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C A L E N D A R 2 0 1 3

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  • C A L E N D A R 2 0 1 31 21 11 00 90 80 70 6





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    • 今年(2013)の桜は天候に恵まれなかったにゃん
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    キャット・アートカレンダー 2013

    キャット・アートカレンダー 2013

    • 著者:シュー・ヤマモト(Shu Yamamoto)
    • 出版社:求龍堂
    • 発売日:2012/08
    • メディア:カレンダー
    • 収録作品:ニャダムの創造 / キス / 春(ラ・プラミミャーラ)/ ラ・グランドジャテ島の寝てよう日 / 坂田怪猫丸 / 赤黄青のコンポジション/ 浜辺をかける猫たち / 夢 / 手紙を読む青衣の猫 / 手紙を書く猫 / 手紙を書く猫と召使いのワンコロ / またたび拾い / ディヴァン・ジャポネス / ラ・マリリー

    僕の血みどろヴァレンタイン

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  • 耳がある程度機能するのに数秒かかった。最初、何も聞こえなかった。彼らがかがみこむように楽器を抱え、猛烈に音を発していることだけはかろうじてわかった。限界を超えた負荷がぼくの耳にかかり、認識できなかったに違いない。/ まるで "真空状態" 。夏に暗いカフェの中で何時間もすごしたあと、日がさんさんと照りつける大通りに出てきたときのようだ。車や、人々や、犬のフンが落ちている歩道といったさまざまな新しい情報を脳が認識できなくて、2、3秒の間、軽い立ちくらみで目を細めたり、しょぼつかせたり。そんな状態に近かった。/ モニター・スピーカーさえ聴衆に向けられていた。演奏が進行するにつれ、ヴォリュームが徐々に大きくなっていく。もはや耐えられないような衝撃。ジェット・エンジンの中に頭をつっこんだら、多分こんな感じだろうな、とぼんやり思った。とにかく驚いた。すごい。耐えられない。
    マイク・マクゴニガル 「ユー・メイド・ミー・アナライズ」


  • 1990年代初頭に出現したシューゲイザーは都市の暗渠や地下水脈の中を深く潜行して、ゼロ年代に「ネオ・シューゲイザー」や「ニューゲイザー」という新名称と共に復活を果たす。「シューゲイザー / シューゲイジング」(shoegazer / shoegazing)とは文字通り「靴を見つめる人」という意味で、ステージ上の演奏者が直立不動で俯いて演奏するスタイルから由来する。その特徴は終始鳴り続けるノイズ・ギターの豪雨やエフェクターの濃霧の彼方から囁くような弱々しい男女ヴォイスが聴こえて来るという内省的なサウンドで、歌詞も殆ど聴き取れない。My Bloody Valentine(MBV)はシューゲイザーの代表格。その妥協を赦さない真摯な実験精神は金銭も時間も費やした2年間の長いレコーディングによって、所属レコード会社(Creation Records)の経営状態を危うくさせたという逸話も残っているほどである。渋谷の某輸入CDショップで、一早く入荷したUS盤《Loveless》(Sire 1991)が瞬く間に完売したこともあった。

    MBVは1983年にアイルランド・ダブリンで結成された。「My Bloody Valentine」という風変わりなバンド名は初期のシンガーだったデイヴ・ステルフォックス(Dave Conway)がカナダのB級ホラー映画から借用したという。NYクイーンズの生まれのケヴィン・シールズ(Kevin Shields)は1973年、両親と一緒にアイルランドへ戻る。ダブリンでコルム・オコサーク(Colm Ó Cíosóig)と意気投合した2人はコンプレックス(The Complex)というパンク・バンドに参加した後、デイヴと共にMBVを結成。オランダやベルリンでのライヴ活動、3枚のEP発表、2度のメンバー・チェンジ‥‥デイヴのGFだったティナの離脱とデビー・グッキ(Debbie Googe)の参加、デイヴの脱退とベリンダ・ブッチャー(Bilinda Butcher)の加入を経て、1987年から現在に至る男女ツイン・ヴォーカルの4人組(男2、女2)というMBVが誕生した。そして1988年1月、英ケントでのギグを見たアラン・マッギー(Alan McGee)に「イギリスのハスカー・デュ(Hüsker Dü)を発見したぞ」と言わしめて、クリエーション・レコードと契約することになる。

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  • ◎ Isn't Anything(Creation 1988)
  • Kevin Shieldsの「意識の別の領域へと到達する方法」はドラッグの服用というよりも慢性的な睡眠不足によるものだった。当時睡眠障害に悩まされていたKevinは期せずして「催眠状態」に陥ることさえあったという。半醒半睡状態中に現われる幻覚症状。デビュー・アルバムにはパンクやグランジ風の激走するロックも収録されている。トレモロ・アームを使ったベンディング奏法が時空を歪ませる〈Soft As Snow (But Warm Inside) 〉、Bilinda Butcherの儚いヴォイスが白昼夢のような世界へ誘う〈Lose My Breath〉、夢の中で浮游するようなアンビエント風の〈All I Need〉、ノイズ・ギターが爆走する〈Feed Me With Your Kiss〉‥‥。フィードバック・ノイズ、オープン・チューニング、トレモロ・アーム、リヴァース・リヴァーブなどを駆使したサウンドには古い衣裳を脱ぎ捨てて異世界へ旅立とうとする強い意志が感じられる。どこか懐かしくて、それでいて誰も見たことのない世界へのトリップはシュルレアリスムの試みと通底するところもある。

  • ◎ Loveless(Creation 1991)
  • ピンク色に染まって滲み暈けたフェンダー・ジャズマスターのアルバム・カヴァは色褪せることなく鮮やかな光を放つ。インナー・スリーヴにはメンバー4人‥‥Kevin Shields(ギター、ヴォーカル、サンプラー)、Colm Ó Cíosóig(ドラムス・サンプラー)、Bilinda Butcher(ヴォーカル、ギター)、Debbie Googe(ベース)と、KevinとColmの2人を含む18名のエンジニア&アシスタントの名前が載っているが、Colmは体調を崩してドラムを叩けない状態だったし、Bilindaもギターは弾いていない。エンジニアたちもアラン・モウルダー(Alan Moulder)以外はレコーディングに関与していないという。攻撃的なノイズ・ギターとBilinda Butcherのウィスパー・ヴォスが交互に立ち現われる〈Only Shallow〉、クジラの鳴き声にも似たColmの短いインスト曲〈Touched〉、メロディアスでキャッチーな〈When You Sleep〉、Kevinの内省的な〈Sometimes〉、弛緩したテープのような変調サウンドが気味悪い〈Blown A Wish〉‥‥。ドラム・プログラミングによってダンス音楽と融合した〈Soon〉はBrian Enoに「ポップの新しいスタンダード」と称えられた。

    《Loveless》はオリジナル盤のリリースから20年後にKevin Shieldsによってリマスターされた。デビュー・アルバム《Isn't Anything》と共にMBVのファンならば誰もが長い間待ち望んでいた念願のリイシューだったが、それは同内容のアルバム2枚組という意表を衝くものだった。1枚目(CD1)がオリジナル・テープからのリマスター、2枚目(CD2)がオリジナル・1/2アナログ・テープからのリマスター‥‥耳が悪いのか2枚のサウンドの違いは良く分からないけれど、前者が通常のデジタル・リマスター(DAT)で、後者がアナログ・テープにまで遡ってのリマスター(EQなどを弄っている?)ということらしい。ところが更に悩ましいことに、ネット上ではCD1とCD2の内容・表示が逆ではないかという疑問が提示されているのだ。ヘッドフォンで何度か試聴した感じでは、その指摘の通りCD2の方が旧クリエーション盤に近いような気がする。もっともCD盤面には「CD1 / CD2」という表記しかないので、単なるスリーヴ上の誤植ということに留まるのだが、何とも解せないなぁ。

  • ◎ Ep's 1988-1991(Sony Music 2012)
  • クリエーション時代にリリースした4枚のEP(13曲)にレア・トラック4曲、未発表3曲を加えた2枚組のコンピレーション・アルバム。オリジナルEP盤のカヴァにはエロティックな表情を浮かべた女性の写真が使われていた(見開き4面ジャケの内側やインナー・スリーヴに再現されている)ことからも分かるように、アルバムとは一線を劃すEPシリーズだった。CD1に《You Made Me Realise》《Feed Me With Your Kiss》(1988)、《Glider》(1990)の3枚。CD2に《Tremolo》(1991)とレア&未発表曲を収録。4枚のオリジナルEPは入手困難だったが、《Glider》以降のEPやレア音源に惹かれる。〈Instrumental No.1 & No.2〉の2曲は《Isn't Anything》の初回プレス5000枚限定で封入されていた7インチ盤、〈Glider〉は12インチ盤〈Soon〉のB面に収録されていた10分以上の完全版、〈Sugar〉はフランス限定のプロモ盤《Only Shallow》に入っていたというレア曲。未発表の3曲も含めて、MBVのファンにはリスナーの耳を混乱させる《Loveless》のリマスター盤よりも嬉しい待望のリイシューではないかしら。

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  • ◎ MBV(Mbv 2013)
  • 2013年2月の来日公演では聴衆に耳栓が配られたという元祖シューゲイザーによる22年振りの3rdアルバム。2012年5月にリイシューされたリマスター盤3種(1st、2nd、Ep's)が露払いになったのか、満を持しての新作である。デビューから四半世紀以上を経て古色蒼然どころか、「シューゲイザー」という1ジャンルを確立してしまったMBVのニュー・アルバムは良くも悪くも変わっていない。自主レーベルからのリリース、「YouTube公式チャンネル」で全曲試聴可という変化はあるけれど‥‥。当初は「オフィシャル・サイト」のみの限定販売(LP+CD+DLの3種)だったが、Aamazonなどのネット通販や輸入CDショップ(リアル店舗)にも流通するようになった。見開きカード・スリーヴ(紙ジャケ仕様)、8頁ブックレット付きだが、相変わらず歌詞は記載されていない。アナログ盤には同内容のCDが封入されている(2013年4月現在、国内盤発売の予定はない)。

    Kevin Shieldsがノイズの彼方から甘く囁く〈She Found Now〉、間奏で変拍子が一瞬入る〈Only Tomorrow〉、ビートレスの気怠い空間に揺蕩う〈Is This And Yes〉、ドリーミィなBilinda Butcherのヴォイスに魅了される〈If I Am〉、グラウンドビート風に揺れ動く〈New You〉、ドラムンベース風の〈In Another Way〉、ドカドカ喧しい6拍子のインスト曲〈Nothing Is〉‥‥一聴した時は平板で籠ったノイジーなサウンドにしか聴こえないけれど(マスタリングされていない?)、何回か繰り返し聴いていると次第に魅惑的なメロディが際立って来る。鬱蒼とした森の中で耳を澄ますと聞こえて来る野鳥の囀りや小動物たちの鳴き声のように。暴風雨の中から微かに聴こえる少女の歌声のように。森の中の精霊たちの囁き、海の中のセイレーンの誘惑‥‥それは夢の中の幻聴のように妖しく、甘美で麗しく、謎めいた予言や秘密のメッセージのようにも想える。

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    • 愛用のヘッドフォンが断線しちゃったので、「着脱式ケーブル型」に買い替えました

    • リマスター盤《Loveless》の表示エラー疑惑は「Pitchfork」でも指摘されています

    • 『マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン Loveless』(2009)の巻末に収録されていたインタヴュー(Kevin Shields)の最新版が「Cookie Scene」で読めるにゃん^^;
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    Isn't Anything: Remastered

    Isn't Anything: Remastered

    • Artist: My Bloody Valentine
    • Label Sony UK
    • Date: 2012/05/07
    • Media: Audio CD
    • Songs: Soft As Snow (But Warm Inside) / Lose My Breath / Cupid Come / (When You Wake) You're Still In A Dream / No More Sorry / All I Need / Feed Me With Your Kiss / Sueisfine / Several Girls Galore / You Never Should / Nothing Much To Lose / I Can See It (But I Can't Feel...It)


    Loveless: Expanded Remastered Edition

    Loveless: Expanded Remastered Edition

    • Artist: My Bloody Valentine
    • Label: Sony UK
    • Date: 2012/05/07
    • Media: Audio CD(2CD)
    • Songs: Only Shallow / Loomer / Touched / To Here Knows When / When You Sleep / I Only Said / Come In Alone / Sometimes / Blown A Wish / What You Want / Soon


    Ep's 1988-1991

    Ep's 1988-1991

    • Artist: My Bloody Valentine
    • Label: Sony UK
    • Date: 2012/05/07
    • Media: Audio CD(2CD)
    • Songs: You Made Me Realise / Slow / Thorn / Cigarette In Your Bed / Drive It All Over Me / Feed Me With Your Kiss / I Believe / Emptiness Inside / I Need No Trust / Soon / Glider / Don't Ask Why / Off Your Face / To Here Knows When / Swallow / Honey Power / Moon Song / ...Instrumental no. 2 / Instrumental no.1 / Glider (full length version) / Sugar / Angel / Good For You / How Do You Do It


    MBV

    MBV

    • Artist: My Bloody Valentine
    • Label: MBV
    • Date: 2013/03/04
    • Media: Audio CD
    • Songs: She Found Now / Only Tomorrow / Who Sees You / Is This And Yes / If I Am / New You / In Another Way / Nothing Is / Wonder 2


    マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン Loveless

    マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン Loveless

    • 著者:マイク・マクゴニガル(Mike McGonigal)/ 伊藤 英嗣 / 佐藤 一道(訳)
    • 出版社:ブルース・インターアクションズ
    • 発売日:2009/03/20
    • メディア:単行本(ソフトカバー)
    • 目次:Slow / You Made Me Realise / Loveless / Paint a Rainbow / We're So Beautiful / Glider / Only Shallow / Come in Alone / Swallow / To Here Knows When / Forever and Again / I Only Said / When You Wake You're Still in a DreamHoney Power / No More Sorry / Blown a Wish / We Have All the Time ...


    MUSIC MAGAZINE (ミュージックマガジン) 2012年 6月号

    MUSIC MAGAZINE 2012年 6月号

    • 特集:マイ・ブラッディ・ヴァレンタインとシューゲイザー / 進化する南米音楽
    • 出版社:ミュージックマガジン
    • 発売日:2012/05/19
    • メディア:雑誌
    • 目次:リスナーの頭の中で膨らんでいった、幻想の集合体 / マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン歩み / アルバム・ガイド /『ラヴレス』後のおもなケヴィン。シールズ・ワークス / クリエイション・レコードを描いた映画『アップサイド・ダウン』/ 広がり続けるシューゲイザー / シューゲイザー・ディスク・ガイド / 南米各地から聞こえてくるプログレッシヴな...

    サイバー・キャット

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    • サイバー・キャット(Cyber-chat)の一覧カタログです。画像をクリックすると別ウインドウ(タブ)でネコ・アルバムが開きます^^
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    回転式拳銃

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  • 「こいつはオレたちが今までにやってきた曲とは、ぜんぜん毛色がちがっている」ジョンがジョージ・マーティンに話していた。/「コードはひとつしかない。全部が1つのドローンみたいにしたいんだ」/ サイケデリック時代のはじまりにだれもが陶然としていたあのころ、単調音の曲は急速に人気を博しつつあった。たぶんマリファナをキメているか、幻覚剤でトリップしているときに聞くとしっくりくる音楽だったのだろう。そうとでも考えないと、ぼくにはとても理解不能な音楽だった。/ だがここは音楽的な趣味をうんぬんする場ではない。ぼくの仕事はアーティストとプロデューサーが望む通りの音をつくり出すことだ。だからジョンがジョージに向かって最終的な指示を出したときには、思わず耳をそばだてた。/「‥‥それとオレの声を、何マイルも向こうの山のてっぺんから、ダライ・ラマがうたっているような感じにしてほしいんだ」/ いかにもジョン・レノンらしい発言だった。不世出のロックンロール・シンガーだったにもかかわらず、彼は自分の声を嫌い、いつもちがう感じにしてくれと頼んできた。
    ジェフ・エメリック 『ザ・ビートルズ・サウンド 最後の真実』


  • 《Revolver》(Parlophone 1966)はファブ・フォーだけではなく、その後のロック史上にとってもエポックメイキングなアルバムである。「20世紀ポピュラー・ミュージックの金字塔」と賞讃された《Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band》(1967)もゼロ年代に入ってからは、金色の輝きに曇りが出て来た。リリースから40年以上の年月を経て、2枚のアルバムの評価は逆転(回転?)してしまったのだ。逆回転ギター、テープ・ループ、アーティフィシャル・ダブル・トラッキング(ADT)‥‥など4トラック・テープを駆使した実験的なレコーディングやシタール、タンブーラ、弦楽八重奏、ブラス・セクションなどを導入した斬新なサウンドに耳を奪われてしまうが、真っ新な原曲の良さが光っている。クラウス・フォアマン(Klaus Voormann)によるモノクロの「コラージュ・アート」もアイドルという派手な衣裳を脱ぎ去った4人の姿を象徴的に描いている。

    △ Taxman
    「One, two, three, four …」というカウントから始まるGeorgeの最初で最後のアルバム・オープニング曲だが、Paulの弾くサビの超絶16ビート・ベースや間奏のシタール風リード・ギターが際立っている。Johnのギター、JohnとPaulのコーラス、Ringoのドラムス、カウベル、タンバリン‥‥というように、主役のGeorgeはヴォーカルだけなのだ。ギター・ソロに悪戦苦闘していたGeorgeを見かねて痺れを切らしたプロデューサのジョージ・マーティン(George Martin)が代わりにPaulに弾かせてみたらどうかと提案したという。不承不承承諾したGeorgeはその後2時間ほどスタジオから雲隠れしてしまったらしい。そのせいなのかどうか、全収入の95%をも徴収する国税庁の税務官を皮肉った歌詞‥‥「Now my advice for those who die / Declare the pennies on your eyes」は痛烈に響く。Georgeの怒りは高すぎる税金に対してだけなのかと邪推して‥‥。この曲をアルバムの冒頭に入れたのもプロデューサの意向だったらしい。

    ◎ Eleanor Rigby
    ストリングスだけの伴奏でPaulが歌うという〈Yesterday〉に次ぐクラシカルな楽曲。JohnとGeorgeがバッキング・ヴォーカルで参加し、Paulもダブル・トラックのコーラスを入れている。最初は弦楽八重奏(ヴァイオリン4、ヴィオラ2、チェロ2)のアイディアに難色を示したが、ジョージ・マーティンに説得された。「尖った音にしたい」というPaulの指示を受けたエンジニアのジェフ・エメリック(Geoff Emerick)が楽器にマイクを近づけて録音しようとしたので、2組の弦楽四重奏奏者たちに嫌がられたというエピソードもある(テイクの度に椅子をズリ下げて抵抗した!)。不思議なのはPaulの手によるAメロの歌詞以外を主に書いたのは自分だと主張してJohnとPaulの2人が互いに譲らないこと。ヒロインの「エリナー・リグビー」という姓名は映画『Help! 4人はアイドル』(1965)で共演した女優エリナー・ブロン(Eleanor Bron)と恋人ジェーン・アッシャー(Jane Asher)の許を訪ねてブリストルへ行った時に見つけた店の名前から採ったという。もう1人の登場人物マッケンジー神父は当初の歌詞ではマッカートニー神父(Father McCartney)だった。

    ▢ I'm Only Sleeping
    Johnの気怠く眠たそうなヴォーカルが印象的なアシッド・フォーク。Johnのアクースティック・ギター、Paulのベース、Georgeのハーモニウム、RingoのドラムスにPaulとGeorgeのコーラスという編成で、実際にはテープの走行スピードを可変させてレコーディングすることでサウンドに変化をつけている(Johnのヴォイスが高くなり、演奏が遅くなる)。極めつけの逆回転ギターは単なるテープの逆回転ではなく、普通に弾いて採譜したものを逆から弾いて逆回転させたという。逆の逆だから一見同じようにも思えるが残音があるので、回文を逆回転させても同じ言葉には聞こえないようにメロディも変化する。間奏(Georgeのダブルトラック)とエンディング(GeorgeとPaulのデュエット)の逆回転ギターの録音には長い時間が費やされた。サイケデリックな夢幻サウンドと夢見心地なヴォーカル(春眠暁を覚えず?)は眠いだけではなく、マリファナやドラッグでラリッた状態を暗示しているのかもしれない。

    △ Love You To
    〈Norwegian Wood (This Bird Has Flown)〉に続いてシタールを導入した曲だが、Johnのフォーク調の曲とは異なり、シタール、タンブーラ、タブラなどが全編に渡って鳴り響くインド風のサウンド(後のラーガ・ロック)になっている。Georgeの弾くシタールの他は在英インド・ミュージシャン(アジアン・ソサエティ)が担当。Georgeのヴォーカル(ADT)とギター、Ringoのタンバリンのみで、JohnとPaulの2人はレコーディングに参加していない。Georgeのファズ・ギターが虚無的なドローンのように響き、ヴォーカルも神秘的というか厭世的に聴こえる。《Revolver》の中では異色曲ということになるけれど、不思議と違和感なくアルバムの中に収まっている。その後、Georgeはインド音楽やインドの精神世界に深く傾倒して行き、《Sgt. Pepper's …》の〈Within You Without You〉に結実する。

    ◎ Here, There And Everywhere
    Paulの美しいバラード曲。Johnのギター、Paulのベース、Ringoのドラムス、Georgeのリード・ギターというオーソドックスなギター・サウンドで、メロディ・ラインもJohn、Paul、Georgeのコーラス・ワークも口の中で蕩けるプディングのように儚く甘い。イントロ〜Aメロ〜サビの転調(G→B♭)の美しさは何度繰り返し聴いても、自分で弾き語りをしても陶然とする。Paulの回想によると、英サリー州にあるJohnの家を訪ねた時、就寝中のJohnが起きて来るのを待つ間、プールサイドの椅子に座って紅茶を飲みながらギターを弾いているうちに出来た曲だという。Paulのヴォーカル(ダブルトラック)はテープ速度を落として録音し、再生時に速めている。少し高くなったファルセット・ヴォイスはマリアンヌ・フェイスフル(Marianne Faithfull)をイメージしたというだけあって、どこか女性・中性的なニュアンスも薫り立つ。‥‥ということは同性愛者(レズビアン)のラヴ・ソングだったのかしら?

    ☆ Yellow Submarine
    PaulがRingoのために書いた合唱歌はファブ・フォーの中でも最もポピュラーな曲の1つである。特に〈イエロー・サブマリン音頭〉(1982)というカヴァ曲がヒットした日本では。Johnのアクースティック・ギター、Paulのベース、Georgeのタンバリン、Ringoのドラムス。Ringoのヴォーカルを3人とゲストやスタッフがコーラスでサポートする。音の出る絵本のような空想世界。波、グラス、ブラスバンド(マーチのレコードからの借用)、泡、機関音、圧縮空気、鐘、汽笛‥‥などの効果音も愉しいけれど、レコーディングは大騒ぎだったらしい。お香を焚いてマリファナの臭いを誤摩化し、真夜中近くには大太鼓を胸に抱えたマル・エヴァンス(Mal Evans)を先頭にブライアン・ジョーンズ(Brian Jones)、マリアンヌ・フェイスフル、パティ・ボイド(Pattie Boyd)など招待されたゲストたちが一列になってスタジオ内をジグザグに練り歩いたというのだから。水の中で歌っているような声を録音したいというJohnのリクエストに応えて、コンドームに包んだマイクを水の入った牛乳ビンの中に沈めたというボツ・アイディアも笑えるなぁ。

    ▢ She Said She Said
    「リヴォルヴァー・セッション」で一番最後に録音された曲。収録曲が1曲足らないことに気づいて、ワールド・ツアーに出る2日前(1966. 6. 21)に急遽レコーディングすることになったという。Johnの新曲は1965年の全米ツアー中にLAの家で開いたパーティで服用したLSD体験のトリップ中にピーター・フォンダ(Peter Fonda)が囁いた「死ぬってどんな感じなのか知ってるよ」という言葉がモチーフになっている。メンバー間で口論になって、怒ったPaulがスタジオから出て行ってしまったため、Johnのギターとオルガン、Georgeのギターとベース、Ringoのドラムスという編成で録音された。〈I'm Only Sleeping〉をテンポ・アップしたようなサイケデリックなサウンドはサビで3拍子に変速する。僅か9時間でレコーディングからミキシングまでを終えてしまった曲にしては全然悪くない。Paulが不在でも遜色ない曲を完成出来るという3人の気概さえ感じられる。

    ◎ Good Day Sunshine
    Johnの〈Rain〉に呼応するかのように書かれたPaulのピアノ曲(アナログ盤ではB面1曲目になる)。しかし明るいタイトルや幸せそうな歌詞とは裏腹に、暖かい太陽の陽射しが降り注ぐ雲1つない快晴という感じではなく、なぜか薄曇りの英国の天候を想わせる。Paulのピアノ、Georgeのベース、Ringoのドラムスに、John、Paul、Georgeのコーラスという比較的シンプルなバッキング・サウンドだが、サビの3声ハーモニーから始まり、Aメロで転調(B→A)するなど凝りまくった曲構成になっている。どこか憂鬱で不穏な空気感に包まれているように感じられるのはギターのないサウンドや転調の影響によるものなのだろうか。ホンキートンク調のピアノを弾いているのはジョージ・マーティンで、例によってテープ・スピードを落として録音して再生時に通常の速度に戻している。エンディングの輪唱のようなコーラスも幻想的に響く。

    ▢ And Your Bird Can Sing
    後年のJohnが毛嫌いするようになる曰くつきの曲だが、思わせぶりな歌詞内容は兎も角、疾走感溢れるサウンドは文句なしにカッコ良い。Johnのギターとタンバリン、Paulのベース、RingoのドラムスにPaulとGeorgeのコーラスや手拍子。何よりも目立つGeorgeとPaulのツイン・リード・ギターも決まっているし、ベースも軽快に走っている。この曲をJohnが嫌悪するのは「鳥」(bird)を隠喩に使った勿体ぶった歌詞が鼻持ちならなくなったからなのだろう。「君の鳥」(your bird)が一体何を指しているのかと問われても全く釈然としないからだ。〈Strawberry Fields Forever〉や〈I Am The Walrus〉以降、Johnは安直な比喩を使わないシンプルで直截的な歌詞を書くようになる。解散後に贅肉を削ぎ落した修行僧ような「ソロ・アルバム」を発表したJohnから顧みると、激しい自己嫌悪に嘖まれたのは想像に難くない。

    ◎ For No One
    Paulのバロック調のバラードは1966年3月、ジェーン・アッシャーと一緒に訪れたスイスの山荘で書かれたという。スキー旅行中に恋人との口論の後に生まれた曲というだけあって、ヴォーカルも内省的で切なく聴こえる。Paulのピアノとクラヴィコードとベース、Ringoのドラムス(ハイハット)、マラカス、タンバリンに外部ミュージシャンのフレンチ・ホルンだけで、JohnとGeorgeの2人はレコーディングに参加していない。メンバーの個別録音が多くを占めるようになる《White Album》(1968)を予見するところもある。ホルン奏者のアラン・シヴィル(Alan Civil)は高音域の間奏のメロディに困惑して吹奏することを躊躇ったという。2分に満たない小曲でありながら、隠れ名曲の誉れ高い。実際のキーはBだが、Cでクラヴィコードを弾いた後でリダクション時に半音下げている。

    ▢ Doctor Robert
    ドクター・ロバートは顧客に密かにLSDを処方してくれるという噂のあるNYの歯科医だった‥‥というとサイケデリックなサウンドやドリルの耳障りな掘削音を想像してしまうが、Johnのヴォーカル(ADT)、ギター、ハーモニウム、Paulのベース、ピアノ、Georgeのギター、マラカス、Ringoのドラムスという初期に近い編成で、ギターの音色も懐かしく感じられる。《For Sale》(1964)や《Rubber Soul》(1965)に入っていたとしても違和感のないサウンドになっている。もし、この曲の代わりに〈Rain〉が《回転式拳銃》に収録されていたら完璧なアルバムになったのではないかと夢想する。もちろん、その場合はPaulの〈Paperback Writer〉も入ることになるのだが(当時のファブ・フォーには先行シングル曲をアルバムに収録しないという、若年層ファンの懐具合を気遣った暗黙のルールが課せられていた)。

    △ I Want To Tell You
    Georgeの曲がオリジナル・アルバムに3曲以上収録されるのは2枚組の《White Album》の4曲を除くと初めてのこと。Georgeのギターとマラカス、PaulのベースとピアノにJohnとPaulのコーラスや手拍子で、ヴォーカルはダブルトラック(ADT)処理されている。アニメ映画のサントラ・アルバム《Yellow Submarine》(1969)に入っている〈It's All Too Much〉や〈Only A Northern Song〉にも通じる捩じれたようなサウンドと内に籠ったようなヴォイス(ハリスン節)が堪能出来る。なかなか曲名を決められないGeorgeの代わりにジェフ・エメリックがレコーディング中に〈Laxton's Superb〉という仮タイトルをつけていたという。〈Love You To〉が〈Granny Smith〉という仮題だったように、いずれもリンゴの品種名というところが可笑しい。

    ◎ Got To Get You Into My Life
    ファブ・フォーが初めて本格的なブラス・セクションを採り入れた曲で、後のブラス・ロックへの先駆けとなった。Paulのベース、JohnとGeorgeのギター、Ringoのドラムスとタンバリンにジョージ・マーティンのハモンド・オルガンという布陣で、ブラス・パートには5人の外部ミュージシャン(トランペット3、テナーサックス2)を起用している。左チャンネルでは事前にブラス・アレンジを試みたと思しきファズ・ギター音が小さく鳴っている。〈Eleanor Rigby〉のレコーディングと同じくジェフ・エメリックが管楽器にマイクを接近させて録ったことで迫力あるブラス・サウンドになった。間奏のツイン・リード・ギターも力強い。Paulのソウルフルなヴォーカルも見事で、歌入れ中にコントロール・ルームから飛び出して来たJohnが大声で激励する一幕もあったという。Johnによると歌詞の中の「君」(you)とはマリファナの隠喩らしい。

    ▢ Tomorrow Never Knows
    ワン・コード(C)、テープ・ループ、逆回転ギター、人工的ダブルトラック(ADT)‥‥など、実験的なサウンドに圧倒される。ティモシー・リアリー(Timothy Leary)の著作から着想を得たJohnは「ダライ・ラマが山頂から歌っているような感じ」にしたいとジョージ・マーティンに要望し、その会話を耳にしたジェフ・エメリックが創意工夫を凝らす。PaulのベースとRingoのドラムス、Georgeのギターとタンブーラ‥‥エメリックは映画『Help!』のプロモーションで使用したという「8本腕のセーター」をバスドラの中に詰め、Johnのヴォーカル(ADT)をレズリー(回転スピーカー)に通して変化させた。間奏の逆回転ファズ・ギターはGeorgeで、メンバー各自が自宅で作って来た5〜6種類のテープ・ループをSEとして使っている。曲の核となるのはループ感のあるドラムスとドローン・ベースだか、もしRingoのドラムスがテープ・ループならば劃期的なことだ。今日のヒップホップやエレクトロニカで多用されるサンプリングと同じ発想を1960年代に実践していたのだから。「リヴォルヴァー・セッション」で一番最初に録音されたという事実にも驚かされる。

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    • ▢ John Lennon ◎ Paul McCartney △ Geroge Harrison ☆ Ringo Starr
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    Revolver

    Revolver

    • Artist: The Beatles
    • Label: EMI UK
    • Date: 2009/09/09
    • Media: Audio CD
    • Songs: Taxman / Eleanor Rigby / I'm Only Sleeping / Love You To / Here, There And Everywhere / Yellow Submarine / She Said She Said / Good Day Sunshine / And Your Bird Can Sing / For No One / Doctor ...Robert / I Want To Tell You / Got To Get You Into My Life / Tomorrow Never Knows


    ザ・ビートルズ・サウンド 最後の真実

    ザ・ビートルズ・サウンド 最後の真実

    • 著者:ジェフ・エメリック(Geoff Emerick)/ ハワード・マッセイ / 奥田 祐士(訳)
    • 出版社:白夜書房
    • 発売日: 2009/09/09
    • メディア:単行本(ソフトカヴァ)
    • 目次:1966 / 秘宝 / アビイ・ロード3番地 / ビートルズとの出会い / 初期のセッション / ビートルマニア / ハード・デイズ・ナイト / 創意と工夫 / ここにいられて最高です、ほんとにワクワクしています / 傑作がかたちに / 愛こそはすべて‥‥そして長いお休み / 僕が辞めた日 / 嵐のあとの静けさ / 金床とベッドと3人の拳銃使い / とどのつまりは / 穴の修...理 / ドブとトカゲとモンスーン / ビートルズ以降の人生 / 今日、ニュースを読んだよ、いやはや


    ザ・ビートルズ全曲バイブル ── 公式録音全213曲完全ガイド

    ザ・ビートルズ全曲バイブル ── 公式録音全213曲完全ガイド

    • 編者: 大人のロック!
    • 出版社:日経BP社
    • 発売日: 2009/12/07
    • メディア:ハードカヴァ
    • 目次:英米公式全作品の系譜 / 公式録音全213曲徹底ガイド(2トラックレコーディング時代〜ライヴ演奏スタイルでの録音/ 4トラックレコーディング時代 1〜アレンジの幅が広がりサウンドに深み / 4トラックレコーディング時代 2〜バンドの枠を超えた録音の始まり / 4トラックレコーディング時代 3 〜ロックを芸術の域に高める/ 8トラックレコーディング時代へ〜サウンドと作品の多様化 / 8トラックレコーディング時代〜原点回帰...と円熟のサウンド)/ 録音技術の変化と楽曲解析方法

    パリンド・キャット 2(ネコ回文集)

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  • 小説『猫の客』についても触れたことを、ここでも同じく思い出したのでまたしつこく書くと、猫が好きである自分が好き、という人が嫌いである、私は。猫が好きでないのではない。そういう人を好きになれないでいたのだ。そんな私は、猫を好きになるずっと以前に、写真を撮ることを好きになっていた。/ カメラを持って写真を撮る人の中には、写真そのものよりもカメラという機械を好きな人。そして、写真を撮っている自分が好き、そういう人もいる。彼らを冷たい目で眺めているはずの自分も、しかし時にはそちら側に淫しているような気になってひやりとする。いけない! と思う。/ 夢中になったなにかを撮りながら、その「なにか」にその実心を寄せていない、という態度は、被写体よりもカメラを構えるこちらのほうが偉いと誤解しているのと、同じことである。そういう風な心持ちで撮った写真はなかなかどうして、無条件にいい、と思わされるものにはならないはずなのだ。
    木村 衣有子 『猫の本棚』


  • ▢ 溶けたい日々が「ネコ日和」‥‥ピリピリ呼び子、音が響いたけど
    「ネコ日和」とは一体どのような日なのか?‥‥五月晴れの麗らかな午後、日向で微睡むネコたちの姿が思い浮かぶ。久しぶりに立ち寄ったI袋駅前公園。春の嵐や低温日などの不順な天候が響いて、今年(2013)は花見の機会を逸してしまった。桜も散った4月末の夕方、公園の奥の植え込みの陰に隠れていたネコたちも次第に姿を現わす。通りがかった人たちもケータイやiPadや一眼レフを手にして写真を撮り出す。水天宮神社の前で何の前触れもなく始まった「ネコ撮影会」に心和む。ネコの見る夢を想像して作った回文のようなマジカルな時間が流れる。夢の中で溶けたネコは何に変わるのだろうか。ジャングルのトラたちは木の周りを駆け回ってバターになったけれど、公園のネコたちは夢の中で大好物のチーズになってしまったのかもしれない。「ネコ日和」という言葉は田口久美子のネコ・エッセイ集『書店員のネコ日和』(ポプラ社 2010)から採った。

    ▢ キティがスパ入浴。薬用ユニ・バス快適
    元来ネコは水を嫌う習性だというけれど、飲み水の器の中に入れた前肢を弾いて床にジャクソン・ポロック風の抽象画を描く子ネコもいるし、入浴中の飼主の後を追って浴槽に飛び込んで来るネコもいる。お風呂大好きのキティちゃんは毎朝、毎夜、湯船の中でリラックス。もちろん浴室の中は浴槽(ユニ・バス)を含めてピンク色で統一されている。回文ストーリの主人公はネコの飼主ではなく、飼いネコ自身。ネコの視点(1人称)で描かれた饒舌体。全国の温泉地巡りが趣味で、家にいる時はユニ・バスに天然温泉入浴剤や薬用ハーブを入れてプチ温泉気分を味わっているという趣向。サンリオ・キャラのハロー・キティを擬人化というか擬猫化しているわけだが、美少女アイドルの独白風パロディにもなっているかしら。吉行理恵の「湯ぶねに落ちた猫」のイメージも借りている。

    ▢ MacBook Pro、子猫寝転ぶ、靴拭く妻
    〈臨死のマック抱く、妻の心理〉という村上春樹の回文が元ネタになっている。「マック」だけではデスクトップなのかノートブックなのか、マッキントッシュ(Mac)の機種を特定出来ないし、賞味期限切れの某ハンバーガーを思い浮かべてしまう粗忽者もいないとは限らない。MacBook Pro(マックブック・プロ)ならばスリスリしたくなるシルヴァー・ボディの肌触り、白く光るリンゴ・マーク、黒いベゼルに映える液晶パネル画面、環境センサーで光るキーボードなど‥‥コンピュータ以上の愛情を妻がマックに抱いたとしても不思議ではないでしょう(回文ストーリでは逆に亭主の方がマック愛に耽溺している)。Mac OS Xのコードネームがネコ科動物の名前だったり、「マックの中に住んでるネコ」など、マックとネコの相性も良好です。余談ですが、回文作成者(sknys)も2011年秋に10年間愛用して来たノートブック(iBook)に別れを告げて、MacBook Proに買い替えました。

    ▢ 低温夜、稚児寝る夜。「ネコちゃんおいで!」
    「SF史上最高の猫」の誉れ高いガミッチ(Gummitch)君は飼主夫婦のことを〈馬肉のせんせい〉〈ネコちゃんおいで〉という渾名をつけている。馬肉を食べさせてくれる夫ハリー・ハンターと「ネコちゃんおいで」と呼びかける妻ヘレンというわけだ。フリッツ・ライバーの「跳躍者の時空」(河出書房新社 2010)は天才子ネコのガミッチを主猫公とするSF連作の1作目だが、ネコ・アンソロジー集『魔法の猫』(扶桑社 1998)に収録された「跳躍者の時空」では〈馬肉の大将〉(Old Horsemeat)、〈ネコこっちおいで〉(Kitty-Come-Here)と訳されていた。スーパー子ネコが幼ない長女シシーの魔の手から〈赤ん坊〉を守るために何をしたかを想うと目頭が熱くなる。ガミッチの活躍に魅了されてからは外でネコを見かけると、つい「ネコちゃんおいで」と女飼主のように呼びかけてしまう。外ネコたちは天才ネコ(IQ160)のように人語を解するわけではないので、必ずしも尻尾を振って近寄って来るとは限らないのだが。

    ▢ 捏ねる粘土、ふわふわフトン寝るネコ
    ある稲荷神社の裏口から奥へ入ったところにある空き地に数匹のネコたちが屯していた。首輪をした飼いネコや野性味溢れるノラたちが集う空間。雑草の蔓延った場所には粗大ゴミや廃材なども捨てられていた。元は敷き布団か掛け布団だったのだろうか、白い綿の上に1匹のネコが鎮座している。余程居心地が良いのか、、近づいても逃げ出す気配は全くない。柔らかいクッションやふわふわ座布団の上はネコにとっても、お気に入りの場所なのに違いない。中学校の美術室‥‥机の上に座布団を敷いて、ネコにモデルになってもらう。生徒たちは中央のネコを円形に丸く囲んで思い思いに粘土を捏ねる。ネコ回文に「ネコ」「寝る」という言葉が入ってしまうのは、ある意味で避けられないことなのかもしれない。「ねこ」の語源は「寝子」という説もあるくらいなのだから。

    ▢ オリンパス、ネコ飛ばし、都市はどこ?‥‥寝ず番リオ
    オリンパスの「飛ばし」事件は兎も角、S神井川にネコを投げ捨てる不届きな輩がいる。たまたま目撃した人が通報すれば消防車が現場に駆けつけて、消防隊員が川に落ちたネコを救出するのだが、川上で雨が降って水嵩が高く勢いが激しい時には川下へ流されてしまうこともあるらしい。事細かな区の条例や行き過ぎた監視カメラの設置には反対だが、一民間人の手に負えない動物虐待常習者には、それ相当の罰則が適用されてしかるべきだと思う。佃島公園のネコが人に棒で殴り殺されたと聞いて「棒で殴られたような心持ち」になった動物写真家の岩合光昭氏も『ネコに金星』(新潮社 2013)の中で「アメリカでは動物虐待は禁固刑に当たる。ヒトが増えればいろいろあるだろう。ネコには対応できないことも起こってくる。その結果いのちを落とす。ネコはおちおち外を歩けなくなってしまうだろうか」と書いている。あるヴォランティアの女性も「私は絶対に赦さない」と怒りを込めて語っていた。

    ▢ スラム・ネコ通り、もう懲り懲りコウモリ男眠らず
    「スラム・ネコ通り」が一体どこにあるのか、実在するストリートなのかどうかも分からない。恐らく「バットマン」の舞台となったゴッサムシティのような市街地の郊外に「コウモリ屋敷」が建っていて、その裏通りにノラネコたちが群棲しているというシチュエーションだろう。治安悪化や経済格差で荒れ果てた街はスラム化してしまう。住民たちが市外に逃げ出し、ゴースト・タウンとなった街にはコウモリ男とネコだけが残された。「コウモリ邸」へ通じる道は、いつからか「スラム・ネコ通り」と呼ばれるようになった。野生化したドラネコ軍団の鳴き声に日夜苛まれて、不眠症に陥ったコウモリ男爵。「猫ストーカー」ではなく、逆に猫にストーカーされているような憂鬱な気分。仇敵ジョーカーやキャット・ウーマンと闘えるような精神状態は保てない‥‥この物語(回文ストーリ)はダーク・ヒーローものではなく、トラジコメディである。

    ▢ 3トン犀にキャット、危険激突、山羊兄さん頓挫
    人気対戦格闘ゲーム「鉄拳シリーズ」のCGムーヴィにパンダに股がった凌暁雨(リン・シャオユウ)が三島高専の校門前に停車している白いリムジンに激突するシーンがある。折しもリンと同じようにリムジンに衝突しそうになって自転車から転げ落ちて弁当を台無しにした風間飛鳥とクルマに乗っていたリリ・ロシュフォールの口論〜バトルが始まっていたところだった。「遅刻、遅刻〜〜〜〜ッ!」と叫びながら暴走するリンとパンダをネコと犀に、リリと飛鳥を山羊兄さんに変えたスラップスティック回文。ネコや山羊兄さんが通うアニマル学園高等部は校則が厳しいことで有名なのだ。お茶目な白黒模様に騙されて可愛いと思っているパンダも獰猛なクマの一種なので、全速力で目前に逼って来ると怖い。もっとも角のある3トン犀の方が危険度は高いかもしれないけれど。

    ▢ 未遂で事故死?‥‥奇面館。猫と5年間メキシコ・シティ住み
    「奇面館」の晩餐会に招待された6人の客人たちは全員が面妖な仮面を被って素顔と氏名を隠している。その仮面パーティの直前に〈奇面の間〉で首を吊って死んでしまった館主。自殺なのか、事故なのか(余興の「自殺未遂パフォーマンス」に失敗した?)、それとも密室殺人事件なのか?‥‥奇面館主人に招かれていたゲストの1人と1匹、迷宮探偵とペットのネコが怪事件を推理する回文シリーズ「綾取猫人と黒猫コロネの事件簿10」。怪事件と名推理はあっても「解決編」のない回文ミステリだが、今回の事件で1つだけ解明されていることがある。かつて館主が「猫と5年間メキシコ・シティ」に住んでいた屋敷が「黒猫館」と呼ばれていたことである。「黒猫館」で主人と一緒に暮らしていたという黒猫とコロネちゃんの関係は母と子なのでしょうか。言うまでもなく『奇面館の殺人』(講談社 2012)のパロディになっています。

    ▢ 9月彦根、魔夜、狼が大山猫引っ掻く
    ひこにゃんが夜回り中に神社の境内で目撃した狼と大山猫の壮絶な闘い。オオカミや大山猫(Lynx)が日本国内に棲息しているのかは不明ですが、ひこにゃんだって「ゆるキャラ」なんだから、「ネコ駅長」のように実在しているとは言い難い。「スニーズ回文」は本文(回文ストーリ)も含めてフィクションと断っているので問題は何もないけれど。ゆるキャラ・ブームの背後には少ない元手で一攫千金の経済効果を目論む役所や地元の商売人根性が透けて見える。ひこにゃん人気に便乗して2匹目、3匹目のドジョウを狙った雨後のタケノコみたいに安易で安直な「ゆるキャラ」たちは悪乗りではないか(「なぞなぞ回文 #32」に登場したくまモンはキモ可愛いけれど)。ひこにゃん回文には森の中で偶然出会った大山猫と仲良くなったという「後日談」もあります。あなたも「猫ストーカー」になって、ひこにゃんの後を尾けて行けば大山猫に出遭えるかもしれません。

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    • 回文と本文はフィクションです。一部で実名も登場しますが、該当者を故意に誹謗・中傷するものではありません。純粋な「言葉遊び」として愉しんで下さい

    • 回文アンソロジー・シリーズ4‥‥ネコ回文を集めてみました。各回文をクリックするとオリジナル・ストーリが読めます^^

    • 文庫版『私は猫ストーカー』(中央公論新社 2013)は『私は猫ストーカー』(洋泉社 2005)と『帰って来た猫ストーカー』(2008)を合本・再編集した完全版です
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    猫の本棚

    猫の本棚

    • 著者:木村 衣有子
    • 出版社:平凡社
    • 発売日:2011/07/23
    • メディア:単行本
    • 目次:まえがき / 猫文学を読む / 猫を知る / 出典・引用一覧/参考文献 / あとがきにかえて──かまめしねこの名前


    ネコに金星

    ネコに金星

    • 著者:岩合 光昭
    • 出版社:新潮社
    • 発売日:2013/01/28
    • メディア:文庫
    • 目次:宮崎 / 三重 / 和歌山 / 山梨 / 富山 / 白川郷 / 茨城 / 山口 / 千葉 / 徳島 / 兵庫 / 東京 / 岩合光昭 金星インタビュー / あとがき / 解説・赤川 次郎


    私は猫ストーカー 完全版

    私は猫ストーカー 完全版

    • 著者:浅生 ハルミン
    • 出版社:中央公論新社
    • 発売日:2013/01/23
    • メディア:文庫
    • 目次:はじめに「猫のあとをつけてみたい」/ あなたにもできる猫追いの手引き / 実録・猫ストーカーファイル / あとがき / 透明な革命・穂村 弘

    サイボーグ 009ノ3

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  • 物語はこのサブ・タイトル(引用者註:天使編・悪魔編)通り、世界中の伝説、神話、そして信仰の対象の中の、あらゆる神々と、サイボーグ・ナンバーたちの "生と死とを賭けた壮絶な最後の闘い" ──である。神々が勝てば、地球上から全人類は抹殺される。"神々" のみの世界となる。つまりサイボーグ009たちは、人間の存亡を背負って超大な力を持つ神々に対するのである。当然、神々の正に神秘的な "力" の前には如何にサイボーグ(改造人間)たちでも敵わない。形勢の利は圧倒的に神々にある。神々は次第に地に満ち溢れ──サイボーグたちは、即ち人類は、絶滅の危機に瀕する。/ その時である。001が長い眠りから目覚めるのは‥‥。超能力者001‥‥。その力は "眠り" の間に巨大なものに育っている。がしかし、神々の力の前にはその超能力も蟷螂の斧だ。でも──もし全員が、001と同じ超能力を持てたとしたら‥‥!? / そこで001の "指導" で、00ナンバーたちの "超人" への脱皮が始まる。やがて‥‥改造人間の超能力者──超能力戦士・エスパー・サイボーグの誕生だ‥‥。
    石森 章太郎 「サイボーグ009 "その世界" のこれから──」


  • 「移民編」(冒険王 1968)
  • 中華飯店「張々湖」の終業間際、シャッターを閉めようとしたグレート・ブリテン(004)は急ブレーキ音に驚いて外に飛び出す。車道で男性を跳ね飛ばしたクルマが店内に突入して来たのだ。ブリテンが負傷した青年と連れの少女を保護し、張々湖(006)が救急車を呼ぶが、2人は裏口から姿を消してしまう。切断した右腕(義手)と光るメダル(ペンダント)を後に残して‥‥。不審に思ったブリテンと張々湖は島村ジョー(009)に顛末を話す。ギルモア科学研究所をを訪れた3人は博士に片腕とメダルを鑑定してもらう。現代の整形医学では作れない精巧な義手と通信機が仕込まれたペンダント。「張々湖」に戻った2人は片腕を取り戻しに来た少女に脅される。短銃(パラライザー)と指輪に仕込まれた熱線銃‥‥タコに変身した004が少女の腕に絡みついて短銃を落とし、そのパラライザーを拾った006が彼女を気絶させる。心配して引き返して来たジョーが少女の手から指輪を抜き取る。009の首から下げていたペンダントが通信音を発して爆発する。

    小笠原・北硫黄島で巨大なドーナツ状のビルを発見した探検隊が怪人たちに抹殺され、島に近づいた調査船がスカイ・ハット(空飛ぶ円盤)に攻撃される。ギルモア科学研究所から脱走した少女を尾行する009と004。少女がアジトに駆け戻ると、ベッドの上で横たわる両腕のない青年(F-501)を3人の男たちが取り囲んでいた。兄は裏切り者として処刑され、妹(F-502)と3人組は片腕を取り戻すべく再び「張々湖」へ向かう。009たちと謎の3人組の闘いで明らかになった彼らの正体。破れたマスクの下から現われた容貌は人間とは思えない奇怪な姿だった。1人が自爆する隙に2人は逃走するクルマから出現した円盤に乗って夜空に消える。後に残された少女リナが語った衝撃の真実!‥‥私たちが009たちの子孫であること。2222年の未来からタイム・マシンに乗って来た未来人であること。移民計画(プログラムE)のための準備工作員であること。

    19XX年5月、第3次世界大戦が勃発して地球上の生物の2/3が死滅する。様相の一変した地球の生存競争から脱落した人類は核戦争前の世界へ脱出(エクソダス)しようと計画した。小笠原・北硫黄島に上陸したサイボーグ・ナンバー(009、006、007)はスカイ・ハットに攻撃され、時間砲によって過去〜未来の核戦争を体験する。捕虜となった3人は司令官と移民計画について「問答」する。ギルモア邸に届いた少女リナと009たちの捕虜交換‥‥しかし、スカイ・ハットが009や立会人のフランソワーズ・アルヌール(003)だけでなく、リナや司令官までをも上空から攻撃する。司令官、ハインリヒ(004)とジェット(002)がスカイ・ハットを撃ち落とす。009がスカイ・ハットをドーナツ・ビルに激突させて侵入路を開く。基地内に乗り込んだ司令官が裏切り者たちを倒す。009との最終対決の直前、部下が「タイム・ワープ超周期化」の成功を報せる。未来人は移民時点を変更して超過去、100万年の彼方へ移住して人類の祖先となるのだ。ドーナツ・ビルが回転して過去へタイム・ワープする。ジョーとフランソワーズの2人が司令官の遠い先祖だったというオチを残して。

  • 「ローレライの歌編」(冒険王 1968)
  • ドイツのライン川下りで観光客が見物する対岸の景色‥‥古城とローレライの岩。美しい歌声で旅人たちを惑わしては殺したというローレライの伝説。長距離運送会社のトラック運転手をしているアルベルト・ハインリヒ(004)はローレライの岩の近くにある村に近づいた時に奇妙な事件に遭遇する。助手の知っているという近道は通行止めになっていた。トラックから降りた2人は不思議な歌声、「角笛のような、モダンジャズやミュージック・コンクレートのような」、オペラ歌手のような声を聴く。ハインリヒと助手は歌声に誘惑されるように森を抜けて村の中へ入る。黒々とした古城をバックにした村に甲冑騎士が現われて、1人の村人を殺害する。音楽に誘われて古城へ向かって歩き出したハインリヒは正気に返り、殴って気絶させた助手を連れてトラックに戻り、命からがら村から逃げ出す。超音波ミュージックを遮断する装置を作って欲しいというハインリヒの手紙をギルモア博士が読み、完成した装置を島村ジョーが彼の許へ届けに行く。

    超音波遮断装置を耳につけて村に入ったジョーとハインリヒは古城の跳ね橋が下りて1人の女性が出て来るのを目撃する。再び村人を襲う騎士の前に四角い箱を頭に被った謎の一団が現われる。手負いの者をまでも殺そうとする冷酷な騎士に004が闘いを挑む。逃げ帰る騎士の先回りをした009が跳ね橋を渡って古城内に潜入する。騎士と美女、母シモーヌと娘ロミイの会話を盗み聞きした009は母娘が魔女裁判によって火刑に処された一族の末裔だったと知る。村人から石を投げられて右眼を潰された少女の復讐だったのだ。009との闘いに勝ち目のないことを悟ったシモーヌは超音波音楽のヴォリームを上げて村人たちを一網打尽にしようとするが、009に撃たれて片腕を失う。古城を爆破して自爆しようとする母親を娘が撃ち、自らも命を絶つ。爆発して炎上する城から脱出した009はハインリヒから、生き残りから聞いたという話を聞かされる。シモーヌ・ローレライがA国の軍事研究所所属の物理学者だったこと、超音波兵器の研究をしていて半年前に行方不明になったこと、A国がFBIに捜査を命じたことを。

  • 「海の底編」(冒険王 1968-9)
  • 米原子力潜水艦エンゼルフィッシュ号が行方不明になった。アメリカやソ連の潜水艦だけでなく、漁船やヨットなどの海難事故も多発している。小型潜航艇に乗り込んで単身調査に向かった島村ジョーの前に国籍不明の潜水艦が姿を現わす。艦内に連行されたジョーを怪しんだ艦長は押収品のコスチュームを見てサイボーグ戦士だと気づき、ジョーも「黒い幽霊団」の一味だと察するが、正体不明の潜航艇に攻撃されてミキサーのように激しく回転した潜水艦のクルーは全員死亡してしまう。ジョーと乗組員アルファ・ビイ(サイボーグ)の2人を除いて‥‥。2万5千フィートの深海へ潜行したブラックシャーク号はドーム型の海底都市へ曳航される。桟橋に着いた潜水艦のハッチを開けた海底人と2人の闘い。潜水艦から脱出した009とビイが見たのは古代爬虫類の巨像が建つギリシャやエジプトを想わせる古代都市だった。逃走中に地上の娘ロビンと出遭った2人は父親のエドモンド・オブライエンの家に匿われる。オブライエン父娘は2年前、太平洋航路の客船に乗っていて海底人に捕まったという。水深1万メートルの海底に築かれたドーム型の海底都市に棲む人々はアトランティスやミュー、レムリアなど、失われた古代文明大陸人の末裔だった?

    古代科学による海底都市の平和も大規模な海底火山の胎動や水圧から都市を守っている「大きなアブク」を支えるエネルギー枯渇の危機に直面していた。その災害から逃れる方法として考えついたのが地上への復帰だった。建造中の巨大海底戦艦を奪って脱出しようとするビイと捕虜として働かされている地上人たちを救出しようとする009‥‥意見の対立した2人は別行動を取ることになる。捕虜収容所へ急ぐ009とロビンは海底人たちに追われて海中に落ち、巨大な魚竜やネズミと呼ばれている海獣に襲われる。床下の通気口から王宮に忍び込んだ2人は王妃を人質にする。009との約束を破ったビイは奪った海底戦艦で脱出しようとするが、制御妨害電波に阻まれてドーム都市内に逆戻りしてしまう。ミサイル攻撃で制御室を破壊しようとするビイ。王妃と捕虜たちの交換トレードを王に要求する009。拘束首輪を外されて解放された捕虜たちが海底戦艦に乗り込む。しかし、009が制御室を破壊した直後にビイは海底戦艦を出航させてしまう。海底火山の爆発が起こるが、海底戦艦は海上に無事浮上する。捕虜たち全員を艦外に出して抹殺しようとするビイの前に009が立ちはだかる。009は海底火山の爆発する前に海底人たちの船に乗り、海底戦艦を追って来たのだった。

  • 「天使編」(冒険王 1969)
  • 雪山でスキーを愉しむ島村ジョー(009)とグレート・ブリテン(007)は行き倒れの遭難者を発見する。「タスケテ」「テンシ」という日本語を喋る猿人は雪崩によって埋もれてしまう。崖の上にいた猿人たちの後を追うジョーとブリテンは山奥の村に辿り着くが、そこは無人で村外れに洞穴住居があるだけだった。吹雪を避けて空き家で暖を取る2人に猿人たちが襲いかかる。外へ脱出した2人の前に一対の翼を持った「天使」が現われる。「天使」は指先から青白い光の輪を飛ばして猿人たちを眠らせ、飛翔して姿を消す。翌朝、洞穴住居へ向かった2人はクマを狩り、焚火を囲む猿人たちの姿を目撃する。突然夜空に後光が射し、「天使」たちが飛来して007を連れ去る。ギルモア邸に滞在するジョーとフランソワーズの許へゼロゼロ・ナンバーたちが集結する。009たちが訪れた無人の村は5日前とは一変していた。何事もなかったように村人たちが暮らし、猿人たちの洞穴住居も跡形もなく消えていたのだ。004が雪を降らせて洞穴住居を隠したことに気づくや否や雪崩が起き、次の瞬間には雪が溶け出す。

    三たび009たちの目の前に出現した「天使」たち!‥‥人類を創ったという造物主=「神」の仕業だった。彼らは「収穫」に来た人間の出来の悪さに落胆して、始めからやり直すことにしたと告げる。「天使」たちの去った後に1人の猿人が現われる。猿人に化けた007によると、猿人たちは「天使」に変身させられた村人で、最初に殺された1人は変身が中途半端だったからだという。ギルモア邸に戻ったゼロゼロ・ナンバーたちは互いに意見を交わす。「天使の姿をした悪魔だ!!」(ブリテン)、「造物主は我々を生かすのも殺すのも彼等の自由なのだ」(ジェット)、「オレたちには意思も生きる権利もある」(ブリテン)、「人間を殺し、世界を征服しようとした黒い幽霊団と変わりがない。あの異星人とも戦うべきなのだ!」(ハインリヒ)、「004と同じ意見だ‥‥戦うべきだと思う」(ジョー)‥‥。地球に怪飛行物体(UFO)が飛来して、中国奥地や英南極基地、アフリカなどの辺境で「天使」たちが人間を狩り始める。ギルモア邸では001がサイボーグ戦士たちの躰に「新しい力」を授けようとしていた。

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  • 「神々との闘い編」(COM 1969-70)
  • イースター島の調査中に行方不明となった考古学者・小松隆正が日本国内の遺跡で発見された。その最期を看取った島村ジョーとフランソワーズ・アルヌールに「神は悪魔!‥‥イースター、マヤ、アンコール、ピラミッド、羽根、蛇!」という謎の言葉を遺して。死因(心臓麻痺)を不審に思った娘の玲子は1年前、父親が何者かに殺されたと確信する。彼女は古代遺跡から様々な証拠を例に挙げて、「神が宇宙からの訪問者」(神=宇宙人)という仮説をジョーに語る。偶然UFO(宇宙人?)を目撃したハインリヒは執拗に命を狙われる。原住民の娘を自殺に追いやった傷心のピュンマは生身の身体に戻りたいと訴える。仲間を敵と看做して攻撃するジェロニモとジェット‥‥ギルモア博士に成りすまして009たちの心を蝕んでいた「敵」をイワンが殺す。イースター島で出逢った娘、テレパシーでジョーに語りかけた大耳族の酋長の娘ノアは命を狙われ、交通事故で死ぬ。ところが物語の後半、2ヵ月の中断を挿んで連載再開された後はストーリよりもイメージ主体の「ジュン」化した「009」として、「天使編」と同じように中途半端なまま終了してしまう。

    バラバラになったジグソーパズルの断片、長編映画の未編集フィルムを見せられているような感じ‥‥イメージが氾濫すればストーリは混乱する。「ジュン」というよりも「リュウの道」のイメージやテーマに重なる部分も少なくない。しかも絵は「サイボーグ009」シリーズの中で最も美しいフォルムである。休載の理由を「読者の支持が得られなかった ── 平たく言えば人気が出なかった」から。《長い物語の中から順序も部分も考えずに、ゆきあたりバッタリに思い出して描いていたんですから ── 。何年かの後、1冊(あるいは2冊)の単行本にまとめるとちゃんとした物語になっている》と、作者は「あとがき」で弁明しているけれど。雑誌連載時には未完のまま作者が逝ってしまう事態になろうとは夢にも思っていなかったので、「休載」よりもジョーとフランソワーズのベッド・シーンの方がショッキングな出来事だった。2人の愛は成就したのかしら、彼女は子供を産むのかしら?‥‥なぁんて妄想したりして‥‥。「エピローグ」のラスト・カットでは謎めいたUFOの大群が冬の寒村の上空を埋め尽くしている。

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    • 「石ノ森シリーズ」の第12弾は「サイボーグ・ゼロゼロナイン3」です^^

    • 「石ノ森章太郎萬画大全集」(角川書店 2006-7)をテクストに使いました

    • 「神々との闘い編」は〈COMを読む(1 9 7 0)〉から再録(一部改稿)しました
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    サイボーグ 009 9 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 4-1

    サイボーグ 009 9 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 4-1

    • 著者:石森 章太郎
    • 出版社:角川書店
    • 発売日:2006/11/30
    • メディア:コミック
    • 目次:中東編(承前)モーゼ / 罠 / 地獄の怪物 / 絶対零度 / 移民編 交通事故 / かわいい鬼 / 小笠原・北硫黄島 / 追跡 / プログラムE / 時間砲 / 問答


    サイボーグ 009 10 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 4-2

    サイボーグ 009 10 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 4-2

    • 著者:石森 章太郎
    • 出版社:角川書店
    • 発売日:2006/11/30
    • メディア:コミック
    • 目次:移民編(承前)捕虜交換 / ローレライの歌編 ローレライの歌 / 魔女 / さらばローレライ / 海の底編 原子力潜水艦エンゼルフィッシュ号ゆくえ不明!/ ジョーの危機 / 海底都市 / 古代科学 / イラストコレクション


    サイボーグ 009 11 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 5-1

    サイボーグ 009 11 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 5-1

    • 著者:石森 章太郎
    • 出版社:角川書店
    • 発売日:2007/02/28
    • メディア:コミック
    • 目次:海の底編(承前)魚竜 / 海底戦艦 / 海の上で‥‥ / 天使編 長いいくさの日々へのプロローグ / 神 天より降りたまいき / われらヒツジのむれ / 敵か?みかたか?/ 生きるべきか 死すべきか それが問題だ / 万物に生きる意志あり 生きる権利あり 死を選ぶ自由あり / ...当時の著者の言葉 / 扉絵コレクション


    サイボーグ 009 12 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 5-2

    サイボーグ 009 12 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 5-2

    • 著者:石森 章太郎
    • 出版社:角川書店
    • 発売日:2007/02/28
    • メディア:コミック
    • 目次:神々との闘い編 / サイボーグ009対三億円犯人 /「たの幼」テレビきょく・サイボーグ009 / 巻末資料

    子猫にも貼れる Tag Cloud 2.0

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    本物の雲のように動いたり、虹のように色鮮やかだったり‥‥ネット上には色々な「タグクラウド」(Tag Cloud)が浮かんでいる。ソネ風呂の無味乾燥で愛想のない「タグクラウド」も素敵にカスタマイズしたいけれど、なかなか難しい。とりあえず「カテゴリー」の色別に合わせてサイドバーだけでもカラー化してみた。しかし、自作した「カラークラウド」(Color Cloud)は自動更新されるわけではない。もう少し汎用性の高くて簡単なカスタマイズ方法はないかしらと思っていたところ、Manaさんの「コピペでできる!CSS3の素敵効果でテキストリンクを装飾する小技あれこれ」を見つけた。「CSSのみで実装できる小技」なので、これならば誰にでも‥‥子猫にも出来そうだ。サイトには「文字色をふんわり変える」「背景色をふんわり変える」「文字をぼかす」など全9種類のエフェクトが紹介されているが、「タグクラウド」と相性の良さそうな2つの小技を使ってみた。

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    「文字色をふんわり変える」はマウスオーヴァ時のリンク色の変化を「transition」プロパティで遅延させるエフェクト。デジタル・スイッチのように瞬時に切り替わらず、アナログ風にふんわりと優しく変わります。「拡大・縮小」は「transform」プロパティでリンク文字の大きさを変える効果。「transition」と併用することで、Dock(Mac OS X)のギミックのようにニョロッとしたような感じになる。下記のCSSをサイドバーの「サイドコンテンツ」内にコピペするだけで「タグクラウド」にも反映されるようになります。外観は変わり映えしないけれど、オンマウスすると?‥‥「文字をぼかす」「光を放つグロー効果」も面白いかもしれません。「#tag_cloud_0000000」の「0000000」には各ブログの固有番号が入ります。

  • 「タグクラウド」のCSS
  • <style>
    #tag_cloud_0000000{border:solid 3px #cccccc; padding:3px; margin:3px 0px 5px}
    #tag_cloud a:hover, #tag_cloud_0000000 a:hover{-webkit-transform:scale(1.5,1.5); -moz-transform:scale(1.5,1.5); -o-transform: scale(1.5,1.5); -ms-transform:scale(1.5,1.5); transform:scale(1.5,1.5); -webkit-transition:0.5s; -moz-transition:0.5s; -o-transition:0.5s; -ms-transition:0.5s; transition:0.5s}
    #tag_cloud_0000000 a{display:inline-block}
    a._tag{display:inline-block; text-transform:lowercase}
    #side_tag{text-align:left}
    #tag_cloud a, #side_tag a{text-transform:lowercase}
    #tag_cloud{border:solid 3px #cccccc !important}
    .tag-word{display:none}
    .tag-article-title{font-weight:bold}
    .tag-article-posted{font-weight:normal}
    </style>

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  • 「memo」のイメージ(インライン・フレームで作りました)


  • ネット・サーフィン中に手軽にメモを取れるアプリが欲しかった。ブラウザ(Firefox)には「Adblock Plus」「Video DownloadHelper」を入れているので、これ以上余計なアドオン(拡張機能)は入れたくないなぁ‥‥と逡巡していたら、「Macの便利技」「SafariなどのWEBブラウザを即席メモとして使う」というティップスがあった。新規ウインドウや新規タブを開いて「data:text/html, <html contenteditable>」という文字列をURL欄にコピペするだけ。URLを入力して「return」キーを押すと、文字入力可能な白いページが現われる。これならば新たな拡張機能をインストールする必要もないし、「TextEdit」を起動させなくても良い。このURLをブックマーク(ツールバー)に登録しておけば、瞬時に「メモ帳」として使えるようになる。更にカスタマイズも可能とのことなので、「オリジナル・メモ・パッド」を作ってみた(「たった一行でブラウザをシンプルなメモ帳に変える方法」を使いやすい様にカスタマイズしてみた 」参照)。

  • 「memo」のコード
  • data:text/html;charset=utf-8,<title>memo</title><textarea style="font-family:'Hiragino Kaku Gothic Pro',sans-serif;font-size:90%;background-color:rgb(245,255,250);line-height:1.5;width:42em;height:95%;border:2px solid rgb(204,204,204);margin:1em;padding:3px" autofocus />

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    Webクリエイターズガイドブック

    Webクリエイターズガイドブック

    • 著者:Mana
    • 出版社:工学社
    • 発売日:2011/12/24
    • メディア:単行本
    • 目次:今求められているWebクリエイターとは / 計画をたてよう / デザインの基礎 / Photoshopの基礎 / 細部にこだわったWebデザイン / 実際に作ってみよう!(1) Photoshop編 / HTMLの基礎 / 実際に作ってみよう!(2) HTML編 / CSSの基礎 / 実際に作ってみよう!(3) CSS編 / Webサイトを公開しよう!

    鉄腕ビョーク

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  • 1995年の『ポスト』では多様性が前面に押し出される。電撃的集中攻撃のようなビバップの「アーミー・オブ・ミー」や「ザ・モダン・シングス」のファンタジア、それに「イッツ・オー・ソー・クワイエット」のビッグ・バンド・カヴァー・ヴァージョンなど。これは誠実なるポストモダン・ブリコラージュだ。「ユーヴ・ビーン・フラーティング・アゲイン」のストリングスが奏でる憂鬱な曲調が、「イゾベル」の情熱的おとぎ話になだれ込む瞬間──これは鳥肌モノだ。『ポスト』でのビョークはフーパーにあまり頼らず、かわりにマッセイやトリッキーが曲づくりに参加している。フーパーを安全ネットにして「カヴァー・ミー」と頼りつつ、彼女はまたしても独り立ちしようとしていた。「存在するはずのないものが実在することを証明してみせる」というわけだ。
    エヴェリン・マクドネル 『ビョークが行く』


  • Bjorkのシングル盤《Army Of Me》(One Little Indian 1995)には思わず笑ってしまった。白クマ(アストロ・ベア)の大群と青地をバックに、左腕を突き上げて空を飛ぶ「鉄腕ビョーク」の勇姿がカヴァに描かれていたからだ。見る角度によって変わる不思議な尖りヘア、黒いパンツ、赤いブーツ‥‥右腕を突き出して飛行する「鉄腕アトム」のパロディ。日本人ならば誰でも子供の頃に少年マンガやTVアニメで目にしたことのある飛行ポーズである。少女時代のBjorkもアイスランドのレイキャヴィクで「アストロ・ボーイ」を見ていたのかしら?‥‥と想像すると嬉しくなる。〈Army Of Me〉を「私の軍隊」と直訳している人もいるけれど、「army of …」は「a lot of …」の意味で、本来は「私の大群」と訳すべき。裏カヴァやインナー・スリーヴは文字通り「アストロ・ビョーク」の大群(軍隊ではない)で青空が埋め尽くされている。「もう面倒見切れない。これ以上同情出来ない。今度不平不満を口に出したら、私の大軍と戦うことになるわよ」という超アグレッシヴな歌詞を増強するかのようなサウンドにも度肝を抜かれる。

    重低音でブヒョブヒョと唸るアナログ・シンセや爆撃機の急降下ような下降するノイズ、爆発音‥‥Graham MasseyやMarsus De Vries(808 State)の作り出したビッグ・ビートには戦場のような緊迫感が漲っている。Michel Gondryの撮った〈Army Of Me〉のPVは「ビョークの夢」を再現したかのようなシュルレアリスティックな映像で溢れている。フロント・エンジン部が歯の生えた口になっているトレーラーを運転してゴリラの歯科医に行くBjork、口の中のダイヤモンドを奪われそうになってゴリラと闘うBjork、眠れる恋人を悪夢から目醒めさせるために美術館に侵入して時限爆弾を仕掛けるBjork‥‥すべては彼氏の夢の中の物語ではないか、ちょうど少女アリスと「赤の王」の関係のようにという解釈は「ゴリラの歯科医」と同じくらい通俗的で分かりやすいけれど。「鉄腕ビョーク」はアトムよりもウランちゃんの方が適役ではないかと主張するリスナーもいるかもしれない。でも、妹のウランは空を飛べないからね。正義感の強い優等生の兄よりも、お転婆娘の方がBjorkのキャラに合っているって?

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    《Post》(1995)のカヴァ・ポートレイトは《Debut》(1993)と一変している。これが同一人物か、別人28号かと見紛うほどに。モンディーノ(Jean-Baptiste Mondino)の撮った柔らかの表情とは対照的にステファン・セドナウイ(Stephan Sednaoui)によるBjorkはシャープで、研ぎ澄まされた「サイキック娘」のように見えなくもない。フォト・コラージュされた背景の一部には「招福丸」と日本語で書かれた大漁旗(福来旗)もある(初回限定の3面デジパック仕様盤には歌詞ブックレット(20頁)と大型ポスター(39×34.5cm)も付いていた)。デビュー・アルバムに引き続き、11曲中6曲をNellee Hooperと共同プロデュースしているが、Graham MasseyやMarsus De Vries、Howie B、Trickyなどを起用することによって、レゲエ / ダブ、グラウンドビートからトリップホップやエレクトロニカへ移行している。山の頂きに住んでいる「私」は毎朝、崖から自動車の部品やビン、ナイフやフォークなどを投げ捨てる‥‥と歌われる〈Hyper-Ballad〉は〈Venus As A Boy〉や〈Joga〉と並び称される名曲である。

    「私」が山頂から身を投げたら、岩場に叩きつけられた躰は一体どのような音を立てるのだろうかと想像する〈Hyper-Ballad〉は死と再生を繰り返す創作行為や創造活動のメタファだ。コンピュータ・ゲームを想わせるピコピコと鳴る効果音が主人公の生と死の往還を連想させもする。夜になると海に飛び込んで海底に錨を下ろすという〈The Anchor Song〉と姉妹関係にある曲なのかもしれない。ビッグ・バンド編成でミュージカル映画風にカヴァした〈It's Oh So Quiet〉、Trickyと共作したダークでアブストラクトな〈Enjoy〉、ブラジル人作曲家エウミール・デオダート(Eumir Deodato)の指揮するストリングスを従えて歌う〈You've Been Flirting Again〉、同じくオーケストラとスペイシーなテクノ・サウンドが混じり合ったファンタジーの〈Isobel〉‥‥。ヴィジュアルにも敏感なリスナーならば、妖精のような少女としてデビューしたBjorkが「鉄腕アトム」にコスプレして、サイキック娘に変身、そして《Homogenic》(1997)で正体不明の女サイボーグ(サイ・ビョーク?)に変貌するという変遷をアルバム・カヴァから読み取れるだろう。

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  • ビョークはコラボレーションの相手と浮き名を流すことで有名だ。イギリスのDJ、ドムT、フランスのファッションカメラマン、ステファン・セドナウイ、トリッキー、ゴールディ、ハウィーB──もちろん同時進行ではないにしても、彼女の恋人たちが思っていた以上に他の男性とのつきあいが時期的に接近していた可能性はある。彼女自身も認めるとおり、ビョークはちょっとしたセックス狂だ。《インタヴュー》誌には生と死とセックスが自分の3つのオブセッションだ、と本人が語っている。《スカイ》誌のシルヴィア・パターソンには自分が「信じられないほどセックスに貪欲で」毎日マスターベーションをする、と告白。インターネット・オークションのeベイでもっともホットなビョーク・アイテムは3枚の巨大な葉っぱだけをつけたビョークの白黒セミヌード・ポスターだ。このストレートなエロティシズムのおかげもあって、彼女の少女っぽい演出には歯ごたえが出るし、キュートというよりは小悪魔的になる。

  • リミックス・アルバム《Telegram》(1997)のカヴァには荒木経惟(Araki Nobuyoshi)の写真が採用されている。ジャケだけでなくインナーやブックレット(12頁)などを含めると全部で13葉もあるので、ちょっとした「ミニ写真集」としても愉しめる。青色を基調としたBjorkの肖像写真は海の中や水族館で撮ったような浮游感や透明感に包まれている。どのような経緯でアラーキーがアルバム・カヴァを手がけることになったのかは分からないが、不思議と違和感がないのは「鉄腕アトム」や「招福丸」などの「クール・ジャパン」によって日本人アーティストを起用する下地や伏線が張られていたからだろう。オリジナル曲を完膚なきまでに解体・再構築するリミックスに対して、Bjorkは寛大である。曲作りをコラボレーションという形で共作するのを好む彼女にしてみれば、外部ミュージシャンによって換骨奪胎されたリミックスを聴くことは愉しみの1つなのかもしれない。

    《Post》の収録曲9曲を内外のミュージシャンがリミックス。Bjork自らも〈You've Been Flirting Again〉をリミックスしている。当初アルバムに収録される予定だったという〈My Spine〉は〈Enjoy〉と差し替えられたアウト・テイクなので、新曲というよりも未発表曲と看做すべきなのかもしれない(スティールパンの軽快な音が鳴り響くカリビアン風のサウンドは《Debut》向き?)。Bjorkのヴォイスを加工したLFOの〈Possibly Maybe〉、オケを弦楽四重奏に入れ替えたBrodsky Quartetによる〈Hyperballad〉、原形を留めないほどに徹底的に破壊されたOutcastの〈Enjoy〉、Rodney Pのラップをフィーチャしたヒップホップ調の〈I Miss You〉、Eumir Deodatoによるストリングスが冴える〈Isobel〉、トリップホップ〜ドラムンベース風の〈Cover Me〉、Bjorkのヴォーカルを消し去ってダブ化したGraham Masseyの〈Army Of Me〉、眠気を誘う夢幻的なドローンとなったMika Vainioの〈Headphones〉‥‥「萌えよヘッドフォン」

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    黒い小鳥が止まった2つの地球を手玉に取る妖しい小人レスラー?‥‥このカヴァ・イラストが「鉄腕ビョーク」(アトムのパロディ)だと分かる人は稀ではないか、余程のアトム・マニアかビョークおたくでもなければ判別出来ないのではないかと思う。《Army Of Me: Remixes & Covers》(2005)はBjorkがユニセフ(UNICEF)のために企画したチャリティ・アルバムで、600以上のリミックス&カヴァの中から選ばれた20曲20組の国籍はカナダ、フランス、スウェーデン、イギリス、アメリカ、アイスランド、ドイツ、デンマーク、スペイン、ギリシャの10カ国に渡る。とても〈Army Of Me〉のカヴァには聴こえないヘヴィメタから始まり、ボサノヴァ、エレクトロ・ポップ、カントリー、テクノ、エクスペリメンタル、インスト、ハード・ロック、レゲエ、アカペラ‥‥と続く。玉石混淆の20曲(69分)を聴き終える頃にはリミックス&カヴァの大群に襲われたリスナーの頭も流石におかしくなって来る。この寄付金で危機に瀕している世界の子供たちが救われるのならば良いけれど。

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    • 久々のビョーク・シリーズ‥‥「鉄腕ビョーク」(Astro Bjork)になっちゃった^^

    • エヴェリン・マクドネルの『ビョークが行く』(新潮社 2003)から引用しました
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    Army Of Me Pt.1

    Army Of Me Pt.1

    • Artist: Björk
    • Label: One Little Indian
    • Date: 1995/02/23
    • Media: Audio CD
    • Songs: Army Of Me / Cover Me / You've Been Flirting Again / Sweet Intuition



    Post

    Post

    • Artist: Björk
    • Label: Universal
    • Date: 1995/06/13
    • Media: Audio CD
    • Songs: Army of Me / Hyper-Ballad / Modern Things / It's Oh So Quiet / Enjoy / You've Been Flirting Again / Isobel / Possibly Maybe / I Miss You / Cover Me / Headphones


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    • Artist: Björk
    • Label: Elektra
    • Date: 1997/01/14
    • Media: Audio CD
    • Songs: Possibly Maybe / Hyper-Ballad / Enjoy / My Spine / I Miss You / Isobel / You've Been Flirting Again / Cover Me / Army Of Me / Headphones


    Army Of Me: Remixes & Covers

    Army Of Me: Remixes & Covers

    • Artist: Bjork
    • Label: One Little Indian Us
    • Date: 2006/11/14
    • Media: Audio CD
    • Songs: Army Of Me / Army Of Me / Army Of Djur / Army Of Me / Army Of Me / Army Of Me / Army Of Me (Accordian Mix) / Army Of Me / Army Of Me / Army Of Me (Bersarinplatz Mix) / Army Of Me (Baker Mix) / Army Of Me / Army Of Me / Army Of Me (The Liquid Riot Mix) / Army ...

    サイバー・キャット 13

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    スニーズ・コメンツ #30

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  • わたしはこの曲をソニーの小さなカセット・プレイヤーでレコーディングしたのだが、その「ソニー」というロゴマークのすぐ下には、《ズマ》のセッション中にブリッグスの手で、「人生はクソのサンドイッチだ。食うのが嫌なら飢え死にしろ」と刻印したプラスティックのラベルが貼られていた。カセットの取り出し口はラベルのすぐ下にあったので、テープを出し入れするたびにそのフレーズを読む羽目になった。/ わたしはこの曲を夜遅く、暖炉の前の床に座ってレコーディングした。カセットは暖炉前の床に、3フィート離して置いてあったので、古いマーティンのギターを弾きながら、川を上っていく鮭の物語、〈愛する決意〉をうたうわたしに紛れて、暖炉の薪がはぜる音を聞くことができる。愛と生存に対するわたし自身の気持ちを満載したこのレコーディングは、音のシネマ・ヴェリテとでもいうべきそのスタイルによって、わたしのほかの作品とは一線を画している。これはパーツの断片、暖炉の音、ヴィブラートによって生みだされる水中のサウンドなどの、ハイライトだけをぬき出した、壮大なプロダクション・ナンバーの素描なのだ。
    ニール・ヤング 『ニール・ヤング自伝 II』


  • ♭ ハロッズのアフタヌーン・ティー ── ジャンナッツの猫たち
    トミー。さん、こんばんは。池袋M越のハロッズで紅茶をやクマさんを買っていましたが、日本橋や銀座までは行かないにゃあ。最近はスーパーでも売っているフォーションよりも、S城石井ブランドの「アッサム」の方が安くて美味しいと思う。お気に入りは2匹の猫が描かれている「JANAT」。紅茶缶の裏に泣けるエピソード「JANAT History」が書いてあります。主人が家に帰って来る日が2匹の愛猫には分かっていたようです。
    by sknys (2013-03-06 00:05)

    ♭『ぼくのメジャースプーン』 辻村 深月
    miyucoさん、こんばんは。スプーンを曲げる超能力少年の話ですね(←ウソぴょん)。小学4年生の「ぼく」が語る1人称小説には「アクロイド殺し」のように、一番肝腎なことに触れないという「叙述トリック」が仕掛けられている。「一言もそれに触れない」のはPTSDというよりも、子供でも大人(読者も?)を騙せるということじゃないかしら。他作の登場人物が顔を見せたり、真相が本作で明かされるという掟破りの趣向は森博嗣の影響かもしれません。ところで、秋先生は市川雄太に「今すぐその手を離しなさい」「でなければ、お前は──」と呪いをかけたのでしょうか。次は『スロウハイツの神様』(講談社 2007)を読もうかな?
    by sknys (2013-03-07 23:23)

    ♭ 車検と猫
    tumuziさん、こんばんは。鹿島茂の猫エッセイ『背中の黒猫』(2001 文藝春秋)の中に「ハチワレ」という言葉が出て来て、「鉢割れ」?‥‥ちょっと不吉な言い方だなぁと気になっていましたが、フキくんの写真を見て、「八割れ」なんじゃないかと思い直しました。「鉢」よりも「八」の方が末広がりで縁起が良いかもです。
    by sknys (2013-03-14 23:15)

    • ハチワレ
    • 鼻筋から額に入った、山型の模様のこと。なだらかな山、左右で傾斜が違う山、丸っこい山、連峰のようにギザギザなど、形状はさまざま。⇔無地
    • 「兄弟は全員そろって──」
    • ──百名山 ハチワレ柄のバリエーションの豊かさを、「日本百名山」にたとえて褒め称えた表現(コラム「ハチワレ・マトリクス」参照)。
    • 保田 明恵 「にゃん辞苑」(アスペクト 2012)


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    ♭ ながもち桜
    tumuziさん、こんばんは。ネコ写真を撮るようになってから、澄み切った青空じゃないと桜も映えないなぁと毎年思うようになりました。東京の桜はまだ咲いていますが、今年は開花中に青空を見ることが出来るかしら?‥‥桜吹雪を背負ったネコちゃんも撮りたいし‥‥。〈Pritty In Pink〉は苦虫を噛み潰したようなハスキー・ヴォイスに痺れるにゃん。『ニール・ヤング自伝 II』(白夜書房 2012)を読んでいたら、最後から2番目の章(第67章)に〈Will To Love〉(1977)が出て来た。鮭の川上りの歌だったのか!
    by sknys (未投稿)

    • Will To Love(1977)Neil Young

    • It has often been my dream
    • To live with one who wasn't there
    • Like an ocean fish who swam upstream
    • Through nets, by hooks, and hungry bears.

    • When the water grew less deep
    • My fins were aching from the strain
    • I'm swimming in my sleep
    • I know I can't go back again.

    • よく見るボクの夢は
    • そこに存在しない誰かと暮らしている夢
    • 上流に向かって泳ぐ海の魚のように
    • 網や、釣り針や、腹ペコの熊たちから逃れて

    • 水位が余り深くなくなって来ると
    • ボクの鰭は傷ついて痛み出す
    • ボクは眠ったままで泳いでいる
    • 2度と後戻りは出来ないのだ

    • Japanese translation by sknys


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    ♭ 桜。カレー。
    こにゃさん、こんばんは。今年の桜は天候に恵まれなかったなぁ。花冷えだったり、春の嵐だったり、雨模様だったり‥‥澄んだ青空じゃないと桜もネコも映えません。「さくらパンダ・フェア」も終わって悲しいにゃん。花よりパン・ダ?‥‥来年はカレーパンダも出るかしら。
    by sknys (2013-04-04 23:10)

    ♭ 世紀末紳士同盟 時空を超えた復活編
    モバサムさん、こんばんは。巷にはリマスター&リミックス・ヴァージョンが溢れているけれど、ブログも回顧する時代になったのかと思うと感慨一入です。lapisさんは永眠、エロ男爵(yubeshiさん)も休眠中‥‥復活の呪文を唱えると戻って来るかしら?

    P.S. Annie Haslamには「猫ジャケ」があるので、密かに狙っています。
    by sknys (2013-04-20 23:12)

    ♭ 2013年4月24日水曜日
    コトブキちゃん、つむじさんに拾われて良かったね。精一杯生きたよね。ネコは腰が痛いとか、気分が悪いとか口に出して訴えないから、飼主が異常に気づいた時には手遅れ(手術出来ない)ということも少なくないそうです。
    by sknys (2013-04-30 22:32)

    ♭ #9 Dream
    モバサムさん、こんばんは。島森路子さんの訃報は「広告批評」元編集長の追悼文で知りました。ご冥福をお祈りします。「96条」から攻め落とそうという魂胆が姑息というか、狡猾というか‥‥「将を射んとせば先ず馬を射よ」「蟻の穴から堤も崩れる」でしょうか?

  • 今日のもう1曲
    「96粒の涙」(96 Tears)/ Question Mark & the Mysterians

  • by sknys (2013-05-04 21:09)

    ♭ 花盛りです♪
    ぶーけさん、こんばんは。薔薇、薔薇、薔薇が満開ですね。Vanessa Paradisの2枚組アルバム『Love Songs』(Barclay 2013)はBenjamin Biolayが全面サポート!‥‥〈Les Roses roses〉というデュエット曲もあるそうです。
    by sknys (2013-05-14 22:18)

    ♭ なばなの里 薔薇園
    ぶーけさん、こんばんは。「なばなの里」は広大なガーデンパークのようですね。たまたま旧古河庭園の前を通ったら、多くの見物客で賑わっていました。某民放ニュース番組のお天気コーナーは旧古河庭園からの中継だった。深夜1時近くなのに、煌煌とライトアップしていた(薔薇もビックリ?)。初代デジカメを購入した直後に旧古河庭園のバラを撮ったことがあります。一見鮮明に写っているようでもパソコンの大きなモニタ画面で見ると、めちゃボケてるじゃん!‥‥接写(マクロ撮影)は難しいなぁと痛感しました。いつの間にかネコしか撮らなくなっちゃったけれど。
    by sknys (2013-05-30 02:02)

                        *

    ブログ記事に付けた「外コメント」を纏めてみたら結構面白いかも?‥‥というアイディアから生まれた再録シリーズの第30集です。コメントは原則としてオリジナルのまま時系列順に転載‥‥事実誤認(誤記)や誤字・脱字、改行の無効化、句読点や記号・顔文字の有無などを精査。内容の分かり難いコメントには補足説明(註)を加え、コメントした元記事にリンクしました。過去3ヵ月間(2013/03/01〜/05/31)に書いたものの中から、第三者がコメントだけ読んでも面白いものを中心にセレクトしています。2013年に入ってから「読んでいるブログ」の更新度数が減って、次第にコメントも付け難くなって来た。ブログを長く継続するのにも「書くという意志」が必要なのかしら。それとも《ブログに書くほどのコンテンツもないので、「つぶやき」だけになった》(森博嗣)のでしょうか。開店休業状態というかフェイド・アウトして行くブログが増えると、このシリーズ「スニ・コメ」も終了せざるを得なくなってしまう。外コメントにも書いたように「ブログも回顧する時代になった」のかもしれません。

                        *






    ぼくのメジャースプーン

    ぼくのメジャースプーン

    • 著者:辻村 深月
    • 出版社:講談社
    • 発売日:2009/04/15
    • メディア:文庫
    • 目次:眼鏡のふみちゃん / ふみちゃんのうさぎ / うさぎの声 / 声の先生 / 先生の飴 / 飴の無知 / 無知の過ち / 過ちのぼく / ぼくのメジャースプーン / メジャースプーンのなかみ / なかみの秘密 / エピローグ


    ニール・ヤング自伝 I

    ニール・ヤング自伝 I

    • 著者:ニール・ヤング(Neil Young)/ 奥田 祐士(訳)
    • 出版社:白夜書房
    • 発売日:2012/11/02
    • メディア:単行本(ソフトカバー)
    • 目次:ブロークン・アロー・ランチ、2011年春ヤング一家父親のニール、母親のペギー、そして子供たちのアンバーとベン / カリフォルニア、2011年 / オンタリオ/ モート / この本が存在する理由 / 火遊び / ではここで、ピュアトーンからひとこと / 雑感 / 車とギター / お察しの通り / ハワイ、2011年 / ロナルド・レーガンに関する注記 / 痛み / 宗教 / ...トパンガ発の物語 / ではここで、スポンサーのピュアトーンからまたひとこと /ハワイ


    ニール・ヤング自伝 II

    ニール・ヤング自伝 II

    • 著者:ニール・ヤング(Neil Young)/ 奥田 祐士(訳)
    • 出版社:白夜書房
    • 発売日: 2013/01/25
    • メディア:単行本(ソフトカバー)
    • 目次:ピュアトーンからまたひとこと / 瞑想 / 生涯の友だち / 消え去るぐらいなら燃えつきるほうがマシ / 路上にて /「いいやつら」/ LAでの暮らし


    American Stars 'N Bars

    American Stars 'N Bars

    • Artist: Neil Young
    • Label: Reprise / Wea
    • Date: 2003/07/14
    • Media: Audio CD
    • Songs: The Old Country Waltz / Saddle Up The Palomino / Hey Babe / Hold Back The Tears / Bite The Bullet / Star Of Bethlehem / Will To Love / Like A Hurricane / Homegrown


    Love Songs

    Love Songs

    • Artist: Vanessa Paradis
    • Label: Universal
    • Date: 2013/05/23
    • Media: Audio CD(2CD)
    • Songs: L'Au-Delà / Love Song / C'Est Quoi ? / Les Espaces & Les Sentiments / Prends Garde A Moi / Tu Pars Comme On Revient / The Dark It Comes / Rocking Chair / Station Quatre Septembre / Tu Vois C' Que Je Vois // La Crème / Le Rempart / Mi Amor / New Year / Tu Si ...

    悪乗り尻乗るわ

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    ⃞ 本仮屋ユイカが崖で腕、怪我か?‥‥快癒、槍が友
    ナイフを持った殺人鬼に追い詰められた倉田夏輝(本仮屋ユイカ)‥‥彼女の数歩後ろは断崖絶壁の奈落だった。TVドラマのクライマックスは風光明媚な崖の上と決まっているのだ。絶体絶命のピンチに陥った夏輝が正義のヒーローに救いを求める。「助けて、ゴーグルZ2号!」‥‥スーパー・ヒーローに変身した久住健太(佐藤隆太)が加速して夏輝の許へ駆けつける。秘密のドロップを舐めるとクズ健は10分間だけ、特殊能力を持ったヒーローに変身する。緑色のドロップの力で聴力がアップしたゴーグルZ2号は遠く離れていても夏輝の声を聞き分けることが出来る。しかし、今回だけは間に合わなかった。呆然と立ち尽くすゴーグルZ2号。腕を斬りつけられて蹲る夏輝。殺人犯の手に握られているナイフは血で赤く染まっていた。「まったく役立たずで、ドジなヒーローなんだから!」‥‥夏輝は病院のベッドでゴーグルZ2号の携帯ストラップを左手で弄びながら呟く。右腕を7針縫う怪我だったが、幸いにして命に別状はない。病室の片隅には護身用の槍が立てかけてある。

    ⃞ やっぱりストーカー、カード掏摸は通夜
    新米刑事の丹羽修司(塚本高史)は通夜が行なわれている遺族の屋敷の中で張り込みをしていた。犯人は殺害された女子大生と面識があったはず。通り魔による無差別殺人ではなく、「ストーカー殺人事件」ならば、火事場の野次馬の中に紛れ込んで北叟笑む放火魔と同じように、必ず弔問客を装って現われる可能性が高い。案の定、弔問者の中に明らかに挙動不審の男が1人いた。修司は怪しい男の一挙手一投足に注視する。なぜか酒に酔った弔問者を物色する「犯人」‥‥刑事は泥酔者の隣に座った男が喪服の内ポケットから札入れを抜き取る瞬間を見逃さなかった。現行犯で捕らえてみれば、「犯人」は通夜荒らし専門のカード掏摸常習犯・ヤスリ283号だった。お門違いの捕物帳、瓢箪から出た独楽だったが、本ボシのストーカーは掏摸の現行犯逮捕劇の騒ぎに紛れて逃げてしまったのか、そもそも通夜に弔問者として来たのかどうかも分からず仕舞いだった。

    ⃞「イタ飯は烏賊だ!」 ウナギイヌ、粋な歌会始めたい
    イカやタコなど、グロテスクな海産物を好んで食べるゲテモの喰いはイタリア人か日本人くらいだと言われて来た。ツバメの巣やクマの手からサルの脳味噌まで食してしまう中国人は兎も角、「バカボン家のウナギイヌ」は親友のドジョウネコに「イタ飯は烏賊だ!」と常日頃から力説していた。趣味で歌会始を主宰しているウナギイヌは6月末の定例歌会後の会食でイタリア料理を振る舞いたいと思っている。イヌの父とウナギの母から生まれたウナギイヌは同じ境遇のドジョウネコとは大の仲良しだった(長谷川家の「電気ウナギイヌ」とは従兄弟同士の間柄である)。ウナギイヌがドジョウネコに相談する。「やっぱり、イタ飯のメイン・ディッシュは海鮮パスタだよね」「新鮮なイカやエビ、貝類とエクストラ・ヴァージン・オリーヴ・オイルが必要よ」「極上のイタリアン・ワインも用意しなくっちゃ」‥‥2匹のハイブリッド・アニマルは鰻の蒲焼きや泥鰌鍋を食べたいという日本人会員がいるかもしれないとは夢にも思っていない。

    ⃞ 美術室、石膏ロビンソン、疲労骨折し、梅雨、自費?
    ロビンソン先生は放課後、美術室で右足を骨折した。棚の上の石膏像を移動させようとして手許が狂い、床に落としてしまったのだ。幸いにして胸像は割れなかったが、直撃した右足の甲に激痛が走った。ロビンソンの頭に真っ先に浮かんだのは綺羅キラ星の瞬きではなく、治療費のことだった。放課後だとは言え、校内での骨折事故‥‥当然、労災保険が下りるはず。暫く右脚が不自由になるのは仕方ないけれど、ちょうど鬱陶しい梅雨で外出する機会も減る季節。静かな屋内に籠って自主制作中の油彩画に専念するのも悪くないと気分を切り替えて、整形外科病院へ行った。ところが事態は思わぬ方向へ転がる。外科医がレントゲン写真を指し示して嬉しそうに説明する。ミス・ロビンソン、これは石膏像の落下による罅ではなく、長年の日常生活から生じた「疲労骨折」です。足のサイズに合わないハイヒールを無理して履いていませんか。もちろん、労災も出ません。ロビンソン先生は石膏で固定された右脚を松葉杖で支えながら、美術室で生徒たちに木炭デッサンの実技を指導している。

    ⃞ キス巧い、初恋で罅、尾骶骨は今疼き
    今日は憧れの同級生と初デート、もしかしたら初キスもあるかもしれない。中学2年のボクは早朝から高揚感で舞い上がっていた。都内の映画館で待ち合わせ。『闇のバイブル 聖少女の詩』という吸血鬼のホラー映画を観終わった後、喫茶店で一服して人気のない公園のベンチで2人並んで座った。ついに夢にまで見た彼女との初キスのチャンスが巡って来たのだ。心臓はドキドキ、口の中はカラカラで、上手く喋れない。これから一体どうしようかと思い悩んでいる時に、彼女からの突然のキス!‥‥しかも凄く巧い。余りにも大胆不敵なディープ・キスに身も心も蹂躙されたボクは一瞬気を失ってしまったらしい。気づいた時にはベンチの下で倒れていた。失神して転げ落ちた際に強く腰を打ったのか、尾骶骨がズキズキと疼く。彼女はボク以上に驚いた様子だった。つぶらな瞳を少女マンガのヒロインのように大きく瞠っていたから。情けないことにボクは彼女の肩に掴まって帰路に着いた。及び腰なのは勃起したからではなく、尾骶骨の痛みによるものだと言い訳する気力も失せていた。

    ⃞ 南欧男、寝るネコと追う女
    ギリシャの青い空や白い家並みにはネコが良く似合う。エーゲ海に浮かぶ小さな島に暮らすネコたち。海の見える小高い丘の上で気持ち良さそうに微睡む1匹のネコ。その傍を1人の女性が駆け抜けて行く。女は恋人の後を追って、この島に来たのだった。いわゆるイケメンの粋な男、典型的なラテン系のプレイボーイ。しかし、南欧生まれの伊達男が追い駆けているのは女の尻ではない。彼が好きなのは人間(女)ではなくネコだった。朝から夜まで1日中ネコの尻を追い求めて写真を撮っている自称ネコ専門の動物写真家。街中で熱心にネコの写真を撮っていると現地の人に言われる。「お前の国にはネコはいないのか?」「そんなに子ネコが好きならば1匹持って行け」と。ネコの目線に合わせ、身も心も低姿勢でネコを撮る。ボクはネコの仲間、ネコちゃんの味方だよ‥‥と呼びかけながら。エーゲ海を見渡せる見晴しの良い場所で寝ているネコを撮る南欧男。爽やかな風がネコの毛並みを撫ぜる。女ストーカーが戻って来る気配は今のところない。

    ⃞ 2年ベーコン巻き、葱、マンゴー、ペンネに‥‥
    見習いコックの修業は厳しいなぁ。レストランPの下働きとして雇われた青年に与えられた仕事はジャガイモやタマネギの皮剥きと食器や調理器具を洗うことだった。しかも閉店後の厨房では先輩シェフによる地獄の特訓が待っていた。その名も「死のベーコン巻き」‥‥レストランPの看板メニューの1つである。もちろん修学旅行の夜に行なわれる余興、布団で簀巻きにされるようにベーコンで躰をグルグルと巻かれるわけではない。定番のアスパラガスだけでなく、あらゆる食材を自慢のベーコンで巻いては試食を繰り返す新メニュー開発の「人柱」である。今夜の食材は長ネギにマンゴー、ペンネなどだった。長ネギは兎も角、生のマンゴーや茹でたペンネにベーコンを巻くのは意外と難しい。修業時代の2年間、先代の精肉店主に毎晩シゴかれて、数百の食材にベーコンを巻き続けたと豪語するシェフの顔は脂ぎっていた。フランシス・ベーコンの肖像画のように歪んでいる。この回文は〈約2年ベーコン巻き、葱、マンゴー、変ね?‥‥肉屋〉に改めるべきじゃないかしら。

    ⃞ 手作りケーキ、辛いよクッキー。キック良いラッキー、下痢、食って
    試合後半の開始直後からオレは体調の変化を感じていた。激しい腹痛と不快な吐気、発熱と悪寒‥‥運動による発汗とは異質の汗が躰から流れ出す。ハーフタイム中に食べたクッキーが原因だったのか、それともキック・オフ前の手作りケーキだったのか?‥‥いずれも女性サポータからの差し入れとのことだったが、もしかしたら対戦するクラブ・チームが放った「女刺客」だったのかもしれないと疑心暗鬼に陥る。嘘だと思う人もいるかもしれないが、サッカーの試合では、この種の醜聞や疑惑ネタには事欠かない。W杯の決勝戦で選手の水分補給のためにピッチの外に置かれているペットボトルの水の中に薬物(下剤?)が混入されていたのではないかというブラック・ジョークのような噂さえ、サッカー・ファンの間で真しやかに言い伝えられているのだから。試合は後半早々、相手のCKからFWにヘディングを決められ失点した(0ー1)。

    選手の動きを目で追うと、明らかに体調の悪そうな仲間たちが数名いる。彼らもキック・オフ前やハーフタイム中にケーキやクッキーを食べたのだろうか。後半の残り時間も次第に少なくなって来た。このまま負けてしまうのかと落胆した矢先、主審のホイッスルが鋭く鳴った。自軍MFのセンタリングがペナルティ・エリア内で相手DFの手に当たってPKを獲得。運悪く、オレが蹴ることになってしまった。下半身に力が入らず、蹴り損なったボールが狙った方向とは逆へ転がって行く。それが絶妙のフェイントとなって、キーパーの飛んだ方向とは逆にコロコロとゴール・インしたのだから不幸中の幸いと言うべきか、サッッカーだけは何が起こるか全く分からない。試合終了の笛が鳴った時はフラフラ状態で、立っているのも辛かった。ゲームは辛くも引き分けたが(1ー1)、後半は苦しかった。疲労困憊したオレがサポータの声援にも応じず、一目散に女子トイレへ駆け込んだのは言うまでもない。

    ⃞ 桃色エスパー、泣いて否定、ナーバス、エロい腿
    超力戦隊エスパー5のメンバーの1人、エスパー・ピンクにエロ仕掛け誘惑の疑いがかけられている。疑惑の発端は本番ロケ中、敵の幻魔に対して行なったと噂されるパンチラ、胸チラ攻撃である。早朝の健全なる子供番組にエロは禁物!‥‥歴代の戦隊ヒーローや宇宙刑事シリーズではミニスカ・ヒロインが敵との格闘シーンでパンチラしてしまうことも少なくなかったが、飽くまでも偶然に見えてしまった不可抗力。激しいアクションに長いスカートは不向きだし、男子ヒーローと同じ無粋な長パンツでは女性キャラとしての華がない。特撮ヒロインのパンチラは女子テニス選手のアンダー・スコートみたいなもので、いちいち目くじらを立てるのは野暮ではないか。しかし、それが故意のエロ挑発ならば話は別だ。撮影中にプロデューサに呼び出された桃色エスパーは巷で噂されているエロ疑惑を泣いて否定した。戦隊コスチュームを身に纏って椅子に座った彼女の太腿が小刻みに震えている。その痙攣するエロい腿にプロデューサは顔を顰めた。

    ⃞ くまモンは今晩、阿蘇。餡パン、小判も撒く
    2月3日の節分祭には全国各地の神社仏閣で豆撒きが行なわれているが、毎年3月12日には熊本県阿蘇郡高森町の「上色見熊野座神社」で、ゆるキャラ・くまモンの誕生日を祝う大盤振る舞いがある。その昔、嵐の夜に森の中で迷子になって泣いていた子供の前に1頭のクマが現われて、熊野座神社まで道案内したという故事に由来する行事の1つである。人を襲うクマもいれば、人を救うクマもいる。くまモンがライトアップされた社殿に姿を現わすと、境内に集まった子供たちから大歓声が上がる。本来ならば祝福される立場なのだが、毎年くまモンは2月14日のヴァレンタイン・デイに全国のファンから1年間食べても食べきれないほど大量のチョコレートを貰っている。せめて誕生日には子供たちにプレゼントを贈りたいという感謝の気持ちである。くまモンは今晩、阿蘇の熊野座神社で黒糖餡パンを撒き、くま紋入り小判(金紙に包まれた小判型のクッキー)も撒くんだもん。

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     スニンクスなぞなぞ回文 #33

     ◯△▢さくらパンダ☆◎▽▽◎☆だん薔薇くさ▢△◯

     回文作成:sknys

     ヒント:さくらパンダ現わる!


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    でたらめヒーロー

    でたらめヒーロー

    • 出演:佐藤 隆太 / 塚本 高史 / 本仮屋 ユイカ / 秋元 黎 / 原 幹恵 / 小日向 文世
    • 制作著作:読売テレビ
    • 放送日: 2013/04/04 ~(木曜日 23:58-24:53)
    • メディア: TV

    ネコと歩けば

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  • 中央区の月島から佃までをまずは見てみることにする。月島にたどり着くまで地下鉄を乗り継いで大江戸線の月島にて下車。地上だけではなく地下鉄の路線も込み入ってくる。橋を渡らずに到着してなんとなく拍子抜けして地上に出る。さてネコだが、この辺りの高層マンションは戸数が1000戸を越えるという。いわゆるペット可の物件も増えているらしい。佃島の公園にネコがいると聞いて行くが見当たらず、折り良く水飲み場にいたヒトに出会って尋ねてみると「今年の初めだったかな、棒を持ってきて殴り殺してしまったヒトがいたそうだよ」と返事されて、いきなりこちらまで棒で殴られたような心持ちとなる。そのネコはよくヒトに慣れていたそうだが気の毒なことをした。アメリカでは動物虐待は禁固刑に当たる。ヒトが増えればいろいろあるだろう。ネコには対応できないことも起こってくる。その結果いのちを落とす。ネコはおちおち外を歩けなくなってしまうだろうか。
    岩合 光昭 『ネコに金星』


  • 「ねこ歩き 岩合光昭写真展」(日本橋三越 2013)に行って来た。3年前、同じ会場で開催された「ねこ」(2010)ではチケット売場で愛猫の写真を提出すると入場料が割引されて、会場の外壁に貼り出されるという粋なサーヴィスがあったが、今回はお気に入りのネコ写真を持参した来場者がエレヴェータ前のパネル「みんなでネコとも」に貼り出す。上部がネコの輪郭に切り抜かれた入場券もペラペラで栞には使えそうもない。その代わりに会場内で図録・写真集『ねこ歩き』(クレヴィス 2013)を購入すると、同じく上部がネコの形になった特製栞「なんとかなる」が付いて、岩合さんのサイン会やギャラリートークにも参加出来る。予定にはないゲリラ・サイン会も随時行なわれているが、確実にサインを貰うつもりならば「ギャラリートーク&サイン会」のある日に行ったほうが良いかもしれない(サインに添えられる「ネコ・イラスト」は手描きではなくスタンプである)。栞だけが目的ならば、オリンパス・カメラが展示されている出口近くに公認サイト「Digital Iwago」の栞(ネコ2、パンダ、ジュゴン)がカメラ・カタログ(宮﨑あおい)と一緒に置いてある。

    会場(日本橋三越本店・新館7階ギャラリー)内は結構混雑していた。入場者の男女比は7対3で女性の方が多いかな。「本展は、イワゴーさんが近年訪れた国々や日本のネコたちの最新未公開作品を中心に222(にゃんにゃんにゃん)点を展示」とチラシの裏に記してあるように、前回の「ねこ」と重複する写真は殆どない。そう広くはない通路の両側の壁に大・中・小のパネルが架けられている。撮影場所とキャプションを記した白いプレートも添えられる。2枚上下に展示されている場合はパネルの間に2つのプレートが横に並ぶ(右のプレートを少し下にズラしてあるので、鑑賞者が混乱することはない)。本展覧会は3つの章で構成されている。第1章 世界を歩く(ギリシャ / イタリア / トルコ / モロッコ / アメリカ / キューバ)、第2章 日本を歩く(春 / 夏 / 秋 / 冬)、第3章 わが家のネコたち(海ちゃん / にゃんきっちゃん / 柿右衛門 / ケナ)。最終コーナでは岩合さんからの「ヴィデオ・メッセージ」(5分)も上映されていた。

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    「世界を歩く」はギリシャの青い空と海から始まる。エーゲ海に浮かぶ小さな島々‥‥サントリーニ島、ミコノス島、イドラ島など、南欧の真っ青な空や白い家並みにはネコが良く似合う。イタリアのアグリジェントやシチリア島、カプリ島、古代遺跡や石畳の街角、オリーヴの木の下、トルコノイスタンブール、モロッコのマラケシ、アメリカのキーウェストやメンフィス、キューバのハバナ‥‥。ジャンプ、観察、偵察、散歩、匂い付け、睡眠、求愛、子育て、食事、毛繕い、挨拶、戯れ合い、木登りなど、人種や衣裳は様々でもネコは変わらない。日本と決定的に異なるのは風景である。家屋、石畳、遺跡、モスク、砂漠など、異国の景色の中に溶け込んだネコたち。風景の一部となった小さなネコの姿を発見する時、不変的なネコの暮らしが胸に沁みて来る。ネコの世界は戦争や紛争、テロ、核兵器や原発、公害や地球温暖化とは無縁の動物だったはずだ。それらから生じた恐怖や不安も、すべて悪しき人類が造り出したものである。ネコは民主化運動や反原発デモに参加したりはしない。ただ人間たちに寄り添って生きて行く。

    「日本を歩く」は撮影地別ではなく、春・夏・秋・冬の四季に分けて展示してある。鹿児島、愛知、静岡、栃木、福岡、高知、熊本、沖縄、長野、群馬、東京、宮城、山口、広島、京都、奈良、山形、青森、香川、佐賀‥‥約10年かけて日本全国47都道府県のネコたちを撮ったという岩合さんの最新作が並んでいる。桜島や桜、シーサー(沖縄)、漁港や農村など、背景が日本の風景になると被写体のネコも「和風」に見えて来るから不思議である。時間軸で構成されたネコ写真は西から東へ、南から北へ移ろって行く。都内23区では耳先カット(不妊、去勢済みの印)のノラネコが目立つけれど、岩合さんの撮ったネコたちは両耳が綺麗に立っている。これ以上、都会のノラネコを増やさないための処置と言えば聞こえは良いが、遠くない未来に街からノラの姿が消えて1匹もいなくなることを意味している。人間がネコにしていることは地球の人口増加を抑制するために成人男女の生殖器官を取り去ることと同じである。もし、そのような未来が訪れた時、処置済みの男女に一体どのような目印を付けるのかしら?

    「わが家のネコたち」では岩合家のネコたちが紹介される。お寺の住職から貰い受けた海(kai)ちゃんは岩合夫妻が初めて飼った特別なネコだった。写真集『海ちゃん』(講談社 1984)や『ママになったネコの海ちゃん』(ポプラ社 1986)などの著作もある(詳細は〈ネコの海ちゃん〉を参照)。白ネコのにゃんきっちゃんは娘さんの飼い猫で時々、八ヶ岳の麓にある岩合家に遊びに来るという。苦手な木登りをしたり、お風呂に入っている表情が可愛い。野性味溢れる三毛ネコの柿右衛門ちゃんはノラだったらしい。彼女は『ネコさまとぼく』(新潮社 2008)の表紙にもなった岩合さんの目蓋をピンクの肉球で指圧している写真で有名になった。長毛種のケナちゃんもタヌキのように立派な尻尾が愛らしい。岩合さんは会場内で上映されている「ヴィデオ・メッセージ」の最後で40年以上に渡ってネコを撮り続けている理由を明解に語る。「皆さんにネコの味方になって欲しいのです」「今、動物たちは虐げられているから」と。会場を1歩出ると、そこは物販(物欲?)ブース!‥‥ネコ好きには堪らないネコグッズの数々が待ち構えていた。にゃんにゃんにゃん。

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    • 「岩合光昭の世界ネコ歩き」(NHK BSプレミアム)の写真ヴァージョンというか、「ねこ歩き」の方が本家本元にゃのだ^^;

    • 東京(日本橋三越)は終了しましたが、松山、札幌、福岡‥‥と全国巡回予定です
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    ねこ歩き(岩合光昭写真展)

    ねこ歩き(岩合光昭写真展)

    • 会場:日本橋三越
    • 会期:2013/05/29~06/10
    • メディア:写真
    • 展示テーマ:世界を歩く(ギリシャ / イタリア / トルコ / モロッコ / アメリカ / キューバ)/ 日本を歩く(春 / 夏 / 秋 / 冬)/ わが家のネコたち(海ちゃん / にゃんきっちゃん / 柿右衛門 / ケナ)


    ねこ歩き

    ねこ歩き

    • 著者:岩合 光昭
    • 出版社:クレヴィス
    • 発売日:2013/05/29
    • メディア:単行本(ソフトカバー)
    • 目次:世界を歩く(ギリシャ / イタリア / トルコ / モロッコ / アメリカ / キューバ)/ 日本を歩く(春 / 夏 / 秋 / 冬)/ わが家のネコたち(海ちゃん / にゃんきっちゃん / 柿右衛門 / ケナ)/ おわりに


    ネコと歩けば

    ネコと歩けば

    • 著者:岩合 光昭
    • 出版社:辰巳出版
    • 発売日:2013/04/13
    • メディア:大型本
    • 目次:宮城・田代島 / 北海道 / 神奈川・湘南 / 長野 / 京都・丹後 / 高知 / 山形 / 山梨 / 奈良 / 広島・宮島 / 石川・能登 / 山口 / 愛知 / 思い出の猫たち


    ネコに金星

    ネコに金星

    • 著者:岩合 光昭
    • 出版社:新潮社
    • 発売日:2013/01/28
    • メディア:文庫
    • 目次:宮崎 / 三重 / 和歌山 / 山梨 / 富山 / 白川郷 / 茨城 / 山口 / 千葉 / 徳島 / 兵庫 / 東京 / 岩合光昭 金星インタビュー / あとがき / 解説・赤川 次郎

    コンフェデ杯の夜(2 0 1 3)

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    6大陸の王者とW杯優勝国、開催国の8チームが対戦するコンフェデレーションズ・カップ(FIFA Confederations Cup 2013)がブラジルで行なわれている。コンフェデ杯はドイツ大会(2005)からW杯の前哨戦という位置づけになって、4年に1度、W杯の前年に開催されることになった。参加8ヵ国がA・B、2グループに分かれてリーグ戦を行ない上位各2チームが準決勝へ進出する方式は、32ヵ国が出場するW杯の1/4の規模。全16試合、2週間(6/15~30)に渡るプレ大会である。1次リーグの組み分けはA組・ブラジル、日本、メキシコ、イタリア、B組・スペイン、ウルグアイ、タヒチ、ナイジェリアで、AFCアジアカップ 2011で優勝した日本は強豪国の集まるAグループに入った(UEFA EURO 2012 準優勝のイタリアは優勝したスペインが前W大会優勝国だったので繰り上がりで出場権を獲得した)。南アフリカ大会(2009)は日本が不出場ということもあってか、地上波TVの放映は準決勝と決勝戦を含む5試合のみだったが、今回は日本戦全試合が地上波(フジTV系列)で、全16試合がNHK BS1で完全生中継される。

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  • ○ ブラジル 3 ─ 0 日本(6/15 ブラジリア)
  • 前半3分、DFマルセロの左サイドからのクロスを中央にいたFWフレッジが胸で落とし、FWネイマールがボレー・シュートをゴール右上に放つ。電光石火の早業だった。セレソンは戦術以前にスピードで日本を圧倒していた。走る速さだけではない。トラップ、パス、フェイント、ドリブル、シュート、ダイレクト・パスを繋ぐ状況判断の速さと精確さ。相手に詰め寄る暇を与えない自在のフットワーク。ボールを受けてからパスコースを探している日本選手とは雲泥の差だった。後半3分、先制点と同じようにDFダニエウ・アウヴェスの右サイドからのクロスを受けたMFパウリーニョが左足でトラップしてシュート‥‥ボールはGK川島永嗣の手を弾いてゴールインする。同48分にはマルセロからパスを受けたオスカルが左サイドをドリブルで駆け上がり、ペナルティ・エリア中央へスルーパス。途中出場のFWジョーが左足でノートラップ・シュートを決めた。W杯ブラジル大会(2014)での優勝を公言していたDF長友佑都は試合後にブラジルとの実力差を「中学生とプロのレヴェル」と自嘲気味に評した。大人と子供の差は1年で縮まるのだろうか。

  • ● メキシコ 1 ─ 2 イタリア(6/16 リオデジャネイロ)
  • W杯南アフリカ大会(2010)で1勝も出来ずに1次リーグで敗退したイタリアはプランデッリ監督を迎えて復活した。「カテナチオ」と呼ばれる堅牢な守備戦術に安住することなく、攻撃的なサッカーを目指す。その象徴的な存在がFWバロテッリである。守備ユヴェントス+攻撃ミラン+MFデ・ロッシ(ローマ)という布陣のイタリアは前半27分、バロテッリが倒されて得たFKをMFピルロがゴール左上に決めて先制するが、メキシコも同34分、ペナルティ・エリアに侵入したFWドス・サントスをDFバルザーリが倒して得たPKをFWエルナンデスが右隅に蹴り込んで同点とする。膠着気味の試合を決めたのは後半33分、MFジャッケリーニからの浮き球を相手DFと縺れ合いながらゴールへ蹴り込んだバロテッリだった。得点差は1点だったが、イタリアがメキシコを圧倒したゲームだった。ロンドン五輪(2012)で優勝したメキシコはショート・パスを繋ぐ本来のサッカーが出来ずに精彩を欠いた。

  • ○ スペイン 2 ─ 1 ウルグアイ(6/16 レシフェ)
  • 前W杯大会(2010)で優勝し、欧州選手権(2012)を連覇した王者スペインのサッカーはMFメッシの代わりにFWフェルナンド・トーレスが入ったと考えれば、国内リーグのバルセロナと余り変わらない。高速パスを回して相手ディフェンスの隙を突く高等戦術の中心はMFシャヴィとイニエスタの2人。ウルグアイ戦はトーレスに替えてFWソルダードが先発した。前半10分、FWセスクの放ったシュートは惜しくも左ポストを直撃するものの、同20分にはFWペドロのシュートが相手DFルガーノの右足に当たってラッキーなゴールとなる。同32分にはシャヴィのCKを起点にセスクからのパスを受けたソルダドが冷静にループ・シュートをGKムスレラの頭上に決めた。スペインの術中に嵌まってしまったウルグアイはセリエA得点王(2012-13シーズン)のFWカヴァーニと英プレミア・リーグ得点ランキング2位のFWスアレス(試合中に相手選手の腕に噛みついて10試合の出場停止処分になった)という強力な2トップを擁しながらも前線で孤立し、後半43分、DFセルヒオ・ラモスに倒されたスアレス自らがFKをゴール左に入れた1点に終わった。

  • ● タヒチ 1 ─ 6 ナイジェリア(6/17 ベロオリゾンテ)
  • FIFAランキング138位と31位の差が順当に表われた試合となった。オーストラリアがアジア枠に入った後のオセアニアと他5大陸との実力差は大きい。前半5分、タヒチのクリアボールが主審に当たる。DFエチエジレがミドルシュートを放つと今度は相手DF2人に当たってコースが変わってゴールイン。同10分、MFオドゥアマディが相手のパスミスを奪ったFWアフメド・ムサからのパスを受けて追加点。同26分には同じくムサの左サイドからのセンタリングをGKサミンがハンブルして、オドゥアマディが3点目を入れた。それでも気落ちすることなく果敢に攻め続けるタヒチは後半9分、FWマラマ・バヒルアの左からのCKをMFホナタン・テハウがヘディングで決めて一矢報いる(タヒチのFIFA国際大会初得点!)。その後は同24分にオドゥアマディのクロスがホナタン・テハウのオウンゴールを誘い、同31分には途中出場したFWイデイエ・ブラウンの左サイドからのスルーパスをオドゥアマディが足で合せてハットトリックを達成、同35分には再びエチエジレが自身2点目となる6点目を入れた。

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  • ○ ブラジル 2 ─ 0 メキシコ(6/19 フォルタレザ)
  • 前半9分、DFダニエウ・アウヴェスの右サイドからのクロスボールをDFフランシスコ・ロドリゲス(マサ)が頭でクリアするも中途半端。浮き球をFWネイマールがダイレクト・ボレーでゴール左に突き刺す。ネイマールの先制点は日本戦の再現を想わせたが、その後は徐々にメキシコが攻勢に出る。同34分、自陣CKの競り合いで負傷したDFダヴィド・ルイスが鼻血を出し、治療のためにピッチから離れていた約10分間はメキシコに押し込まれて何度かピンチに陥った(試合後に鼻骨骨折と判明)。不穏な空気、嫌なムードがピッチ内に漂ったが、セレソン内には1人少ない間は無理に攻めずに守りに徹するという暗黙の意思疎通があったのかもしれない。後半もメキシコが優位に試合は進めた。しかし、アディショナル・タイムの48分、ネイマールが左サイドからドリブル〜フェイントでDF2人の間を抜き、ペナルティエリア内に侵入してラストパスすると、ゴール前で待っていたFWジョーが左足で合せて駄目押し点を決めた。

  • ○ イタリア 4 ─ 3 日本(6/19 レシフェ)
  • ブラジル戦では刀を抜く前に破れてしまったサムライブルーが真剣勝負の斬り合いに出た。優勢に試合を進めた前半21分、DFマッジョのミスパスを奪ったMF岡崎慎司がペナルティ・エリア内でGKブッフォンに倒されて得たPKをMF本田圭佑が冷静にゴール右に決めて先制。同33分にはショートCKの流れからMF香川真司が反転シュートを鮮やかにゴール右隅に突き刺す。同41分、フランスはMFピルロの右からの素速いCKをMFデ・ロッシがヘッドで合せて1点差に詰め寄った。突然降り出した雨が波乱を暗示していたのか、後半5分、MFジャッケリーニがDF吉田麻也をゴールライン上で躱してゴール前にラストパスを送り、DF内田篤人のオウンゴールを呼び込む。同7分、交代出場したFWジョヴィンコのシュートをブロックしたMF長谷部誠がペナルティ・エリア内でハンドを喫し、FWバロテッリにPKをゴール左に決められる。アッという間の逆転劇だった。同24分にMF遠藤保仁の左サイドからのFKを岡崎がヘッドで合せて同点に追いつくが、同41分、デ・ロッシのスルーパスを受けたMFマルキージオの折り返しをジョヴィンコに入れられて再び勝ち越された。

  • ○ スペイン 10 ─ 0 タヒチ(6/20 リオデジャネイロ)
  • スペインはDFセルヒオ・ラモス以外の先発メンバー10人を入れ替えた。前半5分、FWフェルナンド・トーレスはFWマタとのワンツーで左サイトを切り裂き、ゴール左に突き刺す。同31分、FWヴィジャのスルーパスを受けたMFダヴィド・シルヴァ、33分にはマタのスルーパスに反応したトーレスがGKロチェを躱してシュート。同39分にシルヴァのセンタリングをヴィジャが入れて4─0とリードした。後半も4分、左サイドを突破したDFモンレアルの折り返しをヴィジャが追加点。同12分、後半から出場したMFヘスス・ナヴァスの右サイドからの折り返しをトーレスが合せてハットトリック。同19分にはロチェの後逸したボールを攫ったヴィジャも無人のゴールに流し込んでハットトリックを達成。同21分にはシルヴァとのワンツーで抜け出したマタが決めて8─0。同33分、DFアスピリクエタのクロスがMFアイタマイの右手に当たって得たPKをトーレスがクロスバーに当てて失敗。ところが直後の同34分、トーレスがドリブルでGKを躱して汚名返上のポーケル(4ゴール)。同44分にはナヴァスのパスを受けたトーレスのトラップからシルヴァが反転シュートして10点目を入れた。

  • ● ナイジェリア 1 ─ 2 ウルグアイ(6/20 サルヴァドール)
  • キックオフ直後からウルグアイが攻勢に出る。最初の約5分間は殆ど左サイドで試合が行なわれていた。前半19分、左CKのリフレクションをFWフォルランが再びゴール前にグラウンダーのクロスを送ると、FWカヴァーニがスルーしたボールをDFルガーノが左足で合せて先制。同37分、ウルグアイは中央でFWイデイエ(モヒカン刈り)のパスを受けたMFミケルがルガーノを躱し、左足でゴール左に蹴り込んで同点に追いつく。決勝点を入れたのはW杯南アフリカ大会得点王のフォルランだった。後半6分、FWスアレス、カヴァーニと繋いだパスを左サイドで受けたフォルランが左足でゴール左上に華麗に決めたのだ。ウルグアイは後半38分、スアレスに代えてDFコアテスを入れて守備を固める。ナイジェリアにも決定的なチャンスは少なからずあったが、シュートの精確性に欠けた。タヒチ戦でハットトリックを達成したMFオドゥアマディが前半45分に負傷退場したのも響いた。

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    • 地球の裏側での試合は「コンフェデ杯の夜」ではなく「‥‥の朝」だったりして^^;

    • 朝日新聞の人名表記は今回も変ですね。カバニ(Edinson Cavani)はないでしょう
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    2013 FIFA Confederations Cup

    2013 FIFA Confederations Cup

    • Host Country: Brazil
    • Dates: 15-30 June
    • Teams: Brazil / Spain / Japan / Mexico / Uruguay / Tahiti / Italy / Nigeria
    • Venue(s): Belo Horizonte / Brasília / Fortaleza / Recife / Rio de Janeiro / Salvador

    サイバー・キャット 14

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    山手レコーズ(2 0 1 3)

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    • Say Hi To Your Neighbourhood(Neoangin 2009)Neoangin
      「山手レコーズ」(2012)で買おうか買うまいか迷った「猫ジャケ」と1年振りの再会。まるで飼主の帰りを玄関で待っていたかのような健気さです。良く売れずに残っていたなぁ‥‥と感慨一入。カラー・イラスト満載の歌詞カード(24頁)も愉しい。〈Bartleby〉という曲名はメルヴィルの「代書人バートルビー」(ボルヘスの編纂した「バベルの図書館」にも収録されている)のことでしょう。

    • Sparrow Juice(Nex Sound 2006)The Moglass

    • Chapter I(Willkommen 2010)Emma Gatrill

    • No Elephants(Badman 2013)Lisa Germano
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    No Elephants

    No Elephants

    • Artist: Lisa Germano
    • Label: Badman Recording
    • Date: 2013/02/14
    • Media: Audio CD
    • Songs: Ruminants / No Elephants / Apathy And The Devil / Back To Earth / Haunted / A Feast / Up In The Air / Dance Of The Bees / Diamonds / ...And So On / Last Straws / Strange Bird

    コンフェデ杯の朝(2 0 1 3)

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  • ● 日本 1 ─ 2 メキシコ(6/22 ベロオリゾンテ)
  • 日本は累積警告で出場停止のMF長谷部誠に代えて細貝萌、DF2人を入れ替えて酒井宏樹と栗原勇蔵が先発出場した。前半9分、MF遠藤保仁のシュートをFW岡崎慎司がコースを変えてゴールするもオフサイド判定。序盤こそ優勢だったが、次第にメキシコに主導権を握られる。同40分にはFWドス・サントスのクロスを頭で合わせたMFグアルダードのボールが左ポストを直撃した。後半9分、グアルダードの左サイトからのクロスをFWエルナンデスがヘッドで決めてメキシコが先制。日本はFW前田遼一と酒井をDF吉田麻也と内田篤人に交代して3バックの攻撃的な布陣とするが、直後の同21分、右CKをDFイラム・ミエルがニア・サイドで反らし、エルナンデスに頭で繋ながれて再び失点。同32分にMF長友佑都が負傷退場すると、MF中村憲剛を入れて4バックに戻さざるを得なかった。同41分、左サイドからのMF香川真司のクロスを遠藤が折り返し、FW岡崎慎司が足で合せて1点差とする。アディショナルタイムにペナルティ・エリア内で内田がエレナンデスを倒して決定的なPKを与えるが、GK川島永嗣が阻止した(零れ球に反応したエルナンデスのシュートはクロスバーを叩いた)。

  • ● イタリア 2 ─ 4 ブラジル(6/22 サルヴァドール)
  • イタリアはMFピルロを右脹脛の筋肉痛で欠き、MFデ・ロッシも累積警告で出場停止。ブラジルは負傷したMFパウリーニョに代えてMFエルナネスが先発出場した。キックオフ後の約3分間はブラジルの猛攻が続く。過密日程のためか前半26分にMFモントリーヴォ、同30分にはDFアバーテ、ブラジルも同34分にDFダヴィド・ルイスが負傷交代。均衡を破ったのはブラジルだった。同46分、FWネイマールの左CKをフレッジが頭で合せ、GKブッフォンの弾いた零れ球を途中出場のDFダンテが左足でゴール右隅に蹴り込んだ。イタリアも後半6分、ブッフォンのゴールキックをバロテッリがヒールで繋ぎ、途中出場のMFジャッケリーニが右サイドから同点シュートを放つ。同10分、ペナルティ・エリア前で倒されたネイマールがFKをゴール右(サイドネット)に直接決める。同21分にはDFマルセロのロングパスをフレッジが相手DFと競り合いながらも左足で入れて追加点。イタリアも同26分に右CKをバロテッリのトラップ、MFアクイラーニと繋ぎ、DFキエッリーニが蹴り込んで再び1点差とするが、同44分にマルセロのシュートをブッフォンが弾くと、フレッジに駄目押し点を決められた。

  • ● ナイジェリア 0 ─ 3 スペイン(6/23 フォルタレザ)
  • 前半3分、MFイニエスタのパスを受けたDFジョルディ・アルバが相手DF3人をドリブルで躱し、左足でゴール左に流し込んだ。23名の登録選手全員を先発出場させたスペイン優勢かと思われたが、気温29℃、湿度62%という蒸し暑さのためか次第にナイジェリアが攻勢に出る。スペインは後半8分、MFセスク・ファブレガスに代えてMFダヴィド・シルヴァ、同14分にFWソルダドに代えてFWフェルナンド・トーレスを入れて活性化を図る。同17分、FWペドロの左サイドからのパスにトーレスがヘッド(ファースト・タッチ)で合せて追加点。同30分にはペドロに代えてFWヴィジャを投入する。同43分、ヴィジャのロングパスに反応して走り出したジョルディ・アルバがGKエニェアマを躱して自身2点目となるゴールを決めた。ナイジェリアも果敢に攻め続けてペナルティ・エリア内に再三侵入したが、シュートの精確性に欠けた。スペインは公式戦28試合無敗記録を更新。まさに「無敵艦隊」の称号に相応しいチームである。

  • ○ ウルグアイ 8 ─ 0 タヒチ(6/23 レシフェ)
  • ウルグアイは先発メンバー11人全員を入れ替えた。前半2分、右CKをDFスコッティが反らし、FWエルナンデスが頭で合せて先制。観客は失点してもラインを下げないで攻めるタヒチに大声援を送り、ウルグアイがボールを持つとブーイングを発する。同24分、MFロデイロのパスに反応したエルナンデスがオフサイド・ラインを突破し、GKメリエルも躱して追加点。同27分、MFガルガノのパスをMFペレスがヘディング・シュートし、右ポストに当たって跳ね返ったボールを押し込む。同46分にはガルガノのスルーパスを受けたエルナンデスがメリエルの右を抜いてハットトリック。後半4分、ウルグアイはDFアギレガライがペナルティ・エリア内でDFバラールに倒されるが、スコッティのPKはメリエルに阻止される。同6分、スコッティがFWチョン・フエを倒し、2枚目のイエローカードで退場。タヒチが数的優位に立つものの、同14分にDFルディヴィオンがアギレガライを倒し、同じく累積警告で10人対10人となる。同16分、MFガルガノのクロスをロデイロが合せて5点目。同22分、チョン・フエがペナルティ・エリア内でアギレガライを倒して再びPK(エルナンデスはポーケルを達成)。同37分と45分には途中出場のFWスアレスが2得点して8点差とした。

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  • ○ 準決勝 ブラジル 2 ─ 1 ウルグアイ(6/26 ベロオリゾンテ)
  • 試合前のセレモニーで両チームの主将チアゴ・シウヴァとディエゴ・ルガーノが反レイスズムの声明を読み上げ、選手たちが「SAY NO TO RACISM」の横断幕を広げた。コンフェデ杯フランス大会(2003)の試合中に急死したマルクヴィヴィアン・フォエ(カメルーン)選手への黙祷もあった。南米対決となった準決勝は慎重な立ち上がりで、ブラジルも猛攻を仕掛けない。前半14分、右CKでDFダヴィド・ルイスがDFルガーノを引き倒してウルグアイにPKを与えるが、FWフォルランのシュートをGKジュリオ・セーザルが阻止。同41分、MFパウリーニョのパスを受けたFWネイマールが胸でトラップしてシュート、GKムスレラの弾いたボールをFWフレッジが右足のアウトで触ってブラジルが先制する。後半3分、ペナルティ・エリア内での混戦で、DFチアゴ・シウヴァからDFマルセロへのパスを奪ったFWカヴァーニが同点シュートを決める。延長戦も視野に入って来た同41分、ネイマールの左CKをファーポストにいたMFパウリーニョが頭で合せてブラジルが勝ち越す。ウルグアイはアディショナルタイムにムスレラを前線に上げて同点ゴールを狙ったが及ばなかった。

  • ○ 準決勝 スペイン 0 (PK7─6)0 イタリア(6/27 フォルタレザ)
  • 準決勝第2試合はユーロ対決。第1試合と同じくカシージャスとブッフォンの両主将が反レイシズム宣言をした。イタリアは左足負傷で離脱(帰国)したバロテッリに代えてFWジラルディーノ、スペインはタヒチ戦で4ゴール(ポーケル)したFWフェルナンド・トーレスが先発出場。ショートパスを繋ぐスペインは攻め倦み、3バックのイタリアがカウンターで反攻するが、気温30℃、湿度58%というコンディションが選手たちの体力を徐々に奪って行く。無得点のまま前・後半を終了して、今大会初の延長戦へ突入。延長戦前半、イタリアがジラルディーノに代えてFWジョヴィンコを入れると、同4分にスペインもトーレスに代えてハヴィ・マルティネスをFWとして投入する。試合は120分戦っても決着がつかず、PK戦へ縺れ込む。先攻のイタリアはMFカンドレーヴァ、MFアクイラーニ、DFデ・ロッシ、ジョヴィンコ、MFピルロ、MFモントリーヴォ、後攻のスペインもMFシャヴィ、MFイニエスタ、DFピケ、DFセルヒオ・ラモス、FWマタ、MFブスケツが成功して6対6のサドンデスに。7人目のDFボヌッチがクロスバーの上に外し、途中出場のMFヘスス・ナヴァスが左隅に決めた。

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  • ● 3位決定戦 ウルグアイ 2(PK2─3)2 イタリア(6/30 サルヴァドール)
  • ウルグアイの3トップ、フォルラン、カヴァーニ、スアレスに対して、満身創痍のフランスはMFピルロとDFバルザーリの2人が負傷で外れ、FWエル・シャーラウィが初先発した。前半24分、MFディアマンティの右サイドからのFKが左ポストを直撃してGKムスレラの右肩に当たり、跳ね返りをDFアストーリが左足で押し込む。後半13分、MFガルガノのスルーパスを受けたFWカヴァーニがGKブッフォンの右を抜くシュート決めてウルグアイも追いつく。同28分、エル・シャーラウィが倒されて得たFKを再びディアマンティがゴール右に直接入れると、同33分にはカヴァーニもFKを左上に入れて再び同点となった。気温28℃、湿度69%というコンディションと過密日程による疲労が選手たちの体力を消耗させる。今大会2度目の延長戦・後半5分、MFモントリーヴォがFWスアレスを倒して退場(累積警告)。イタリアは数的不利に陥るが、伝家の堅守でPK戦に持ち込んだ。先攻のウルグアイは1人目のフォルランがブッフォンに止められると、イタリアも3人目のDFデ・シリオがムスレラに阻止。しかし、ウルグアイのDFカセレスとガルガノが続けて失敗してイタリアが3位となった。

  • ○ 決勝戦 ブラジル 3 ─ 0 スペイン(6/30 リオデジャネイロ)
  • 接戦が予想された決勝戦は思わぬ大差になった。前半2分、FWフッキの右クロスをFWネイマールがトラップすると、DFピケ、アルベロアと縺れて倒れたFWフレッジが右足でゴールに蹴り込む。ボールへの素速い寄せでパスコースを断つブラジルが優位に立つ。同41分、FWフェルナンド・トーレスのパスから左サイドを駆け上がったFWマタのクロスを受けたFWペドロがGKジュリオ・セザールの左を抜くシュートを放つが、DFダヴィド・ルイスに間一髪でクリアされる。同44分にはオスカルとの再度のパス交換からネイマールがディフェンス・ラインを掻い潜ってゴール左上に突き刺す。後半2分、フッキのパスをネイマールがスルーすると、フレッジのシュートが右ポストに当たってゴールイン。再び出鼻を挫かれたスペインは同7分、マタに代えてMFヘスス・ナヴァスを投入。2分後、ペナルティ・エリア内でマルセロにナヴァスが倒されてPKを得るが、DFセルヒオ・ラモスはゴール右に外してしまう。同14分にトーレスを下げてFWヴィジャを入れるも、同23分にピケがカウンターから抜け出したネイマールを倒して1発退場。無敵艦隊スペインの公式戦無敗記録が29試合で止まり、ブラジルがコンフェデ杯3連覇を達成した。

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    日本の約23倍の国土を有するブラジルは広い。同じ国内でも北東部のレシフェやフォルタレザは冬季だというのに高温多湿の真夏のようだった。FWバロテッリやDFアバーテなど主力選手に負傷者が続出した満身創痍のイタリアには中2日という過密日程の影響もあるかもしれない。今大会のハイライトはタヒチ代表ではないかと思う。明らかに実力差のあるスペイン、ウルグアイ、ナイジェリアに大量失点してもディフェンス・ラインを下げずに果敢に攻め続けるタヒチのプレイ・スタイルに観客が大声援を送ったのはのは必ずしもブラジル国民の判官贔屓だけではないはずだ。「絶対に負けられない戦い‥‥」という、どこかの島国のスローガンをも鼻白らませるアマチュアリズム。勝ち負けという結果ではなく、過程‥‥サッカー・プレイすることの愉しさをサポータに思い出させてくれたのではないか。大会中にブラジル全土に拡大した反政府デモも、お祭り(サンバ・カーニヴァル)好きの国民にしては似つかわしくない光景だった。五輪やW杯のためのスタジアム整備や建設費が無駄遣いという論議は開催国ブラジルだけの話ではないでしょう。

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    • コンフェデ杯ブラジル大会(2013)の後半戦です‥‥夜の次は朝なのだ^^;

    • 早朝の試合(07:00~)は録画で視聴しました
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    2013 FIFA Confederations Cup

    2013 FIFA Confederations Cup

    • Host Country: Brazil
    • Dates: 15-30 June
    • Teams: Brazil / Spain / Japan / Mexico / Uruguay / Tahiti / Italy / Nigeria
    • Venue(s): Belo Horizonte / Brasília / Fortaleza / Recife / Rio de Janeiro / Salvador

    猫のミャーオ

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  • 欲しい物があるとき、この「声を出さないニャーオ」はすごいききめを発揮します。ほんとよ。でも使いすぎてはだめ。ここぞという時のためにとっておかなくては。/ これのやりかたは実に簡単です。ふつうのニャーオ、たとえば「外に出たいからドアを開けて」とか「おなかがすいた」とか「これは気にいらない」とかの意味を伝えるニャーオをいうときと同じに、相手を見つめて口を開けます。ただし、声は出しません。/ たったこれだけのことなのに、その効果たるや劇的です。男も女も心を揺さぶられて、まずどんなことでもしてくれます。あんまり効果があるからこそ、使いすぎが禁物なの。なぜなら人間は、ことわざふうにいうと「ごちそうも毎日では、もうけっこう」というところがあるの。これが猫なら「ごちそうなら、毎日でもけっこう」なのにね。/ ものごころついて以来、人間の研究を続けている私ですが、この声なしのニャーオがなぜこれほど力があるのか、人間の心のどんな部分にうったえるのか、すっかり解明できたとはいえません。まあ、こういうことかなと思えるのは、声なしのニャーオはあまりにもたよりなげな気配をただよわすので、人間は仏心をおこさずにはいられないというあたりでしょうか。
    ポール・ギャリコ 『猫語の教科書』


  • ◇ 黒猫オルドウィンの冒険(早川書房 2010)A・J・エプスタイン & A・ジェイコブスン
  • ヴァスティア国のロラネラ女王に拉致されてしまった老魔法使いカルスタッフの弟子、ジャック、ドルトン、メアリアン。3人の相棒(ロイヤル)を救いに旅立つ3匹のファミリア(使い魔)たち‥‥オルドウィン(黒猫)、ギルバート(アマガエル)、スカイラー(アオカケス)の活躍する冒険動物ファンタジーだが、主人公のオルドウィンはファミリアではなかった。古今東西のファンタジー・ヒーローには特殊な能力が備わっているのに、オルドウィンはメイデンメアの猫たちのような魔法(念力)が使えない。ブリッジタワーのノラ猫だとバレずに、賞金稼ぎのグリムスレードの魔の手から逃れ、灰色の髪の魔女アグダリーンや洞窟のトロール(巨人)やマクリートのヒュドラ(七頭竜)と闘えるのだろうか?‥‥もちろん終盤には幾つかのドンデン返しも用意されている。3部作「The Familiars」シリーズの第1作目(続編は『黒猫オルドウィンの探索』)で、3Dアニメ映画化の予定もあるそうです。

  • ◇ 山のトムさん(福音館書店 2011)石井 桃子
  • 戦後、北国の山間で開墾生活を始めたトシちゃんとお母さん、友達のハナおばさん、甥のアキラさんの同居する家へネズミ退治のために貰われて来た牡ネコの物語。トムという名前は「雄猫」を意味するトムキャット(tomcat)から付けられた。特別なペットとして愛玩される前のネコ、どこの家でも普通に飼われていた健気なネコの姿が活き活きと描かれている。雑誌記者時代、知人の子供たちにA・A・ミルンの「プー横町にたった家」(The House At Pooh Corner 1928)を英語から日本語に訳しながら読み聞かせたという逸話もある石井桃子の体験に基づいたフィクション(光文社 1957)で、作者自身は「ハナおばさん」として登場する。トムの死後に復刊された改訂版(1968)の「あとがき」に「トムを哀惜する気もちで、心臓は重たくなったと思えた」と書いている。ある日、鉱山町の郵便局へ急ぐハナおばさんの後を尾いて来てしまったトム。後ろから来た鉱山トラックに驚いて胸に抱いた手提げの中から逃げ出したトムを探し出す場面は涙なしには読めない。

  • ◇ ネコたちをめぐる世界(小学館 1993)日高 敏隆
  • ネコ派の動物行動学者によるネコ・エッセイ集。鰻屋の娘リュリとサンク、バルバル、ブランシェ、ポリプ(ポーちゃん)、パンダ、ゲリル、ベルベル、ミロワール・デ・シャ、レオノール・フィニ、トレード、クロ、チュッチュ、ボンジョヴィ!‥‥など、日高家の歴代ネコたちが総登場する。飼いネコや近所のノラたちが群雄割拠する5年間の盛衰史は都会の中のワイルド・ライフ。自宅のネコたちの軋轢に耐えかねて、大学の屋上に建てたネコ小屋へに引っ越しさせて大学生院生が生態や行動を研究・観察することになるが、家ネコの失踪や大学のネコたちの病死(ウイルス性腸炎)と悲惨な事件が続く。著者の興味は「彼らは何を考え、何を感じているのだろうか? 世界をどう認識し、どんな世界観をもっているのだろうか?」という点に集約される。PR誌「本の窓」(1979~83)の連載された24篇に、6篇のネコ・エッセイを併録(1989年刊)。「小学館ライブラリー版」には新たな「ネコグッズ・コレクション」も紹介されている。

  • ◇ キャット・アート ── 名画に描かれた猫(求龍堂 2012)シュー・ヤマモト
  • 名画の中に描かれた猫ではなく、絵画の中の人物をネコに変えた「猫パロディ画集」。古代 ─ 中世 ─ 東洋、ニャネッサンス、バロック、新古典主義〈ニャオクラシック〉、ロマン主義、写実主義、印象主義〈印象派〉、20世紀美術‥‥〈ニャスコー壁画〉(紀元前18000)からルネ・マグニャットの〈猫の子〉(1964)まで、古今東西のネコ名画、全124点を収録している。舶来猫のはずなのに「和風」というか、どこか親しげで庶民的なネコたち。猫美術評論家ウィスカー・キティーフィールドの巻頭エッセイ「人間と猫の相互理解と文化交流について」や作品解説も愉しい。「日の目を見るかもお金になるかもわからない猫プロジェクト」に5年もの年月と労力を費やしたシュー・ヤマモト氏に脱帽する。表紙カヴァになっているヨハネス・フェルネーコの〈真珠のイヤリングをした少女猫〉(1665)はフェルメールの原画や武井咲が扮したコスプレ写真の〈真珠の耳飾の少女〉よりも可愛いにゃん。

  • ◇ なんといったって猫(晶文社 1980)ドリス・レッシング
  • ノーベル文学賞作家によるネコ・エッセイ。1925年、幼いドリスは英国人の父親に連れられて南ローデシア(現ジンバブエ)に移住する。鷹、フクロウ、山猫、毒蛇など、アフリカの農場で体験した野生動物との攻防。ライフル銃で撃ち殺した山猫が野生化したペットだったり、薪の山の中に入り込んだ飼猫の尻尾を毒蛇と間違えた母親が散弾銃で射殺してしまったり、増えすぎた40匹の猫たちを父親が連発拳銃で始末したり‥‥今日の愛猫家が読んだら本を放り出して卒倒しそうな血腥いエピソードから始まる。その後、ロンドンに移り住んだドリスは友人夫婦から1匹の子猫を貰い受ける。母猫からシャムの遺伝子を受け継いだ灰色猫は王女のように振る舞う。灰色猫の求愛と妊娠、出産、避妊手術。レッシング家の一員として迎えられた黒猫との確執。黒猫の出産と育児、狩猟。2匹を車に乗せて田舎のキャンプ地へ行った時のエピソード。同性ということもあるのか、2匹の雌猫に対する著者の観察と描写は意地悪いと思えるほどだが、腸炎に罹って重態になった黒猫を献身的に看護する姿は猫への愛で溢れている。灰色猫と黒猫の名前は書かれていない。

  • ◇ 猫語の教科書(筑摩書房 1995)ポール・ギャリコ
  • ある朝、朝食中に玄関のベルが鳴ったので、朝刊が来たのかなと思って外へ出ると誰もいなかった。靴拭きの上に分厚い原稿の束が置いてあったと友人の編集者が著者ポール・ギャリコに語る。さらに驚いたことに彼の持ち込んで来た原稿は文字と記号が入り混じった意味不明の暗号のような文字列だった。1カ月後に再び原稿を手にしてスラスラと暗号文を読み解いた著者は素晴しく頭の良い雌猫がタイプライターを使って書いた子猫への指南書「猫語の教科書」であると確信し、作者は近くに住む写真家レイ・ショア夫妻の飼い猫ツィツァではないかと推測する(横書きの本書にはスザンヌ・サースの撮ったツィツァの写真が多数レイアウトされている)。第1章「人間の家を乗っ取る方法」と題されていることからも分かるように、猫の持ち物と居場所、獣医、食事と食卓、魅惑の表情とポーズ、ドア(出入口)、クリスマス、旅行、母親になること、マナー、愛情、別宅、子猫の躾けと自立など‥‥いかに飼主や家族を手玉に取って支配下に治めるかという手練手管が具体的に書かれている。

    人間を虜にする秘密兵器の1つが「声を出さないニャーオ」(silent miaow)である。実際には人間の耳に聴こえない高い周波数で鳴いているだけなのに、この「声なき叫び」が人間の心を揺さぶって絶大な効果を生む(「猫語の教科書」の原題は「The Silent Miaow」)。猫語で書かれた処世術を人語に翻訳することでネコの秘密を人間に暴露してしまうことになるけれど、逆にネコの視点から描くことで人間を痛烈に批判してもいる。曰く「我が儘で、欲張りで、考えが浅く、所有欲が強いくせに気紛れで、臆病で、嫉妬深く、無責任で、独り善がりで、狭量で、忍耐力に欠け、偽善的で、だらしない」人間。猫嫌いの編集者は「猫語の教科書」を出版すれば猫の真の姿が明らかにされて(化けの皮が剥がされて?)、世の猫好きどもの目を醒まさせることが出来るのではないかと期待するが、著者は頭の良さに感心した猫好き連中が益々猫に夢中になるかもしれないと忠告する。大島弓子の「描き下ろしマンガ」(2頁)が巻末に付いている『猫語の教科書』(ちくま文庫 1998)は縦書きになって、ネコ写真のレイアウトも再構成されている。

  • ◇ 猫の本棚(平凡社 2011)木村 衣有子
  • 女性エッセイストによる「猫本」ガイド。「猫文学を読む」「猫を知る」と題して、武田百合子の『富士日記』(中公文庫 1997)から浅生ハルミンの『私は猫ストーカー』(洋泉社 2005)まで28冊(参考文献として挙げられているデズモンド・モリス『キャット・ウォッチング12』の2冊を加えれば全30冊)が「猫の本棚」に並ぶ。夏目漱石や谷崎潤一郎、内田百閒など猫文学の「古典」もあるが、大島弓子、ドリス・レッシング、吉行理恵、ポール・ギャリコ、笙野頼子、金井美恵子、町田康、庄司薫、岩合光昭‥‥など、「猫のゆりかご」シリーズで紹介した「猫本」や作者と重なる部分も少なくない。「あらすじ」を要約しただけの無味乾燥な「ブック・ガイド」ではなく、個人的な読書感想文になっているところが魅力的で、時にはスリリングでさえある。たとえば《猫が好きである自分が好き、という人が嫌いである、私は》という文章‥‥そうか、液晶モニタが180度チルトして自分撮り出来るデジカメの機能は「写真を撮っている自分が好き」な人のためにあったのね。

  • ◇ 三毛猫の遺伝学(翔泳社 1997)ローラ・グールド
  • グールド夫妻が動物保護センターから貰い受けた2匹の雄ネコ‥‥長毛種のマックスは胸部だけが白い黒ネコだったが、ジョージは三毛ネコだった。1週間後、夫妻は健康診断のために2匹を獣医の許へ連れて行き、「三毛ネコの名前はジョージです」と紹介する。口元を歪めて薄ら笑いを浮かべた獣医の顔が真っ青になるのに余り時間はかからなかった。三毛ネコは雌のはずなのに、一体なぜジョージのような雄ネコが存在するのか?‥‥この素朴な疑問を解明すべく、著者は図書館や古本屋を回ってネコや遺伝学の資料を渉猟する。ダーウィンやメンデルなどの遺伝学や三毛ネコ論文を検証しながら2重螺旋の旅に出る。学術的な論文ではなく、著者やネコたちの日常もリアルに描かれているところが本書の魅力。彼女の探究心はネコの好奇心のように旺盛で、「ニャンと珍しいオスの三毛ネコ」という日本の新聞記事や「三毛猫ホームズ」さえも発見してしまうのだ。「ネコはエンドウ豆じゃない」(Cats Are Not Peas 1996)という原題も「カヴァ・イラスト」(高橋常政)も洒落ている。

  • ◇ 手塚治虫アンソロジー 猫傑作集 I(秋田書店 2000)手塚 治虫
  • 全身が犬のように変身してしまう奇病をテーマにした『きりひと讃歌』(1971)のような異色長編もあるが、「緑の猫」や「アトムキャット」などを描いた手塚治虫はネコ派のマンガ家ではないかと思う(この傑作集でも「猫」と「ロボット」は2巻に編まれている)。「おけさのひょう六」(1974)は民話風の短篇。佐渡の国・相川の庄の小作人ひょう六は村人の前で1日中踊り続けるほどの踊り好き。しかし、役人や代官や大名を揶揄する踊りが殿様の怒りを買って両目を刀で斬られる。越後の国から来て弟子になった遊女おけさが代わりに踊るも、大名に拉致されて都へ売り飛ばされてしまう。目の見えないひょう六は踊っている飼い猫のチリをおけさだと思い込む。「ネコと庄造と」(1975)は「ブラック・ジャック」の1篇。雪の降る寒い夜、息子が急病という電話を受けて往診に向かったブラック・ジャックは布団で寝ているネコに仰天する。大雪の日、崖崩れに遭って妻子を失った庄造は頭を強く打った後遺症でノラネコ親子を家族と思い込んでいるという経緯を医者の伴俊作(ヒゲおやじ)から聞いたブラック・ジャックは庄造の脳血腫手術を行なう。

    「ミッドナイト ACT.3」(1986)はタクシー運転手のミッドナイトを主人公とするシリーズ。ある夜、とんこつラーメンを食べていると、1キロ先の大通りでネコを轢いたという同僚がラーメン店に来る。食べ終わった運転手が店を出ると目の前に右後脚を失ったネコがいた。刎ねたネコが車の上に落ちて、ここまで運ばれて来たのだ。ラーメン屋の店主に飼われることになった3本足の子ネコはオオヤマネコ(Lynx)だった。「チャオがやって来た」と「さらわれたチャオ」(1983)は一角獣の子供を主人公にした「ユニコ」からの2篇で、鳴くとゴキブリの大群を呼び出してしまうというノラ猫チャオのエピソード。「2人のショーグン」(1979)は県会議員の息子・有馬将軍(まさゆき)と雌猫ピンクレディーの物語。将軍は東大法学部に入学させたいという父親の方針に反して劣等生だったが、家で40匹のネコを飼っているほどのネコ好き。ある夜、精霊(ネコの守護神)に出遭って目醒めたピンクレディーが将軍に恩返しを申し出る。彼女は将軍の身代わりになって優等生になるのだった。

    「シャミー1000」(1968)は地球へ調査に来たネコ型異星人シャミーと男子高生の恋愛を描いたSF。「愛」を売って大金100万円を得たという五条の行方を追って風神山のヒッピー村に来た三味、四村、六角の3人。しかし、五条がいるはずのヒッピー小屋は焼け落ちて跡形もなかった。高校生たちはネコを抱いた美女に道案内されて鳥の巣のような塔の中に幽閉されてしまう。するとネコが日本語を喋り出し、着ぐるみを脱いで2本足で直立する‥‥口の聞けない娘は「家畜」で、ペットのネコだと思っていたのがシャミー族の特派調査員1000号だった。数百年前、ネコに似たシャミーをペットにして合理化された生活の慰めとしていた人間が擬人化しようとして改良すると、主従が逆転してシャミーが人間を支配するようになったという(猫の惑星?)。シャミー族は科学文明生活の中で唯一欠けているもの、「愛の形態」を調査しに地球へ来たのだった。塔から四村を連れ出したシャミー1000は彼と触れ合う中で、次第に「愛」に目覚めて行く。「シャミー1000」は三味線の駄洒落である。

  • ◇ にゃん辞苑(アスペクト 2012)保田 明恵
  • ネコ版広辞苑第2集?‥‥『猫辞苑』(祥伝社 2004)が猫イラストと猫に纏わる言葉や熟語、俚諺、故事成語など100語だったのに対し、「にゃん辞苑」はネコ写真と見出し語126語を収録している。語句の説明文だけでなく、用例や慣用句(著者の創作した架空のもの)もウイットに富み、面白い。「池袋の壁黒猫を追え」や「ハチワレ・マトリクス」など、9篇のコラムも併録しているので、小辞典というよりも小型のムックに近い。たとえば《サイレント-ミュウ【silent-meow】/ こちらを見て、声を出さずに、「ニャー」と鳴く口の形をすること。じつは、人間には聞こえないだけで、猫同士だと聞こえる高い周波数で鳴いている。/ 本来、子猫が母猫に甘える時にする鳴き方。つまりは、慕われている証拠というわけで、こんな光栄なことはない。別名「無声鳴き」。⇔シャーシャー /「──をされて、嬉しくて涙ぐむ」/ 宝石箱を百箱積んでも──は手に入らない サイレントミュウをされることは、お金では買えないすばらしい価値がある》というように。

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    黒猫オルドウィンの冒険 三びきの魔法使い、旅に出る

    黒猫オルドウィンの冒険 三びきの魔法使い、旅に出る

    • 著者:アダム・ジェイ・エプスタイン&アンドリュー・ジェイコブスン / 大谷 真弓(訳)
    • 出版社:早川書房
    • 発売日: 2010/11/15
    • メディア:ハードカヴァ
    • 目次:一日の収穫 / 知らない場所 / ストーン・ランリット / ストームベリーと紙魚 / 遠出 / 真夜中の客 / 未知の世界へ / アグダリーンと大なべダコ / ダク沼のアマガエル / 指名手配 / 裏切り橋 / 秘密の歴史 / 山の錬金術師 / 二度ともどるべからず / トレンシアの滝 / 沈める宮殿 / マクリートのヒュドラ / パクサハラ / 三つの星


    山のトムさん

    山のトムさん

    • 著者:石井 桃子
    • 出版社:福音館書店
    • 発売日:1968/07/01
    • メディア:単行本
    • 目次:山のトムさん / トムをほめる歌 / トムの教育 / ネズミ / 子ネコ / 友だち / トムの記録 / トムのあだ名 / トムの病気 / トムの「おすわり」/ トムの冒険 / トムのおむかえ / トムのご出勤 / トム、町へいく / 山のクリスマス / あとがき


    三毛猫の遺伝学

    三毛猫の遺伝学

    • 著者:ローラ・グールド(Laura Gould)/ 七戸 和博・清水 眞澄=監修 / 古川 奈々子=訳
    • 出版社:翔泳社
    • 発売日:1997/09
    • メディア:単行本
    • 目次:はじめにジョージありき / ジョージはどこからやってきたのか?/ ジョージの祖先 / 性に関する昔の学説 / 遺伝学の起源 / 科学者たちはいつ、なにを見たのか?/ 初期の三毛ネコ論文 / 性に関する最近の学説 / ネコが袋から飛びだした(秘密の解明)/ 用語解説 / 年譜 / あとがき / 監修者あとがき / 索引


    手塚治虫アンソロジー 猫傑作集 I

    手塚治虫アンソロジー 猫傑作集 I

    • 著者:手塚 治虫
    • 出版社:秋田書店
    • 発売日: 2000/11/05
    • メディア:コミック
    • 収録作品:おけさのひょう六 / ブラック・ジャック[ネコと庄造と]/ ミッドナイト[ACT.3]/ ユニコ[チャオがやって来た][さらわれたチャオ]/ 2人のショーグン / シャミー1000

    ネコ・ログ #30

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  • おお猫よ、とわたしは言う。あるいは嘆息する。かわいぃぃい猫! きれいぃぃな猫! すばらしい猫! 繻子のような猫! ふわふわのフクロウのような猫、蛾のようなやわらかな足をした猫、燦然と輝く猫、この世のものとも思われぬ猫! 猫、猫、猫、猫。/ 彼女ははじめのうちわたしを無視する。それから、やおらその絹のごとく尊大な頭をめぐらし、ひとつひとつのほめ言葉ごとに、そのつどべつべつにまなこを半眼にとじてみせる。それからわたしが言いおわると、わざとらしく、気どってあくびをする──アイスクリーム・ピンクをした口のなかと、巻いたピンクの舌をちろりと見せて。/ でなければ、落ち着きはらって、じっとうずくまり、目でわたしを魅了する。わたしはその目に見いる。繊細な黒いアイラアインにふちどられ、そのまわりをさらにクリーム色の線がふちどっている巴旦杏型の目。それぞれの目の下には、一刷毛さっとはいたような黒いかげ。碧い、碧い目。だが日陰では、黒っぽい煙ったような金色──黒目の猫。それが光のもとでは緑色に、澄んだ、冷たいエメラルド色になる。そして透明な眼球の奥に、翅脈のはいったきらめく蝶の翅の切片。宝石のような翅──翅の精髄。
    ドリス・レッシング 『なんといったって猫』


  • ♯262│ゴン│飼い猫 ── 後期高齢ネコなのよ
    路地でゴンちゃんを撮っているとクルマが入って来た。足許の覚束ないネコを道端に寄せようと右往左往していると、運転していた老人が家のネコだと言う。自宅の前に注射して出て来た飼主曰く、18歳の後期高齢ネコ‥‥前肢が不自由なのは怪我ではなく、加齢によるものらしい。最初に出会った頃のように近寄って来て足に頭突きをしたりはしないけれど、毛並みを撫でて逃げ出したりはしない。ビャービャーという特徴的な鳴き声も健在である。しかし、老ネコだからなのか、なかなかシャープな写真が撮れない。夕暮れ時の老ネコ写真はミラーレス一眼でも難しいのだろうか。たまたま居合わせたネコ好きの女性は至近距離からゴンちゃんを接写していた。日も暮れて暗いのに良く撮れるなぁと思ったら、ニコンの明るいレンズ(F1.5)だった。最新のコンデジ機種は高性能なのだ。NEXのハイクオリティ・ズーム(Eマウント)は一体いつ出るのでしょうか。

    ♯263│バニー│飼い猫? ── 中国拳法ネコなのだ
    中国拳法道場の玄関付近で見かけることの多いバニーちゃん。ゴロニャンするのが好きで良く寝転がっているけれど、近づくと身を翻して何事もなかったように逃げ去ってしまう。ネコがゴロニャンするのは、お腹を撫でて欲しいからではなかったのか。親愛の情の表われではなかったのか。男を誘惑しては逃げ去る魔性の女に似ていなくもない。故トミーさんやサビくんと同じ地域に暮らしているが、お互いに棲み分けは出来ているらしく一緒に馴れ合うことはない(トミーとサビの仲も良好とは思えなかったけれど)。バニーちゃんは1人で行動するのを好む1匹狼ならぬ「1匹猫」なのかもしれない。この写真を撮影した時は珍しくゴロニャンしないで真正面からカメラを見つめている。首輪をしているので、中国拳法教室の看板ネコということにしておこう。

    ♯264│パル│ノラ猫 ── エルと良く似ているけれど‥‥
    同じような顔立ち、柄模様のエルと良く似ているので2匹は兄弟姉妹かもしれない。長毛種のロンちゃんと一緒にいることも少なくないけれど、それほど2匹の仲は良くなさそうだ。パルのピンクの鼻筋が少し赤らんでいる。先日、遠くから来るネコ婆さんの姿を見つけるや否や2匹は駆け寄って行く。遊歩道のベンチの下にネコ婆さんがキャットフードや鳥のササミを置く(ロンはササミしか食べない)。ゴハンを食べるパルの両耳の後ろが赤剥けしていて痛々しい。この季節、ベンチの奥の植え込みで大量発生しているヤブ蚊は人間だけでなくネコをも襲う。写真を撮っている間も蚊に刺されてしまうので、夏でも長袖を着用する。躰中が美しい毛並みで守られているネコは「耳なし芳一」のように耳が狙われる。痒いのはネコもヒトも同じらしく、耳の後ろをバリバリと爪で掻いてしまう。ヤブ蚊の攻撃は執拗で、ゴハンをあげているネコ婆さんでさえ刺されてしまうのだ。

    ♯265│サクラ│ノラ猫 ── さくらキャット 2013
    カラフルな花を背にしてカメラを見つめる宮城・田代島の子ネコ。写真集『ネコと歩けば』(辰巳出版 2013)を見て思うことは背景の重要さである。日本内外を問わず、ネコたちの姿形は殆ど変わらないが、その背景は各国や地域で全く異なる。ギリシャ、イタリア、トルコ、モロッコ‥‥青い空や白い家、石畳の街角、砂漠など、その国や地方に行かなければ撮れない固有の風景がある。日本国内でも田代島の漁港、北海道の牧場、湘南から望む富士山など、背景が変わるだけで前景のネコたちも和風の佇まいを見せる。ところがネコは人間のようにカメラに撮られることにも、そのロケーションにも頓着しない。満開の桜をバックに撮ろうと思っても、なかなかネコは期待に応えてくれないのだ。それでも何とか桜を背負ったネコ写真を撮れた。澄み切った青空ならば更に良かったが、都会では真っ青な空に映える桜を撮る機会には恵まれない。

    ♯266│アヤ│地域猫 ── 耳先カット・キャット
    アヤちゃんの左耳は切りすぎではないかと危ぶまれるほどにカットされている。ノラネコの「耳先カット」は不妊・去勢手術済みの印として都会では認知されている。これ以上、地域ネコが増えないようにという動物ヴォランティアや区役所などによる処置なのだが、「耳先カット」されたネコたちばかりを目にしていると、近い将来には街中からノラネコたちの姿が消える日が訪れるのではないかと危惧してしまう。「耳先カット」と呼べば聞こえは良いけれど、動物の本能の1つである子孫を1匹も残せずに残せずに死んで行くネコたちを不憫に思わずにはいられない。「耳先カット」すべき対象は平気で自分たちの子供を虐待死させてしまう人間の親の方ではないか(性交しても子供が産まれないので、虐待することも出来ない)。ネコを虐待している人間の耳も切り落とした方が良いかもしれない。世話していた婆さんが引っ越してしまったので、今は向かいの家の住人がアヤちゃんを授かっている。

    ♯267│ユミ│飼い猫 ── 上目使いで挨拶する
    子ネコの成長は早い。S神井川沿いの駐車場付近に暮らしているネコたち‥‥可愛い子ネコだと思っていたユミちゃんも美しい成ネコになった。それでも警戒心だけは子ネコ時代と変わらず、不用意に近づくと駐車中のクルマの下に隠れてしまうので撮影チャンスは少ない。この写真を撮った場所はゴハンをあげている民家と駐車場の間にある狭い隙間で、右側の駐車場とは金網で仕切られている。ちょっと追いつめた感じになってしまったかもしれない。これ以上接近すると逃げられてしまうギリギリの距離から撮った。ミラーレスの標準ズーム(NEX-5N)では、ここまでしかでは寄れないけれど、長くて重い望遠レンズで遠くから盗撮するつもりはない。ネコと仲良くなって、お互いに信頼関係を築いてから撮りたいと思っているから。ユミちゃんとの間合いは縮まるかしら?

    ♯268│エミ│飼い猫 ── 僕の隠れ家
    ゴハンを貰っている民家の玄関横に隠れているエミちゃんは良く似た顔立ちと柄模様のユミちゃんとは兄弟姉妹の関係にあるのかもしれない。植木の陰に身を隠しているので、通りがかりの人は誰もネコが隠れているとは思わないだろう。人間にネコは見つけられないが、ネコは通行人たちを注意深く観察している。たまたま逃げ込んだ姿を目撃した人にしか分からない隠れ家である。ユミちゃんと姿形だけでなく性格も似ているエミちゃんも駐車しているクルマの下に隠れてしまうことが少なくないけれど、ここが隠れ家だとネコも心得ているらしく、覗き込んでカメラを向けても慌てて逃げ出したりはしない。もう少し頻繁に訪れていれば、ネコたちも顔や声を憶えてくれるかしら。危険な外敵ではなく、友好的な味方だと看做してくれるかしら。少なくともネコたちと仲良くなる余地は残っていると思いたい。

    ♯269│サイコ│ノラ猫 ── ボス・ネコ現わる!
    「私有地につき立入禁止」という立て看板のある横道は可動式の黒い鉄柵で閉ざされていることもあるが、近隣住人の駐車場として使われているのか、鉄門が無防備に開いたままの時もある。その門柱の辺りに数匹にネコたちが屯していた。どうやら夕暮れ時にゴハンを運んで来るネコおばさんを待っているらしい。写真を撮っていると近所の住人らしき男が「ネコにエサをやる人がいるので、警備員が怒っている」と言い寄って来るが、閑散とした私有地に人のいる気配は全くない。ネコを追って奥へ入れないので撮影には適さない場所だが、運良く門柱の横にいる精悍な眼差しのネコを撮ることが出来た。ボス・ネコは小心者のネコとは違って、尻尾を巻いて逃げ去ったりはしない。現在(2013)は右の敷地一帯が工事中のフェンスで覆われてしまい、ネコたちの姿も見かけなくなった。騒音や作業員たちを避けて私有地の向こうへ行ってしまったのだろうか。

    ♯270│ダイ│ノラ猫 ── I袋水天宮のネコ 2
    I袋駅前公園を訪れた人たちの多くはネコたちの体躯と毛並みの良さに驚く。とてもノラネコとは思えないらしい。I袋へ行った際には公園にも立ち寄ることにしているので、顔馴染みにネコたちは挨拶しに来るようになった。水天宮神社の前にネコの姿がない時もあるけれど、暫くして埼京線沿いの植え込みの中から1匹現われると、どこからともなく後続のネコたちも次第に姿を現わす。ちょうど夕食事時なのかもしれない。公園にネコたちが出て来ると、今まで殺風景だった場所が一変する。一瞬にして和やかな寛ぎの場へと変貌するのだ。通りがかった人が足を止めてネコたちに見入る。ケータイやコンデジ、一眼カメラで撮ったりする(iPadで撮っている外国人さえいる)。水天宮神社の前で始まった「ネコ撮影会」に心和む。いつまでも、この平和な時間が続きますように‥‥。

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    各記事のトップを飾ってくれたネコちゃん(9匹)のプロフィールを紹介する「ネコ・カタログ」の第30集です。サムネイルをクリックすると掲載したネコ写真に、右下のナンバー表の数字をクリックすると該当紹介文にジャンプ、♯ネコ・タイトルをクリックするとトップに戻ります。ノラ猫や地域猫、飼い猫を差別しない方針で、これまでに延べ270匹以上のネコちゃんを紹介して来ましたが、こんなにも多くのネコたちが棲息していることに驚かされます。30集の新顔ネコはアヤとサイコ。常連ネコのゴンちゃんも元気です。『なんといったって猫』(晶文社 1987)はノーベル文学賞作家ドリス・レッシングのネコ・エッセイ。彼女のネコに対する観察と描写は意地悪いと思えるほどだが、腸炎に罹って重態になった黒猫を献身的に看護する姿は慈愛に満ちているし、灰色猫の目の奥に美しい蝶の翅脈を見出す視線は透徹している。2匹の飼いネコ、灰色猫と黒猫に特定の名前は付いていない。

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    • 記事タイトルの右に一覧リストのリンク・ボタン(黒猫アイコン)を付けました^^

    • オリジナル写真の横縦比は3:2ですが、サムネイルは4:3にリサイズしています
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    なんといったって猫

    なんといったって猫

    • 著者:ドリス・レッシング(Doris Lessing)/ 深町 眞理子(訳)
    • 出版社:晶文社
    • 発売日:1987/06/01
    • メディア:単行本

    黄色い潜水艦

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  • 僕はアッシャー家の屋根裏でベッドに横になっていた。眠りに入る前や目覚める前に心地よい「トワイライト・ゾーン」があるだろう。あれが好きなんだ。1日の仕事を終えて、もう少しで眠ってしまいそうなとき、この宙ぶらりんの国が訪れる。そんなとき、子供向けの曲が書けないかなと思っていろいろイメージしていたら、黄色が頭に浮かび、その次に潜水艦が頭に浮かんだんだ。これはなかなかいいと思ったよ。おもちゃのような、とても子供っぽい潜水艦だ。そのときからリンゴの歌にしようと考えていたから、あまり音域が広くない歌にした。頭の中でメロディーを考え、ストーリーを考え始めた。年老いた船乗りが子供たちに、昔黄色い潜水艦に乗って行ったところのことを話して聞かせるんだ。ほとんど僕が書いた曲だと記憶している。まどろみの中でできたリンゴのための歌なんだ、ジョンも手伝ってくれたと思う。歌詞がだんだんわけが分からなくなってくるからね。でも、コーラスとメロディーとヴァースは僕だよ。あのころよくやっていた言葉遊びで、わざと文法を間違えたりしている。
    ポール・マッカートニー 『イエロー・サブマリン航海記』


  • 映画『イエロー・サブマリン』(1968)の制作にファブ・フォーは殆ど関与していない。ユナイテッド・アーティスツとの契約で3本の映画を作らなければならないのに、4人には3本目を撮る暇がなかった。NYのプロデューサ、アル・ブロダックスが「最小限の労力で3本目の映画を作る方法がある」とブライアン・エプスタインに提案する。「アニメ・ザ・ビートルズ」(The Beatles)を制作していたTVCが〈Yellow Submarine〉を映画化することになるが、アメリカナイズされたTVアニメに批判的だったファブ・フォーは余り乗り気ではなかった。映画に極力関わらないことにした彼らは新曲4曲の提供と映画のラストに実写で登場するだけに留めた(アニメ・キャラの吹き替えも本人ではなく声優が演じている)。しかし、TVCのスタッフたちは子供向けのアニメではなく、《Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band》(1967)のサイケデリックな世界観を映像化した長編アニメを作ろうと意気込んでいた。試写を観たファブ・フォーは態度を改める。《Yellow Submarine》(1969)は映画公開から遅れること6カ月、A面にオリジナル6曲、B面にジョージ・マーティンのオーケストラによるインスト7曲を収録した変則的なサントラ盤としてリリースされた。

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    ☆ Yellow Submarine
    PaulがRingoのために書いた合唱歌はファブ・フォーの中でも最もポピュラーな曲の1つである。「We all live in a yellow submarine.」というサビのコーラスは子供たちが口ずさめるほどに広く親しまれている。Johnの生ギター、Paulのベース、Georgeのタンバリン、Ringoのドラムス。Ringoのヴォーカルを3人とゲストやスタッフがコーラスでサポートする。音の出る絵本のような空想世界。波、グラス、ブラスバンド(マーチのレコードからの借用)、泡、機関音、圧縮空気、鐘、汽笛などの効果音も愉しいけれど、レコーディングも大騒ぎだったらしい。お香を焚いてマリファナの臭いを胡麻化し、真夜中近くには大太鼓を胸に抱えたマル・エヴァンス(Mal Evans)を先頭に、ブライアン・ジョーンズ、マリアンヌ・フェイスフル(Marianne Faithfull)、パティ・ボイド(Pattie Boyd)など、招待されたゲストたちが一列になってスタジオ内をジグザグに練り歩いたというのだから。水の中で歌っているような声を録音したいというJohnのリクエストに応えて、コンドームに包んだマイクを水の入った牛乳ビンの中に沈めたというボツ・アイディアも笑える。

    △ Only A Northern Song
    『イエロー・サブマリン』のために提供した新曲4曲の1つだが、実際は《Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band》のセッション中にレコーディングされていた「ボツ曲」だった(Georgeは友人クラウス・フォアマンの家で作った〈Within You Without You〉をジョージ・マーティンと録音して名誉挽回した)。Georgeのヴォーカル(ダブルトラック)、ハモンド・オルガンにPaulのベース、Ringoのドラムスで、ギターは使用していない。トランペット、グロッケンシュピール、ティンパニー、ピアノ、ハーモニウムの逆回転などの効果音が入り混じったサウンドはサイケデリック色が濃い。曲タイトルと歌詞はファブ・フォーの楽曲(著作権)を管理する「ノーザン・ソングス」(Northern Songs)への痛烈な皮肉になっている。2つの4トラック・テープ・レコーダをシンクロさせてレコーディングしたためにミックス作業に難航して、旧アルバムは疑似ステレオだった。リマスター盤(2009)にはオリジナル・モノ・ヴァージョンが初収録されている。

    ◎ All Together Now
    2本のアクースティック・ギターによるPaulの弾き語り曲。サビにはファブ・フォーだけでなく、スタジオに居合わせたスタッフなどのコーラスが入る。ハーモニカ、ホルン、トライアングル、ギロなどが入ったドラムレスの愉しい歌。徐々にテンポ・アップして行き、エンディングで手拍子や歓声(笑い声)が入ってパーティ気分を盛り上げる。アニメ映画用の曲ということで、Paulは子供たちにも歌えるような童謡風の歌詞やシンプルなメロディ、親しみやすいサウンドを意識したらしい。「ピノキオ」や「白雪姫」のような古典的で心温まるディズニー風のアニメ映画をイメージしていたPaulはサイケデリックでアーティスティックな『イエロー・サブマリン』に落胆したという。「子供向けの素晴しいアニメ」というPaulの希望は叶わなかったけれど、60年代後半の熱気を反映した傑作になった。Paulが気に入らなかったのはハインツ・エーデルマン(Heinz Edelmann)の描いた自分のキャラが他のメンバーよりも気味悪かったからではないでしょうか。

    ▢ Hey Bulldog
    1968年2月11日、ニュー・シングル〈Lady Madonna〉のプロモーション・ヴィデオを撮影する予定でスタジオ入りしたファブ・フォーは、その合間に新曲を1日で録音し終えてしまう。Johnのヴォーカルとピアノ、Paulのベースとコーラス、Georgeのギター、Ringoのドラムスによる豪快なロック・ナンバーで、ピアのやギターのリフがカッコ良いし、エンディングの犬の鳴き真似もクレイジーで騒がしい。『イエロー・サブマリン』のために提供した新曲の中では最も際立ったものだったが、映画では何故か「ヘイ・ブルドッグ」と呼ばれる4頭犬のシーンは最終的にカットされてしまい、リニューアル版(1999)で復活するまで「行方不明になったビートルズの曲」と言われていたという(犬の歌はあるのに「ネコ・ソング」がないのはネコ派のファンには残念なところですね。ファブ・フォーはLittle Willie Johnの〈Leave My Kitten Alone〉をカヴァしているけれど)。

    △ It's All Too Much
    「To your mam!」という掛け声に続いて、ギターのフィードバック・ノイズが空間を切り裂くイントロ‥‥Georgeのヴォーカルとギター、Johnのハモンド・オルガン、Paulのベース、Ringoのドラムスに外部ミュージシャンのトランペットやバスクラリネットを加えたサイケデリック・ロック。ノイジーなギター・ソロ、パーカッシヴなクラップハンド、変幻自在のドラミングなどが祝祭的なインナースペースを創り出す。〈All You Need Is Love〉と並び、映画『イエロー・サブマリン』の大団円に相応しい。6分を越える大作は過剰なまでに溢れ出る愛を謳う。君の瞳の中に光輝く愛を見つけて、内面世界を旅するという歌詞には65年のLSD体験や後のインド滞在中に行なうことになる瞑想修行に通じるものがある。アニメ映画に批判的だったPaulも子供向けではなく、Johnの〈Hey Bulldog〉やGeorge〈It's All Too Much〉のような楽曲を提供していれば、もう少し聴き応えのあるアルバムになったのではないかと惜しまれる。

    ▢ All You Need Is Love
    1967年6月25日、初の衛星中継TV番組「OUR WORLD」で、世界26ヵ国へ向けて演奏されたメッセージ・ソング。英国では12日後の7月7日に15枚目のシングルとしてリリースされた。「愛こそはすべて」という単純明快な歌詞に反して、Aメロは4/4と3/4が交互に繰り返される変則リズムになっている。Johnのハープシコード、Paulのダブルベース、Georgeのヴァイオリンにサックス、トロンボーン、トランペット、フリューゲルホルン、アコーディオンなどを配した編成。コーラスにはミック・ジャガー、キース・リチャーズ、キース・ムーン、マリアンヌ・フェイスフル、エリック・クラプトン、パティ・ハリソン、ジェーン・アッシャー(Jane Asher)、グレアム・ナッシュ、ハンター・デイヴィス(Hunter Davies)など豪華ゲストが参加している。イントロのフランス国家〈ラ・マルセイエーズ〉、エンディングのバッハ〈インヴェンション8番ヘ長調〉、グレン・ミラー〈イン・ザ・ムード〉、イングランド民謡〈グリーンスリーヴス〉、Johnの〈Yesterday〉と〈She Loves You〉を引用するジョージ・マーティンの編曲も愉しい。映画ではブルーミーニーズの秘密兵器「空飛ぶ手袋」(Flying Glove)との対決シーンで歌われる。

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    《Yellow Submarine Songtrack》(Apple 1999)はリニューアル版『イエロー・サブマリン』の公開に合せてリリースされた。いかにも中途半端だったサントラ盤の不備を30年後に刷新するものだった。旧アルバムのA面に収録されていた6曲に映画の中で使われた楽曲9曲を加えて、アビー・ロード・スタジオのピーター・コビン(Peter Cobin)がリミックス&デジタル・リマスタリングしている。たとえば〈Yellow Submarine〉の波の音が左右に流れ、〈Hey Bulldog〉の迫力が増し、〈Eleanor Rigby〉のヴォーカルは中央に定位する。〈Only A Northern Song〉もステレオ・ヴァージョンとなった。《Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band》や《Revolver》(1966)だけでなく、〈Nowhere Man〉〈Think For Yourself〉という《Rubber Soul》(1965)の収録曲も違和感なく並ぶ。ソングトラック盤を聴いていると、実写をコラージュした〈Eleanor Rigby〉や色彩が乱舞する〈Lucy In The Sky With Diamonds〉のアニメーションが今でも色褪せることなく脳裡に甦って来る。

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    • ▢ John Lennon ◎ Paul McCartney △ Geroge Harrison ☆ Ringo Starr

    • 〈Yellow Submarine〉と〈All You Need Is Love〉は再録(一部改稿)です

    • 『Yellow Submarine』(New English Library 1968)の日本語訳版は出ないの?
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    Yellow Submarine

    Yellow Submarine

    • Artist: The Beatles
    • Label: EMI
    • Date: 2009/09/09
    • Media: Audio CD
    • Songs: Yellow Submarine / Only A Northern Song / All Together Now / Hey Bulldog / It's All Too Much / All You Need Is Love // Pepperland / Sea Of Time / Sea Of Holes / Sea Of Monsters / March Of The Meanies / Pepperland Laid Waste / Yellow Submarine In Pepperland


    Yellow Submarine Songtrack

    Yellow Submarine Songtrack

    • Artist: The Beatles
    • Label: Capitol
    • Date: 2012/06/04
    • Media: Audio CD
    • Songs: Yellow Submarine / Hey Bulldog / Eleanor Rigby / Love You To / All Together Now / Lucy In The Sky With Diamonds / Think For Yourself / Sgt Pepper's Lonely Hearts Club Band / With A Little Help From My Friends / Baby You're A Rich Man / Only A Northern Song / All You N...eed Is Love / When I'm Sixty Four / Nowhere Man / It's All Too Much


    イエロー・サブマリン航海記

    イエロー・サブマリン航海記

    • 著者:ロバート・R・ヒエロニムス(Robert R. Hieronimus)/ 清川 幸美(訳)
    • 出版社:ブルース・インターアクションズ
    • 発売日:2006/09/22
    • メディア:単行本
    • 目次:『イエロー・サブマリン』はいかにして「穴の海」に消えたか / ビートルズは映画制作にほとんどかかわらなかった / まどろみの中から現れた「イエロー・サブマリン」は、大帝国を誕生させた /『イエロー・サブマリン』の真のデザイナー、ハインツ・エーデルマンに「イエロー・サブマリン・アートの父」の称号を / オール・トゥゲザー・ナウ──『...


    ザ・ビートルズ全曲バイブル ── 公式録音全213曲完全ガイド

    ザ・ビートルズ全曲バイブル ── 公式録音全213曲完全ガイド

    • 編者: 大人のロック!
    • 出版社:日経BP社
    • 発売日: 2009/12/07
    • メディア:ハードカヴァ
    • 目次:英米公式全作品の系譜 / 公式録音全213曲徹底ガイド(2トラックレコーディング時代〜ライヴ演奏スタイルでの録音/ 4トラックレコーディング時代 1〜アレンジの幅が広がりサウンドに深み / 4トラックレコーディング時代 2〜バンドの枠を超えた録音の始まり / 4トラックレコーディング時代 3 〜ロックを芸術の域に高める/ 8トラックレコーディング時代へ〜サウンドと作品の多様化 / 8トラックレコーディング時代〜原点回帰...と円熟のサウンド)/ 録音技術の変化と楽曲解析方法

    サイバー・キャット 15

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