーマウスの「ネズ耳」からヒントを得て作られたものなのか、それとも「ネコ耳」は「ネズ耳」の前から独自に存在し...#176


    Chico 2010
    パルとは逆方向から撮った写真で、対照的にシコはコンビニ(セブン-イレブン)の方を見つめている。手前の岩場に置いた白い左前脚が可愛い。顔の上部が黒く、マズル部分から下が白いツートーン・キャット。ちょうど顎のところが黒いので、ちょっと次元大介のように見えなくもない。躰を触られても怖がらないくらいには人馴れしているのに、長い尻尾に触られるのだけは嫌いらしく、振り向いて恨めしげに「ニャ〜」と鳴く。シコが...#175


    Pal 2010
    I袋駅前公園に棲むネコたちは場所柄、人や犬(散歩中)、クルマ、自転車、バイクなどの往来が1日中絶えることがないので常に緊張状態にあり、結構ストレスも溜まっているのかもしれない。目の前を横切る(動く)ものに対してはパルのように目を大きく瞠ることも少なくない(もっとも、それが絶好のシャッター・チャンスになっているのだが)。写真のバックに映っているのがコンビニ(セブン-イレブン)で、緑の叢の見える向かっ...#173


    Pink 2010
    ピンクちゃんに出逢ったのは3年も前のこと。それ以来、1度も彼女の姿を見かけないのは屋内で飼われているネコだから?‥‥写真を撮った日は、たまたま何かのアクシデントで外に出て来てしまったのではないか。ちょっと硬めの毛並みも綺麗だったし、ピンク色の首輪も美しく輝いていた。出逢った時の彼女は道端の雑草を無心に食べていた。植物の葉っぱが食べたくて外へ跳び出した可能性もある。補修中なのか、民家の前のタイルの...#170


    Merge 2010
    カメラを向けると大抵のネコは目線を反らしてソッポを向いてしまう。撮影者を真正面から見てくれるのは最初の数秒から数十秒だけで、対象人物が敵か味方か、要注意危険人物か人畜無害なのかを見切ると、まるで何事もなかったように無視する。それでも例外的にカメラを興味深そうに見つめている好奇心旺盛なネコにはシャッター・チャンスがある。大きく目を瞠っているネコ写真を撮るコツは被写体がカメラではなく何か別のもの(人...#167


    Coo 2010
    メロン色の目が涼しげなクーちゃんに顔を憶えられたみたいで、ネコ・カメラマンに気づくと近寄って来る。スリスリ攻撃で、アッという間にジーンズの膝下が毛だらけになってしまった。さらに爪を立てて攀じ昇り、10cmくらいの至近距離までネコの顔が迫る。一体何が望みなのかしら?‥‥腹這いになって注意深く前方を見渡す姿はネコ・キーパーを想わせなくもない。11匹のネコ立ちにサッカーを教え込むことが出来ればの話ですが‥‥...#166


    Frio 2010
    スーパーHの細い車道を挟んだ左隣に花壇とベンチに囲まれた三角形の小公園がある。奥は茂みになっていて、民家と駐車場の挟間は金網で仕切られている。小さなスペースに3〜4匹のネコたちが棲息しているけれど、人馴れしているのはフリオちゃんだけで、他のネコは近づくと茂みの奥へ身を隠してしまう。石のベンチに坐って手招きすると、フリオがベンチに跳び乗り、腹這いになって寛ぐ。キャットフードを持って来るネコ・オバさんが...#165


    Ichigo 2010
    「ネコ・ログ」の常連三毛ネコ、イチゴちゃんは目が合うと近寄ってスリスリして来るけれど、カメラを向けると目を反らす。一緒に戯れている間に陽も暮れて来た(彼女は遊んでいるつもりでも、撮影者は悪戦苦闘しているのだ)‥‥。今までソッポを向いていたイチゴちゃんがカメラ目線で、どうして撮らないの、折角ポーズを取ってあげているのに‥‥とでも言いたげな睛で見つめる。既に暗くなって、手ブレ・マークがモニタ画面に表示...#164


    Munch 2010
    ムンクは左耳が折れているアクちゃんに劣らず気品に溢れた美しい灰色ネコで、美女の後を無意識にフラフラと尾いて行く若者のように、ネコ・ウォッチャーをネコ・ストーカー化させてしまう。繊細な神経の持ち主なので、驚かせて逃げられないように細心の注意を払い、時間をかけてムンクと親しくなる。あくまでも低姿勢、おネコさまに対する謙虚な気持ちが大切です。ネコには自分の顔が可愛いとか、容姿が美しいとかいう余計な自己...#162


    Lemon 2010
    人懐っこいレモンちゃんは近寄ってスリスリして来るので、反って写真には撮り難い(最初のレモンの写真は美人の姉さんがブレスレットを嵌めた右手で撫でているところだった)。一時たりとも静止しない落ち着きのない性格も「ネコ写真」の難易度を上げている。躰を撫でても怒らないけれど、調子に乗って抱き上げとすると爪を立てて激しく抵抗する。お腹を触られるのが嫌いみたい。暫く一緒に遊んで打ち解けた後で、やっと撮れた1枚...#159


    Shio 2010
    大きい体躯、長毛種、青い目‥‥ある日の夕暮れ時に突然どこからともなく現われたネコさま。近所の住人も初めて見るネコだと不思議がる。自転車に乗ってS神井川緑地へ来ていた事情通の男の人が話す。少し先の民家(今は取り壊し中で、青いビニール・シートに覆われている)に住んでいた独り暮らしのバアさんが飼っていたネコではないか、その女飼主が亡くなって引き取り手のなくなった迷いネコではないか‥‥と。同じ種類の子ネ...#158


    Milk 2010
    2009年の春、S神井川緑地で撮った子猫時代のミルクちゃんです。舞い散る桜の淡いピンクとネコの白と黒の対比が風雅ですね。牛柄ブチ模様の3兄弟姉妹の中では一番やんちゃなネコで、良く似た柄のトキ(ミルクはピンク色の鼻の先に黒い部分がある)と好対照‥‥トキは繁みの中に隠れていて、なかなか出て来ません。ミルクは長兄姉(?)のアドと戯れ合って遊んでいます。昨年の花見の時季は子供たちもネコと一緒に遊んだり、写...#157


    Kai 2010
    チューブ状のスベリ台やカラフルな迷路などのある公園の傍ら、遊歩道の横の繁みで1匹のネコがミャーミャー鳴いていた。首輪はないけれど、毛艶や体型から判断してノラ猫には見えない。通行人たちに必死に何かを訴えようとしている。迷いネコだろうか? ‥‥通りがかったオジさんも初めて目にするネコだという。徐にウエスト・ポーチから白い小さなケースを出す。中に入っている煮干しを与えると、喜んでカリカリと食べる。お腹が空いて...#156

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    もう、猫なしでは生きていけない。

    もう、猫なしでは生きていけない。

    • 著者:安部 譲二
    • 出版社:青志社
    • 発売日:2013/06/14
    • メディア:単行本(ソフトカバー)
    • 目次:想い出のゴロニャン / 世界は猫で回っている / ゴロニャンに教わる / 猫よ、なんと蠱惑的な奴 / ウニが教えてくれたこと / あとがき

    ミナス・ミュージック

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    90年代にブラジル北東部レシフェから登場したChico Science & Nacao ZumbiやMundo Livre s/aが脚光を浴びだったように、2010年代に入ってから南東部ミナスジェライス(金やダイアモンドが発掘されたことから「宝石の鉱山」という州名になった)の音楽が注目を集めている。「マンギビート」のような分かりやすいキャッチフレーズはないものの、従来のロックともジャズとも趣きを異にする煌びやかなミナス・ミュージックにはプログレやフュージョンに通じるものさえ感じられる。その音楽の中心となるのはAntonio Loureiro、Rafael Martini、Alexandre Andres、Kristoff Silvaなど、ミナス新世代のミュージシャンたち。彼らのバンドやソロ・アルバム(輸入盤)は入手困難だったが、漸く国内流通(CDショップや通販サイト)することで、より多くの洋楽〜ワールド・ミュージック・リスナーの耳を魅了することになるだろう。酷暑の夏に聴くミナス音楽はも悪くない?

  • ◎ Antonio Loureiro(Independent 2010)Antonio Loureiro
  • ミナス出身のSSW、Antonio Loureiroはドラムス、ピアノ、ギター(violao)、マリンバ、ローズ・ピアノ、ヴィブラフォン、グロッケンシュピールなどを操るマルチ奏者。Caetano Velosoを想わせる中性的なヴォイスとエクスペリメンタルなサウンド‥‥冒頭の変則5拍子曲〈Voo A Dois〉を一聴するだけでも、並大抵の才能でないことが分かる。トロンボーン、クラリネット、フルート、チェロ、アコーディオン、ハープなどの奏でる優雅なチェンバー・ポップはSufjan Stevensと共振する同時代性もある。Sergio Perere、Fabiana Cozza、Leonora Weissmann、Krisoff Silva、Juliana Perdigaoがヴォーカル、Rafael Martiniもアコーディオンやピアノで参加するなど、ゲスト陣も多彩で華やか。最後のインスト曲〈Qui Nem Quiabo〉ではAndre Mehmari(ピアノ)が客演している。6頁のブックレット(歌詞カード)に5枚(10面)のフォト・カード(Andre Baumecker撮影)も付いて、暗鬱なアルバム・カヴァを自由に着せ替えられる趣向も洒落ている。

  • ◎ Misturada Orquestra(Misturada Orquestra 2011)Misturada Orquestra
  • Misturada Orquestraは総勢18名からなる大所帯音楽集団。フルート、オーボエ、クラリネット、トランペット、サクソフォン、トロンボーンなどの金管楽器にピアノ、ギター、アコーディオン、ベース、コントラバス、ヴィブラフォン、ドラムス、パーカッションを加えたインスト・サウンドで、Leonora Weissmannなどの女性スキャットやコーラスが時折混じる。Charlie Parkerのカヴァ〈Donna Lee〉とRafael Martiniの〈Sono〉(ソロ・アルバムにも収録されている)は10分近い大作だが、不思議とジャズ臭さは感じられない。ミナスっぽいとしか言いようのない鷹揚さや浮游感に包まれる。楽団の中心となるのはRafael Martini(ピアノ、アコーディオン)やJoao Antunes(ギター、ヴィオラ)で、自作曲の〈Dresente〉を提供・編曲したAntonio Loureiro(ドラムス)はゲスト扱い。オーケストラの名称はAirto Moreiraの7拍子曲〈Misturada〉に由来するらしい。ラストのヴォーカル曲〈Ontogenia〉まで、74分以上に渡るミナス・ミュージックに心ゆくまで浸れます。

  • ◎ Motivo(Nucleo Contempolaneo 2012)Rafael Martini
  • Rafael Martini(ピアノ)のソロ・アルバムにはAlexandre Andres(フルート)、Antonio Loureiro(ドラムス)、Kristoff Silva(コーラス)などが参加している。本人自らも全8曲中3曲で歌っているが、インスト・フォルクローレ〜ジャズ・インプロ風に展開して行く楽曲が多い。ピアノ、フルート、クラリネット、サクソフォン、コントラバス、ドラムス、チェロ、パーカッション、パンデイロ、バンドリンなど‥‥。Misturada Orquestraと共通する楽器編成ながら、その印象は異なる(2つのアルバムに収録されている〈Sono〉を聴き較べるのも面白いかもしれない)。Leonora Weissmannが超絶スキャットを披露する〈Baiao Do Caminhar〉、Mariano Cantero(Aca Seca Trio)がドラムスとパーカッションでゲスト参加した〈Consuelo〉。Rafael Martiniの自作・共作曲で占められているが、ラストの〈Tempo Do Mar〉はAntonio Carlos Jobinのカヴァである。

  • ◎ Macaxeira Fields(Mares 2012)Alexandre Andres
  • ブラジル・ミナスの若きSSW、Alexandre Andresによる2ndアルバム。音楽監督を務めるAndre Mehmari(ピアノ、ヴォーカル)のスタジオに、Rafael Martini(アコーディオン、ピアノ)やAntonio Loureiro(ドラムス)などが集結。Alexandre Andresのヴォーカル、フルート、ピッコロ、ギター(violao)にヴィブラフォン、クラリネット、トランペット、トロンボーン、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ‥‥。Tatiana Parra、Monica Salmaso、Leonora Weissmann、Juan Quintero(Aca Seca Trio)もゲスト・ヴォーカルで参加する。中性的なヴォイス、魅惑的なメロディ‥‥Alexandre Andresはミュージシャンではなく、SSWと呼ぶに相応しい(全作詞はBernardo Maranhao)。ロマンティックでメランコリック、優雅で繊細なチェンバー・ポップを創り上げている。祖母マリア・エレナ・アンドレス(Maria Helena Andres)の描いたインナー・イラストも瑞々しい。新装ジャケの「国内盤」は祖母のイラスト・カヴァにしても良かったのにね。

  • ◎ Deriva(Kristoff Silva 2013)Kristoff Silva
  • 《Em Pe No Porto》(Jardim Producoes 2009)から深化したアルバム。Kristoff Silvaのヴォーカル、ギター(violao)にRafael Martini(ピアノ、ローズ)、Antonio Loureiro (ドラムス、ヴィブラフォン、パーカッション)、Alexandre Andres(フルート)も参加し、トランペット、サックス、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴットの入ったチェンバー・ポップもあるが、他のミナス勢とは印象が異なる。変則ビートがドラムンベースへ雪崩れ込む〈Palavrorio〉、LenineやPrinceを想わせるファンクの〈Automotivo〉、エレクトロニカ風の〈Avida〉‥‥。共同プロデューサのPedro DuraesやKristoff Silvaがプログラミングやサンプラーを使用しているだけでなく、未来志向というかプログレッシヴなサウンドを目指すという気概が感じられるから。それだけにラストのアルバム・タイトル曲〈Deriva〉は胸に沁みる。ロシアの海中写真家アレクサンダー・セミョーノフ(Alexander Semenov)の作品をモチーフにしたアルバム・カヴァに、前作の「フェイス・コラージュ」の痕跡(唇やイラストの一部)が残っている。

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  • ◎ Narrativas De Catarina (Beluga 2010)Carla Pronsato, Ive Luna, Rodrigo Paiva
  • サンタカタリーナ出身のCarla Pronsato(ピアノ)、Ive Luna(ヴォーカル、フルート)、Rodrigo Paiva(ドラムス)の連名トリオによるデビュー・アルバム。クレイ人形や海星、緑色や青い布で島や海をイメージしたアルバム・カヴァやスリーヴから素朴なフォルクローレのような音楽を想像していると不意打ちを食らう。自由自在にシンコペートする力強いピアノ、心の深部までストレートに届くヴォーカル、ダイナミックに躍動するドラムス‥‥音数は少ないけれど、今まで聴いたことのない未知の音楽に魅了される。平面的ではないプログレッシヴなグルーヴに圧倒される。冒頭の〈Santos Reis〉や〈Seis De Janeiro〉のアカペラ・コーラスとの対比も面白いし、〈O Navegador〉の女性コーラスやラストの〈Festa Pra Cascaes〉で聴ける子供たちの愉しげな歌声にも心弾む。

  • ◎ Aos De Casa(Tratore 2010)Ana Paula Da Silva
  • Ana Paula Da Silvaの出身地、ブラジル南部サンタカタリーナの民衆文化をモチーフにした4thアルバム。彼女のヴォーカルにアコーディオン、ピアノ、ギター、コントラバス、ドラムス、パーカッション、サックス、ベース、フルート‥‥という編成で、弦楽四重奏(ヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロ)の加わった曲も2曲もある。ジャズっぽい落ち着いた楽曲が大半を占めるが、アレンジは秀逸でヴォーカルも情感に溢れる。スキップするような3拍子曲〈Anagua De Iaraiemanja〉、サビでテンポアップする6拍子の〈Nuvem〉、唯一の自作曲〈Benquerer〉などがアルバムに変化をつけている。ミナスやサンパウロよりも南に位置するサンタカタリーナの大らかで風通しの良い風景が想い浮かぶ。三面デジパック仕様のCDには2冊のブックレット(歌詞カード&民芸品紹介?)が付いている。

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    • 「ラテンの意味が書き換えられる!」(Music Magazine 2012. 6)を参照しました

    • 自腹で全アルバム(CD)を購入。iTunesやAmazon(MP3)、フリーDLじゃないよ
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    Antonio Loureiro

    Antonio Loureiro

    • Artist: Antonio Loureiro
    • Label: Ais
    • Date: 2006/07/31
    • Media: Audio CD
    • Song: Voo A Dois / Camera Escura / Coreira / A Partir / Roda Gigante / Nova / A Cor Do Progresso / Id / Um Inicio Meio Fim / Sentimento / Qui Nem Quiabo


    Misturada Orquestra

    Misturada Orquestra

    • Artist: Misturada Orquestra
    • Label: Ais
    • Date: 2012/12/04
    • Media: Audio CD
    • Song: Jose No Jabour / Casa Nova / Conversando O Som / Donna Lee / Sono / Misturada / Filho / Presente / Voo Dos Urubus / Ontogenia


    Motivo

    Motivo

    • Artist: Rafael Martini
    • Label: Nucleo Contempolaneo
    • Date: 2012/12/04
    • Media: Audio CD
    • Song: Canção Da Voz / Baião Do Caminhar / Corre, Loló, Que Tá Na Hora! / Consuelo / Sono / Ocaso / Convite / Tempo Do Mar


    Macaxeira Fields

    Macaxeira Fields

    • Artist: Alexandre Andres
    • Label: Sonhos & Sons Brasil
    • Date: 2012/12/04
    • Media: Audio CD
    • Song: Um Som Azul / Aguaceiro / Macaxeira Fields / Menino / Ala Pétalo / A Meu Velho / O Canto da Formiga / Entre Águas / Nina / Em Brancas Nuvens / A Voz de Todos Nós / Sem Fim


    Deriva

    Deriva

    • Artist: Kristoff Silva
    • Label: Kristoff Silva
    • Date: 2013/04/02
    • Media: Audio CD
    • Song: Paravrorio / Automotivo / Durantes / Principio Da Incerteza / Avida / Acrylic On Canvas / Rabiscos / O Adeus / Parceria / A Voz O Verso / Devires


    Narrativas De Catarina

    Narrativas De Catarina

    • Artist: Carla Pronsato, Ive Luna, Rodrigo Paiva
    • Label: Tratore Music Brasil
    • Date: 2010/06/30
    • Media: MP3
    • Song: Santos Reis / O Navegador / Disse-Disse / Martinho / Na Beira Mar / Milonga / Clara Canção / Seis De Janeiro Narrativas De Catarina / Pollyana / Canto De Anita Para Garibaldi Antes Da Batalha / Nossa Barulheira / A Fábula E O Mar / O Nascimento


    Aos De Casa

    Aos De Casa

    • Artist: Ana Paula Da Silva
    • Label: Tratore / Fonomatic
    • Date: 2010/07/16
    • Media: MP3
    • Song: Infancia / Marau / Dama / Clara / Anagua De Iaraiemanja / O Luar / Aos De Casa / Eu E Voce / Nuvem / Benquerer / Reza / Olha la Ingles Do Mar E Eu Vou Mas Nao Vou Catumbi

    サイバー・キャット 16

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    スニーズ・コメンツ #31

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    ♭ 夏の花 たちあおい ── 立葵の下で点滴?
    トミー。さん、こんばんは。「立葵の花のはるか下で / わたしは眼球に点滴される」という詩を思い出しました。そうか、立葵って背が高いから、点滴のイメージが湧いたのね。「ねこ歩き」(日本橋三越)に行って来ました。三越や伊勢丹のカードを持っていると、無料で見れます。
    by sknys (2013-06-08 21:27:56)

  • シチリアで1カ月ほど暮らしたことがある。パレルモ市内に短期のアパートメントを借りて、そこで小説を書いていました。同じ階にソプラノ歌手も滞在していた。近くに立派な歌劇場があり、そこに出演している人らしい。どうしてソプラノ歌手だとわかったかというと、毎日昼前に、高い声で発声練習をしていたから。/ この歌手は雌のシャム猫を飼っていた。どうやら猫を同伴して各地のオペラハウスをまわっているらしい。朝の「ああああ、あー」という練習が始まると、その猫はいつも「やれやれ」という顔で、尻尾を立ててて部屋から逃げ出してきた。人なつっこい猫で、呼ぶとうちに入ってきた。僕は自分の猫を日本に残してきて淋しかったので、よくそうして彼女と遊んだものだ。
    村上 春樹 「オペラ歌手のシャム猫」


  • ♭ 材木座を散歩
    tumuziさん、こんばんは。シチリアで短期のアパートメントを借りて、小説を書いていた時、同じ階のソプラノ歌手が発声練習をするとペットのシャム猫が逃げ出して、僕の部屋に遊びに来たと、村上春樹がエッセイに書いています。ネコにとって上手い、下手は関係ないんじゃないかしら。クラプトンが弾いても逃げちゃうかも?‥‥最後の写真、印象派の絵画みたいで素敵ですね。
    by sknys (2013-06-29 19:45)

  • 「でも、好奇心は猫をも殺すというからね」と、速水が穏やかに言った。「あんまり危ないことはしない方がいいよ」/ 順は座りなおした。/「ちっとも危なくなかったんです。ホントに。篠田さんはいい人ですよ。あんな人が人殺しなんかするわけないもん。あの人が今度の事件に関係してるわけないです。あの手紙は誰かの陰謀ですよ」/ ぼっちゃま、と、ハナにそっとたしなめられて、順は唇をとがらせた。/「謎の女か」/ 伊原がぽつりとつぶやいて、順を見た。/「どんな女だった?」/ 説明する。あの女性の記憶は鮮やかだったので、細かいところまで話すことができた。/「どう思う?」と、伊原が道雄に訊いた。2人とも、同じように眉間にしわを寄せて。(トィードルダムとトィードルディみたいだね)と、順は思った。
    宮部 みゆき 『刑事の子』


  • ♭ 6月の読書メーター
    miyucoさん、こんばんは。3日続きの猛暑で倒れそうです。『ソロモンの偽証』(新潮社 2012)の予約者が300人以上も待っているので、『刑事の子』(光文社 2011 改題『東京下町殺人暮色』)や『パーフェクト・ブルー』(創元推理文庫)を借りて来た。『ソロモン1』とは対照的に『ボツコニアン2』の予約者が0なのは一体どういうことなのか?‥‥宮部ファンであっても、SFやファンタジーは読まないという保守的な読者層がいるのかな。
    by sknys (2013-07-10 02:12)

    ♭ また・たび また・たび ── 電気ウナギネコ?
    トミー。さん、こんばんは。首輪のトランクに入っているのは「マタタビ」かしら?‥‥曲は〈オクラホマ・ミキサー〉の替え歌?‥‥アゲハも雉子も良く撮れていますね。実写ではありませんが、長谷川さん家の「電気ウナギイヌ」も気に入っていました。ウナギネコでも良かったような。
    by sknys (2013-07-17 22:26:09)

    ♭ 恥ずかしい大人の代表
    モバサムさん、こんばんは。土曜日(7/20)のハチ公前は凄い混雑だった。渋谷駅で乗下車する人には少し迷惑だったかもしれません。「山手レコーズ(2013)」で携帯ノイズマシン「Gristleism」を買った人がいたらしい。100円コーナーに気を取られていて、全然気づかなかったなぁ(「Throbbing Gristle x Buddha Machine = GRISTLEISM」の紹介ヴィデオがあります)。
    by sknys (2013-07-21 18:15)

    ♭ Yellow Submarine
    ノエルかえるさん、こんばんは。「Yellow Submarine」 の隠された真実?‥‥すべてのブルーミーニーズが「愛」によって改心したわけではなかった。黄色い潜水艦を奪って海の底へ逃げ出した残党たちがいたのだ。彼らは海底人となってファブ・フォーに復讐を誓う。耳を澄ますとブルーミーニーズの恨み節が聴こえてくる?
    by sknys (2013-07-24 00:56)

  • 1968年5月、倦怠と退屈と日常はわれわれが打破しなければならないものだった。われわれはそのためにバリケートを築き、敷石をはがして、機動隊に投げつけていたのだ。/ 僕は目がさめて、きみをつつくけれど、きみは目覚めはしない、いつもと同じように。きみが寒くならないようにと、毛布をかけ直してやる、いつもと同じように。僕の手はもうくせになっているようにきみの髪をなでてやる、いつもと同じように。でもきみは僕に背中を向けてしまう、いつもと同じように‥。/ 冷めてしまった男女がいつもと同じように日常を続けなければならない。作り笑いをして、演技をしながら。日常は退屈で悲しい。68年的空気の中でこれはなんとも後ろ向きの歌であった。
    向風 三郎 「マイ・ウェイは他人の道だった」


  • ♭ 最後のマイ・ウェイ ── クロクロことクロード・フランソワの伝記映画
    ぶーけさん、こんばんは。向風三郎さんの『ポップ・フランセーズ 名曲101 徹底ガイド』(音楽出版社 2007)によると、恋人フランス・ギャルと破局したことで「後ろ向きの歌」になったという。「コム・ダビチュード」の歌詞は「マイ・ウェイ」とは真逆だったのね。都内(渋谷)は混雑しているのかな?‥‥「ル・シネマ」は定員入替制なので満席になると次の回になっちゃう。
    by sknys (2013-07-31 23:11)

    ♭ おととい山羊ミルクを買ってきた
    tumuziさん、こんばんは。「人間の平均寿命を80年とすると、猫は4倍のスピードで進むので、だから大事にすれば20年生きるのです」と安部譲二は書いているけれど、ノラや外ネコの寿命は短いはず。町田康も屋内で飼った方が長生きするという意見で、ネコに関してはパンク作家らしからぬ保守派です。放し飼いで18年生きた抜いた金井美恵子のトラーはワイルドだった。フキオくんに合掌。
    by sknys (2013-07-31 23:30)

    ♭ 長い休日を経て
    びっけさん、お久しぶりです。「筒井康隆全集」が出て来たって?‥‥『脱走と追跡のサンバ』(1971)みたいなメタフィクションだという楽屋オチ?‥‥朝刊(朝日新聞)に連載されていた小説『聖痕』(新潮社 2013)の中でも東日本大震災が起こったけれど、「あまちゃん」も被災するのかしら。ブックオフの105円棚で「筒井康隆全集」(全24巻+1巻)を大人買いした人の記事「筒井康隆全集と思い出」を発見!‥‥びっけさんの本も混じっていたりして。
    by sknys (2013-08-24 23:54)

    ♭ あすなひろし「山ゆかば!」
    しーちゃん、こんばんは。「COM」を購読していたのですが、この別冊コミックは記憶にないなぁ。別冊や増刊号ならばCOM誌上に広告が載っていたはずですが。「山ゆかば!」が週刊少年ジャンプに掲載されたのも驚きです。次男ひろしには作者あすなひろしのイメージも投影されているのかな?‥‥本宮ひろ志や谷岡ヤスジのギャグは今の子供たちには註を添えないと分からないでしょうね。「スウと、いう名の童話」(COM 1970.11)もヴェトナム戦争をテーマにした傑作だと思います。「COM」で戦争・戦後をテーマにした短篇というと、樹村みのり「解放の最初の日」(1970.10)や上村一夫「初恋漬」(1971.7)が思い浮かびます。
    by sknys (2013-08-29 22:40)

                        *

    ブログ記事に付けた「外コメント」を纏めてみたら結構面白いかも?‥‥というアイディアから生まれた再録シリーズの第31集です。コメントは原則としてオリジナルのまま時系列順に転載‥‥事実誤認(誤記)や誤字・脱字、改行の無効化、句読点や記号・顔文字の有無などを精査。内容の分かり難いコメントには補足説明(註)を加え、コメントした元記事にリンクしました。過去3ヵ月間(2013/06/01〜/08/31)に書いたものの中から、第三者がコメントだけ読んでも面白いものを中心にセレクトしています。参院選、ゲリラ豪雨、猛暑、汚染水漏れ、「はだしのゲン」、藤圭子‥‥と様々なニュースが日本列島を駆け巡ったけれど、最大の驚きは従姪(従妹の子)が某アイドルユニットのメンバーとしてデビューしたこと。まさか親族からアイドルが出るなんて夢にも思わなかった(話題沸騰の「あまちゃん」とオーヴァラップするところもあったりする)。従弟と一緒にライヴにも行って来たし、サイン入りのCDも貰った。地下アイドルからブレイクする日は来るのかしら?

                        *






    サラダ好きのライオン 村上ラヂオ 3

    サラダ好きのライオン 村上ラヂオ 3

    • 著者:村上 春樹
    • 出版社:マガジンハウス
    • 発売日:2012/07/09
    • メディア:ハードカバー
    • 目次:まえがき 村上春樹 / 忘れられない、覚えられない / ブルテリアしか見たことない / 愛は消えても / 真の男になるためには / オペラ歌手のシャム猫 / ギロチンを待ちながら / オムレツを作ろう / 裁判所に行こう / スーパーサラダが食べたい / 献欲手帳 / 死ぬほど退屈な会話 / チップはむずかしい / 知りません、わかりません / シェーンブルン動物園の...


    刑事の子

    刑事の子

    • 著者:宮部 みゆき
    • 出版社:光文社
    • 発売日:2011/09/17
    • メディア:ハードカバー
    • 目次:プロローグ / 新しい街 / 犯行声明 / 殺人愉快犯 / にわか刑事 / マリエンバートで‥‥ / エピローグ


    ポップ・フランセーズ 名曲101 徹底ガイド フランスは愛と自由を歌い続ける

    ポップ・フランセーズ 名曲101 徹底ガイド フランスは愛と自由を歌い続ける

    • 著者:向風 三郎
    • 出版社:音楽出版社
    • 発売日:2007/09/26
    • メディア:ムック
    • 目次:ポップ・フラセーズの20年 1968-1988 / 1968 美は街頭にあり / 1969 69はエロの年 / 1970 ハラ・キリがハラキリした年 / 1971 湖上の上には煙が、空には炎が / 1972 ケルトのハープが世界に鳴った / 1973 リベラシオンが創刊された / 1974 女性たちがポルノ映画に行列を作った / 1975 失業者数が100万人を突破 / 1976 夏時間が導入された / ... / 1977 ポンピドゥー・センターが開館 / 1978 クロード・フランソワが死んだ / 1979 ビデオがラジオスターを殺した / 1980 コリューシュが立候補を表明 / 1981 ついに死刑が廃止された / ...


    聖痕

    聖痕

    • 著者:筒井 康隆
    • 出版社:新潮社
    • 発売日:2013/05/31
    • メディア:単行本
    • 目次:


    子どもたちの戦争

    子どもたちの戦争

    • 著者:ちば てつや / 巴 里夫 / 永島 慎二 / わち さんぺい / 小沢 さとる / あすな ひろし / 石坂 啓 / 弘兼 憲史
    • 出版社:金の星社
    • 発売日: 2013/04/04
    • メディア:単行本
    • 収録作品:屋根うらの絵本かき / 疎開っ子数え唄 / 白い雲は呼んでいる / 荒鷲ゴンちゃん / 少年マーチ / 山ゆかば!/ 八月の友人 / ストライク

    ランバダ半裸

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  • 「伝説の長靴の戦士は、〈イテエ〉という名前なのか。変わっているな」/「うるせえ! 今のは名乗ったんじゃねえ!」/「ならば、私も名乗らせてもらおうか」/ 浮遊アドバルーンは、そのまん丸い巨体をぶるりと震わせた。また輪郭がさざ波立ち、無数の冷凍メスが現れる。今度はそれを身体のまわりに生やしたまま、冷気に眩しくきらめかせる。/ アドバルーンのど真ん中に巨大な1つ目が現れた。二重瞼で、やたら睫毛が長い。そのせいだろうか、どことなく媚びを含んだ笑みを浮かべているような目つき。/ 大目玉アドバルーンは呼ばわった。/「世界のすべてを凍りつかせ、久遠の眠りへと誘う絶対零度の王。崇めよ、小童! 我が名は〈氷の微笑〉じゃ!」/ 当然、ノーパンです。/ ピノは仰天した。「マジで?」/「あんたもいちいち作者のゴタクを真に受けてンじゃないわよ!」/ ピピの言う通りです。/「だいたい、こいつがどこにパンツはけるっていうのよ!」
    宮部 みゆき 『ここはボツコニアン 2』


  • ⃞ 死の迷路の橋本愛、怖いわ濃い跡、文字は呪い女の字
    目覚めると漆黒の闇に支配されていた。これが暗黒世界なのかと疑う。倒れていた周囲は瓦礫が散乱しているらしく、手で弄ると固い石片やザラザラしたコンクリートの感触が伝わって来る。暗闇に目が慣れると同時に、左肘や右足首に火傷したような激痛が走った。躰の痛みが失われた記憶を呼び覚ます。私は地下鉄に乗っていたのだ。都会生まれの友人でさえ、時々迷ってしまうという東京メトロに‥‥。走行中に激しい揺れが起きて緊急停車した時、あるいは誰かが非常用のボタンを押して開いたドアから飛び降りた時に転んで怪我をしたのだろうか。肩から下げていた愛用のバッグ(INGNI)も見当たらないし、パンプスも左足しか履いていない。今や頼りは首から下げていたスマホ(iPhone)だけだった。電源を入れると手許が明るくなる。こんな非常時には誰と連絡を取るべきなのか、それとも真っ先にメールをチェックすべきなのかパニクった頭で思い悩んでいると、視界の端に奇妙な模様が入って来た。スマホを傾けると左腕にミミズ腫れのような赤い疵痕が浮かび上がる。それは怖しい呪いの文字だった。

    ⃞ プール狂いノーパン・メンバーのいるグループ
    あたしの夢は大きなプール付きの家に住むこと。豪邸よりも何よりも、庭に緑の芝生と青いプールのあることが第一条件なの。塩素臭のある冷たい水が大好き!‥‥真夏のプールに比べたら屋内の温水プールなんて、年寄りのための養護施設じゃないかとさえ思うわ。晴れた夏の日は1日中プールの中で遊んでいたいな。海水浴の方が景色もきれいだし解放感もあるじゃんって女友達は言うけれど、その中にナンパ目的も入っているのはバレバレだし、どこかから流れ出した汚染水が混じっていないとは言い切れない出来ないので、あたしは海よりも断然プール派なわけなのよ。仰向けに浮かんで、青い空を白い雲が形を変えて行くをの眺めるのも好き。ビーチ・チェアに寝転んで冷たいレモネードを飲むのも好き。もちろん木陰で読書したりもするわよ。マネージャーからは余り肌を焼かないようにって注意されているからね。そう、某アイドル・グループのメンバーでもあるのだから‥‥あたしのニックネームは「氷の微笑」。渾名の由来はヒ・ミ・ツだよ。

    ⃞ 煮出し出汁、溶けやすいアイス、火傷した舌に
    マコトは細くて長い麺類が大好き。うどん、蕎麦、ラーメン、焼きそば、春雨、ビーフン、スパゲッティ‥‥紐状の食物ならば和洋中は問わない。もちろん美味い麺を求めて食べ歩きもするし、自宅でも麺類が主食となっている。麺も手打ちすると自慢したいところだが、ド素人が見よう見まねで作れるほど「麺道」は甘くない。何よりも仕込みに体力がいるし、食べきれないほど大量に出来ちゃう。そこで、自家製麺作りは諦めて、出汁に拘ることにした。うどんにも蕎麦にも合う特製の和風出汁作り。今夜もマコトは昆布や鰹節を煮て出汁を作っていた。味見をしようとして沸騰した鍋から直接お玉で掬って舐めたのが大失敗だった。舌に火傷!‥‥こんな時は冷凍庫の中の氷を口に含むことにしているのだが、運悪く製氷室の中は空っぽだった。仕方なく姉が買い置きしているアイスクリームを食べてしまった。でもハーゲンダッツって、固まり難いというか、溶けやすいアイスなのよね。姉にバレないように早く補充して置かなくっちゃ‥‥それでなくても私たち姉妹は喧嘩の絶えない犬猿の仲なのだから。

    ⃞ 禁区、鴬、湖水、空軍機
    原生林が鬱蒼と覆い繁る一帯は国の自然保護地区に指定されている。森に立ち入って樹々を伐採することも禁じられているし、動物たちの狩猟も一切許可されていない。ウグイスが特徴的な声で鳴きながら湖上を飛ぶ。60年代後半にヒットした〈ブルー・シャトウ〉や〈虹色の湖〉が抽象的な歌詞で、どこにもない場所を歌っていたように、物語の中の森やファンタジーの中の湖を彷彿させる。もちろん猛禽類の鷹がいないので、小鳥たちが遊んでいるわけではない。人間たちの入り込めない「禁区」は弱肉強食の世界でもある(資本主義社会も弱肉強食なのかもしれないけれど)。この森林地帯に1機の戦闘機が飛来した。ジェット機の爆音が森の静寂を引き裂き、湖面に漣を立てる。一体何の目的で人里離れた山奥に飛んで来たのだろうか。森に棲む動物たちに空飛ぶ物体の正体は永遠に分からない。ネコが目の前を通り過ぎるクルマが何者であるのか分からないように。

    ⃞ 旅立ちオスプレイ飛ぶ。トイレ伏す、落ちた日だ
    プロペラ機とヘリコプターのハイブリット輸送機オスプレイ(Osprey)は試作段階から重大な事故を起こすことで知られ、「ウィドウ・メーカー」(未亡人製造機)という不名誉な渾名が付けられている。ある目的に特化・進化したものや生物は美しいフォルムに包まれている。音速を超えて空中を飛ぶジェット機や高速で走行する新幹線は流線型をしているし、鳥や蝶も美しい形状や綺麗な色彩で魅了する。銃やナイフという携帯用の武器にソリッドな美を見出すマニアも少なくない。贅肉を削ぎ落した身体が美しいように、研ぎ澄まされて洗練されたものは光り輝く。たとえ、それが殺人兵器であったとしても‥‥。しかし、垂直離着陸機オスプレイはお世辞にもカッコ良くは見えない。その不格好で醜悪なフォルムは黒い怪鳥コンコルドを想わせなくもない。いつ墜落しても驚かない。トイレの窓から低空飛行するオスプレイの姿を目撃した主婦は落ちた日を思い出し、蹲って震えた。

    ⃞ 暗い月に喫茶移転。新偵察機、2機墜落
    都市再開発計画の要請を受けて、喫茶「ニュー・ムーン」が移転することになった。満月の夜に解散したというTelevisionに倣って、「ニュー・ムーン」は、その名の通り「新月」の夜に閉店して半年後に少し離れた場所に移ってリニューアル・オープンした。この界隈は米軍基地の近くなので、アメリカ兵の常連客も少なくない。店内で流れる音楽も英米のロックやポップスが中心である。60年代後半の開店当時は「ロック喫茶」とも呼ばれて反戦(厭戦?)ロックを大音量で鳴らしていたが、時代も移り変わり、9・11以降はエレクトロニカやドリーム・ポップなど内省的で気味悪くもある音楽が主流となっている。大きなトラブルもなく無事に新開店日を終えようとした夜、米空軍の偵察機2機が空中衝突して墜落するという大事故が起こった。耳を劈く轟音と夜空を切り裂く閃光!‥‥この世の終わり(核ミサイルや巨大隕石が落ちて来た?)かと思ったとマスターがTVニュースのインタヴューに答えていた。この時、店内で流れていた音楽がU2だったというオチは出来すぎかしら?

    ⃞ 火だるま、トラウマ、宿、山裏泊る旅
    ルポ・ライターの達磨怜悧には忘れたくても忘れられない記憶があった。幼い頃、実家が火事で全焼して、両親を同時に失ったのだ。彼女自身も火だるまになって大火傷したことがトラウマとなって今日に足る。意識不明の危篤状態から恢復したのは奇蹟だったと主治医が語るほどの大怪我だった。ある寒村で村人5人が惨殺され、民家が全焼した放火殺人事件の取材で現地に着いた怜悧は山を隔てた隣村の民宿に泊った。布団の上に寝て目を閉じると焼き付いたような赤い炎の残像が浮かぶ。やっぱり私は「火」に引き寄せられてしまうのかと暗い室内で独り自問する。翌朝、まだ焦げ臭いを発している焼け跡の前に立ち、ヴィデオテープを逆回転再生するように炎上する家屋を想像する。全身を炎に包まれた後遺症なのか、彼女には火災現場から過去を幻視したり、これから火事の起こる場所を予知する能力を持つようになったのだ。今まさに達磨怜悧は目の前で炎上する民家を見ていた。これは過去の出来事なのか、それとも未来の光景なのかと思案する。

    ⃞ 死んで生きてゴリラが子、孫から利己的遺伝子
    人類に限らず地球上の生物や動物は遺伝子を運ぶ乗り物にすぎないという学説がある。個体(肉体)は滅びても遺伝子は子や孫へと永遠に受け継がれて行く。もし、そうならば生き物たちの主目的は異性と性交して子孫を残すことにある。しかし、すべての生物が首尾良く遺伝子情報を継承出来るとは限らない。たとえば7年間も地中に潜っていたセミの雄は地上に出てから僅か2週間で交尾しなければならない。1日中騒がしく鳴き続けて雌の気を惹いても、雌に気に入らなければ成就出来ない。多くの昆虫や動物たちは雄ではなく雌が主導権を握っているのだから。人間も子宝に恵まれず不妊治療する夫婦もいるし、結婚してもしなくても一生子供を産まない女性もいる。それどころか幼児を虐待して殺してしまう親たちも存在するのだ。この事態は「利己的遺伝子」(The Selfish Gene)にとっても想定外なのではないか?‥‥遺伝子情報が次世代に継承されなければ「自死」に等しい。それとも子孫を残さない(残せない?)遺伝子は淘汰されるべき運命なのだろうか。

    ⃞ いるいる獅子が、白熊、黒鹿、死屍累々
    天敵のいないライオンは良く眠るらしい。主に狩りをするのは雌たちなので、何もしないで終日横たわっている雄ライオンは暇そうに見える。動物園のライオンたちは狩猟する必要もないから見物客には余計怠惰に映るのかもしれない(ライオン以外の動物たちにとっても事情は同じなのだが)。大地震が起こって、平穏で退屈な日常が破られるまでは動物園も気怠い空気に覆われていた。幸い閉園後のことだったので、来園客たちが地震後の大混乱に巻き込まれることはなかった。檻や柵が壊れて、数多くの動物たちが園内に解き放たれた。ライオンたちも突然の激しい地響きに動揺したのか、アフリカのサバンナで暮らしていた時の野生の記憶が呼び戻されかのように、雌も雄も他の動物たちに容赦なく襲いかかった。白クマや黒シカ‥‥動物たちの死骸で溢れた夜の園内にライオンの咆哮が響き渡る。やっぱりライオンは「百獣の王」なのでしょうか。

    ⃞ 睨むさくらパンダ可愛いわ。花壇、薔薇、叢に
    上野の森に棲むパンダは毎年春に咲く淡いピンク色の桜が羨ましかった。地味なモノクロではなく綺麗な桜色に染まりたいと桜の木にお願いすると、桜吹雪が舞って桜模様のパンダに変身!‥‥華やかな花柄の衣裳を纏った「さくらパンダ」は上野の森の人気者となった。好奇心旺盛の「さくらパンダ」は地元から出て外界を散策したいと思っていた。流石に昼間は目立ってしまうので、夜になってから遠出することにした。しかし、街路灯や信号機、ネオンや看板が立ち並ぶ夜の都会は意外と明るい。街路樹や舗道の植え込み、物陰に隠れて忍び足で移動して行く。どこをどのように徘徊したのか憶えていないけれど、気がつくと甘い芳香が薫る薔薇園に来ていた。「旧古河庭園」に遠足に来た園児たちが叢の陰で目を光らせている動物を発見した。引率の女先生がネコかと思って近寄って見ると、桜模様のパンダだった。無邪気な子供たちと仲良くなった「さくらパンダ」は薔薇の匂いを嗅いで気持ち良さそうに目を細める。「薔薇パンダ」に変身するのも悪くないかも‥‥。

                        *
    • 回文と本文はフィクションです。一部で実名も登場しますが、該当者を故意に誹謗・中傷するものではありません。純粋な「言葉遊び」として愉しんで下さい

    • 〈氷の微笑〉ネタは『ここはボツコニアン 2』(集英社 2012)から拝借しました

    • さくらパンダ回文は「スニンクスなぞなぞ回文 #33」の解答です

     スニンクスなぞなぞ回文 #34

     ◯△▢パン屋ちまあ◎◇☆◇◎「あまちゃん」は▢△◯

     回文作成:sknys

     ヒント:パン屋襲撃!


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    橋本愛 写真集 『あいの降るほし』

    橋本愛 写真集 『あいの降るほし』

    • 写真:熊谷 貫
    • 出版社:ワニブックス
    • 発売日:2012/07/27
    • メディア:単行本

    F A V O R I T E ー C A T S 6

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    Chico 2011
    顎の黒い部分がチャーム・ポイントのシコちゃんが目を瞠っている。何を見つめているのかしら?‥‥ロラン・バルト風に「私を魅惑する、背景の、老人」と書いてみたい誘惑に駆られるが、若い女性やネコ娘ならば兎も角、ボケた背景の老人に興味はない。邪魔な人物や目障りなものを鮮明に写したくないから、背景をボカすのだとも言えるだろう。これほどボケてくれるのならば、肖像権やプライヴァシーを考慮して見知らぬ他人の顔にモ...#224


    Pal 2011
    標準ズーム・レンズの難点は意外にも暗く沈んだ色調で撮れてしまうこと。逆に奥行きや深みがあるとも言えるが、今まで使って来たコンデジのレンズ(F2.8-5.2)よりも暗いからかもしれない。もう少し明るいズーム・レンズがあると良いのに‥‥。Eマウント・レンズの種類の少なさはNEXユーザの多くが不満に思っていることである。その暗さのせいなのか、毛繕い中の姿を撮られたパルの表情も哀しげに映る。彼らが暮らすI袋駅前公園...#223


    Tenko 2011
    ミラーレス一眼で一番最初に撮ったネコ写真。東京都某水道局給水所のネコちゃんである。「関係者以外立入禁止」なのだが、鉄門が開いているのを幸いに、ちょっと不法侵入して撮りました。良く見ると2つの黒い瞳の中に車道の向かい側の建物が写り込んでいる。カメラ本体に付いている標準ズームでは、これ以上近づけないと思う。広い敷地内をテリトリにしているネコたちが車道に面した鉄門付近で待機しているのは毎夕、ネコおばさん...#221


    Penne 2011
    「高感度番長」とか「暗闇の帝王」と呼ばれているミラーレス一眼(NEX-5N)で夜のネコちゃんを撮ってみた。モデルは閉店してしまった某イタリアン・レストランで飼われていたネコの子供なのだろうか。全く無関係・無血縁のノラネコの可能性も否定出来ないが、母ネコと良く似た色合いの子ネコであることは確かである。疲れを知らないサイド・バック選手のように元気良く動き回る子ネコのシャッター・チャンスは少ない。漸く静止し...#220


    Mammy 2011
    右目ブルー、左目イエローという美しいオッドアイの母ネコさま。2011年11月、ネコ撮りカメラをコンデジ(Cyber-shot)からミラーレス一眼(αNEX)に買い替えたので、この写真をアップしたのは旧デジカメで撮った「蔵出しネコ」の意味合いもある。いわゆる掃き溜めの鶴風のゴチャゴチャした廃材置き場がバックになっているが、もしミラーレスで撮ったならば背景がボケるはず。美観を損ねるケバケバしい看板が立ち並ぶ繁華街や人通...#218


    Rena 2011
    寒い冬はネコ小屋の中から出て来ないレナさん。出入口に掛けてある暖簾を上げて挨拶すると、外へ出て来てくれた。一緒に遊んでいると、どこからともなく1匹の白黒ネコが現われた。いかにも意地悪そうな面構えのネコがレナ嬢を苛めるのだ。手で追い払っても屋根の上から抜け目なく狡賢そうに隙を狙っている。なかなか外に出たがらないのは、どうやら寒さのせいだけではないらしい。クラスの悪ガキに虐められる引きこもり女子生...#216


    Soran 2011
    夏の夕暮れ、室外機の上で寛ぐソラン。民家の玄関の前で鳴いて中に招かれたり、アパートの外階段を駆け上って2階の奥の部屋へ消えたり‥‥近隣の家々で可愛がられている人懐っこい黒ネコ。いつものように草を食べたり水を飲んだり爪を研いだり、気ままに動き回っていたが、散策に疲れたのか、ちょうど良い場所で休んでくれた。数多くのネコ写真を撮っていても、このソランのような柔和な表情はしてくれない。人に気を許した親愛...#211


    Mai 2011
    写真を撮ろうとして近づくと逃げ出しちゃうのに、神社の前の石段に坐っていると向こうから近寄って来て徐に膝の上に乗る不思議ネコ。一体どういうことなのかと思ったけれど、「aoimania」という猫ブログを見て腑に落ちたことがある。亡くなった保護ネコの詳細プロフィールの中に「しかし立っている人間はまだまだ怖い。近寄ると未だにさささささっと逃げてゆく」という記述があったからだ。内気なマイちゃんも直立している人間の...#210


    Suzu 2011
    子猫時代に1度だけ撮ったことのあるスズちゃんは白ソックス(右後脚だけは白ハイソックス?)を履いた縞ネコ。小さな躰に反して気は滅法強いらしく、隣家の三毛猫を威嚇しては追い回していた。内気なイチゴちゃんがアパートの外階段の上まで逃げて行って、なかなか下に降りて来ないこともあった。いつもならば素速い動作で機敏に動き回っているのに、今日のスズは少々大人しい。女飼主曰く、好物の高級キャットフードも全然食べ...#209


    Kuri 2011
    通い慣れたコースから外れて遠回りしてみた。S公園を通り抜けて奥の出入り口から舗道へ出る。数m低いところにある別の公園へ続く小道。雑草が生え傍らにバイクが駐車している空地に大きなネコが寝そべっていた。グレーの顔に水色の目がエレガントに映える。顔は灰色なのに躰は白っぽい。近寄って写真を撮っても全く動じる様子のない気品溢れるネコ。頑丈そうな首輪から大切に飼われていることが想像される。ポーチの前で撮っている...#208


    Es 2011
    民家の塀の上に美形ネコがいた。写真を撮ろうとしていると、ネコ好きの女主人が家から出て来て、隣りの空地に1匹だけ捨てられていたネコだと話す。捨てネコは成長して見目麗しいベッピン娘になった。周囲の牡ネコが放って置かないよのよと連れのネコを指差す。面白い顔をした三毛ネコを飼っている家があると言って、近くの民家の門を開けると釣られたようにエスたちも敷地内へ入って行く。残念ながら三毛ネコの顔は見れなかったが...#207


    Nico 2011
    マイやプチたちが棲む水天宮神社周辺から少し離れた場所、JR駅の方に近いP' PARCO寄りの公園内にも数匹のネコがいる。恐らくテリトリーが決まっていて賢く住み分けているのだろうが、両ネコの間に親しい交流があるかどうかは良く分からない(境界線を越えて侵入して来たネコと縄張りを犯されたネコの喧嘩は凄まじい)。灰色がかった茶トラ(胸部と足先は白い)のニコちゃんは緑色の目が魅惑的で人懐っこい。このネコもマイと同じ...#204


    Petit 2011
    まだ幼さの残る白黒ツートーン・カラーのプチちゃんは良く似た色柄のシコとは兄弟姉妹関係にあるようだ。下顎の黒い部分が「アゴ髭」のように見えるシコは短い尻尾に触れられるとニャンと鳴いて拒否反応を示す(機嫌が悪い時はネコパンチを繰り出すこともある)。ところがプチは対照的に大人しくて淑やか。マイちゃんと同じ場所、ほぼ同じ日時に撮った写真だが、同じ境遇のネコでも性格の違いは鮮明に表われる。大胆不敵な面構...#203


    Mai 2011
    I袋駅前公園のマイちゃんは内気な縞ネコ。水天宮神社前の置き石や草叢の中が好き。石段に腰かけて一服している人の膝の上に乗る茶目っ気もある。躰を掴んで無理に降ろそうとすると、ニャン(否)と鳴き、衣服に爪を立てて必死に抵抗する。階段脇の石の上で寛いでいるところを撮った1枚。目線もバッチリ決まっている(カメラのレンズを真っ直ぐ見据えている)。1/30秒のスロー・シャッターだが、カメラを固定して被写体が静止...#202


    Emi 2011
    某マンションの隣にある敷地、鉄製の門で車道と隔てられた空間に4〜5匹のネコたちがいる。鉄柵の内側は安全地帯と心得ているらしく、寝そべったり毛づくろいしたりしていて容易に出て来ない。マンションに住んでいる女性がゴハンを運んで来ると、鉄門の外へ出て来る。耳の大きさからも分かるようにエミちゃんは好奇心旺盛な子猫で、その動きも素早い。女性が持参した「ネコジャラシ」にも激しく反応するが、敏捷すぎるネコも撮...#199


    Jun 2011
    ネコの毛色のカラー・ヴァリエーションは白、黒、灰、茶系の4色しかないけれど、グリーン、イエロー、ブルー、コッパー(銅)など‥‥目の色は多種多彩で惹きつけられる。ペルシャ系のネコだろうか、S川緑地で初めて見かけたネコも水色の目が涼しげで魅了された。目の表情が穏やかで優しげなので、もしかしたら飼いネコなのかもしれない。そこを縄張りにしている野良ネコならば今までに何度も出会う機会があった。初対面のネコは...#198


    Coo 2011
    この民家の飼いネコたちも2匹が病死して個体数が減ってしまったが、元気なクーちゃんは「ネコちゃんおいで」と呼ぶまでもなく、手招きするだけでトコトコと近寄って来る。脚にスリスリすると茶色い毛がパンツに付着して毛だらけになっちゃう。お腹を見せてゴロニャンして寝返りを打つ。距離感が取り難く決して撮りやすいネコとはいえないけれど、辛抱強く待っていればシャッター・チャンスは確実に訪れる。適当に人馴れしていて...#195


    Yumi 2011
    「見えない秋」(1974)は樹村みのりの短篇マンガだが、今年(2011)の春は寒い日々が続いて、なかなか暖かくならなかった。「見えない春」‥‥もちろん、東日本大震災や福島原発事故(放射能漏れ)による絶望感や心理的なストレスと無関係ではない。大地震後、気になったのはネコたちがマグニチュード9.0の揺れや地面の震れを一体どのように感じて、どんな反応を起こしたかということである。人語でネコに話しかけても当然ネ...#194


    Goo 2011
    陽も落ち、バッテリーの残量も少なくなって来た。8年間愛用しているデジカメ(Cyber-shot)はフル充電しても30分くらいしかバッテリーが持たない。人懐っこく傍らで動き回る落ち着きのないネコほど撮り難い被写体はない。いつまで待っても静止してくれないネコへの最終手段‥‥出来るだけネコの嫌がることはしたくないのだが、この機会を逃したら2度と撮れないかもしれないという予感が強制行動を促す。グーちゃんの右耳を左手...#193


    Sara 2011
    廃校となったT島区立小学校の跡地に某大学が建った。校庭の併設を義務づけられていない大学校舎は巨大な鉄筋コンクリートの建造物にしか見えない。その裏手に一軒のイタリアン・レストランがあった‥‥と過去形で書いたのは2010年末に閉店してしまったからである。そのイタレスには1度も入ったことはないけれど、入口左に犬小屋風のネコ舎があって1匹のネコが飼われていた。いつの間にかパスちゃんは姿を消して、その代わりに可...#189

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    猫にモニャム〜ル

    猫にモニャム〜ル

    • 編集:Olive特別編集
    • 出版社:マガジンハウス
    • 発売日:2013/05/10
    • メディア:ムック
    • 目次:猫にモニャムール / ももくん、ミルク飲んだ?/ 猫は今日、どこで寝る / この頃のまこ / るんちゃんの子猫物語 / 気がつけば、ネコの雑貨 / にゃおとごまちゃん、そしてかりんちゃん / ネコ語で会話はどうにゃ?/ パリの猫 / ニャンとも猫だらけ / 猫の菓子 / 新録 本日のスープ / ノラをさかなに、ふたりで散歩 / のら一代 ミケヤマ・ノート / キャ...

    ジュリアとジュリアナ

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  • ジルベルトは、15歳の娘のすらりとした脚をまげて、ストゥールに腰を下ろした。タータンチェックのスカートから、畝筋のついた靴下が、膝の上のところまで露わになった。自分では思ってもいなかったけれど、膝小僧の丸みは完璧そのものだった。ぷよぷよしていない脹脛、盛り上がっている足の甲、こうした美点を眼にすると、アルヴァレス夫人は、孫娘がダンスを習っていなかったことを、つい悔んでしまうのだった。だが今は、そんなことに気を捉えてはいなかった。灰色がかった金髪の髪の束を丸め、薄い紙にしっかりと包み、熱した髪ごての半球に挟んでぎゅっと締めつける。夫人は忍耐強く、やっとジルベルトの肩まで届くか届かないかの、手入れの行き届いた、素晴しく豊かな髪を、しなやかな手で器用に、軽快で柔軟な、大きな巻き毛に纏め上げた。薄いカール・ペーパーの、仄かにヴァニラのような匂いが、熱せられたこての匂いが、少女を痺れたようにじっとさせていた。もちろん、ジルベルトは、どんなに抗っても無駄だということを知っていたのだ。今まで一度もと言っていいくらい、ジルベルトは、家風から逃れようとしたことはなかった。
    シドニー=ガブリエル・コレット 「ジジ」


  • ◎ Tragedy(Night School 2012)Julia Holter
  • ヴァイナルとデジタルのみのリリースだったデビュー・アルバム(Leaving 2011)が完全ヴァージョンで初CD化した。収録時間が10分ほど長くなり、表と裏カヴァを逆にした同内容のリイシュー盤(Domino 2013)も出ている(アナログ盤は2枚組)。古代ギリシャ悲劇詩人エウリピデスの「ヒッポリュトス」(Hippolytus)にインスパイアされたというアルバムはアンビエント、エレクトロニカ、ホスト・クラシカル、エクスペリメンタル、アヴァンポップなどが渾然一体となったサウンドとウィスパー・ヴォイスの対比が意表を衝く。汽笛のようなサクソフォンとオペラ調のヴォーカルが不吉に響く〈Introduction〉、ダーク・ゴシック風の〈Try To Make Yourself A Work Of Art〉、暗鬱なシンセ・ドローンが棚引く〈The Falling Age〉、ヴォコーダのコーラスがポップに弾ける〈Godess Eyes〉、教会音楽風の〈Interlude〉、ミュージック・コンクレート風の〈So Lillies〉‥‥イントロと間奏の2曲はアルバムに記載されていないが(前後の曲とシームレスに繋がっている)、デジタル版では独立した曲として扱われている。

  • ◎ Ekstasis(Rvng Intl. 2012)Julia Holter
  • Laurie Andersonの姪、それともJulianna Barwickの双子姉妹なのか?‥‥米ロサンゼルス出身のSSW、マルチ奏者の2ndアルバムは夢幻的なエレクトロニカでリスナーを魅惑する。可愛らしいヴォーカルとキーボードに、ヴィオラ、クラリネット、アルト・サックスなどが響く異世界へのトリップ。Julia Holterの神秘的なヴォイスは妖精の囀りにも、セレーンの誘惑にも聴こえる。カナダの詩人アン・カーソンのエッセイ集から採ったというアルバム・タイトルの〈Ekstasis〉はギリシャ語の「to be outside of oneself」という「ecstasy」本来の意味を思い出させもする。彼女の歌声に導かれたリスナーは幽体離脱して、鬱蒼とした森や深淵なる海の中を浮游するのだ。〈Goddess Eyes I〉でエウリピデスの『ヒッポリュトス』(Hippolytus)、〈Our Sorrows〉でヴァージニア・ウルフの『波』(The Waves 1931)、〈Moni Mon Amie〉でアメリカ詩人フランク・オハラの詩を引用するなど、インテリジェンス溢れるオーラを発散している。

  • ◎ Loud City Song(Domino 2013)Julia Holter
  • Julia Holterがベッドルームから抜け出して都会の雑踏へ歩み出た3rdアルバム。現代ではなく過去へタイムスリップ。彼女の幻視する時代はコレットの小説「ジジ」(Gigi 1944)やミュージカル映画『恋の手ほどき』(1958)に描かれた19世紀末パリのレストラン「マキシム」の情景(ゴシップ・イラスト週刊誌「ジル・ブラース」も登場する)だったり、ホーン(管楽器・警笛)に囲繞された閉所恐怖症的な世界だったり、木々と会話する「緑の荒野」だったりする。外界とのセンシティヴな交感は《Ekstasis》(2012)にも引用されたヴァージニア・ウルフ的である。 Barbara Lewisの〈Hello Stranger〉(1963)のカヴァを含む全9曲(〈Maxim's〉は2ヴァージョン収録)はCole Mardsen Greif(Ariel Pink)との共同プロデュース。Julia Holterのキーボードにベース、パーカッション、トロンボーン、サクソフォン、ヴァイオリン、チェロが鳴り響くサウンドはノスタルジックでファンタジック。彼女の高音ヴォイスも若返ったように聴こえる。

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  • ◎ Sanguine(Florid 2012)Julianna Barwick
  • Juana MolnaやNatalia Lafourcadeのようにループ・ペダルを操って自分のヴォイスや演奏したサウンドをリアルタイムでサンプリングするライヴ・パフォーマンスは珍しくないが、Julianna Barwickはヴォーカルやコーラスを幾重にも重ねることでミルクレープのように甘くて蕩けるサウンドを創り出す(レコーディングに何年も費やして音を何百回も重ねるEnyaよりも風通しが良い)。森の精霊や妖精たちの囀りにも似た祝祭的な多幸感や薄気味悪さはアニコレやPanda Bearを想わせなくもない。2006年にセルフ・リリースされたデビュー・アルバムは入手困難だったらしい。本リイシュー盤(2012)は13曲中、1〜9曲目までノン・タイトル(Unt.1~9)で1〜2分の小曲が続く。10曲目以降のアルバム・タイトル曲〈Sanguine〉を含めた4曲を加えても24分半というEP並みの短さ。ネコの鳴き声(?)をサンプル〜ループした〈Scary Cat〉にも心和むにゃん。

  • ◎ The Magic Place(Asthmatic Kitty 2011)Julianna Barwick
  • 米ルイジアナ州生まれで、NYブルックリンを拠点に活動する女性SSWの2ndアルバム。ネット上では「不気味なエンヤ」とか呟かれているけれど、幾重にも重ねられたアカペラ多重唱がEnyaのように厚ぼったくないのは、ループ・ペダルを使ったライヴ・パフォーマンスの即興性によるものだろう。一体何を歌っているのか、そもそも歌詞があるのかどうかも判然としないが、森の精霊や妖精たちの囀りのように響く(木霊でしょうか?)。鬱蒼とした緑の木立に流れる神秘的な歌声にピアノ、ベース、ギター、ドラムスがミニマルな彩りを添える。森の樹々を写したカヴァ・アートから音楽が聴こえて来る。Sufjan Stevensの主宰するレーベル(Asthmatic Kitty)からのリリースだったことも注目された。東日本大震災前に発表されたが、3・11の前後で全く印象が異なってしまった。森の精霊の囀りが津波に攫われた死者たちへの「鎮魂歌」のように感じられるからだ。リスナーを「不思議な場所」へ誘うアルバムである。

  • ◎ Nepenthe(Dead Oceans 2013)Julianna Barwick
  • Julianna Barwickもブルックリンからアイスランドへと旅立った。レイキャヴィクで録音された3rdアルバムはAlex Somers(Jonsi & Alex)のプロデュース。彼女のアカペラ多重唱にAmiinaの弦楽四重奏、Robert Sturla Reynisson(Mum)のギター、十代の少女聖歌隊(The Teen Girl Choir)のコーラスなどが参加している。アルバム・タイトルの「ネペンテス」は「悲嘆や苦痛を忘れさせる薬」という意味だが(ホメーロスの『オデュッセイア』やポーの『大鴉』からの引用?)、家族の死も反映されているらしい。天上世界で流れているようなアンジェリック・ヴォイス。Sigur Rosを想わせる壮麗さや尊厳さ、冷たく澄んだ空気感もある。アルバム・カヴァは彼女がレイキャヴィクで撮ったという満月(supermoon)を赤地にレイアウト。ブックレット(12頁)にはアイスランドの美しい自然写真に曲名が添えられているだけで、今回も歌詞は記載されていない。Julianna Barwickの歌声は月まで届いただろうか。

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    《この「ジジ」はフランスの舞台で大好評を得て、英語劇をやることになった。しかし、主役の役者が見つからなかった(もちろん主役を選ぶのは著者)。そんなある日、コレット女史は映画の撮影場面を見物中に叫んだ。「ああ、あれが私のジジよ」 それは、まだ無名時代のオードリー・ヘプバーンだったのだ。彼女の主演の『ジジ』は8カ月のロングランを記録し、彼女はウィリアム・ワイラーに見出され、『ローマの休日』を撮ることになった。『ジジ』はその後、アメリカで映画化されて、アカデミー賞を奪い取った。日本での題名は『恋の手ほどき』。最近では、加藤和彦の『ベル・エキセントリック』というアルバムに1曲ジジを唄ったものがある》‥‥図書館から貸出した「コレット著作集 11」(二見書房 1975)に上記の書き込みがあった。補足すると、コレット女史が見た撮影中の映画は『モンテカルロへ行こう』(1951)、『恋の手ほどき』に主演した女優はレスリー・キャロン。『ベル・エキセントリック』(1981)に収録されている曲は〈浮気なGigi〉。30年以上前の書き込みということになります。

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    Tragedy

    Tragedy

    • Artist: Julia Holter
    • Label: Night School
    • Date: 2012/04/12
    • Media: Audio CD
    • Songs: Try To Make Yourself A Work Of Art / The Falling Age / Goddess Eyes / Celebration / So Lillies / Finale


    Ekstasis

    Ekstasis

    • Artist: Julia Holter
    • Label: Rvng
    • Date: 2012/03/06
    • Media: Audio CD
    • Songs: Marienbad / Our Sorrows / In The Same Room / Boy In The Moon / Fur Felix / Goddess Eyes II / Monie Mon Amie / Four Gardens / Goddess Eyes I / This Is Ekstasis


    Loud City Song

    Loud City Song

    • Artist: Julia Holter
    • Label: Hostess Entertainment
    • Date: 2013/08/20
    • Media: Audio CD
    • Songs: World / Maxim's I / Horns Surrounding Me / In The Green Wild / Hello Stranger / Maxim's II / He's RunningThrough My Eyes / This Is A True Heart / City Appearing


    Sanguine

    Sanguine

    • Artist: Julianna Barwick
    • Label: M'LADY'S
    • Date: 2012/01/30
    • Media: Audio CD
    • Songs: Unt.1 / Unt.2 / Unt.3 / Unt.4 / Unt.5 / Unt.6 / Unt.7 / Unt.8 / Unt.9 / Scary Cat / Dancing With Friends / Sanguine / Red Tit Warbler


    The Magic Place

    The Magic Place

    • Artist: Julianna Barwick
    • Label: Asthmatic Kitty
    • Label: 2011/02/21
    • Media: Audio CD
    • Songs: Envelop / Keep Up The Good Work / The Magic Place / Cloak / White Flag / Vow / Bob In Your Gait / Prizewinning / Flown


    Nepenthe

    Nepenthe

    • Artist: Julianna Barwick
    • Label: Dead Oceans
    • Date: 2013/08/20
    • Media: Audio CD
    • Songs: Offing / The Harbinger / One Half / Look Into Your Own Mind / Pyrrhic / Labyrinthine / Forever / Adventurer Of The Family / Crystal Lake / Waving To You

    サイバー・キャット 17

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    猫のエミリー

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  • FRENCH SWINGING MADEMOISELLE 1967(Born Bad 2013)Clothilde
  • 1967年に4曲入りコンパクト盤2枚をリリースして忽然と消え去った元祖フレンチ・アイドロン、クロチルド(Clothilde)ちゃんのリイシュー盤。既出8曲にレア・トラック(イタリア語ヴァージョン2曲)と未発表曲1曲を加えて初アルバム化となった。〈猫のしっぽをふんじゃダメ〉(Fallait Pas Ecraser La Queue Du Chat)というエロ・グロ・ナンセンス曲に相応しい、4隅にネコのイラストを配したアルバム・カヴァも「ネコード」として洒落ている。ブックレット(12頁)に収録された元クロチルド(Elisabeth Beauvais)へのインタヴューのタイトルは「Clothilde, the «Emily Strange» of French Pop…」。赤いシャツの黒髪少女と4匹の黒ネコは「エミリー・ザ・ストレンジ」(Emily The Strange)を想わせなくもない。ネコ写真集『パリにゃん II』(産業編集センター 2012)の表紙の少女もエミリーと黒ネコの描かれた赤いキャミソールを着ていた。日本での知名度は低いけれど、「エミリー」はフランスの女の子にも人気があるみたいですね。

  • LUCERO(Espa 2011)Aldo Saralegui
  • 黒地にアーモンド型の2つの青い目が映えるアルバム・カヴァ‥‥それだけで誰にも黒ネコと分かる明解さが愉しい。Squeezeの《Cool For Cats》(1979)と同じく、シンプルに図案化された黒ネコ・カヴァは究極の「猫ジャケ」なのかもしれない。しかも目を凝らして良く見ると、瞳がピアノの黒鍵になっているではないか。アルゼンチン・タンゴ楽団(Sexteto Tango)のメンバーとしても知られるピアニストのアルバムだから、ネコの目に鍵盤が映っているという洒落たデザインなのだ。Aldo Saraleguiのピアノとアコーディオンに、フルート、クラリネット、コントラバス、フリューゲルホルン、バンドネオン、ヴァイオリン、ギター、ベース、ドラムスなど13人編成バンドによるインスト・ミュージックだが、女性タンゴ歌手(Amelita Baltar)がゲスト・ヴォーカルで1曲だけ参加して華を添えている。Aldo Saraleguiが作曲、編曲、音楽監督までを務める「ネコード」である。

  • NAKED ACID(Kranky 2008)Valet
  • オレゴン州ポートランド出身の女性アーティストValet(Honey Owens)の2ndアルバム。Jackie-O Motherfuckerのメンバーというだけあって、エクスペリメンタル、ポスト・ロック、サイケ・フォーク、ドローン・ミュージック、スペース・ロックと呼ぶに相応しいサウンドが繰り広げられる。Adrian Orangeとデュエットし、Mark Evan Burden(ドラムス)と3曲でコラボレーション。Valetの儚げで虚ろなヴォイスと空間を揺蕩うギターが夢の中の光景のように流れて行く。タイの仏像みたいな黄金仮面(?)が海に浮かび、その右後ろに賢そうなシャム猫が泳いでいるという摩訶不思議なアルバム・カヴァ(絵の左半分に当たる裏カヴァには月光を浴びた奇妙な形の岩礁も描かれている)に強く惹きつけられる。Valetと同じくポートランドで生まれ育った画家マリア・ディクソン(Maria Joan Dixon)は北西太平洋の雰囲気をイメージしたそうだが、いわゆるロスやサンフランシスコなどの米西海岸とは別世界の風景が幻視されている。

  • DEAD DOG(This Will Be Our Summer 2012)Dead Dog
  • Dead Dogはジョージア州アセンズを拠点に活動する3ピースのパンク・バンド。紅一点のElla Sternberg(ヴォーカル、ベース)、John McLean(ギター)、Lexie Gay(ドラムス)という最小編成で、喧しくてノイジーで可愛いロックを演奏する。デビュー・アルバム(2008)の初CD化に際してボーナス・トラック3曲(ノン・タイトル)を追加しても全11曲、20分という潔さ。それにしても一体何故、「死んだ犬」というセルフ・タイトル・アルバムのカヴァにデブ猫ちゃんのイラストが描かれているのだろうか。『犬のことば』(青土社 2013)の表紙カヴァに2本足で直立する白いネコとセーラー服の少女が仲良く肩を組んでいたように。もしかしたら「小鳥遊」(猛禽類の鷹がいないので小鳥たちが遊ぶ)と書いて「たかなし」と読むという珍名や判じ物に近いのかもしれない。「子猫遊」(獰猛な犬が死んだので子猫が遊ぶ)と書いて「いぬじに」と読む?

  • BETWEEN THE WHILES(Table Of The Elements 2010)Zeena Parkins
  • Bjorkのアルバムに参加していることでも知られるZeena ParkinsはJoanna Newsomのような歌うハープ奏者(SSW)ではない。しかし、「ハープ界のジミヘン」とも称される彼女のパフォーマンスは独創的。ハープだけでなく、ムーグ・シンセ、グラス・ハーモニカ、メロディカ、フォイル(アルミ箔?)、紙、金属ボルト、缶の蓋、ブラシ、ペットボトルなどの楽器や日用品を使ったサウンドは暴力的なほどにノイジーだったり、不穏なアンビエント風だったりする。Bjork以上にエクスペリメンタルやフリー・インプロヴィゼーションの要素が強烈なのだ。アルバム・カヴァに採用された少女画家エレン・ベーケンブリット(Ellen Berkenblit)の「cat riding above city」は蝸牛らしき生物に乗ったネコが都市の上空を浮遊するファンタジックな絵画。ネコとカタツムリの邂逅はヴァージニア・ウルフの「壁のしみ」(The Mark On The Wall 1917)のような意外性がある。

  • ANNIE IN WONDERLAND(Friday Music 2011)Annie Haslam
  • Annie Haslam(Renaissance)のソロ・デビュー・アルバムはRoy Wood(The Move、ELO、Wizzard)の全面プロデュースだった。ギター、ベース、チェロ、サクソフォン、バラライカ、ドラムス、クラリネット、ムーグ・シンセ、ピアノなどの楽器だけでなく、アルバム・カヴァまで描いている。もちろん「アリス」のパロディ《不思議の国のアニー》の表カヴァには「狂ったお茶会」に招待されたアリスのキャラたちが愉しそうに笑っている。帽子屋、三月ウサギ、眠りネズミ、ハートのジャック、ハートの女王(彼女だけはジャックにタルトを盗まれたので怒っている)、アリス(アニー・ハズラム)、チェシャ猫‥‥裏カヴァには代用ウミガメ、グリフォン、赤ん坊を抱いた公爵夫人、イモムシ(ロイ・ウッド本人)も登場する。1977年当時、恋人関係にあったというRoy Woodの愛に溢れたアルバムなのだ。輸入リマスター盤には新録(2010)のボーナス・トラック〈Flowers In The Rain〉(The Moveのヒット曲)が追加されている。紙ジャケット仕様の「国内盤」には未収録なので要注意!

  • SAY HI TO YOUR NEIGHBOURHOOD(Neoangin 2010)Neoangin
  • Neoanginはミュンヘン生まれのポップ・アーティスト(Jim Avignon)によるソロ・プロジェクト。NYブルックリンで作曲して、ベルリンで録音されたという本アルバムはユーモラスで愉しいエレクトロ・ポップ。左腕にミニ・シンセを抱え、右手にバッグを持ったネコ婦人、左手で帽子を脱いで挨拶する胴体がトランプ・カード(4枚のA)の怪人、筒状に紙幣を巻いた昆虫男などが道を行く‥‥本人が描いたシュールでコミカルなアルバム・カヴァやブックレット(24頁)のカラー・イラストもキモ可愛い。「曲を友人にコピーするのは良いけれど、自分で焼いたCD20枚をショーに持参して僕にサインを求めに来ないでね」という記述も可笑しい。4曲目に収録されている〈Bartleby〉はメルヴィルの小説「代書人バートルビー」(ボルヘスが編纂した「バベルの図書館」にも収録されている)のことでしょう。Neoanginも「バートルビーと仲間たち」の1人だった?‥‥それにしては、数多くのアルバムを発表し続けているけれど。

  • I WAS A CAT FROM A BOOK(Domino 2012)James Yorkston
  • スコティッシュSSWの5thアルバムは正真正銘の「猫ジャケ」である。あら、可愛いと欣喜雀躍して手に取った女子も少なくないでしょう。クレア・ビートン(Clare Beaton)の手縫いコラージュは古い布切れやフェルトなどの素材をを組み合わせて画面上に再構成するもので、動物や草花をモチーフにした児童向けの絵本やエコバッグなどのデザインもしている。ヴィンテージの布地や白いレースをコラージュした枠組みの中に小鳥やトンボが飛び、葉っぱや羽根、楽譜がレイアウトされた中央にフェルトの茶ネコが鎮座する(CD盤面にもネコがプリントされている)。アルバム・タイトルの通り、クレア・ビートンの絵本の中から抜け出て来たようなネコちゃんです。James Yorkstonの素朴なヴォーカルとギター、女性コーラス、コントラバス(Double Bass)、ドラムス、ピアノにヴァイオリン、ハープ、ヴィブラフォン、クラリネット、ヴィオラなどを加えたアクースティック・サウンドも、ハンドクラフト・コラージュの肌触りと同じように耳に優しい。

  • THE SEER(Young God 2012)Swans
  • 黒地に浮かび上がる茶色いネコの顔、眼の中は空っぽで開いた口には人の歯が生えている。4面デジパック仕様のインナーには頭部(旋毛?)や尻尾なども描かれている。この異形の動物は本当にネコなのか?‥‥と訝しむ人もいるかもしれない。しかし、レーベル・サイト(Young God Records)でMichael Gira本人が「スワンズの仲間は一流の男たち。彼らがいなければ僕は幼い子猫ちゃん」(My friends in Swans are all stellar men. Without them I’m a kitten, an infant. )と語っているように、人と融合したネコなのだ。Roisin Murphyのアルバム・カヴァ(Ruby Blue 2005)やKanye WestのPV(Love Lockdown 2008)などで知られるサイモン・ヘンウッド(Simon Henwood)の表現主義的なアートは気味悪くグロテスクでさえあるが、つい細部に魅入ってしまう。彼はアートワークや写真だけでなく、3枚組スペシャル・エディションに同梱されているライヴDVD(約100分)の監督、撮影、プロデュースもしている。

  • TRIUMPH OF A HEART(One Little Indian 2005)Bjork
  • 《Medulla》(2004)に入っている〈Triumph Of A Heart〉はミャ〜ミャ〜と鳴く声帯模写がネコっぽい曲だなぁ‥‥と思っていたら、PVもネコものだった。ネコ亭主との倦怠期。眠れない夜に家出したBjorkは一晩中、街の酒場で遊び仲間たちとバカ騒ぎに興じる。朝帰りの途中、ネコが車で迎えに来た。真夜中のアカペラ大会、宙に舞い飛ぶピンクのハート、踊るネコちゃん‥‥Bjorkがキスすると等身大のネコ男に変身して一緒に踊り出す。某携帯電話会社のTVCMみたいなシュールな設定ですが、ネコ好きには堪らないPVでしょう(監督は『マルコヴィッチの穴』(Being John Malkovich 1999)のスパイク・ジョーンズ)。凛々しいネコちゃんの顔に「triumph of a heart」というモノクロのフォント(判読し難いロゴタイプ)が重なる。PVの画像をカヴァに使ったDVDシングルにはヴィデオ〈Triumph Of A Heart〉の他に、〈Oceania〉と〈Desired Constellation〉の別ヴァージョン(オーディオ2曲)が収録されている。「ネコード」ではないけれど、「ネコ・ヴィデオ」ということで許してにゃん(穴があったら入りたい?)。

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    Queen Of The French Swinging Mademoiselle 1967

    Queen Of The French Swinging Mademoiselle 1967

    • Artist: Clothilde
    • Label: Born Bad Records
    • Date: 2013/02/14
    • Media: Audio CD
    • Songs: Fallait pas ecraser la queue du chat / Je t'ai voulu et je t'ai bien eu / La chanson bete et mechante / Le boa / Saperlipopette / La ballade du bossu / 102 - 103 / La verite toute la verite / Des garçons faciles feat les charlots (inédit) / A ora sos'e / Qualcosa che non va


    Naked Acid

    Naked Acid

    • Artist: Valet
    • Label: Kranky
    • Date: 2008/03/04
    • Media: Audio CD
    • Songs: We Went There / Drum Movie / Kehaar / Fuck It / Babylon 4 Eva / Fire / Streets


    Dead Dog

    Dead Dog

    • Artist: Dead Dog
    • Label: Stickfigure Distribution
    • Date: 2012/06/26
    • Media: Audio CD
    • Songs: Lil Miss ICU / Return Of The Living Dead / Swallow It / Dead Dogs Don't Mind / Worth It / Partners In Crime / Oh My Fullness / Untitled #1 / Untitled #2 / Untitled #3


    Annie in Wonderland

    Annie In Wonderland

    • Artist: Annie Haslam
    • Label: Friday Music
    • Date: 2011/01/25
    • Media: Audio CD
    • Songs: Introlise/If I Were Made Of Music / I Never Believed In Love / If I Loved You / Hunioco / Rockalise - To Alison / Nature Boy / Inside My Life / Going Home / Flowers In The Rain


    I Was A Cat From A Book

    I Was A Cat From A Book

    • Artist: James Yorkston
    • Label: Domino Records UK
    • Date: 2012/08/14
    • Media: Audio CD
    • Songs: Catch / Kath With Rhodes / Border Song / This Line Says / Just As Scared / Sometimes The Act Of Giving Love / The Fire & The Flames / A Short Blues / Spanish Ants / Two / I Can Take All This

    美恵子コレクション

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  • 猫に話しかけずにエサをやって、どうする!! ニャア、ニャア、と鳴きながら足もとに身体をこすりつけて甘えている猫に、黙々と猫カンを開け、お皿に移し、ポンと床にエサの皿を置いてやる、などということは、人間として、まず出来ないことで、ニャア、ニャアとか、凄く空腹な時にはもっと切迫して、かつ、命令的な口調で、ニャーオン、ニャーオン、と高音の尻上がりの調子でエサを要求する、表現力の豊かな猫という動物に対して、中学生のお嬢よ、いくら、中途半端な年齢で、経験上知っているけど、女子も男子も人生の中で見た目の上でも一番みっともなくなる変身途上の時期にいるとはいえ、ブスッと黙ったまま、猫にエサをやるなんてことは、おかあさんにも、おばさんにも出来ませんよ、ハイハイ、ハイ、ちょっと待って、そんなにうるさく鳴くと、わざと遅くしちゃうよ、とか、いい子いい子、すぐだよ、とか、ヨシヨシ、そんなにお腹すいたの? とか、話しかけなくては、かえって「変」なんですよ、と言いたいのである。
    金井 美恵子 「猫に話しかけないでください」


  • ◇ 添寝の悪夢 午睡の夢(中央公論社 1976)
  • 「添寝の悪夢」という表題に魅了される第2エッセイ集。「あとがき」によると、最初のタイトルは「昼寝の悪夢・午睡の夢」だった(編集者が目次の案を作った時に書き間違えた)という。月並みな「昼寝」からは「添寝」というエロティックな妄想は浮かばない。もちろん、その相手は恋人や猫ではなく、本や絵画や映画なのだが‥‥。「夢・鏡・時」「少年」「少女」と題する短い前書きに呼応するように「夢の領土」「少女の領土」「少年の領土」「時の領土」「鏡の領土」という5つの章で構成されている。デ・キリコ、ルネ・マグリット、ソンネンシュターン、レオノール・フィニ、ルイス・ブニュエル、マレーネ・ディートリッヒ、別役実、唐十郎、土方巽、西江雅之、カフカ、ジョイス・マンスール、アンデルセン、ルイス・キャロル、マンディアルグ、ル・クレジオ、レヴィ=ストロース、アーサー・ランサム、森茉莉、夢野久作、野坂昭如、吉田健一、田村隆一、河野多恵子、石川淳、天沢退二郎、吉岡実、倉橋由美子‥‥。気怠い午後の睡りの中で見る儚い夢はキリコやバルテュスの絵のような白昼夢だろうか。

  • ◇ 書くことのはじまりにむかって(中央公論社 1978)
  • 第3エッセイ集はタイトルが示しているように「過渡期的な性格を持っているが」、「この本のみが過渡期的なわけではなく、わたしの書いたすべての本(あるいは書かれるはずのすべての本)に、『書くことのはじまりにむかって』という題名をつけたとしても、わたしとしては奇異な感じはしないし、それほど突飛なことにも思えない」と、著者は「あとがき」に書いている。そのせいなのか「1 書くことのはじまりにむかって」の2篇、カフカと深沢七郎について書いた「絢爛の椅子」「深沢七郎へ向かって一歩全身二歩後退 」など比較的長い評論が収録されている。「2 未誕の言葉」には天沢退二郎、岩成達也、岡本かの子、宮沢賢治。「3 目の散歩 日々の生活」は武田泰淳や吉田健一の死、ヒチコックや市川崑、トリュフォー監督の映画、エルヴィス・プレスリー、ジャンヌ・ダルク、日夏耿之介。「4 読むこと 終わりなきたのしみ」は大学で行なった講演記録やアンデルセン、アーサー・ランサム、メアリー・ノートン、野坂昭如、国枝史郎、藤枝静男、島尾敏雄、吉田健一。書くことの苦痛と読むことの快楽が混じり合った奥深いエッセイ集である。

  • ◇ 遊興一匹 迷い猫あずかってます(新潮社 1993)
  • PR誌「波」に1年間連載されていた「遊興一匹」を中心に編んだ「純文学的ネコバカエッセイ」(荒川千尋)。1989年、金井姉妹の住んでいるマンションに1匹の仔猫が迷い込んで来た。「迷い猫あずかってます。クロトラ、オス、生後6ヵ月くらい、トイレの躾も出来てお行儀良し、12月18日の昼ごろから、この近辺で迷子になって泣いていました。連絡先 金井美恵子」という文面に猫のイラストを添えたポスターを近隣に張り出したものの、何の音沙汰もない‥‥。金井家で飼うことになったキジ柄の雄猫は、『プー横町にたった家』(岩波書店 2000)に登場するタビー柄の仔猫「トラー」から採られた。去勢、「モンプチ」(グルメな猫缶)、猫砂(猫用トイレ)、猫貯金、巣穴、迷子、散歩、狩り(青大将!)、テリトリー防衛、掃除機、大好物のエビ、昼寝、ピクニック、爪研ぎ、カーテン‥‥といったネコ・キーワードを鏤めながら、愛猫トラーについて熱く語る。同文庫(1996)は新たに6篇を加えた増補決定版になっている。金井美恵子エッセイ・コレクション2『猫、そのほかの動物』(平凡社 2013)にも丸ごと収録されています。

  • ◇ ページをめくる指(河出書房新社 2000)
  • 「母の友」(福音館書店)に連載された絵本についてのエッセイ24篇を纏めたもの。「幼児を持つ母親を読者対象にした雑誌」というだけあって、単行本も大型(菊判)で文字も大きく、表紙カヴァやイラストなどのモノクロ・カラー図版も豊富。レイアウトも凝りまくっている。「ピーター・ラビットの絵本」やモーリス・センダック、マーガレット・W・ブラウンだけでなく、バルテュス少年が描いた言葉のない絵本『ミツ』(河出書房新社 2011)も紹介されている。冒頭の『タンゲくん』(福音館書店 1992)に眉を顰める教育ママには不向きかもしれませんが‥‥。ライブラリー版(平凡社 2012)は親本に比べるとサイズも小さく、本文にレイアウトされていたイラストや図版なども省かれているが、カラー口絵8頁を付け、「記憶と言葉──児童文学覚え書」(7篇)と「石井桃子インタヴュー」(1994)を加えた増補版。「ちりあくたの輝く「本の小部屋」から」の中で本書を「名作絵本と呼ばれるものについての最良の批評の1つだと、書き手の私は自負しています」と書いている。

  • ◇ 猫の一年(文芸春秋 2011)
  • 隔月小説誌「別册文藝春秋」に4年間連載されたネコとフットボールに関するエッセイ集。「猫の一年」というタイトルは4年に1度開催される「W杯の1年」、欧州3大リーグ(プレミア、リーガ・エスパニョーラ、セリエA)に所属する強豪クラブの選手たちの過密スケジュールと「猫の1年」(ネコの加齢は人間の3〜4年に相当する)が似ていることから採られたという。Al Stewartのヒット曲〈Year Of The Cat〉(1976)を思い出す「ねこみみ」読者もいるかもしれない。2度のW杯(2006年ドイツ大会と2010年南アフリカ大会)の報道や愛猫トラーの秘密だけではなく、飛行機嫌いで有名なデニス・ベルカンプの引退記念試合、網膜剥離による右眼の手術と喫煙(禁煙)、ヒデさん(中田英寿)の引退、イモ・ジュリー(沢田研二)の還暦、マイケル・ジャクソンの死、買物袋(レジ袋・エコバッグ)など多岐に渡る。齋藤孝、村上龍、モギケン(茂木健一郎)、高橋源一郎、香山リカ、宮崎駿、萩本欽一、田村正和、矢沢永吉、郷ひろみ、岡田監督、後藤明生、武田百合子、山田風太郎、大岡昇平、深沢七郎‥‥。「目白雑録シリーズ」との違いは姉・久美子さんが描いた猫や兎や栗鼠をモチーフにしたカラー装画(24葉)の可愛らしさでしょうか。

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  • ◇ 夜になっても遊びつづけろ(平凡社 2013)
  • 「金井美恵子エッセイ・コレクション[1964 - 2013]」(全4巻)は幻の投稿から今日まで半世紀に渡るエッセイを4つのテーマ(批評・猫・作家・映画)で自選したもの。コレクションというよりもセレクション、音楽の「ベスト・アルバム」に近い。無地にモノクロ・イラストの外装は控え目だが、著作の表紙カヴァが100冊並んだ見返し4頁はシックな衣服に隠された派手な裏地みたい。「夜になっても遊びつづけろ」という表題は「若者たちは無言のノンを言う」のエピグラフに使われた堀川正美の詩から採られている。「1967-1973」は18篇‥‥第1エッセイ集『夜になっても遊びつづけろ』(講談社 1974)には67篇のエッセイが収録されていたから原本の3割弱。今までに上梓したエッセイ集は25冊だから、1巻が2冊分に相当すると計算しても全体の3割強である。篠山紀信が撮ったポートレイト「当時23歳の著者」は必見。巻末インタヴューの「50年前から、書きたい時は、今もやっぱり「投稿」です。」というタイトルを裏付けるように特別掲載された付録‥‥「美術手帖」の斎木ひみ子(高校生・16歳)という変名の投稿、「季刊リュミエール」の泉光という匿名コラムの縮小コピー(9頁)も抱腹絶倒なのだ。

  • ◇ 猫、そのほかの動物(平凡社 2013)
  • 猫、兎、虎、犬、雀、栗鼠など、動物エッセイを集めた「コレクション 2」には『遊興一匹 迷い猫あずかってます』の増補決定版(新潮文庫 1996)が丸ごと収録されている。さらにエッセイ・コレクションのはずなのに、「タマや」(1986)、「永遠の恋人」(1971)、「兎」(1972)の小説3篇を挿入。巻末書き下ろしエッセイ「夢と夢の中の動物たち、ペットたち、そして、書かれた動物と夢」の中で、《彼女の姪の娘、グロリア・スワンソンが、19世紀末から20世紀初頭のかぎられた一時期、大伯母の撮影した大量の写真を発見し、ボストンのフィロメラ・プレスから『アマンダ・アンダーソン・写真と生涯』として出版して初めて知られるようになった特異な写真家》と『タマや』(講談社 1987)で紹介されているアマンダ・アンダーソンが架空の人物だったこと、「私が夢の中で見た写真集のフォトグラファー」であることを明かしている。著者が猫(トラー)について考えると思い出すというグレース・ケリーの「無償の愛」や東海林さだおの「ただ、可愛い、というだけで愛されて二千年」という言葉もペットへの限りない愛で溢れている。

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    添寝の悪夢 午睡の夢

    添寝の悪夢 午睡の夢

    • 著者:金井 美恵子
    • 出版社:中央公論社
    • 発売日:1976/08/01
    • メディア:単行本
    • 目次:夢の領土 広場のみえる窓 / 夢の風景 / 月への信仰 / 1枚の絵と運動 / 山羊と断食芸人 / 静かな夢 / 空白を埋める作業 / アンデルセンの歯痛 / 夢から海へ / 兎の夢 // 少女の領土 アリスの絵本 / 無垢の勝利 / レオノール・フィニによせて / 変身潭あるいは夢の生きもの / 耳と葡萄 / モノローグの世界 / 海の彼方へ / ありきたりの体験 / 子供の読書 / ...


    書くことのはじまりにむかって

    書くことのはじまりにむかって

    • 著者:金井 美恵子
    • 出版社:中央公論社
    • 発売日:1981/07/10
    • メディア:文庫
    • 目次:書くことのはじまりにむかって 絢爛の椅子 / 深沢七郎へ向かって一歩全身二歩後退 / 未誕の言葉 序奏・天沢退二郎あるいは汁への導入部の手前で / 垂直と燃焼のコンプレックス / 不可能の光景 / 岡本かの子覚書 / 言葉と《文体》/ 歌っているのは誰か / 目の散歩 日日の生活 作家の死 / いたましいグラス / 目の散歩 / プリンス・オブ・プリンシィズ / 悪...


    迷い猫あずかってます

    遊興一匹 迷い猫あずかってます

    • 著者:金井 美恵子
    • 出版社:新潮社
    • 発売日:1996/09/02
    • メディア:文庫
    • 目次:トラ! トラ! トラ!/ 銀座の猫、家の猫 / 小さな虎さん / 猫を飼う / 遊興一匹 /「トラー」とはどんな動物か / 猫を去勢すること / 散歩も出来ない / 猫の戦略 / 猫には7軒の家がある / 猫のおかあさん / 猫と暮す──蛇騒動と侵入者 / エビに猫舌無し / ウサちゃん / 日だまりでの昼寝 / ピクニックに行こうと思う / 増殖する物体としての本 / 猫の爪...研ぎ /「猫」散見 / 反復不可能 / カーテンを替えようと、いよいよ決めるまで / 書かなかったこと


    ページをめくる指 ── 絵本の世界の魅力

    ページをめくる指 ── 絵本の世界の魅力

    • 著者:金井 美恵子
    • 出版社:平凡社
    • 発売日:2012/04/12
    • メディア:単行本
    • 目次:タンゲくんが いるだけで うれしいです / 2匹のうさぎと夜 / 家から遠く離れて / ジェニーの肖像 / 悪夢のなかで / センダックの変貌 / 昔話は本当に面白いか / 記憶のひずみ /「くまさん」のくらしぶり / ひそやかな幼年の世界 / じっとしていない小犬 / 失われたおひなさま / 猫とねずみたちの住む家 / ねずみの描いた絵本 / しっぽのおはなし / 食べ...


    猫の一年

    猫の一年

    • 著者:金井 美恵子
    • 出版社:文藝春秋
    • 発売日:2011/01/14
    • メディア:単行本
    • 目次:「ことサッカーに関して、男は正直であらねばならない」? /「ことサッカーに関して、男は正直であらねばならない」? 2 /「引退」と「ロマンティシズム」/ ドッグイヤー、あるいは、/ 眠っている猫をおこす / 再び、の前に / 最後の1年、最初の1年 / 今日も元気だ。(?)タバコがうまい / 眼先のこと ふたたび、タバコ / トラーの秘密 / トラーの...


    夜になっても遊びつづけろ (金井美恵子エッセイ・コレクション 1

    夜になっても遊びつづけろ(金井美恵子エッセイ・コレクション 1)

    • 著者:金井 美恵子
    • 出版社:平凡社
    • 発売日:2013/08/22
    • メディア:単行本
    • 目次:1967─1973 処女作の頃 / 若者たちは無言のノンを言う / 描くことの始まりに向かって / 8月の光は幻の‥‥ / 政治の季節のなかの青春 / 風化の季節 / そよ風にのって、風に吹かれて / われらが恨みの赤い花一輪を植えよ / 浪曲子守唄 / 私の処女作 / 書いていない時の作家 / ささやかな幸福 / みどり色の馬車 / ネクロフィールの世界──井上洋介画集 / ...


    猫、そのほかの動物(金井美恵子エッセイ・コレクション 2)

    猫、そのほかの動物(金井美恵子エッセイ・コレクション 2)

    • 著者:金井 美恵子
    • 出版社:平凡社
    • 発売日:2013/08/22
    • メディア:単行本
    • 目次:遊興一匹 迷い猫あずかってます トラ! トラ! トラ!/ 銀座の猫、家の猫 / 小さな虎さん / 猫を飼う / 遊興一匹 /「トラー」とはどんな動物か / 猫を去勢すること / 散歩も出来ない / 猫の戦略 / 猫には7軒の家がある / 猫のおかあさん / 猫と暮す──蛇騒動と侵入者 / エビに猫舌無し / ウサちゃん / 日だまりでの昼寝 / ピクニックに行こうと思う / 増殖...

    ネコ・ログ #31

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  • こんなめずらしい、全然日本的じゃない名前をなぜつけたんだろう。記事を翻訳する過程でなにかがぬけていまったのかも。さっそく翻訳してくれた人に聞いてみると、この三毛ネコの名前は、日本でも人気の高い名探偵シャーロック・ホームズにちなんでつけられたということがわかった。だが、ホームズ人気はアーサー・コナン・ドイルの小説からきているだけではなかった。ジロウ・アカガワという日本の作家の小説にもホームズが登場するのである。アカガワはティーンエイジャー向けのミステリーシリーズを書いていて、すべてがベストセラーになっている。1978年に書かれたシリーズ第1作は、犠牲者が飼っていた三毛ネコが特殊な能力を発揮して犯人を発見するというストーリーだった。それ以来、ネコはシャーロック・ホームズにちなんで「三毛猫ホームズ」と呼ばれるようになり、スターとして活躍しつづけているのである。/ この有名なネコが雌だと知ってわたしは驚いた。わたしが作者なら、犯人を見つける探偵役には、めずらしい雄の三毛ネコを使っただろう。アカガワは雄の三毛ネコの存在を知らなかったのではあるまいか。
    ローラ・グールド 『三毛猫の遺伝学』


  • ♯271│ニール│飼い猫 ── ビッグ・ブラック・キャット
    S井開運稲荷の裏口から出て路地を左に行ったところに空地がある。かつては民家が建っていたのだろうか、雑草が生い茂り、瓦礫や家具や布団などが散乱した空間に数匹のネコたちが遊んでいた。その佇まいは野性味溢れるノラ軍団かと見紛うほどだが、明らかに飼われていると分かる首輪をしたネコも混じっている。首輪を着けたニール君は大きな黒ネコ。堂々としていて近づいて写真を撮ろうとしても微動だにしない。これくらい大柄だと可愛いというよりも、本人にその気はなくても存在感や威圧感のようなものが躰の周囲に漂う。米インディーズ「Asthmatic Kitty」のトレード・マークはお尻を高く上げて鼻息も荒く威嚇する仔猫のシルエットである。「Fatcat」「Big Cat」というネコ・レーベルは文字通り肥って大きなネコのイメージだった。キティ(kitty)は子ネコちゃん、キャット(cat)は大きな成ネコというイメージなのでしょう。「Tigerbeat6」という可愛い子虎(実はネコ?)レーベルもありました。

    ♯272│ロン│ノラ猫 ── ネコのアート?
    長毛種のロンちゃんが空を見上げている。小鳥たちを見つけたのだろうか、それとも蝶々や羽虫だろうか?‥‥横顔を撮ったら背後の植え込みと相俟って、壁紙風の「ネコ・アート」になってしまった。可愛いネコを撮りたいだけなので、凝りまくったアート写真には興味はないけれど、たまたま撮れてしまうこともある。もしかしたらネコという存在そのものが生きるアートなのかもしれない。もう少し引いて周りの風景を入れた方が情緒溢れるネコ写真になるのにと思うこともある。しかし、ブログに掲載することを考えると、どうしてもアップ・ショットが多くなる。ネコと遊んで仲良くなってから撮ろうとすると、必然的に至近距離からの撮影になっちゃうのだ。それに周囲の景色が映り込まない方が撮影場所を特定され難いという利点もある。人間と同じく、外ネコたちの個人情報も無闇に公開しない方が安全という時代になってしまった。ネコを虐待するのが趣味という都知事もいるらしいからね。

    ♯273│コン│飼い猫 ── 緑色の目が綺麗だにゃあ
    滅多に通らない裏道を歩いていると思いがけないネコとの出会いが待っている。コンちゃんとは都電沿いの路地を散歩している途中に遭遇した。民家の玄関ポーチに鎮座していた茶虎ネコ。初対面の時には早々と逃げられてしまったが、エメラルド色の綺麗な目に惹かれて後日、再び訪れてみた。また不用意に近づくと逃げられちゃうので、鉢植えの陰に隠れて撮った。ネコとヒトの間に金網フェンスや植え込みなどの障害物があると、警戒しているネコに近寄っても不思議と逃げ出さないものである。臆病なネコでも、ここは天敵の手の届かない安全地帯だと本能的に感得しているのかもしれない。敵か味方か、危害を加えようとしているのか、それとも好意を持っているのかを見定めているネコに対しては「ネコの味方だよ。仲間だよ」などと猫撫で声で話しかけてみるのだが、余り効果はない。雨模様の夕暮れ‥‥周囲の明るさはネコの瞳の大きさが物語っている。

    ♯274│ソン│飼い猫 ── 久々の別嬪ネコさん
    ネコ横町と呼ぶのに相応しい界隈にいた美形ネコさま。元美容院の看板ネコで、ソンちゃんという名前は高いところが好きだから。孫悟空のソンから採った(某携帯電話会社の社長ではない)と、事情通のオバさんが教えてくれる。やや面長の精悍な表情からは野生の輝きも感じられるが、気性は至って大人しい。人馴れしているようでも手で触れようとして少し躙り寄ると、ソンちゃんも少しだけ遠ざかって常に一定の間合いを保つ。この地域には飼いネコやノラも含めると8匹のネコたちが棲息しているらしい。ノラといっても特定の飼主のいないだけの「地域ネコ」である。引っ越してしまったバアさんに飼われていたアヤちゃんは向かいの家のオバさんが今世話をしている。たまたま様子を見に来たバアさんが「これ、あんたが撮ったんでしょう?」とアヤちゃんの写真を見せる。肌身離さず持ち歩いてくれているとはネコ冥利に尽きるにゃん。

    ♯275│ドリス│ノラ猫 ── いつ撮るの?‥‥今でしょ!
    久々のファニー・フェイス登場!‥‥「いつやるか? 今でしょう」で大ブレイク中の某予備校講師の風貌に似ていなくもない。ネコ族というよりもタヌキ一族に近いかもしれない青い目をしたシャミー系。iPhotoで自動補正(enhance)したので、オリジナル画像よりも少し明るく写っている。出合い頭に撮ったような写真で、まさにビックリしたような表情をしているが、平時も植え込みの陰からドングリ眼で見つめていることが少なくない。I袋駅前公園のネコたちは他の地域のノラよりも食生活に恵まれているので、毛並みの艶も良く丸々と肥っている。朝・昼・夜‥‥毎日ゴハンを運んで来るネコ・オバさんやオジさんが多数いるらしいのだ。その献身ぶりは「ここのネコちゃんだけは、ひもじい思いはさせない」という決意というか、使命感さえ漂う。もう少しダイエットした方が健康的なんじゃないかと思うけれど。「ただ、可愛い、というだけで愛されて二千年」(東海林さだお)は名言である。

    ♯276│マープル│飼い猫 ── 三毛ネコの遺伝子
    ローラ・グールドの『三毛猫の遺伝学』(翔泳社 1997)は動物保護センターから貰い受けた2匹の雄ネコ‥‥長毛種のマックスは黒ネコだったが、ジョージは三毛ネコだったことから始まる。図書館から遺伝学の本を借りたり、古書店でネコに関する資料を渉猟したり、最新の論文を読んだりして、「なぜ三毛ネコは雌は珍しいのか?」という疑問を解明する知的好奇心の旅に出る。日本人学者の論文(1956)を発見した彼女は日本の三毛ネコに興味を持ち、朝日新聞の記事「ニャンと珍しいオスの三毛ネコ」(1989. 6. 21)の名前がホームズだったことから「三毛猫ホームズ」に辿り着く。そして、この有名なネコが雌だと知って驚くのだ。「私が作者なら、犯人を見つける探偵役には、珍しい雄の三毛ネコを使っただろう。アカガワは雄の三毛ネコの存在を知らなかったのではあるまいか」と。ジロウ・アカガワが雄の三毛ネコの存在を知らなかったのかどうかは不明ですが、マープルちゃんは聡明な雌ネコだと思います。

    ♯277│ルイーズ│飼い猫 ── 赤い郵便ポストの猫
    ある商店街の赤い郵便ポストの上に1匹のネコが行儀良く座っていた。その周りに人集りが出来て、珍しそうにネコを眺めている。飼主の外国人青年がネコの話をしている。珍しいネコちゃんのお披露目をしているというわけである。大道芸やネコ・サーカス団のように特別な芸をするわけではないけれど、目の前にいるだけで心和む。こんなチャンスは2度とないと意気込んでカメラを向けた。ネコの種類は聞き逃したが、シャミー系の長毛種らしい。来週、関西方面へ見合しに行くと言っていたから、交配の相手も同じ純血種なのだろう。写真を撮ろうとすると見ず知らずの見物人が手荷物を持ってくれるという親切さ。お互いに撮り溜めたネコ写真をカメラの液晶画面で見せ合う。「ネコしか撮らない(Only cats)」と言うと飼主の青年も笑う。ルイーズちゃんが木の上に登っている写真も何枚かあって、ビックリ!‥‥見知らぬ人の前では借りて来たネコみたいにネコ被っているのかしら?

    ♯.278│プチ│地域猫 ── プチ・ブラック・キャット
    美形ネコのソンちゃんと同じ地域に棲んでいる黒ネコ。事情通の女住人が「8匹いる中の唯一の雌ネコなのよ」と説明してくれた。写真では逆に見えるかもしれないが、大きな黒ネコのニールとは対照的に小さなチビ黒である。ウィリアム・バロウズも『内なるネコ』(河出書房新社 1994)の中で書いているように、可愛さは大きさに反比例する。怖しい恐竜や怪獣だってトカゲやイグアナ並みに小さければ可愛いペットとして愛されるかもしれないし、等身大の「ゆるキャラ」だって戦隊シリーズの奇天烈な怪人みたいに無意味に巨大化すれば気味悪い。アヤやソンちゃんを撮っていると、どこからともなく姿を現わすプチ黒は遠巻に弧を描くように(オフサイド・トラップから巧みに逃れるFWのように)間合いを詰めて来るが、こちらから近づこうとして動くと身を翻して遠くへ逃げ去ってしまう。なかなか至近距離では撮り難いネコなのだ。

    ♯279│クー│飼い猫 ── 回転レシーヴにゃん
    常連ネコのクーちゃんはゴロニャン(寝転がりの決めポーズ)の達人でもある。地面に横たわって不意に寝返りを打つ姿は思わぬ珍ポーズを生む。両前肢を下に垂らした幽霊の「うらめしや〜」だったり、腹這いになってゴールを死守するキーパーだったり、片手でボールを上げる回転レシーヴだったり‥‥。お腹を手で撫でると爪を立てて引っ掻き、舌でペロペロ嘗めたり噛みついて来るのは戯れているつもりなのかしら。半世紀近く前の東京オリンピック(1964)で「東洋の魔女」と称えられた女子バレーボール日本代表の主将・河西昌枝さんが亡くなった。「新・サインはV」(1973-4)の躍動する肢体で全国の少年少女をで魅了した坂口良子さんも今年(2013)急逝した。若い頃から躰を鍛えたスポーツ選手も健康的な清純派アイドルも病魔には勝てないのだろうか。ご冥福をお祈ります。「五輪」や「スポ根」とは無縁のネコたちには長生きして欲しいと思う。

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    各記事のトップを飾ってくれたネコちゃん(9匹)のプロフィールを紹介する「ネコ・カタログ」の第31集です。サムネイルをクリックすると掲載したネコ写真に、右下のナンバー表の数字をクリックすると該当紹介文にジャンプ、ネコ・タイトルをクリックするとトップに戻ります。ノラ猫や地域猫、飼い猫を差別しない方針で、これまでに延べ270匹以上のネコちゃんを紹介して来ましたが、こんなにも多くのネコたちが棲息していることに驚かされます。31集の常連ネコはロンとクーちゃん。『ねこみみ〜猫と音楽〜』(音楽出版社 2012)は猫耳つきカチューシャではなく、サブ・タイトルの通り「ネコと音楽」に思いを馳せた猫本(ネコ・ムック)。洋楽度は低いけれど、「猫イラストレーター、ルイス・ウェインの猫ジャケ」「シューゲイザーと猫」「猫レーベル紹介」など、ネコとロックの親和性を物語る記事が詰まっている。「定番! 猫ジャケ100選」にはJohn Lennonから遠藤賢司まで、『猫ジャケ 素晴らしきネコードの世界』(レコード・コレクターズ 2008)の二番煎じにならないように選ばれたと思しき100枚を選出。スニンクスで紹介したネコードも10枚あります。


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    • 記事タイトルの右に一覧リストのリンク・ボタン(黒猫アイコン)を付けました^^

    • オリジナル写真の横縦比は3:2ですが、サムネイルは4:3にリサイズしています
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    ねこみみ〜猫と音楽〜(CDジャーナル・ムック)

    ねこみみ〜猫と音楽〜(CDジャーナル・ムック)

    • 著者:ねこみみ編集部
    • 出版社:音楽出版社
    • 発売日:2012/09/22
    • メディア:ムック
    • 目次:観て楽しむ猫と音楽 / 定番! 猫ジャケ100選 / ネコメンド! にゃんこサントラに進路を取れ! // 聴いて楽しむ猫と音楽 / 必聴! 猫ソング100選 necoTunes / 検証! 猫の好きな音楽とは? // 歩いて楽しむ猫と音楽 / ぶらり猫散歩~谷根千 嶺川貴子 / よりみち 猿山修 猫グッズ紹介 // 読んで楽しむ猫と音楽 / 猫とアーティスト/インタビュ...

    サイバー・キャット 18

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    ゴム底魂

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  • Norwegian Woodというタイトルに関してはもうひとつ興味深い説がある。ジョージ・ハリソンのマネージメントをしているオフィスに勤めているアメリカ人女性から「本人から聞いた話」として、ニューヨークのとあるパーティーで教えてもらった話だ。/「Norwegian Wood というのは本当のタイトルじゃなかったの。最初のタイトルは "Knowing she would" というものだったの。歌詞の前後を考えたら、その意味はわかるわよね?(つまり、"Isn't it good, knowing she would?" 彼女がやらせてくれるってわかってるのは素敵だよな、ということだ)でもね、レコード会社はそんなアンモラルな言葉は録音できないってクレームをつけたわけ。ほら、当時はまだそういう規制が厳しかったから。そこでジョン・レノンは即席で、Knowing she would を語呂合わせで Norwegian Wood に変えちゃったわけ。そうしたら何がなんだかわからないじゃない。タイトル自体、一種の冗談みたいなものだったわけ」。真偽の程はともかく、この説はすごくヒップでカッコいいと思いませんか? もしこれが真実だとしたら、ジョン・レノンって人は最高だよね。
    村上 春樹 「ノルウェイの木を見て森を見ず」


  • 《Rubber Soul》(Parlophone 1965)のカヴァに写っているファブ・フォーは自動車のボンネットや凸面鏡に映った肖像のようにメタモルフォーゼしている。ロバート・フリーマン(Robert Freeman)が写真をアルバム大のカードにスライド投影した時にカードを少し後ろに反らしたことから偶然生まれたという。左上の「RUBBER SOUL」というオレンジ色のロゴと相俟ってサイケデリックなイメージを醸し出している。アルバム・タイトルは「ゴム底靴」(rubber sole)と、ミック・ジャガーの歌を聴いた黒人ミュージシャンが揶揄した言葉「プラスティック・ソウル」のモジリらしい。オリジナル・ステレオ盤は左にインスト、右にヴォーカルという中抜けミックスで、Andy Partridge(XTC)がパンで遊んだと述懐しているように、右チャンネルをオフにすると即席カラオケになったのだ。リマスター盤(2009)は初CD化(1987)の際にジョージ・マーティンがミックスしたステレオ・ヴァージョンが使われている。

    ◎ Drive My Car
    「ラバー・ソウル」というアルバム・タイトルの通り黒人音楽(R&B)を意識したモータウン風の曲。Paulのヴォーカル、ベース、Johnのタンバリン、コーラス、Georgeのギター、Ringoのドラムス、カウベルという編成で、Paulは間奏のスライド・ギターとサビに挿入されるピアノも弾いている。女優(スター)志望の女の子が「私のクルマを運転させてあげるわ」と「ボク」を誘うけれど、「まだクルマは持っていないの」というオチがあることから想像すると、「私のクルマ」がセクシャルなメタファである可能性も高い。乗り心地が良いのは「クルマ」ではなく「カラダ」だったりして。「Beep, beep, beep, beep, yeah」というクラクション音を模した陽気なコーラスや弾むビートは街中をドライヴする若い恋人たちを想わせるが、実際の2人はクルマには乗っていないわけである。目には見えないエア・カーだったりして?

    ▢ Norwegian Wood (This Bird Has Flown)
    村上春樹の長編小説『ノルウェイの森』(1987)で有名になった曲だが、邦題は誤訳で正しくは「ノルウェー製の家具」(ウッド調の部屋)という意味である。北欧風の調度のある彼女の部屋に一晩泊ったという私小説風のストーリ。Johnの内省的な歌詞からは〈Drive My Car〉のような夢見る恋人との愉しいデートではなく、愛人との秘めた情事を連想させなくもない。浴室に追いやられた「ボク」が腹いせに放火したという物騒なオチまでついているのだから‥‥。シタールが使用されたことでも知られる曲だが、Georgeはメロディを弾いているだけで、まだインド音楽への傾倒は感じられない。Johnのヴォーカル、ギター、Paulのベース、コーラス、Ringoのバスドラム、タンバリン、フィンガー・シンバル。伴奏のアクースティック・ギターは2フレットにカポタストを付けてDコード・フォームで弾いている。キーはEメジャーだが、サビでEmに転調する。村上春樹はエッセイ『雑文集』(2011)の中で「Knowing she would」(彼女がやらせてくれると分かっている)の語呂合わせだという説を紹介している。

    ◎ You Won't See Me
    セッションの最終日(1965.11.11)に録音された新曲の1つなのに、差し迫った緊張感よりもリラックスした余裕さえ感じられる。Paulのヴォーカル(ダブルトラック)、ベース、ピアノ、Johnのギター、Ringoのドラムス、タンバリン、ハイハット。PaulをサポートするJohnとGeorgeのハーモニーも美しい。ロード・マネージャーのマル・エヴァンズ(Mal Evans)がハモンド・オルガンで参加している。電話をしても話し中、話しかけても無視される、逃げ回って会ってくれない‥‥という切ない失恋ソングだが、視点を変えると執拗に付き纏う「ボク」はストーカーのような存在にも見えて来る。Aメロからサビへ継ぎ目なくスムースに移行する流麗なメロディはPaulならではのソング・ライティング。エンディングでは軽快なテンポの歌も力尽きたようにフェイド・アウトして行く。

    ▢ Nowhere Man
    John、Paul、Georgeの3声アカペラ・ハーモニーから始まる美しい曲。何時間も艱難辛苦しても何も思いつかず、諦めて横になった途端に閃いたという、どこにもない世界で空疎な計画を立てている孤独な男の歌。Paulの〈Fool On The Hill〉にも相通じる不可解な男の寓話風の物語だが、Johnの「ひとりぼっちのあいつ」には爽やかな曲調とは裏腹にカフカやカミュのような不条理感が漂う。アニメ映画『Yellow Submarine』(1968)では航海中のファブ・フォーがジェレミー(Jeremy Hilary Boob)と出遭うシーンで歌われる。Johnのヴォーカル(ダブルトラック)、12弦アクースティック・ギター、Paulのベース、Georgeのリード・ギター、Ringoのドラムス。絶体絶命の窮地から放った虚無の一撃のような大ドンデン返しである。「どこでもない」(No where)の中に「今ここに」(Now here)という真逆の意味が隠れているという真しやかな説もある。

    △ Think For Yourself
    〈嘘つき女〉という邦題が表わしている通り嘘ばかりつく不実な恋人に三行半を突きつけるGeorgeの容赦ない曲。〈You Won't See Me〉の未練がましい失恋男とは対照的な歌詞だが、本人の述懐によると特定の女性へ宛てたものではなく、〈Taxman〉と同じく当時の政府や権力に対して歌ったものらしい。Georgeのヴォーカル、ギター、マラカス、Paulのベース、Johnのエレクトリック・ピアノ、Ringoのドラムス、タンバリン。Georgeの皮肉っぽいヴォーカルにJohnとPaulがコーラスを添えている。サウンドを特徴づけているファズ・ベース(ファズ・ボックスに通したベース)を弾いているのはPaulで、辛辣な内容に相応しいノイジーで攻撃的な音になっている。キーはGだが、Am→D→B♭→C→Gというコード進行には転調したような奇妙な感じがある。

    ▢ The Word
    口に出すと自由になれる、僕のようになれる、その言葉とは?‥‥それは「愛」。ファブ・フォーは〈She Loves You〉のような男女間の恋愛ではない普遍的な「愛」を歌っている。抽象的すぎて生硬なところもあるけれど、〈All You Need Is Love〉で開花する「ラヴ&ピース」の種子のような曲である(Plastic Ono Bandの〈Give Peace A Chance〉では「Give the word a chance to say」という一節の「the word」を「peace」に置き換えた)。JohnとPaulのツイン・ヴォーカル(3度ハーモニー)で始まり、サビでJohnのソロになる。Johnのギター、Paulのベース、ピアノ、Georgeのリード・ギター、Ringoのドラムス、マラカス。後半のハーモニウムはジョージ・マーティンが弾いている。Johnの家で作曲して、マリファナでラリッた2人(John&Paul)がサイケデリックな色を塗った歌詞原稿はヨーコを通じてジョン・ケージ(John Cage)の手に渡ったという逸話も残っている。

    ◎ Michelle
    歌詞の2連目をフランス語で歌ったPaulの甘いラヴ・バラード。半音階で下降するのコード進行(クリシェ)、チェット・アトキンス奏法によるアクースティック・ギター(キーはFだが、5フレットにカポタストをしてCフォームで弾いている)など、Paulのエッセンスが凝縮されている。もっともJohnによると「I love you, I love you, I love you」と連呼するブリッジの部分はNina Simoneの〈I Put A Spell On You〉からヒントを得た自分のアドヴァイスだというのだが。Paulのギター、ベース、Georgeのリード・ギター、Johnのギター、Ringoのドラムスというアクースティック・サウンド。John、Paul、Georgeの3声コーラスもアンニュイで、フランスの恋愛映画を観ているようなロマンチックな雰囲気に包まれる。仏語を入れたのは英語の通じないフランス人の恋人(ミッシェル)へのラヴ・ソングという設定だから。「ミッシェル、ボクの美しい人。並びの良い言葉だね」という英・仏の歌詞は文字通り、「Michelle, ma belle」で脚韻を踏んでいるから。

    ☆ What Goes On
    Ringoが歌うカントリー調のナンバーはJohnがデビュー前(1962?)に書いていた曲にPaulとRingoが加わり、新たにサビを作って完成させたという。「5つの単語を提供した」と謙遜するRingoが作曲者として初めてクレジットされた記念すべき曲(Lennon-McCartney-Starkey名義)でもある。Ringoのヴォーカル、ドラムス、Johnのギター、Paulのベース、Georgeのリード・ギター。JohnとPaulがコーラスでRingoを好サポート。Georgeはイントロや間奏で得意のカントリー・スタイル(チェット・アトキンス奏法)のギターを披露している。お蔵入りした古い曲(1963年3月に録音する予定だった)をリメイクしたのは新アルバムの発表まで後1カ月しかなかったいう差し迫った裏事情もあるらしい。

    ▢ Girl
    「ラバー・ソウル」セッションの最後にレコーディングされたJohnの曲。〈Michelle〉と良く似たアクースティック・サウンドで、それぞれ固有名詞と普通名詞の女性をタイトルにしている。しかし、同じ女性名でも具体的なフレンチ娘の「ミッシェル」よりも抽象的な「少女」の方が逆に生々しい印象を残す。キリスト教に懐疑的だったJohnらしい曲で、「Was she told when she was young that pain would lead to pleasure」という最終連の歌詞は〈Imagine〉への萌芽が見られる。Johnのヴォーカル、アクースティック・ギター、Paulのベース、Georgeのアクースティック・ギター、Ringoのドラムス。PaulとGeorgeがバック・コーラスで「おっぱい」(tit)と歌っているのはPaulのアイディア。深く息を吸うJohnのブレス音はドラッグの吸引を示唆しているのだろうか。

    ◎ I'm Looking Through You
    当時の恋人だったジェーン・アッシャー(Jane Asher)と喧嘩したPaulが心情を吐露した曲。お互いの擦れ違いや仲違いで別人のように変わってしまった恋人のことを、まるで透明人間になってしまったかのように「君の向こうが透けて見える」と表現したところがユニーク。アリスは鏡を通り抜けて夢の国へ行ったが、Paulには恋人の向こうの現実世界しか見えない。生身の人間なのに実体が伴わないという女性像はJohnの描く「愛人」や「少女」とは対照的である。Paulのヴォーカル(ダブルトラック)、ベース、Johnのアクースティック・ギター、Georgeのリード・ギター、タンバリン、Ringoのドラムス、ハモンド・オルガン。調子っ外れの手拍子をパーカッションのように使っているのも面白く、辛辣な歌詞に反して陽気で愉しげな雰囲気さえある。

    ▢ In My Life
    Johnによると少年時代に乗っていたリヴァプールの路線バスが通る場所(地名)を折り込んだ曲を作ろうとしていたが馬鹿らしくなって、改めて場所や友人や恋人たちを回想して書いたという。ハーモニーとミドル・エイトはPaulに手伝ってもらったと言うが、Paulもメロディの殆どは自分が作ったと主張して譲らない。いずれにしても数多くの曲を別々に作詞・作曲していた「Lennon & McCartney」の中では数少ない「共作」ということになるのかもしれない。Johnのヴォーカル(ダブルトラック)、アクースティック・ギター、Paulのベース、Georgeのギター、Ringoのドラムス、タンバリン。PaulとGeorgeのコーラス。間奏のクラシカルなピアノはジョージ・マーティンがテープ・スピードを半分に落として録音し、倍速で再生している。歌詞の中に出て来る「死んだ友人たち」の1人はスチュアート・サトクリフ(Stuart Sutcliffe)のことだと言われている。少年時代の回想は〈Strawberry Fields Forever〉や〈Penny Lane〉へ続く重要なテーマである。

    ◎ Wait
    「ヘルプ!」セッションの最終日に録音されたものの、アルバムには収録されなかったボツ曲。お蔵入りの曲を再び採り上げたのは締め切りが迫っているのに1曲足らなかったから。14曲という曲数は今日的には過不足ないような気もするが、60年代当時は演奏時間も2〜3分と短く、全14曲(A・B面7曲)でも36分しかなかった(間引き編集された米キャピトル盤は12曲、29分!)。同時にリリースされた両A面シングル盤〈Day Tripper〉〈We Can Work It Out〉はアルバムに収録しないという不文律もあった。ツイン・ヴォーカル(主旋律はJohn)で、サビの8小節はPaulが歌っている。Johnのギター、Paulのベース、Georgeのギター、Ringoのドラムス、マラカス、タンバリン。ヴォーカル・パートをJohnと2人で分け合った共作だが、Paulは自分1人で書いたと発言している。

    △ If I Needed Someone
    12弦ギターの響きが美しいGeorgeの曲。Dコードのリフで作られた曲(キーはAで、7フレットにカポタストをしている)の1つだという。〈Only A Northern Song〉などと良く似た浮游感のあるメロディで、いわゆるハリスン節が炸裂している。GeorgeはThe Byrdsのアルバムに収録されていた〈The Bells Of Rhymney〉のギター・リフを元にして曲を作ったが、そもそもロジャー・マッギン(Roger McGuinn)自身はGeorgeに影響されて12弦ギターを使うようになったというのだから面白い(アルバムのリリース前、Georgeは承諾を得るために録音テープをロジャー・マッギンの許へ送った)。Georgeの12弦ギター、Paulのベース、Ringoのドラムス、タンバリン。John、Paul、Georgeの3声コーラスもギターの音色に負けず麗しい。

    ▢ Run For Your Life
    エルヴィス・プレスリー(Elvis Presley)のヒット曲〈Baby Let's Play House〉の歌詞の一節「I'd rather see you dead, little girl, than to be with another man」を冒頭に引用したJohnの曲。「他の男と一緒になるくらいなら、死んでくれた方がまし」と毒づく生まれつき嫉妬深い男の歌。Johnも「歌詞が最悪」と嫌っていたが、締め切りに追われて安直に作ったわけではなく、セッションの初日にレコーディングされている。Johnのヴォーカル、アクースティック・ギター、Paulのベース、スライド・ギター、Georgeのギター、Ringoのドラムス、タンバリン。PaulとGeorgeのコーラスが脅迫じみた男の脅しを和らげる。邦題は「浮気女」となっているが、原題の「Run For Your Life」は命懸けで逃げろという意味。今日で言うところの女性に暴力を振う「DV男」のイメージでしょうか。

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    • ▢ John Lennon ◎ Paul McCartney △ George Harrison ☆ Ringo Starr
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    Rubber Soul

    Rubber Soul

    • Artist: The Beatles
    • Label: EMI UK
    • Date: 2009/09/09
    • Media: Audio CD
    • Songs: Drive My Car / Norwegian Wood (This Bird Has Flown) / You Won't See Me / Nowhere Man / Think For Yourself / The Word / Michelle / What Goes On / Girl / I'm Looking Through You / In My Life / Wait / If I Needed Someone / Run For Your Life


    ザ・ビートルズ全曲バイブル ── 公式録音全213曲完全ガイド

    ザ・ビートルズ全曲バイブル ── 公式録音全213曲完全ガイド

    • 編者: 大人のロック!
    • 出版社:日経BP社
    • 発売日: 2009/12/07
    • メディア:ハードカヴァ
    • 目次:英米公式全作品の系譜 / 公式録音全213曲徹底ガイド(2トラックレコーディング時代〜ライヴ演奏スタイルでの録音/ 4トラックレコーディング時代 1〜アレンジの幅が広がりサウンドに深み / 4トラックレコーディング時代 2〜バンドの枠を超えた録音の始まり / 4トラックレコーディング時代 3 〜ロックを芸術の域に高める/ 8トラックレコーディング時代へ〜サウンドと作品の多様化 / 8トラックレコーディング時代〜原点回帰...と円熟のサウンド)/ 録音技術の変化と楽曲解析方法


    村上春樹 雑文集

    村上春樹 雑文集

    • 著者:村上 春樹
    • 出版社:新潮社
    • 発売日: 2011/01/31
    • メディア:単行本
    • 目次:前書き──どこまでも雑多な心持ち / あいさつ・メッセージなど / 音楽について /『アンダーグラウンド』をめぐって / 翻訳すること、翻訳されること / 人物について / 目にしたこと、心に思ったこと / 質問とその回答 / 短いフィクション──『夜のくもざる』アウトテイク / 小説を書くということ / 解説対談 安西水丸×和田誠

    サイボーグ 009ノ5

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  • ‥‥タイタン、キュクロペス、プロメテウス、ギリシャ神話の巨人たちだが‥‥こうした巨人族に関する神話や伝説の類いはどこの国にもある‥‥。──またスペインの年代記にはマヤ族の神殿で発見した巨人の骨のことが記録されているのだが‥‥。──で‥‥「かつて地球には巨人が実在した」という仮説が生まれる。伝説や古記録にも残るほど、かれらは相当の期間われわれ人類と同じ時間を生きていたのだというわけだ!──〈ジャイアントピテーク〉の化石は1966年9月インドの生物学者たちによってパンジャブ州チュウルチャオンのボクハ村で発見された。──体長4メートル、肋骨の長さ1メートル。──たとえばバビロニアから発掘された粘土版には "あらゆる知識は巨人によってもたらされた" とあった。‥‥こうなるともはや伝説とはいえなくなってくる‥‥。そして、また──その仮説の科学的な裏づけもある‥‥。人類学でいうところの〈メガントロープ〉や〈ジャイアントピテーク〉‥‥。さよう‥‥ということは巨人は実在した──と断定してもいいということだ。
    石森 章太郎 「北の巨人コナン編」


  • 「北の巨人コナン編」(週刊少年サンデー 1979)
  • カラー・イラストやアニメなどで見ることが出来るゼロゼロナンバー・サイボーグたちのユニフォームは真紅で首に巻いたマフラーは黄色、髪の色は人種や国籍によって異なるが、島村ジョー(009)は赤味がかったブロンドだった。ところが通常のモノクロ・ページではグレー(アミ)だった009のヘア・カラーが白くなってしまった。塗り絵のような白い髪は少し肥ったような体型以上に違和感がある。札幌空港に降り立ったギルモア博士と島村ジョーは右京博士の助手・滝沢レミに出迎えられる。考古学者の右京博士がギルモア博士に見せたいものがあると連絡して来たのだ。北海道の大雪山で新しいスキー場のための山小屋やホテルの建設工事中に「古墳」らしきものが見つかったという。「アイヌ民族(北方民族)と日本人の繋がりを解く大発見?」かもしれない。調査団が発見したのは巨大な石棺の中に安置された巨人だった。

    全身に縫合手術の傷痕があるフランケンシュタインのような怪物は改造人間(サイボーグ)か、あるいは人造人間(ロボット)ではないかと右京博士は推論するが、ギルモア博士が説明したように神話や伝説に登場する巨人族の末裔である可能性も否定出来ない。しかし、目覚めて動き出した巨人コナンは新聞記者を騙って潜入した花角博士の造ったサイボーグ、始末されるはずだった失敗作のデク人形だった。花角博士が石棺の中にコナンを隠したのだ。出来の悪いコナンは造物主の花角博士をパパと思い込み、滝沢レミをママと勘違いして殺してしまう。「新・黒い幽霊団」(ネオ・ブラック・ゴースト)の新しい計画だと知った009は泣き叫んで狂乱するコナンをダイナマイトで破壊する。爆発のショックで雪崩が起こって「古墳」は雪に埋もれてしまう。「ボクも──身体の半分は機械‥‥「新・黒い幽霊団」に改造されたキミとは "兄弟" の──改造人間なんだよ‥‥」。

                        *

  • 「黄金の三角地帯編」(週刊少年サンデー 1979)
  • アメリカへ旅立つギルモア博士を見送った帰りに、東京・新宿の中華飯店「張々湖」に立ち寄った島村ジョーは張大人(006)と旧交を暖め、ギルモア研究所のフランソワ(003)に電話で連絡する。その直後、出刃包丁を握りしめた強盗が「張々湖」に押し入る。2人がヤク中の青年を捕らえるとパトカーのサイレンが鳴って、近所の五菱銀行新宿支店に散弾銃を持った若い男が行員を人質にして立て籠ったことを支配人が張々湖に報せる。ジェット・リンク(002)がギルモア博士をNYのブロンクスに連れて行く。戦闘服に着替えた009が銀行に潜入して人質犯を倒す。ドクター・コヤナギと再会したギルモア博士。ジェロニモ・ジュニア(005)に後を任せたジェットはマックスのアパートを訪れるが、荒んだ部屋には誰もいない。ジェットの姿を見て逃げ出した黒人のジムから「世界至福教会」のハルヴァ神父に仲間たちが殺されていると聞かされる。

    ジェットに掴まって問い詰められてもシラを切る神父は救急車の救助隊員に射殺されてしまう。ギルモア邸に戻った島村ジョーにハインリヒ(004)から国際電話が来る。グレート・ブリテン(007)と一緒にロンドン滞在中のハインリヒは「フレンチ・コネクションが最近奇妙な動きを始めた」という情報をジョーに伝える。事件はグレートがシアター・クラブの出演中に起こった。麻薬常習者の踊り子がヤクの売人を射殺してしまったのだ。ネズミに変身した007がフレンチ・コネクション幹部の会話を盗み聞きしたところによると、「黄金の三角地帯」を "影の存在" が支配しているという。走り去った救急車の後を追ったジェットは拉致した若者たちを「黄金の三角地帯」へ輸送していることを神父の一味から聞き出す。ハインリヒがアフリカのセレンゲティで密猟取締官をしているピュンマ(008)を呼び出して全員集結した9人のサイボーグ戦士たちはギルモア博士と共に新ドルフィン号に乗り込み、ビルマを中心にタイ、ラオス、中国などの国境が接する「黄金の三角地帯」へ向かう。

    ビルマ山岳地帯の小村に着いた009たち一行はKMT国民党に襲撃される。国民党の隊長によると政府軍が麻薬撲滅運動のスローガンを掲げる一方、「影の軍隊」が別ルートで政治屋どもを操っているという。「影の軍隊」に奇襲攻撃された009たちはドルフィン号に乗り組み、隊長の案内でケシを栽培してアヘンやヘロインを精製している地下工場を目指す。「影の軍隊」との戦闘中、009は拉致された父親と兄を救けに行く少年・段茂修と出会う。少年の道案内で地下工場内に潜入した009たちはケシ畑で強制労働させられている若者たちを救出し、時限爆弾を各所に仕掛けて爆破させる。「影の軍隊」と地下工場は破壊されるが、視察に来ていた「新・黒い幽霊団」の閣下だけは黒い専用機で脱出する。「‥‥もし、すぐこの時に追跡していたら──9人のサイボーグ戦士たちにとっては、最後の闘いとなるはずの "神々" との出会いがもう少し、早くなっていたことであろう‥‥」。

  • 「サルガッソー異次元海編」(少年ビッグコミック 1979)
  • ギルモア研究所が黒い戦闘機に空襲される。009、004、007、008の4人はドルフィン号に乗り込んで迎撃に向かう。海中から浮上して飛行態勢に入る。ドルフィン号が撃墜したプロペラ機は第2次世界大戦中(1945)に「魔の三角海域」で行方不明になったTBMアヴェンジャー機だった。002が捕虜にしたパイロットは「キサマたちは世界の平和を乱す敵だと言われた。だから殺せと‥‥」と告げる。怒った006が防護マスクを脱がすとパイロットは瞬く間に老化して死ぬ。009のどこから来たのだという問いかけに「サルガソー」という謎の言葉を呟いて。原子力潜水艦WWP593スレッシャー号が魚雷を発射する。原潜の後を尾けて行った場所は消失した「船の墓場」。船上から銃撃して来たのはサルガッソー異次元海に捕らえられた人間たちだった。ある日、使者と名乗る髑髏マスクの男が現われて、009たちを殺すという条件を呑めば異次元空間と正常空間を自由に出入り可能な〈人工トンネル〉のメカニズムを使って諸君たちを解放しても良いと言う。異次元空間に現われたスレッシャー号が魚雷を放ち、ドルフィン号は爆発の衝撃で正常空間に吹き飛ばされる。

                        *

  • 「極北の幽霊編」(週刊少年サンデー 1979)
  • 198X年、アラブ首長国連邦のアブダビ油田で原油が固形化してしまう。ニューヨーク、パリ、ロンドンは同時に大吹雪に見舞われ、オーストリア、インド、アフリカでは大暴風雨が荒れ狂う。世界中の油田がストップして、異常気象が発生!‥‥東京は停電になって暴動が起こった。中華飯店が暴徒に襲われて張々湖がギルモア研究所に逃げ帰って来る。太陽熱発電のギルモア邸に集結したゼロゼロナンバーたちは「新・黒い幽霊団」の仕業ではないかと疑う。厨房に侵入した強盗2人組を003と006が撃退する。「世界の7大都市は今やすべて無人の廃墟と化しつつあり」‥‥1日に3回、5分間だけ放送されるTVニュースの映像が混信してレーダーは狂い、電波望遠鏡にも怪電波が流れる。幸い電離層の抜け出たのは軍事用核ミサイルではなく、宇宙空間へ向かったロケットだった。突然目覚めた001が2つの地点で受信した同一電波の干渉具合から発信源を割り出せるとギルモア博士に教える。

    1人の女性がギルモア研究所を訪れる。世界中にパニックが起こったら、ギルモア博士を訪ねるようにという手紙を「母親」から受け取った栗島安奈は同封されていたメモを手渡す。「北緯84度10分、西経160度15分」‥‥メモに記されていた数字はコンピュータが解析した妨害電波の発信源と全く同じだった。施設で育てられたアンナは死んだと聞かされた母親に会えるのではないかと思い、009に一緒に連れて行って欲しいと願い出る。ドルフィン号はジェット気流に乗って北極アメラシアへ向かう。009、002、007の3人が偵察に出る。002が動物たちの死骸を上空から発見する。3人の目の前で電磁バリアーに触れた北極キツネがレーザーガンに自動照準されて焼け死ぬ。少し離れた地点に着氷したドルフィンII号から006が来て地下の氷を溶かす。トンネルを降りた009たちが見たのは電磁バリアー・ドームで防御された巨大な地下基地だった。周囲の氷が溶けてドルフィンII号が海中に沈み、再び氷の中に閉じ込められる。

    009たちが容易く地下基地に潜入出来たのは004が察した通り敵のワナだった。ギルモア博士や003を人質に取られて捕虜となってしまった009たち。基地内にあるスペース・シャトル、核融合炉室、重水タンク庫などを敢えて見学させたのはギルモア博士に「私の現在の力を知ってもらうためなのよ」と「新・黒い幽霊団」の女ボスが嘯く。彼女はドイツの理科学研究所で理論物理学を専攻し、第2次大戦中ナチスに招かれて水爆を完成させ、戦後アメリカに渡ってMIT(マサチューセッツ工科大学)の研究所長となり、1970年夏アラスカで休暇中に行方不明になった、かつてギルモア博士の同僚として「黒い幽霊団」の研究所で働いていた天才女性科学者ジュリア・マノーダだった。我々の仲間にならないかという誘いをギルモア博士は拒絶する。母親と初対面したアンナは両手を拘束している電磁ロックを解かれると豹変してレイガンを奪い、ジュリア・マノーダに銃口を向ける。

    レーザー・ビームが母親の顔面を直撃すると右半分を覆っていた仮面と黒いサングラスが外れて、ケロイド状に焼け爛れた醜い顔が露わになる。顔の疵痕は子供の頃に弟と火薬を作っていて遊んでいる時の爆発によるものだった。弟は即死し、姉も顔面に大火傷を負う。世界を支配するというジュリア・マノーダの野望は組織の裏切りや整形手術に失敗したギルモア博士に対する復讐心からだった。弟を殺してしまったという火傷以上の深い傷を心に負ってしまったジュリアは恋心を抱いていたギルモア博士や娘のアンナにまで拒絶されて自暴自棄となり、自爆ボタンを押す。中央制御室で再び対峙したアンナは自らの命を絶って母親を正気に戻す。ジュリアは固形化した石油を液化する方法をギルモア博士に告げ、狂った気象制御衛星を破壊することでブリザードやハリケーンなどの異常気象を静める。爆発した北極アメラシアの地下基地から脱出したドルフィン号にオーロラの幕が静かに降りる。

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  • 「愛の氷河編」(週刊少年サンデー 1979)
  • 「週刊少年サンデー」に連載された短篇読み切りシリーズはゼロゼロナンバーたち1人1人を主役にしたエピソード集である。改造能力を自ら封じて登山に挑むジェット・リンクは切り立った崖から落ちて飛行能力を使わざるを得なかった。吹雪の吹き荒む中、避難用の山小屋に辿り着いたジェットは先在者の娘エヴァ・クラインと出会う。ヘリコプターを雇って山頂まで来た彼女は朝日の昇るところと夕陽の沈む光景を1度眺めてみたかったと言う。就寝中に高熱を発したエヴァに余り時間は残されていなかった。医者に余命1カ月と宣告されたからだ。山小屋のバルコニーから朝日を見つめるエヴァとジェットの2人。夕陽を見た夜にエヴァはバルコニーから身を投げてしまう。ジェットの飛行能力でも救うことは叶わなかった。「生命のない女と──部品さえ交換さえすれば、いつまでも生きられる男の出合い」‥‥ジェットはエヴァの亡骸を抱いて空を飛び、氷河の中に埋葬する。

  • 「機々械々編」(週刊少年サンデー 1979)
  • 古城で自分と瓜二つの敵と闘うアルベルト・ハインリヒ。稲妻と雷鳴の夜、ズブ濡れのギルモア博士がハインリヒの許を訪れる。ある実験のために頼まれて004と全く同じ戦闘能力を持つロボットを造ったが、制御不能に陥って逃げ出してしまったというのだ。マシンガン腕、レーザー・メス、小型ミサイル、レーダー耳、照準眼‥‥互角の能力を備える者同士の対決ならば長引けば長引くほど半機械人間の004の方が不利に働く。戦闘マシンとしては敵の方が絶対有利なはずだ。2人の違いはサイボーグとロボット‥‥フクロウの巣を無造作に踏みつけたロボットは母鳥に襲われて左腕のレーザー・メスで斬り殺す。その瞬間だけ攻撃が遅れ、004の右腕マシンガンで破壊される。人間ならば騒がしく鳴くフクロウの雛を情け容赦なく踏み潰したりはしないだろう。逆に鳴き声が途絶えたことで、004に位置を知られたのだ。手の込んだ対決を仕組んだギルモア博士も生身の人間ではなく、ロボットだった。

  • 「眼と耳編」(少年ビッグコミック 1979)
  • 崖から飛び降りた青年の叫び声をフランソワーズ・アルヌールが聴く。落下の途中で松の木にぶつかり、岩場に倒れていた青年をジェロニモ・ジュニアが救出する。一命を取り留めた青年は目覚めるとフランソワーズが名乗る前に彼女の名前を口にする。絵の勉強のためにパリに留学したユウジは才能にも恵まれず、捨てて行った日本の恋人は自殺し、パリジェンヌも利用してダメにした。慰めるフランソワーズの肩に手を触れたユウジは島村ジョーという恋人の存在を知る。崖から落ちた時に頭を打った後遺症なのか、テレパシー能力に目醒めてしまったユウジ。就寝中に魘された青年はフランソワーズに幽霊が、昔の恋人の亡霊がボクを呼んでいると告げる。フランソワーズに救いを求めるユウジ。自殺した恋人の京子がフランソワーズを殺してと命じる。彼女を刺して逃走したユウジの前に1人の女が現われる。同じ能力を持った仲間を集めていると話す女性。009と005は逃げたユウジを追うが、組織の男たちに行く手を阻まれる。崖の上のユウジは女を道連れに眼下の海へ落下する。

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    • 「石ノ森シリーズ」の第14弾は「サイボーグ・ゼロゼロナイン5」です^^

    • 「石ノ森章太郎萬画大全集」(角川書店 2007)をテクストに使いました
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    サイボーグ 009 17 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 8-1

    サイボーグ 009 17 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 8-1

    • 著者:石森 章太郎
    • 出版社:角川書店
    • 発売日:2007/11/30
    • メディア:コミック
    • 目次:北の巨人コナン編 / 黄金の三角地帯編 / サルガッソー異次元海編 / イラストコレクション


    サイボーグ 009 18 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 8-2

    サイボーグ 009 18 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 8-2

    • 著者:石森 章太郎
    • 出版社:角川書店
    • 発売日:2007/11/30
    • メディア:コミック
    • 目次:極北の幽霊編 / 愛の氷河編 / 機々械々編 / 眼と耳編 / イラストコレクション

    アルゼンチン・ミュージック

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    アルゼンチン=タンゴという旧来のイメージはゼロ年代に入ってから完全に払拭された。今は亡きヴァージン・メガストア新宿で《Segundo》(Blabla 2000)に出逢った時の衝撃は忘れられない。「アルゼンチン音響派」と称されることになるJuana Molinaのアルバム。倉多江美の自画像みたいなイラスト・カヴァのデビュー・アルバムが不如意だったという彼女の放った面目躍如たる2ndアルバムだった。金髪が横顔を覆い隠すミステリアスなカヴァ・アートも斬新で、決して素顔を晒さない「ヘン顔の女たち」は最新6thアルバム《Wed 21》(Crammed Discs 2013)まで継承されている。『アルゼンチン音楽手帖』(DU BOOKS 2013)は2000年以降にリリースされたアルバム250枚を「オール・ジャンルで紹介した本邦初のディスク・ガイド」本。音響派、コンテンポラリー・フォルクローレ、エレクトロニカ、ジャズ、ロック、ポップス、タンゴなどを「水」「風」「光」「空」「大地」という5つの章に振り分けて構成。21世紀のアルゼンチン・ミュージックはボルヘスやイサベル・アジェンデなどのラテン・アメリカ文学と同じような血湧き肉躍る知的興奮で魅了する。

  • ◎ Ventanas(Calle Angosta 2009)Aca Seca Trio
  • Juan Quintero(ギター)、Andres Beeuwsaert(ピアノ)、Mariano Cantero(ドラムス、パーカッション)によるトリオの強みは3人が歌えること。3rdアルバムの中でも美しいヴォーカル・ハーモニーのアカペラ〈Pobre Mi Negra〉を披露しているし、フルートやチェロ、コントラバスを配した室内楽風のインスト〈Distancia〉も演奏する。Juan Quinteroが洒脱にスキャットする〈Pasan〉、Liliana Herrenoの凄みのあるヴォーカルを3人のコーラスが好サポートした〈Cancion De Las Cantinas〉、フレット・ベースが躍動する6拍子の〈Esa Tristeza〉、Tatiana Parraが優しく歌う〈Casa〉‥‥。ジャズというよりも洗練されたコンテンポラリー・フォルクローレでリスナーを魅了する。リニューアル・カヴァのリイシュー盤(2011)にはライヴDVDを同梱した2枚組もリリースされている。

  • ◎ Aguaribay(Cecilia Zabala 2007)Cecilia Zabala
  • 透明な高音ヴォイスが澄み切った青空に広がり、軽やかなアクースティック・ギターの音色が爽やかな風に乗って流れて行く。ブエノス・アイレス生まれの女性SSW、Cecilia Zabalaのデビュー・アルバムには全15曲(オリジナル7曲、カヴァ8曲)を収録。彼女の顔(唇)とギターの一部がトリミングされているアルバム・カヴァ写真が示唆しているように、全編ギター弾き語りのスタイルで、それ以外の楽器は全く使用していない。シンプルこの上ない「声とギター」だけのサウンドなのに平板でも凡庸でもないのは、Quique Sinesiに師事したという7弦ギターやレキント(Requinto)という小型高音ギターの演奏が卓越しているからだろう。アルバム・タイトル曲〈Aguaribay〉ではSilvia Iriondoとスキャット、Quique Sinesiとギターで師弟共演し、〈Tango~Incertidumbre〉でJuan Faluと男女デュエットする。Juan Quintero(Aca Seca Trio)やAtahualpa Yupanquiのカヴァも、彼女のオリジナル弾き語り曲と同じようなアレンジで聴かせる。

  • ◎ Zorzal(Los Anos Luz 2005)Axel Krygier
  • 黒地に金色の小鳥(ツグミ)のシルエッットがピカピカ輝く。「アルゼンチン音響派」の1人、Axel Krygierの3rdアルバムはシックなカヴァに反してメチャクチャ愉しい。Fernando Samalea(ドラムス)、Christian Basso(ベース)のリズム隊にAxel Krygierはヴォーカルだけでなく、ピアノ、バンジョー、オルガン、サックス、トランペット、クラリネット、フルート、ローズ・ピアノ、4弦ギター(Cuatro venezolado)、ギター、シンセ、クラヴィネット、サンプラー、ビート・ボックス‥‥というマルチ奏者ぶりを発揮する。Alejandro Franov(シタール)やGaby Kerpel(ダルブッカ・サンプリング)など音響派も多数ゲスト参加している。アフロ、フォルクローレ、ファンク、テクノ、レゲエ‥‥という風に目紛しく変わって行く脱力ミクスチャー、無国籍音楽(エキゾチカ)で、いわゆるアヴァギャン系の難解さは微塵もない。「ジャン、ケン、ポン。あっち向いてホイ!」という日本語も飛び出す茶目っ気ぶりなのだ。

  • ◎ 39°(Los Anos Luz 2007)Lisandro Aristimuno
  • 熱に魘されて描いた絵は平熱に下がってから見直すと、夢から醒めた時のように色褪せてしまうものだが、何か尋常でないものの残滓が妖気のように浮遊していたりする。「39度」と題されたアルバムはLisandro Aristimunoが高熱を発して寝込んでいた時に書き留めたアイディアが元になっているという。チェロ、チャランゴ(Charango)、チューバ、トロンボーン、トランペットなどが奏でる優雅なフォルクローレで始まり、次第に奇妙なエレクトロニカ色へ染まって行く。タップダンスが弾け、逆回転エフェクトが流れるアルバム・タイトル曲〈39°〉、Mariana Barajがコーラスや大太鼓(Bombo legüero)で参加した〈Algun Lado〉。Liliana Herrenoとデュエットする〈El Plastico De Tu Perfume〉。タンゴ歌手のCristobal Repettoが客演した〈El Buho〉ではギターやチェロ、グロッケンシュピール、ロンロコ(10弦ギター)だけでなく、不気味な声で鳴くフクロウまで登場する。まるで朦朧状態の中で見る幻覚や夢の中に出て来るフクロウのようである。

  • ◎ Miniatura(Lucio Mantel 2010)Lucio Mantel
  • 魚貝類やボタンなどを集積コラージュしたアルチンボルド風のトロンプ・ルイユ(騙し絵)は猪や犀の横顔のようにも見える。Lucio Mantelの2ndアルバムは少々グロテスクに見えなくもないカヴァとは対照的にロマンティックな詩情で溢れている。Lucio Mantelのギター弾き語り、Andy Inchaustiのパーカッションにヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、ヴィブラフォン、チューバ、トロンボーン、クラリネット、フルートなどのオーケストラを融合させた優雅で麗しいサウンドに魅惑される。ゲスト・ヴォーカルにLiliana Herreroを迎えた〈Desvelada〉には圧倒されるし、Ezequiel Borraがギタレレ(ミニギター)とコーラスで客演した〈Bailar Con Tu Sombra〉は美しすぎて涙が零れる。Lucio Mantelの中性的なヴォイスは愁いや儚さを湛えているだけでなく、〈Polka Mar〉のように暗鬱なストリングスやAlejandro Teránのクラリネットと混じり合い、退廃的な美までを抽出している。

  • ◎ Mate De Metal(Julian Mourin 2012)Julian Mourin
  • 蛇口から滴るカラフルな水滴が如雨露(カップ)に溜まり、溢れた水(紐)がスパークプラグと反応してアンプ・スピーカーに繋がるという見立ての、どこか空を飛ぶ鳥を想わせるカヴァ・アート。Julian Mourinのソロ・アルバムは思わず一緒に口ずさみたくなる曲が少なくない。Julian Mourinのヴォーカル、ギター、ピアノ、キーボード、パンディロ、プログラミング、コンガ(Tumbandora)、タンボール・ピアノ(Piano Tambor)、トライアングルに、Belen Ile、Ezequiel Borra、Lucio Mantel、Gabi La Malfa、Gato Perezなど、総勢20名以上のゲストたちがヴォーカルやコーラス、ギター、パーカッションで参加。Caetano Velosoを彷彿させる優しいヴォイスと親しみやすいメロディなのに〈Chinchulin〉はサビまで5拍子だったりする。Lenine風の〈Otro Espejo〉は子供たちのコーラスで盛り上がる。12曲+シークレット・トラックとしてアルバム・タイトル曲〈Mate De Metal〉が隠されている。フリー・ダウンロードの「デジタル・アルバム」は1曲多い全14曲入り!

  • ◎ Los Senderos Amarillos(Sony/BMG 2008)Loli Molina
  • ブエノス・アイレス生まれの女性SSW、Loli Molinaちゃんのデビュー・アルバム(当時20歳)。いわゆる生ギター弾き語りタイプの自作自演歌手で、あどけなさの残る顔立ちから発する舌っ足らずのロリータ・ヴォイスはVanesa Paradisを想わせなくもない。Nico Cotaのプロデュースによるアルバムは土臭いフォルクローレではなく、都市生活者のための洒落たポップス。ローズ・ピアノ、ウーリッツァー、ムーグ・シンセ、メロトロンなどの柔らかなエレクトリック・サウンドに包まれてLoli Molinaのヴォーカルが軽やかに浮遊する。Andres Beeuwsaert (Aca Seca Trio)がピアノで客演した〈Si〉はノスタルジックで、6拍子の〈Alma De Agua〉やファンク調の〈Hamacas〉にはメランコリックな倦怠感さえある。〈Karma Chameleon〉のアクースティック・カヴァも違和感なくハマっている。2ndアルバム《Si O No》(2011)では垢抜けて、より美しく洗練されたルックスに変身した。

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    • 『アルゼンチン音楽手帖』の中から、本ブログで未紹介のアルバムを選んでみました

    • 「RSSフィード」が表示されない不具合(Q&A)を修正しました(2013. 11. 11)
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    アルゼンチン音楽手帖

    アルゼンチン音楽手帖

    • 著者:栗本 斉
    • 出版社:DU BOOKS
    • 発売日:2013/06/07
    • メディア:単行本
    • 目次:まえがき「オーガニックでボーダレスなアルゼンチン音楽の世界へ」「21世紀のアルゼンチン音楽」/ 第1章 水 -Aqua- / 特別寄稿 橋本徹「素晴らしきメランコリーのアルゼンチンをたずねて三千里」/ ...


    Ventanas

    Ventanas

    • Artist: Aca Seca Trio
    • Label: Calle Angosta
    • Date: 2011/09/20
    • Media: Audio CD
    • Songs: Paloma / La Manana / Ventanas / Pobre Mi Negra / Distancia / Chiquita / Pasan / Cancion De Las Cantinas / Esa Ttisteza / Solitario / Casa


    Aguaribay

    Aguaribay

    • Artist: Cecilia Zabala
    • Label: Gobi R.
    • Date: 2009/09/22
    • Media: Audio CD
    • Songs: Maravilla / Si Llega A Ser Tucumana / Aguaribay / A Pique / La Luz De Tu Mirada / Doa Ubenza / Aire Soy / Vidala Para Mi Sombra / Tango~Incertidumbre / Los Ejes De Mi Carreta / Hermano / Chacarera De Un Triste / Zamba Para La Viuda / Aguaribay


    Zorzal

    Zorzal

    • Artist: Axel Krygier
    • Label: Los Anos Luz Discos
    • Date: 2007/07/31
    • Media: Audio CD
    • Songs: Vamos Los Gauchos / Dnde Estars Hermanita? / Princesa / Zorzal / Rosebud / Sentimiento/Pensamiento / Emppate! / Looking 4 The Summer Hit / Para Que No Te Fueras / Hablame Por Favor! / Jan Ken Pon / Ya Me Voy


    39°

    39°

    • Artist: Lisandro Aristimuno
    • Label: Los Anos Luz Discos
    • Date: 2007/08/07
    • Media: Audio CD
    • Songs: Me Hice Cargo De Tu Lus / Pluma / Algun Lado / 39° / Tus Canciones / Demasiado / Pez / El Plastico De Tu Perfume / El Beso / Para Vestirte Hoy / El Buho / Despedida


    Miniatura

    Miniatura

    • Artist: Lucio Mantel
    • Label: EDICION DE AUTO
    • Date: 2010/12/24
    • Media: Audio CD
    • Songs: Punto De Fuga / Adentro O Afuera / Mi Memoria (Nadando En El Sueno) / Desvelada / Mar Interior / En El Siguiente Suspiro / Polka Mar / Bailar Con Tu Sombra / Solar / Miniatura No1


    Mate De Metal

    Mate De Metal

    • Artist: Julian Mourin
    • Label: Julian Mourin
    • Date: 2013/01/08
    • Media: MP3
    • Songs: Cancin Para Despertarla / De Paja Y Madera / Huinserf / Chinchuln / La Vie / Nuevos Buenos Aires / Abundancia / Donde El Cero Es Lucero / Lgrima Suelta / Rimas Imn / Otro Espejo / Rio Amigo / Yosequest / Mate De Metal


    Los Senderos Amarillos

    Los Senderos Amarillos

    • Artist: Loli Molina
    • Label: Sony Import
    • Date: 2008/11/19
    • Media: Audio CD
    • Songs: Hasta El Mar / Vacío & Silencio / Cuandarbol / Alma De Agua / Algo Quizá / Bailo / Miel / Hamacas / (Vamos?) / Karma Chameleon / Ricardito

    F A V O R I T E ー C A T S 7

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    Rei 2012
    2011年11月にトミーちゃんが亡くなったという。あれほど人に懐いていたネコが躰に触られるのを嫌がるようになったのは余程体調が悪化していたからに違いない。ネコに限らず動物(ペット)は気分や体調が悪いとか、頭や腰が痛いとか周囲の人間に訴えたりしないからね。もっと優しくトミーに接していたらと悔やまれる。逝ってしまった彼女の代わりに新入りネコを2匹迎い入れたと女飼主が言う。茶トラのレイちゃんは友好的な反面、...#261


    Kishi 2012
    用心深かった黒ネコのキシちゃん(ぶーけさんに名付け親になってもらいました)が珍しく逃げないのはエルと同じく鉄柵の内側にいるという安心感によるものだろうか。既に夕暮れて暗くなり手ブレ・マークも液晶モニタに表示されているので、カメラを下に固定してスロー・シャッター(1/10秒)で撮った。ピントはDMFで微調整したと思う。手ブレしないでピントが合っていても、撮影中に被写体が少しでも動くとブレてしまう。そんな時...#259


    Suri 2012
    H山通りと平行して走る細い裏道、民家の建ち並ぶ住宅地に4〜5匹のネコたちが棲んでいる。耳先カットした白茶ネコ、麗しい美形ネコ、チビ黒ネコ、白灰サバネコなど‥‥特定の飼主はいないけれど、隣り近所の住人が世話をしている「半飼い・半ノラ」の地域ネコなのだ。茶トラのスリちゃんは襲って来る睡魔に抗えないのか、気持ち良さそうに目を細める。「お目々パッチリ開けてね!」という撮影者の声が聞こえているのかどうか、...#258


    Eru 2012
    エルも中央図書館裏にある遊歩道の植え込みの中の隠れ家(ダンボール・ハウス)の住民の1人だろうか。仲間の長毛種ロンちゃんほどには人馴れしていないので、撮ろうとして近づく前に逃げられてしまうことも少なくない。それでも鉄柵の向こう側は安全地帯と心得ているらしく、ネコとヒトの間に障害物がある時には近寄っても逃げ出す気配はない。ありがとう、隔たり!‥‥被写体との間ある距離や障害が撮影を可能にするのだ。背後に...#257


    Soran 2012
    一眼レフ・カメラの特徴は背景のボケ具合にある。都会の雑踏や繁華街のケバケバしい看板など、煩瑣で目障りなバックを暈して被写体だけを際立たせることが出来るのは大きな魅力でもある。しかし、背景がボケるということは逆に言うとピントの合う範囲が狭いということでもある。この写真でもピントは黒猫ソランの左目に合っているが、右目の方はボケている(真正面から撮れば左右の目に焦点が合う?)。ポートレイト写真の基本は人...#252


    Sai 2012
    家の中で飼っているネコを外へ連れて行く時は、イヌの散歩と同じようにリード(引き綱)を着けるのも有りではないかと思う。屋内と外界を自由に出入りする放し飼いのネコは兎も角、外の世界を知らないネコや不慣れなネコはパニックを起こしてしまうかもしれないから。交通事故や行方不明(失踪・迷子)などのリスクを考慮すると、ネコにとっては多少不自由でも飼主に繋がれた状態の方が安全ではないかしら(山岸凉子の愛猫ケイト...#251


    Ichigo 2012
    2010年の夏以来、実に2年振りのイチゴちゃん。1昨年の夏には体調を崩して注射を3本も打ったと聞いていたので、心配していたのだった。民家の門柱の上で寝そべっている姿は優雅な夕涼みという風情‥‥でも、そこから動こうとしないし、頭や背中を撫でようとするとニャンと鳴いて嫌がる素振りを見せる。人懐っこいネコが躰に触れられるのを嫌うのは体調が優れないからなのかもしれない(懐いていたトミーちゃんも嫌がった)。iPho...#250


    Moto 2012
    カメラを向けても嫌がったり、無視したりで‥‥気乗りしなかったモトちゃんも漸く観念したのか、被写体として静止してくれた(歩き疲れただけなのかもしれないが)。同じネコを撮っていても最初と最後、ファースト・ショットとラストでは表情が微妙に異なる。険しい目をしていたネコも時間が経つに連れて次第に柔らかい表情へと変化していく。30分くらいネバっていると、カメラを忌避していたモトちゃんも優しい目になってくれた。...#248


    Aku 2012
    1匹のネコを撮っていると、どこからともなく他のネコたちが姿を現わすことがある。この日も黒猫ソランちゃんの写真を撮っている時にムンクとアクが興味深そうに近寄って来た。ボス猫と喧嘩をしてから左耳だけがスコティッシュホールドみたいに折れ曲がってしまったというアクちゃんはミステリアスな灰色ネコ。アニメ目のムンクよりも毛色が明るく、黒い瞳の周りの緑色部分も大きく鮮やか。外周部の黄色との美しいグラデーション...#245


    Munch 2012
    アトムやドラえもんなどのマンガやアニメ・キャラみたいに縦に長い目。ネコ科の動物に限らず、多くの哺乳類の目は人間と同じようにアーモンドの形をしているはずなのに、ムンクちゃんはビックリして驚いたようなアニメ目になっている。チャコールグレーの毛色に赤い首輪(円形のプレートと丸い鈴付き)。黒い瞳の周辺部が緑色で、外周部は黄色に変化して行く。カメラと撮影者以外のもの、それが一体何かは分からないけれど‥‥を一心不...#244


    Suzu 2012
    門柱の上で寝そべっている三毛猫イチゴちゃんの体調は余り優れないようだが、隣家のチビ猫は元気そうだ。女飼主と立ち話をしていると、いつの間にか現われて足許に纏いつく。スズの写真を手渡すと「両耳が横に向いているのは警戒している兆候。私が撮っても、こんな風に怒ったような表情になってしまう。今度は、もっと可愛く撮ってね」とダメ出しされてしまった。この写真を撮った時は近寄っても、珍しく逃げ出さなかった。この...#242


    Coo 2012
    茶トラのクーちゃんは人懐っこい飼い猫。手招きするとニャンと鳴き、近寄って来てスリスリ、首筋や耳の裏やマズルを優しく撫でるとゴロニャンする。その状態の時に、お腹をマッサージしてあげると高い確率で手(爪)を出して来る。無防備な体勢になるのはネコが相手のことを信頼して気を許している証拠でもある。ネコ本人は無邪気にジャレているつもりなのだろうが、爪の先が掌や指に刺さったまま抜けなくなることも稀にある。そ...#241


    M 2012
    王子・K本通り沿いの小公園にいたフリオくんは、ある日突然姿を消してしまった。毎日ゴハンを運んでネコたちの世話を焼いていたオバさんは悪い人に攫われてしまったのではないか、三味線の皮にされちゃったんじゃないかと心配していたが、久しぶりに公園に立ち寄ると新顔ネコを指差して、「去年(2011)生まれたネコちゃんなのよ」とネコのように目を細める。見知らぬ人を警戒しているので、姿勢も低く目つきも険しい。それでも逃...#240


    Mai 2012
    I袋駅前公園のマイちゃんは活発に動き回る反面、人見知りする性格なのか草叢の中に隠れて微動だにしないこともある。この日は遊び疲れたのか、水天宮神社の前にある置き石の窪みの上で周囲を観察していた。ネコ写真を撮りたいと思ったら、1匹のネコに最低でも30分くらいはネバッてみよう。逃げ去ってしまう用心深いネコは兎も角、落ち着きのないネコも根負けして静止する時が必ず訪れる。まるで「写真を撮っても良いよ」と意思...#237


    Erika 2012
    中央公園内にはS神井川緑地から移住して来たネコがいる。広い敷地内に1人ぼっちじゃ寂しいかも?‥‥と不憫に思っていたら、木の根元で1匹の黒ネコが腹這いになっていた。最近、ゴハン目当てに来るようになったと公園に屯する老人たちが言う。傍にいるけれど、初対面なので明らかに警戒している。ネコ写真を撮るのには大きく分けて2つの方法がある。ネコに気づかれることなく遠くから望遠で撮る方法と、ネコと親密になって...#235


    Sen 2012
    動物の形をした陶器製の蚊取り線香というか、丸い縫いぐるみのようなネコちゃん。白っぽい顔にエメラルド・グリーンの目が映える。アパートの建つ横道に屯しているところを目撃してから数カ月‥‥車道とテニスコートの間の植え込みに隠れているところを撮った。目の前を歩いている人間の視線は繁みの中に隠れているネコの姿を捉えることが出来ない。しかし、ネコたちは見えない場所から人間たちの行動を注意深く見張っている。ネコ...#233


    Rena 2012
    三毛猫は概して大人しい性格なのか、レナちゃんも内気でネコ・ハウスの中から出て来ようとしない。引きこもり状態になってしまったのは内向的な性質や冬の寒さのためだけというわけではないらしい。なぜならば白黒柄の悪ネコがレナ嬢を執拗に虐めるのだから。彼女の目線の先に天敵がいる。いかにも悪そうな面構え。可愛い女子児童を苛める悪ガキ大将みたいな白黒ネコが隣家の屋根の上から睨んでいるのだ。強面なのに人間に対し...#232


    Ron 2012
    大沢たかおが医学の歴史を調べたり、和久井映見が司書をしているTVドラマなどのロケ地にもなった「K区中央図書館」。赤レンガ図書館に隣接する防衛省駐屯地の黒い鉄柵の向こう側に長毛種のネコがいた。広大な敷地が陸上自衛隊に守られた安全地帯だと心得ているらしく、なかなか図書館裏手の遊歩道に降りて来ない。敷地内の木に登ったり、地上に降りた鳩や雀を狙ったりして気ままに過しているけれど、気が向くと図書館裏のベン...#231


    Aru 2012
    ヤナちゃんと同じシチュエーション(同時刻・同場所)で撮った1枚。顔の真ん中のマズル部分と胸、前肢が白いヤナに対して、アルちゃんは首(胸の上部)に白いネッカチーフを巻き、白ソックスを履いている。夜のネコは黒目が丸く大きくなるので、可愛さが200%アップ。沿線に沿った細長い形状のI袋駅前公園は裏手を痴漢発生率No.1という悪名高い埼京線が通っている。車道を隔てた通りにはコンビニや個室ヴィデオ店などが建ち並ぶ人...#229


    Yana 2012
    ネコ撮りカメラのミラーレス一眼(NEX-5N)は暗闇でもフラッシュなしで撮れることから「高感度番長」(ISO 25600)なる渾名がつけられた。別名「暗闇の帝王」ともネット上では呼ばれている。iPhotoの自動補正で明るく修整されているが、周囲が暗くても鮮明なネコ写真が撮れるのは驚きである。「闇夜のカラス」みたいなシチュエーションは兎も角(そもそも真っ暗闇では被写体の存在さえわからないではないか!)、過度の人工光...#227

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    ilove.cat

    ilove.cat

    • 編集:服部 円 / 阿久根 佐和子 / 加藤 基
    • 出版社:リトル・モア
    • 発売日:2012/10/26
    • メディア:ペーパーバック
    • 目次:INTERVIEWS 今日マチ子とムーム / 坂本美雨とサバ美 / 長崎訓子とそよ、ゴン太 / 栗原友とダンプ / 角田光代とトト / 持田香織とうた / MEGとリウ / 小林マナとマロン、ギルバート&ジョージ / eriとユマ、ココ / 島本理生とたび / タダナユキとはいるね、ごろね / SPECIAL 夢のハワイ 今日マチ子 / アトリエで暮らすビビ / 猫ジャンル ...

    ネコとライオン

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  • ヒトは比べることの好きな動物ですがネコとライオンを比べることはできません。ヒト同士でも比べ合うから羨ましいとかこっちの方が上だと息巻いたりするのです。もっと楽な気持ちで世の中を見つめてはどうでしょう。そう、もっと広げてマクロ感覚で地球を見てみると言ったらいいかもしれません。些末なことが多い世の中でヒトは顔の表情や言葉でもの事を判断しすぎるように思います。/ 朝、ネコが家から出かけるときにはヒゲでその日の気象を判断するようです。耳で隣り近所のご機嫌まで知るのでしょう。また鼻はあちらの家ではボーナスが出ておいしい食事になり、後で分け前がいただけるかもしれない、くらいまでは分かるのかもしれません。そういう野生の感覚をネコは家畜になっても忘れてはいません。それは僕たちヒトの身体にもある感覚だと思います。情報とは本来そのヒト自身でしか獲得できないものと思います。
    岩合 光昭 『ネコライオン』


  • 「岩合光昭写真展 ネコライオン」に行って来た。JR恵比寿駅東口から動く通路に乗って、恵比寿ガーデンプレイスへ向かう。割引き入場券を買って地下1階展示室に降りる。「ねこ歩き」(日本橋三越本店)に比べると拍子抜けするほど空いていた。ゆっくりとネコとライオンを鑑賞出来ると喜んだのも束の間、大声でペチャクチャ喋りまくるオバさん軍団に後方から襲来されて館内の静寂が破られた。騒がしい一行を遣り過ごすべく、ソファに座って待つことにしたのだが、筒抜け状態の話し声は遠くからでも良く響く。やっとフェイド・アウトして静かになったかと思ったら、近くに戻って来て長々と立ち話を始めた。この騒々しさはネコでなくても逃げ出したくなるのではないでしょうか。貴方たちがネコ好きなのは分かりましたが、場所を辨えて欲しい。ここはデパートの催事場ではなく、美術館なんだから‥‥とネコおばさんに言ったところで、猫の耳に念仏、猫耳東風なのかもしれませんが。

    「ネコは小さなライオンだ。ライオンは大きなネコだ。」というキャッチ・コピーが会場や図録などに掲げられているが、同じネコ科の動物の中でもネコとライオンの容貌は似ているとは言い難い。マーモセットのミッツがロンドンの街角にいた黒猫を黒豹と見間違えたように、ジャガーやレパードの方がネコに良く似ている。「ネコジャガー」や「ネコレパード」ではなく「ネコライオン」になったのは、恐らく豹や虎よりもライオンの写真を数多く撮っていたからだと思われる。ネコの撮影場所が日本国内から海外各地に渡るのに対して、ライオンの多くはアフリカ・タンザニア(ンゴロンゴ自然保護区)で撮られているから(岩合光昭はタンザニアのセレンゲティ国立公園に2年間滞在して野生動物を撮った)。それだけ野生ライオンの棲息地が限られている(個体数が少ない)ことの証左でもある。ノラネコは街に寄り添うように暮らしているけれど、ライオンは動物園やサファリ・パークなどでしか見ることが出来ない。

    ライオンの容姿も雄、雌、子ライオンに違いがあるだけで、たとえ体力や腕力では勝っていても眼の色や毛色や柄模様など、ネコたちの多種多彩さには到底敵わない。飼い馴らされない野生動物と家畜・ペット化された小動物(Joni Mitchellが愛猫を抱いている自画像カヴァのアルバム《Taming The Tiger》(1998)とは「ネコ」のことである)。それでもネコとライオンの同じような動作や行動、生態を並べて展示することで、ネコ科動物としての類似性が際立つのは意外に面白い。チータ、ピューマ、ジャガー、パンサー、タイガー、レパード‥‥ネコ科動物のコード名が付けられて来たMac OS Xも山ライオン(10.8 Mountain Lion)で打ち止めとなった。アップルがネコ科動物シリーズの最後を「キャット」ではなく「ライオン」と名付けたのは「百獣の王」に敬意を表したのかもしれない。そう考えると、百獣の王ライオンはネコ族にとって相手として不足はないということになるだろうか。肉食獣としての残酷さを垣間見せるライオンは可愛いとは言い兼ねるけれど。

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    「ネコライオン」は「視」「触」「味」「嗅」「聴」という5つのテーマに分けて展示されている。ネコ科動物の五感は人間よりも研ぎ澄まされているだろう。ネコやライオンは何を見つめているのだろうか。雄ネコは雌を見つめ、港へ帰って来た漁船を注視する。ライオンは獲物(草食動物)を見つめ、子供たちは母ライオンの帰りを待つ。母ネコとライオンが子供たちを連れ、口に咥えて運ぶ。ネコたちは小屋の網戸越しに外界を眺め、雄同士の喧嘩で相手を睨む。ライオンは雄ライオンの息の根を止め、アフリカゾウの肉を食らう。ネコとライオンはジャンプして走り、獲物を狩る。物陰に隠れて周囲を窺い、高い場所から下界を睥睨する。ストレッチして歩き出す。ネコとライオンは爪研ぎをし、気に匂い付けをして、雨樋や樹に昇る。お互いに戯れ合い、群れを作って日陰で休息し、お気に入りの場所で自由気儘に寝る。グルーミングで舌を出し、頭を高速回転させて雨粒を払う。母子で眠り、子供たちは母親の背中に乗って、子供同士で仲良く遊ぶ。

    ネコは蛇口から流れる水を、ライオンは水溜りの水を飲む。ネコは網に絡まった魚を奪い、ライオンはハイエナからヌーを奪い取る。獲物を口に咥えて子供たちの許へ運ぶ。ネコたちはキャットフードを、ライオンたちは獲物を食べ、子ライオンは母乳を飲む。ネコとライオンは草を食み、食後の毛繕いする。風や草花、獲物や雌の匂いを嗅ぎ、大アクビをして緊張を解きほぐす。背中を伸ばし、ストレッチして歩き出す。ネコは早朝の物音や波音を聴き、ライオンはヌーの鳴き声に耳を澄ます。お互いに喉を鳴らしてスキンシップし、大きな声で鳴く。唸って争い、ゴロニャンする。膨大なネコとライオンの写真の中から同じようなポーズや良く似た行動を手作業で選び出すのは多くの労力と時間を費やしたはずである。ネコとライオンを並置することでネコの野生とライオン(特に子ライオン)の可愛らしさがクローズ・アップされる「ネコライオン」だった。

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  • ネコが好きになってしまってからはもう後戻りはできません。たとえ1日でもネコを見ない日があると不安になります。そしてネコを見つけることが出来るとうれしくなるのです。これは仕事としてネコに関わっているからだけではないような気がします。/ ローマには「ネコ通り」という名の通りがあります。タクシーの運転手さんに聞いてみると、通りにはネコの彫像があるだけで本物はいないよ、といわれます。そして、今のローマでネコに出会えるのはアルゼンチン広場とピラミッドくらいだとも教えられます。昔はもっとネコに出会えたのにね、重ねて聞くと、嘘かもしれませんが文化庁の長官が女性で、彼女がネコを好きではないからだといわれます。そんな馬鹿な話があるでしょうか。ネコがいることで街に色気が漂うとさえ思えるのに。しかもここはイタリアですよ。おしゃれじゃないなあ。/ と、振り返ってわが日本を見てみれば、同じようなことが起っているような気がします。ネコは今、世界中で虐げられる傾向にあるようです。というか自由を奪われつつあります。
    岩合 光昭 『イタリアの猫』


  • 『ネコライオン』(クレヴィス 2013)は展示作品全175点に未展示品24点を掲載した図録で、ズッシリと重い(A4変形 168頁)。ネコの写真は過去の展示会「ねこ」(日本橋三越本店 2010)や「ねこ歩き」(2013)で見た憶えのあるものもあるし、写真集『そっとネコぼけ』(小学館 2008)、『ちょっとネコぼけ』(小学館 2005)、『愛するねこたち』(講談社 1978)、『ニッポンの猫』(新潮社 2003)、『旅行けばネコ』(新潮社 2008)、『ネコさまとぼく』(新潮社 2008)、『きょうも、いいネコに出会えた』(日本出版社 2002 / 新潮社 2006)、『ネコに金星』(日本出版社 2008 / 新潮社 2013)、『地中海の猫』(新潮社 2005)、『岩合光昭のネコ』(日本出版社 2010)、岩合日出子著『ママになったネコの海ちゃん』(ポプラ社 1986)から一部転載された写真も含まれている。つまり「ネコライオン」には岩合夫妻が初めて飼った「ネコの海(kai)ちゃん」も密かにゲスト出演しているわけである。
  • カメラを構えながら、ねこを探していると、ねこの多いところと少ないところがあることに気づきます。ねこの少ないところはたいてい、昔からの町ではなくて、人があとからつくった新しい町です。地形や風とおしのことなどを考えないでつくった結果、風がとおりぬけない暑苦しい町ができてしまったのです。ねこはそんな町には、いたくないのです。/ ねこはいちばん苦労をしないで歩く道を知っています。バランス感覚にすぐれ、身のこなしは軽く、三次元の空間の使いかたも見事です。視覚も聴覚もすぐれています。美しくしなやかな体ももっています。/ ところが人間はどうでしょうか。自然を感じる力のなんと情けないことか。もし、ねこの行動をよく見て町をつくっていたら、もっと住みよい町ができていたのではないかと思います。/ 僕自身、ねこのしぐさやふるまいを見ていると、自分のなかの隠された感性が呼び覚まされるのを感じます。僕は、そんなところもねこに感謝しているのです。ねこをよく知り、ねこに学べば、世の中はもっとよくなるのではないかと思います。
    岩合 光昭 『岩合光昭×ねこ旅』

  • 『岩合光昭×ねこ旅』(山と渓谷社 2013)はハンディな判型に200枚のネコ写真が詰まった弁当箱のような写真集。「日本のねこ旅」「世界のねこ旅」の2段重ねで、多種多彩なネコたちをお腹いっぱい堪能出来る。「雪国のねこ」「山里のねこ」「町のねこ」「寺町のねこ」「港町のねこ」「南国のねこ」‥‥日本国内は北から南下、北海道・羅臼町から沖縄・座間味島を巡る旅。海外はイタリア、ギリシャ、トルコ、エジプト、モロッコ、スペインと地中海沿岸の地域を回る旅。同じネコ族なのに風景や街の中に溶け込むと、日本のネコは純和風に、西欧のネコは洋風に見えてしまうから不思議。「秋の香りにさそわれて。田沢湖町・秋田県」「窓辺にねこはよく似合う。奥会津・福島県」「この村で生まれて育っていく。ルクソール・エジプト」「広がる青空の下、ねこは何を見て、何を考えるのだろうか。アルプハラ・スペイン」など、ネコ写真に添えられたキャプショんも簡潔で微笑ましい。この写真集を片手に携えて、お目当てのネコを探す旅に出るのも愉しいかもしれない。

    『イタリアの猫』(新潮社 2013)は大型横長のネコ写真集。「レモンの香りが店先から漂う」カンパリア州ソレントの街を "ネコ歩き" する。おもちゃ屋さんのショウウィンドウ前の棚に座っているレオ君。シチリア州コルメオーレの中心地、庁舎前の広場で出会ったドメニコ。アグリジェントの古代ギリシャ時代の遺跡監視員に可愛がられている黒ネコ。街の薬屋さんの娘さんに飼われているコッコリーノ。トスカーナ州ラコーナ、エルバ島のオリーヴ畑と屋敷を開放して140匹のネコたちを保護しているというフランチェスカさんが仔ネコにミルクを飲ませている写真は胸を打つ。ナポレオンの別荘(聖マルティーノ荘)の石段で寝そべるパオリーナ。プッリャ州アルベロベッロでスパゲッティを食べるネコ。三角屋根の家で母ネコの乳を飲む仔ネコたち。ラツィオ州ティヴォリにあるエステ家の別荘の庭園で噴水を背にしてポーズする雌ネコ。かつてローマ・コロッセロにいたネコたち。ヴェネト州ヴェネツィア、ペストが蔓延した中世にネズミ退治のためシリアから来た縞ネコたちの子孫。夜の集会に参加するネコ。イタリアのネコたちは絵になるにゃん。

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    ネコライオン

    岩合光昭写真展 ネコライオン

    • 会場:東京都写真美術館(地下1階展示室)
    • 会期:2013/08/10~10/20
    • メディア:写真
    • 展示テーマ:視 See / 触 Touch / 味 Taste / 嗅 Smell / 聴 Hear


    ネコライオン

    ネコライオン

    • 著者:岩合 光昭
    • 出版社:クレヴィス
    • 発売日:2013/08/31
    • メディア:単行本(ソフトカバー)
    • 目次:視 See / 触 Touch / 味 Taste / 嗅 Smell / 聴 Hear / ネコとヒトが共に生きる / おわりに(著者あとがき)


    岩合光昭×ねこ旅

    岩合光昭×ねこ旅

    • 著者:岩合 光昭
    • 出版社:山と渓谷社
    • 発売日:2013/09/26
    • メディア:単行本(ソフトカバー)
    • 目次:旅のはじめに / 日本のねこ旅(雪国のねこ / 山里のねこ / 町のねこ / 寺町のねこ / 港町のねこ / 南国のねこ)/ 世界のねこ旅(イタリアのねこ / ギリシャのねこ / トルコのねこ / モロッコのねこ / スペインのねこ)/ 旅のおわりに


    イタリアの猫

    イタリアの猫

    • 著者:岩合 光昭
    • 出版社:新潮社
    • 発売日:2013/07/26
    • メディア:大型本
    • 目次:カンパニア州 / シチリア州 / トスカーナ州 / プッリャ州 / ラツィオ州 / ヴェネト州 / あとがき

    サイバー・キャット 19

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