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スニーズ・コメンツ #28

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  • ♭『真珠の耳飾りの少女』 隠された髪
    びっけさん、こんばんは。「Kitten Covers」は合成加工写真ですが、「CAT ART」はカンヴァスにアクリルで手描きしているので、全124点が完成するまで約5年もかかったそうです。「2人の有能な美人アシスタント」のサポートも見逃せませんね。2013年版「猫カレンダー」(求龍堂 2012)も出ちゃいました。
                              by sknys (2012-09-09 18:11)

    ♭ 09-09。
    こにゃさん、こんばんは。「地下帝国"ヨミ"編」は009シリーズの中の傑作ですね。地上から宇宙へ脱出するクライマックス、大気圏に突入するラスト‥‥。「ヨミ編」を劇場版アニメ化しても良かったくらい。紺野直幸の方が原作キャラに近いけれど、神山健治の「009」も悪くない。押井守の「引きこもり009」も見てみたいような。フランソワーズ(003)がミレーヌ(009-1)化しているという「巨乳疑惑」もありますが。
                              by sknys (2012-09-13 22:51)

    ♭ 山岸凉子先生 直筆サイン 当たりました! ── 対談を立ち読み
    トミー。さん、こんばんは。家宝が1つ増えましたね。「萩尾×山岸対談」の中でも、3・11の地震や原発事故に触れていますが、山岸邸は耐震構造になっているそうです。耐震設計になっていると反って揺れるみたい。崩れ落ちてきた千冊近い本で圧死した女性もいたように、家屋は倒壊しなくても倒れた家具の下敷きになって死んじゃうことも‥‥。
                              by sknys (2012-10-05 01:53)

    ♭ ミレーヌの憂鬱
    sekiさん、コメントありがとう。ヤフオクの「★激レアセット★009ノ1」を拝見しました。とても丁寧な出品紹介で好感が持てます。Vol.3は持っているのですが、Vol.1 & 2は初めて見ました。3冊共、40年以上前に発売された「雑誌」なので、経年劣化していて当然ですね(1967年創刊のCOMも黄ばんで脆くなっている)。漫画アクションコミックス版の「009ノ1」はカラー頁も含めて資料的な価値も高いと思います。「石ノ森章太郎萬画大全集」がショボいというか‥‥。
                              by sknys (2012-10-06 15:01)

    ♭ シャルロット・ゲンズブールの新曲
    ぶーけさん、こんにちは。《Stage Whisper》(Because 2011)はBeckがプロデュースしたアルバム《IRM》(2009)の未発表曲にライヴ音源を加えた編集盤ですね。オリジナル・アルバムは全曲英語で歌っていたはず。2CD+DVDの限定盤もリリースされているようです。3・11直後、自腹で急遽来日して震災復興支援活動(無料ライヴやチャリティなど)したジェーン・Bをシャルロットは思い留めようとしたというけれど、娘も一緒に連れて来い!‥‥みたいな。
                              by sknys (2012-10-06 16:08)

    ♭ 猫画像で癒される II ──「トラックバックされていたネコ動画」
    トミー。さん、こんばんは。「Cat Game fail !」はネコ版の「トムとジェリー」みたいですね。「フォークを使って食べるネコ」(Kitty Eats with Fork)は眉唾ですが、同じ投稿者による「Kitty Plays Fetch」は愉しいにゃん。
                              by sknys (2012-10-17 23:24)

    ♭ ぐんまちゃん!ぐんまちゃん!!ぐんまちゃん!!!
    こにゃさん、こんばんは。ゆるキャラの季節は酷暑の夏が終わってからですね。「元祖ゆるキャラ」だったのか!‥‥ごめんね、ぐんまちゃん(註:「ゆるキャラグランプリ 2012」のベスト3はバリィさん、ちょるる、ぐんまちゃん)
                              by sknys (2012-10-20 22:21)

    ♭ 国書刊行会40周年フェア
    池袋はリブロもジュンクも終了!‥‥出遅れてしまいましたが、某ブックファーストで小冊子をゲット。「私が選ぶ国書刊行会の3冊」をリストアップしておきます。
    ヴァージニア・ウルフの『オーランドー』なども入れたかったけれど、「ちくま文庫」で復刊(筑摩書房 1998)したので、有り難みが薄いなぁ。女性監督サリー・ポッター(Sally Potter)が撮った映画「オルランド」(Orlando 1992)も面白かったよね。
                              by sknys (2012-10-22 00:15)

    ♭ 10月の読書メーター
    miyucoさん、こんばんは。『子どもたちは夜と遊ぶ』(講談社 2005)は面白そうだなぁ。今度読んでみようかな?‥‥『ちびねこ絵本 くりまん』(白泉社 2011)は去年出てたんですよね。『10月の少女たち』(小学館文庫 2012)は初期短編集第2弾。「COM」(1971年10月号)に掲載された表題作(「火の鳥」の穴埋めだった!)は編集長の引き出しに入っていたボツ原稿だったんだって?‥‥10月にリブロ池袋に行ったら、女の子のための、こわ〜い文芸誌「Mei」創刊号が並んでいた。辻村深月「丘の上」、山岸凉子「猫・ねこ・ネコ」豪華40ページ!‥‥読みたいにゃあ。
                              by sknys (2012-11-11 23:08)

    ♭ デイリー・メールに紹介された日本人写真家の作品 ──「Odd-eyed feline friend」
    トミー。さん、こんばんは。お婆さんとネコの2ショットが良いなぁ。人と猫との「交感」というか、目に見えない繋がりが強く感じられます。黒ネコは時々見かけますが、真っ白いネコに外で出合ったことは殆どありません。木場公園のベンチの上にいた「美白ネコ」は綺麗だった。
                              by sknys (2012-11-19 22:41)

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    ブログ記事に付けた「外コメント」を纏めてみたら結構面白いかも?‥‥というアイディアから生まれた再録シリーズの第28集です。コメントは原則としてオリジナルのまま時系列順に転載‥‥事実誤認(誤記)や誤字・脱字、改行の無効化、句読点や記号・顔文字の有無などを精査。内容の分かり難いコメントには補足説明(註)を加え、コメントした元記事にリンクしました。過去3ヵ月間(2012/09/01〜2012/11/30)に書いたものの中から、第三者がコメントだけ読んでも面白いものを中心にセレクトしています。例外として「内コメント」を1つだけ掲載しました。11月にタワレコ渋谷がリニューアル・オープン、iTunes 11も月末に公式リリースされましたが、リアル店舗が見(探し)難くなって、ヴァーチャル・ストアが見(使い)易くなったのは皮肉なことですね。ひょっとすると、iTunesからCDのリッピング機能がなくなるのではという危惧は杞憂に終わった。〈魔女たちの饗宴〉で紹介し、〈ハッカー河童〉の回文ネタにも使ったLaurel Haloの《Quarantine》(Hyperdub 2012)が英WIREの年間アルバム第1位に選ばれるとは!

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    Stage Whisper

    Stage Whisper

    • Artist: Charlotte Gainsbourg
    • Label: Elektra / Wea
    • Date: 2011/12/13
    • Media: Audio CD
    • Songs: Terrible Angels / Paradisco / All The Rain / White Telephone / Anna / Got To Let Go / Out Of Touch / Memoir / IRM (Live) / Set Yourself On Fire (Live) / Jamais (Live) / Heaven Can Wait (Live) / In The End (Live) / AF607105 (Live) / Just Like A Woman (Live) / ...The Operation (Live) / The Songs That We Sing (Live) / Voyage (Live) / Trick Pony (Live)


    子どもたちは夜と遊ぶ(上)

    子どもたちは夜と遊ぶ(上)

    • 著者:辻村 深月
    • 出版社:講談社
    • 発売日:2005/05/10
    • メディア:新書
    • 目次:フラッシュバック / 狐塚と浅葱 / ぐりとぐら / 蝶とキャベツ / 月と萩 / アイとシータ


    ちびねこ絵本 くりまん

    ちびねこ絵本 くりまん

    • 著者:大島 弓子
    • 出版社:白泉社
    • 発売日:2011/11/15
    • メディア:文庫
    • 目次:おきゃくさまのキス / せいでんき / くびわ / かがみ / しっぽ ある?/ なわばりあらそい / キアヌ やられる / キアヌの エリザベスカラー / のらねこ せっけん / ひげの てんきよほう / みんな おひるね / あかちゃん あらわる / ちびねこママ / ぶじ とうちゃく / みんな おなかが すいている / おとこのこ? おんなのこ?/ あかちゃんは じぶんで うんちが...


    10月の少女たち

    10月の少女たち

    • 著者:萩尾 望都
    • 出版社:小学館
    • 発売日:2012/10/13
    • メディア:文庫
    • 目次:10月の少女たち / みつくにの娘 / 精霊狩り / ドアの中のわたしの息子 / みんなでお茶を / 千本めのピン / プシキャット・プシキャット / 赤ッ毛のいとこ / 花と光の中 / あそび玉 / 影のない森 / 十年目の毬絵 / デクノボウ / 砂漠の幻影 / 神殿の少女 / 月蝕 // essay 吾妻ひでお

    スニーズ・シンクス 2 0 1 2

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  • ステンシルはこつこつといつものように探索する手を止めて、今もし生きていたら76歳になっている彼女の姿を思い浮かべてみた。──何か新しいプラスチックでこしらえられた色つやのよい皮膚、両眼はガラス製で光電管が埋め込まれており、それが純銅線でできた視神経に銀電極で連結されている。そして、その視神経はダイオード組織によって最高度に精妙にできた脳につながっている。ソレノード中継点が彼女の神経節で、サーボ発電機が彼女の非の打どころのないナイロン製の四肢を動かし、作動油がプラチナ製の心臓ポンプによって酪酸塩の動脈と静脈に送り込まれているのだろう。おそらく──ステンシルも「全病連」の連中と同様、時には下品な想像をすることがあった──ポリエチレン製の見事な膣には完全な圧力変換装置さえもはめ込まれていることだろう。その装置のホイーストン・ブリッジの腕部はすべて1本の銀線につながれていてそれが彼女の頭骸に埋め込まれた計数器の正確な記録計に直接快楽電圧を供給する。
    トマス・ピンチョン「恋するV.」


  • 7年目のスニンクス(sknynx)は59件の記事をアップした(2011.12~2012.11)。月5回というスローペースのブログだが、昨今の月日の流れは地球の自転・公転が高速化しているのではないかと疑うくらいに早い。何も出来ずに右往左往している間に年の瀬を迎えてしまったという焦燥感や虚無感に苛まれる。スローライフだから相対的に外界の動向が速く感じられるのか、それともスピードアップすれば逆に止まって見えるのか‥‥。「不思議な少年」のように一瞬でも時を止めることが出来たらと想うけれど、十代の頃の時間はウンザリするほど退屈で遅々として進まなかった。記憶の中の過去はスローモーション化してしまうのだろうか。スニンクスは8月に記事400件となったけれど、思ったほどの達成感はない。1つ1つの記事を深く掘って構築しないと時間の洪水に流されて、大津波の後の陸地のように何も残らないのではないかと危惧する。この7年間に消えて行ったブロガーや記事も少なくないのだから。もちろん、残す価値があるのか?‥‥という根源的な問いかけも聞こえて来るけれど。

    回文シリーズは〈逃げた花畑に〉〈花粉撒布か?〉〈服毒6度9分〉〈貧相ゾンビ〉の4件をアップ。9月に300回文を達成し、スピンオフ的な「なぞなぞ回文」も30回となった。フルネーム回文やネコ回文は意識的に作っているが、改めて見直すと時事ネタやロンドン五輪を題材にした回文だけでなく、ブログ記事から派生したものも多数含まれていることに気づく。回文(言葉遊び)は、ある意味で無意識裡の産物なので、その時に考えていたことや興味ある事象などが色濃く反映される。ベラドンナ、オリンパス、なでしこジャパン、ツイッター、アップル、都市伝説、スヌーピー、スピネッタ、マウンテン・ライオン、いけふくろう、くノ一、ヒカリエ、おかしなあの子、ドログバ、ビョーク、リオデジャネイロ、ロベルト、クリンゴン‥‥1年以上を経ても、3・11を想わせる回文が入っていることにも驚く。「回文と本文はフィクションです」と断っているけれど、浮世離れしたようなストーリには同時代エッセイ風の色合いもあるわけだ。

    石ノ森シリーズは〈魔法世界のジュン〉〈千の目を持つ女〉〈幻魔大戦前夜〉〈サイボーグ 009〉の4作をアップした。「ジュン」はCOMの連載後も掲載誌を変え、主人公の年齢を下げて描き継がれた。マンガの枠組みを解体して表現を広げた実験的作品は40年の歳月を経て高く評価されている。「千の目先生」は女子高に赴任して来た女教師が活躍する超能力学園もの。少女誌の連載ということもあってか、ヒロインも美しく理想的な女性として描かれている。「幻魔大戦」は続編が「新幻魔大戦」としてSF誌に連載された後、平井和正の原作から離れ、新構想の下で再び少年誌に掲載された。〈サイボーグ 009〉は「ミュートス・サイボーグ編」までで、名作の誉れ高い「地下帝国ヨミ編」以降は今後順次アップして行く予定。同郷の後輩・大友克洋も発言していたように、石森章太郎のSFは「超能力」と切っても切れない関係にある。「ジュン」は超能力少女がジュンに見せる夢や幻覚のようでもあるし、「009」の最強ゼロゼロナンバーは001である。死んだ後も残留思念となって弟の身を護る姉の強烈なイメージは大友克洋の「Fire-ball」にも投影されているはずである。

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    年間ベスト・アルバム10(rewind)を休止して始めた「ファブ・フォー」はThe Beatlesのオリジナル・アルバム(14枚)を解説して行く新シリーズ。試聴アルバムは最新リマスターCD(2009)を使用しているが、読むべきファブ・フォー関連の資料が多すぎて、思った以上に時間がかかる。レコーディングの詳細については主に『ザ・ビートルズ全曲バイブル』(日経BP社 2009)を参照している。どの解説本や回想録も同じようなエピソードが語られているものの、細部で微妙に異なるところが悩ましい。〈白いアルバム〉〈魔法不思議旅〉〈胡椒軍曹倶楽部楽団〉〈修道院通り〉‥‥というように、記事タイトルは原題を直訳した日本語になっている。デビュー50周年の2012年はアニメ映画『Yellow Submarine』やTV映画『Magical Mystery Tour』のデジタル・リストア版DVD&Blu-rayが出たり、2009年リマスター盤のアナログBOX(14枚組)がリリースされたりと、ファブ・フォーの話題に事欠かない(日本では深夜枠で「Magical Mystery Tour」などもTV放映された)。

    iTunes(11.0)が10月30日に公式リリースされた。アルバム・カヴァが横に並ぶ外観、サイドバーを隠したシンプルなアピアランスはOSX(10.7)以降に準じるもので、完全な刷新リニューアルである(Lionのファインダと同じく、サイドバーを表示させることも可能)。シングル盤のように1曲ずつ聴くのには不向きだが、アルバム単位で管理するのに適している。アルバム・カヴァの色合いに応じて文字色や背景色が変化するなど、アップルらしい洒落たギミックに満ちているし、新ミニ・プレイヤの横幅も3段階に可変出来るなど細部にも凝った洗練されたデザインになっている。イコライザ設定のサウンドも変わったような気もするけれど、「Perfect」と称されるデフォルト(Manual)の設定をプリセットしておくと良いかもしれない。iTunesストアで曲を購入することはないが、全曲試聴(Preview All)にしてミニ・プレイヤだけをデスクトップに表示しておくだけで、アルバム1枚を約十数分間で聴くことが出来る。さらに日本以外の国に設定することで、英米だけでなくフランス、ブラジル、ギリシャ‥‥など、世界各国の音楽を自由に試聴可能となる。

    年末恒例の愉しみの1つは英米各メディアが発表する年間ベスト・アルバムにある。NMEやSPINなどの音楽誌、Pitchforkに代表される音楽サイト、iTunesやAmazonなどの配信・通販サイト、TVやラジオ局、さらに新聞各紙や一般誌なども加わって百花繚乱の賑わい。これほどまでに多種多様なメディアの年間ベスト・アルバムを一望に俯瞰出来るのはネットならではの恩恵だと思う(本来ならば雑誌を購入しなければ分からない紙媒体のチャートも公開されている)。各メディアの年間ベスト・アルバムを集計して総合的な順位をつける音楽サイトさえあるのだ。英WIREの年間ベスト1に驚いたり、英Guardianの小出しベスト10に苛立ったり‥‥個人的なベスト10(Rewind 2012)の選出に悩みながら、慌ただしい年の瀬に各メディアのリストを矯めつ眇めつ眺めるのも愉しい。上位に選ばれたアルバムから逆に各サイトの嗜好が分かったりもする。もちろん、未聴・未入手のアルバムを発見して、リアル店舗に走ることも少なくないのだが。

      Beats Per Minute's Top 10 Albums Of 2012
    • Flying Lotus - Until The Quiet Comes
    • Chromatics - Kill For Love
    • Andy Stott - Luxury Problems
    • Frank Ocean - Channel Orange
    • Tame Impala - Lonerism
    • Jens Lekman - I Know What Love Isn't
    • Kendrick Lamar - good kid, m.A.A.d. city
    • How To Dress Well - Total Loss
    • Julia Holter - Ekstasis
    • Swans - The Seer




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    ネコ関連(cat's cradle)では〈猫のアート〉(necord)1つしかアップ出来なかったのは心残りだが、「キトゥン・カヴァーズ」「キャット・アート」という2つの猫パロディ集を紹介した。名アルバムや名画の中でポーズするネコたちの姿を見るのは愉しい。ネコ写真はミラーレス一眼に買い替えてから撮影時間の幅も広がり(暗闇でも撮れる高感度番長)、順調に撮れている。旧サイバー・ショットで撮ったネコ写真(9枚)を蔵出し初公開する「サイバー・キャット」も毎月末に掲載中。「ネコ・ログ」で紹介している都会のネコたちも延べ240匹を越えた。3・11後、ネコという愛すべき小動物が、この世界に存在していて本当に良かったと思う。もしネコが地球から1匹もいなくなったとしたら、色彩が失われたモノトーンの世界になったように感じるだろう。もちろんネコではなく、犬でも兎でも猿でもパンダでもコアラでも良いのだが、人間が動物(ペット)たちによって癒される時代に生きていることを深く実感する。長年連れ添った亭主ではなく、ペットと一緒の墓に入りたいと切望する既婚女性の気持ちも分からなくない。

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    V. 2

    V. 2

    • 著者:トマス・ピンチョン / 三宅 卓雄・伊藤貞基・中川ゆきこ・広瀬英一・中村紘一(訳)
    • 出版社:国書刊行会
    • 発売日:1989/07/01
    • メディア:単行本
    • 目次:さまざまな若者同志のつどい / ファウスト・メイストラルの告白 / あまり面白いことも起こらない / ヨーヨーの紐は精神の状態と分ること / 恋するV. / さよなら(サーハ)/ ヴァレッタ / エピローグ 1919年


    s k n y s - s y n k s

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    • Author: sknys
    • Articles: 423
    • Page View: 1,350,224
    • Date: 2012/12/16
    • Media: Internet

    兎男のクリスマス 2

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  • その日の午後、兎男は町のはずれにある兎博士の家を訪ねてみたが、そこにはもう兎博士の家はなかった。ただ空き地があるだけだった。兎のかたちをした植木も、門柱も、敷石も、みんな消えていた。/「僕はもう2度とあの人たちには会えないんだな」と兎男は思った。「2人のつむじ曲がりにも、003と009-1のサイボーグ姉妹にも、海カモメの奥さんにも、ムツンバイにも、兎博士にも、聖兎上人にも」/ そう思うと兎男の目から涙がこぼれた。兎男はみんなのことをとても好きになっていたのだ。/ 下宿に戻ると、兎の絵のクリスマス・カードが1枚郵便受けに入っていた。/ そこには「兎世界がいつまでも平和で幸せでありますように」と書いてあった。
    「帰って来た兎男のクリスマス」


  • ◎ Silver & Gold(Asthmatic Kitty 2012)Sufjan Stevens
  • 兎男のニュー・アルバムは《Songs For Christmas》(2006)と同じく、5枚組BOXでリリースされた。第2集(Vol. 6~10)には2006年から2010年に録音された5年分のXmasソング全58曲、家族やファンのために作ったプライヴェート・アルバム(5CD EPs)が収録されている。ボックスにはCDだけではなく、ステッカー&タトゥー・シール各4種、手作りオーナメント(DIY Ornament)、特大モノクロ・ポスター、豪華ブックレット(歌詞&コード、自筆エッセイ、ライナーノーツなど全84頁)が同梱されている。キッチュで猥雑で気味悪くもあるアメコミ風のアートワーク(「クリスマス。」「フーパー」「ハーピー」という日本語もある)がハッピーで愉しいだけではない「聖夜」を暗示する。Sufjan Stevensによって再解釈・再構築されたXmasソング集‥‥そこが師走の街に溢れている凡百の狂騒的で享楽的で空疎なXmasアルバムとの大きな違いだろう。

    《Gloria》(Songs For Christmas Vol. 6)には全8曲のXmasソングが入っているが、オープニングの〈きよしこの夜〉(Silent Night)からして、ミュージカル・ソーが不気味な旋律を奏でる怪しげな雰囲気に包まれる。子供たちへのXmasプレゼントが詰まった白い袋を背負った善良そうなサンタクロースではなく、まるで幽霊やバケモノやゾンビたちが現われるB級ホラー映画の不吉な前兆のように。酒場で踊るダンスのように陽気で騒がしいカントリー&ウェスタン風の〈Lumberjack Christmas〉。ヴァイオリンやミュージカル・ソーの音色が郷愁を誘う3拍子の〈Coventry Carol〉。バンジョーやヴィブラフォンが軽快に鳴り響く5拍子の〈The Midnight Clear〉。インスト曲の〈Go Nightly Cares〉。暗鬱なバラード・ソングの〈Barcarola (You Must Be A Christmas Tree)〉‥‥オリジナルの4曲はAaron & Bryce Dessner兄弟(The National)との共作、Richard Parry(Arcade Fire)も参加している。ラストの〈Auld Lang Syne〉は〈螢の光〉の原曲である。

    《I Am Santa's Helper》(Vol. 7)は全23曲、約43分というフル・アルバム並みのヴォリュームがある。Sufjan Stevensのオリジナル・ソングが10曲も収録されていることからも、カヴァ曲中心のXmasアルバムからは突出している。8曲のインスト・ナンバーを含めて1〜2分の短い曲が続くが、5拍子のファンク・ロック〈Christmas Woman〉、Weenみたいな変態ロックの〈Happy Family Christmas〉、ノイジー・ギターが騒がしい〈Ding-A-Ling-A-Ring-A-Ling〉、アイスクリームとYo La Tengoが好きなスノーマンの歌〈Mr. Frosty Man〉(ゾンビ集団に襲われた家族をスノーマンが救けるスプラッタ・ホラー・クレイ・アニメPVも強烈!)などのオリジナル曲はロック色が濃く、インストにはエレクトロニカの趣きもある。〈Ah Holy Jesus〉はリード・オルガンやアカペラなど3ヴァージョン、Xmas定番ソングの〈Jingle Bells〉〈We Wish You A Merry Christmas〉もロックっぽいアレンジで入っている。

    《Christmas Infinity Voyage》(Vol. 8)は一転してエレクトロニック色が濃い。全9曲なのに演奏時間が46分以上もあるのは2つの長尺曲が入っているからで、エレクトロ・ポップに大胆アレンジされたノエル・レグニー&グロリア・シャイン(Noel Regney & Gloria Shayne)のXmasソング〈Do You Hear What I Hear?〉ではロボ声(オートチューン)も聴けるし、15分を超えるオリジナル曲〈The Child With The Star On His Head〉の後半はギター・インプロヴィゼーションや混沌としたエレクトロ・ドローンと化して行く。インスト・テクノの〈It Came Upon The Midnight Clear〉やヒップホップ化したプリンス殿下の〈Alphabet St.〉まで登場するのだ。Xmasの定番ソング〈Joy To The World〉の後半もエレクトロ・ポップ化!‥‥コンピュータ・ゲームっぽい効果音まで聴こえて来る。サウンド面では《The Age Of Adz》(2010)と重なる部分も少なくない。Xmasパーティで無邪気に踊りたいのなら迷うことなく、このアルバムを選ぶべきでしょう。

    《Let It Snow》(Vol. 9)は全9曲(21分)、Sufjan Stevensのオリジナルも1曲と、大判振る舞いの「Vol. 7」や「Vol. 8」に較べると少々もの足りないけれど、これがEP盤の本来あるべき姿なのかもしれない。〈サンタが街にやってくる〉(Santa Claus Is Coming To Town)〈Sleigh Ride〉〈Ave Maria〉など、Xmasの定番ソングもカヴァされているし、ミニ・アルバムとして遜色ない。唯一のオリジナル曲〈X-mas Spirit Catcher〉は彼のソロ・アルバムに入っていても違和感のない出来で、いつもの心躍るスフィアン・ワールドを愉しめる。オリジナル・ソングの少なさを埋め合わせるかのようにレコーディング・メンバー、Cat Martino(彼女は〈Ave Maria〉も歌っている)とSebastian Krueger(ドイツ人画家)の書いたオリジナル曲が2曲入っている。2009年のSufjan Stevensはニュー・アルバムのレコーディングで忙しかったのだろうか。

    《Christmas Unicorn》(Vol. 10)は全9曲中、Sufjan Stevensのオリジナル・ソングは2曲のみ。アナログ・シンセがブヒブヒと唸るカヴァ曲〈Have Yourself A Merry Little Christmas〉。「Vol. 8」にも収録されていた〈It Came Upon The Midnight Clear〉の再演。Vesper Stamper(女性イラストレータ)が参加した〈Up On The Housetop〉はヒップホップ〜ファンクにアレンジされている。しかし、このアルバムというか5枚組ボックス・セット最大のサプライズは12分を超えるタイトル・ナンバー〈Christmas Unicorn〉の後半で突然乱入して来る〈Love Will Tear Us Apart〉ではないかしら。Xmasソングの中にJoy Divisionの代表曲、それもIan Curtisの自殺と密接な関係にある曲が引用(サンプリング)されているなんて!‥‥リスナーの多くは意表を衝く最後のドンデン返しに大笑いしたんじゃないか。もちろん、悲しすぎて歌えないというロック・ファンも少なからずいるかもしれないけれど。

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  • ◎ The Age Of Adz(Asthmatic Kitty 2010)
  • 全米50州シリーズはジョークだった!?‥‥5年振りのニュー・アルバムはエレクトロニカ色が濃い。馴れ親しんだ軽やかなバンジョーやヴィブラフォンの音色も殆ど聴こえないし、ギターもノイジーで歪んでいる。歌詞や演奏楽器類などの記載も一切省かれている(歌詞や楽器は気にしなくても良いというメッセージなのかもしれない)。《Michigan》(2003)や《Illinoise》(2005)という州に纏わる過去の歴史を掘り起こし、現代と対比させる重層・横断的な世界を期待したリスナーは困惑するかもしれない。〈I Want To Be Well〉は変則7〜5拍子、ラストの〈Impossible Soul〉は25分に及ぶ組曲風の大作。スフィアン流に解釈されたエレクトロ・ソウル・ミュージックという側面もある。アルバム・カヴァとブックレット(12頁)は米黒人画家ロイヤル・ロバートソン(Royal Robertson)のアートワークで彩られている。27人以上の若者たちを殺害した連続殺人魔と「僕は良く似ている」と歌った青年が特異な黒人画家と自己を合せ鏡のように重ねている。

  • ◎ All Delighted People(Asthmatic Kitty 2010)
  • デジタル配信のみだった8曲入り「EP」をアルバム化したもので、《The Age Of Adz》に先立ってリリースされた(2枚組アナログ盤のD面にはナタリー・ポートマン監督の短篇映画「Eve」のサントラ11曲が収められている)。「EP」とタイトルにあるものの、約60分というヴォリューム。Sufjan Stevensにとっての「EP」は収録曲数や演奏時間の長さではなく、オリジナル・アルバムとの違いを際立たせるための表記に過ぎないのだろう。〈Sound Of Silence〉の歌詞を引用したというタイトル・ソング〈All Delighted People〉は11分を超えるオリジナルと8分の2ヴァージョンを収録。コーラスと速弾きギター・ソロが延々と続く〈Djohariah〉は17分に及ぶ。これらの曲も含めて、生楽器を主体にしたメランコリックでアンニュイなサウンドになってる。5年振りのニュー・アルバムに向けての露払い(ミスディレクション?)的なアルバムでしょうか。

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  • ◎ The BQE(Asthmatic Kitty 2009)
  • NYブルックリンのオペラハウス「BAM」(Brooklyn Academy Of Music)で毎年開催されている「Next Wave Festival」の25周年記念の企画として3日間(2007.11.1~3)上演されたヴィデオ・アート「The BQE」の音楽と映像を新たに再録音・再編集してリリースされた2枚組アルバム(CD+DVD)。「The BQE」とは、渋滞や醜い景観で悪名高い高速道路「Brooklyn-Queens Expressway」の略称。音楽はトロンボーン、クラリネット、アップライト・ベース、ギター、トランペット、ヴィオラ、チェロ、フルート、ピッコロ、バスーン、フレンチ・ホルン‥‥などのオーケストラにエレクトロ・サウンドが混じるインスト作品で、インターリュードを挿んだ組曲風の構成(全13曲)になっている。約50分の映像は3面マルチ・スクリーンに高速道路一帯の風景とフラフープを巧みに操る3人娘の姿が映し出される。回転するフラフープと走行するクルマの車輪がシンクロする。上下に黒い幕が出てしまう横長画面は家庭用のパソコンやTVモニタで鑑賞するのには不向きだが、音楽そのものは愉しめる。ヴォーカル入りの〈The Sleeping Red Wolves〉はCD未収録なのだ。

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    Silver & Gold

    Silver & Gold

    • Artist: Sufjan Stevens
    • Label: Asthmatic Kitty
    • Date: 2012/11/13
    • Media: Audio CD(5CDS)
    • Songs: Silent Night / Lumberjack Christmas/No One Can Save You From Christmases Past / Coventry Carol / The Midnight Clear / Carol Of St. Benjamin The Bearded One/Go Nightly Cares / Barcarola (You Must Be A Christmas Tree) / Auld Lang Syne // Christ The Lord is Born / ...


    The Age of Adz

    The Age of Adz

    • Artist: Sufjan Stevens
    • Label: Asthmatic Kitty
    • Date: 2010/10/12
    • Media: Audio CD
    • Songs: Futile Devices / Too Much / Age Of Adz / I Walked / Now That I'm Older / Get Real Get Right / Bad Communication / Vesuvius / All for Myself / I Want To Be Well / Impossible Soul


    All Delighted People EP

    All Delighted People EP

    • Artist: Sufjan Stevens
    • Label: Asthmatic Kitty
    • Date: 2010/12/27
    • Media: Audio CD
    • Songs: All Delighted People (Original Version) / Enchanting Ghost / Heirloom / From The Mouth Of Gabriel / The Owl And The Tanager / All Delighted People (Classic Rock Version) / Arnika / Djohariah


    The BQE

    The BQE

    • Artist: Sufjan Stevens
    • Label: Asthmatic Kitty
    • Date: 2009/10/20
    • Media: Audio CD(CD+DVD)
    • Songs: Prelude On the Esplanade / Introductory Fanfare For The Hooper Heroes / Movement I: In The Countenance Of Kings / Movement II: Sleeping Invader / InterludeI: Dream Sequence In Subi Circumnavigation / Movement III: Linear Tableau With Intersecting ... Surprise / Movement IV: Traffic Shock / Movement V: Self-Organizing Emergent Patterns / Interlude II: Subi Power Waltz / Interlude III Invisible Accidents / Movement VI: Isorhythmic Night Dance With Interchanges / Movement VII (Finale): The Emperor Of Centrifuge / Postlude Critical Mass

    サイバー・キャット 9

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    • 旧サイバー・ショット(Cyber-shot DSC-P8)で撮ったネコ・アルバム集です

    • 第9弾はチビ猫のトミーちゃん。未発表ショット(6枚)も蔵出し初公開!^^;
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    ヘビ旅へ(回文かるた 2 0 1 3)

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     あ アプリ売りプア あぷりうりぷあ
     い 囲碁は5位 いごはごい
     う 姥桜 蕁麻這う うばざくらいらくさはう
     え 選り抜き塗り絵 えりぬきぬりえ
     お お知らせラジオ おしらせらじお
     か 花粉撒布か? かふんさんぷか
     き 綺麗・恋歴 きれいこいれき
     く クラウドで道楽 くらうどでどうらく
     け 下卑た髭 げびたひげ
     こ コレクター抱くLEGO これくたーだくれご
     さ 3km 銀座 さんきろぎんざ
     し 4月懐かし しがつなつかし
     す Suica 迂回す すいかうかいす
     せ 背中怪我なぜ? せなかけがなぜ
     そ 束縛はクソ! そくばくはくそ
     た 太鼓 羽子板 たいこはごいた
     ち 乳首・指・口 ちくびゆびくち
     つ 通学 僕が鬱 つうがくぼくがうつ
     て 手が逆手 てがさかて
     と 冬瓜買うと‥‥ とうがんかうと
     な 名高い良い刀 なだかいよいかたな
     に 新妻ママついに! にいづまままついに
     ぬ 脱げた肩が抱けぬ ぬげたかたがだけぬ
     ね 根掘り尾根下り骨 ねほりおねおりほね
     の 農家で飼うの? のうかでかうの
     は ハッカー河童 はっかーかっぱ
     ひ 貧相ゾンビ ひんそうぞんび
     ふ 服毒6度9分 ふくどくろくどくぶ
     へ 兵隊は敗退へ へいたいははいたいへ
     ほ 朗らかだから夏帆 ほがらかだからかほ
     ま 真面目さん・鮫島 まじめさんさめじま
     み ミス猫 婿ネズミ みすねこむこねずみ
     む 娘・嫁 棲む むすめよめすむ
     め メル友 メモ取る目 めるともめもとるめ
     も 藻掻く浮く鴨 / もがく浮くかも? もがくうくかも
     や 夜間 蚊帳 やかんかや
     い 悪戯「カァカァ」カラス隊 いたずらかぁかぁからすたい
     ゆ 湯がく蛸 炊く粥 ゆがくたこたくかゆ
     え エチケット言づけ知恵 えちけっとことづけちえ
     よ 妖魔が舞う夜 ようまがまうよ
     ら ラジカルかしら? らじかるかしら
     り リストラと掏摸 りすとらとすり
     る 流転 虎 空飛んでる るてんとらそらとんでる
     れ レディV 照れ れでぃゔいてれ
     ろ ロボット 罅1つ ボロ ろぼっとひびひとつぼろ
     わ 戦慄き 好きな縄 わななきすきななわ
     ゐ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
     う 裏技 嘲笑う うらわざあざわらう
     ゑ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 
     を ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 
     ん ん千円?‥‥禁煙 禅 んぜんえんきんえんぜん

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    • 回文かるたはフィクションです。一部で実名も登場しますが、該当者を故意に誹謗・中傷するものではありません。純粋な「言葉遊び」として愉しんで下さい

    • 7周年記念正月恒例企画「回文かるた 2013」です。タイトルを含めて50作。回文にコメントは付けないので、読者各自で想像力を脹らませてね^^

    • 絵札のイラスト「緑へびさん・巳年」「いらすとや」から借用しました
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    びたびへヘビ旅へ(回文かるた 2013)

    ヘビ旅へ(回文かるた 2013)

    • Author: sknys
    • Provider: So-net
    • Date: 2013/01/01
    • Media: Palind-carta
    • Palta: アプリ売りプア / 囲碁は5位 / 姥桜 蕁麻這う / 選り抜き塗り絵 / お知らせラジオ / 花粉撒布か?/ 綺麗・恋歴 / クラウドで道楽 / 下卑た髭 / コレクター抱くLEGO / 3km銀座 / 4月懐かし / Suica 迂回す / 背中怪我なぜ?/ 束縛はクソ!/ 太鼓 羽子板 / 乳首・指・口 / 通学 僕が鬱 / 手が逆手 / 冬瓜買うと‥‥ / 名高い刀 / 妻ママついに!/ 脱げた肩が抱けぬ / 根掘り尾根下り骨 / 農家で飼うの?/ ...

    子猫の予言者(2 0 1 2)

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  • ◎ NOVAS LENDAS DA ETNIA TOSHI BABAA(Coqueiro Verde)Mundo Livre s/a
  • Fred 04(Zeroquatro)率いる「有限会社・自由世界」の6thアルバム。《Babadogroove Vol.1》(Monstro 2005)は7曲入りミニ・アルバム、《Combat Samba》(Deckdisc 2008)はCarlos Eduardo Mirandaの選曲によるベスト盤(新曲1曲を含む全14曲)だったから、実に8年振りのフル・アルバムとなる。南米アマゾンの未開部族とインターネット時代が混じり合ったようなモノクロ・イラストや「トシ・ババア族の新しい伝説」というタイトルからは「著作権侵害」をSF寓話的に批判するコンセプト・アルバムの趣きもある。エレクトロ・サンバ・ファンク・ロックに脱力ヴォイスという基本路線は不変不朽だが、マンギ・ビートにコクと深みが増した。「コーヒー・ルンバ」(Moliendo Cafe)を〈Eduarda Fissura Do Atomo〉の中で引用し、Silvia Macheteが〈O Varao E A Fadinha〉にゲスト・ヴォーカルで参加するなど‥‥捻りも諧謔も効いている(Mundo Livre s/aの過去のアルバムについては〈コンバット・サンバ〉を参照)

  • ◎ EKSTASIS(Rvng International)Julia Holter
  • Laurie Andersonの姪、それともJulianna Barwickの双子姉妹なのか?‥‥米ロサンゼルス出身のSSW、マルチ奏者の2ndアルバムは夢幻的なエレクトロニカでリスナーを魅惑する。可愛らしいヴォーカルとキーボードに、ヴィオラ、クラリネット、アルト・サックスなどが響く異世界へのトリップ。Julia Holterの神秘的なヴォイスは妖精の囀りにも、セレーンの誘惑にも聴こえる。カナダの詩人アン・カーソンのエッセイ集から採ったというアルバム・タイトルの〈Ekstasis〉はギリシャ語の「to be outside of oneself」という「ecstasy」本来の意味を思い出させもする。彼女の歌声に導かれたリスナーは幽体離脱して、鬱蒼とした森や深淵なる海の中を浮游するのだ。〈Goddess Eyes I〉でエウリピデスの『ヒッポリュトス』(Hippolytus)、〈Our Sorrows〉でヴァージニア・ウルフの『波』(The Waves 1931)、〈Moni Mon Amie〉でアメリカ詩人フランク・オハラの詩を引用するなど、ただ者ではないオーラを発散している。Brigitte FontaineやJoni Mitchellが好きというのも頷けます(Pitchfork Guest List: Best of 2012)

  • ◎ QUARANTIME*(Hyperdub)Laurel Halo
  • 米ミシガン州アナーバー出身のLaurel Haloはデトロイトやタイに移り住み、フリー・ジャズやテクノ・ミュージック、フォーク・ソングの洗礼を受けたという。その後、NYブルックリンに活動の拠点を移し、King Felix名義のEPなどで注目された彼女がダブステップを牽引する英Hyperdubからデビュー・アルバムをリリースした。「検疫・隔離」(Quarantine)というアルバム・タイトルが示唆しているように、ダーク・ポップ。シンセ・ドローンの幾重にも折り重なったサウンドや寸断されたビートから立ち現われるヴォイスはオーロラのように神秘的で眩暈を催させる。「飛行機酔い」(Airsick)の酩酊感、「私の死骸」(Carcass)の恐怖、「光と空間」(Light + Space)の美‥‥決して目醒めない悪夢の中に幽閉されたような感覚に囚われる。日本のリスナーにとって一番ショックなのはカヴァ・アートに「切腹女子高生」(Harakiri School Girls 2002)が使われていることかもしれない。それも奇を衒ったわけではなく、レコーディング中に会田誠の絵にインスパイアされた彼女の意向だというのだから再度驚く。英WIREの年間アルバム(Rewind 2012)第1位にも輝いた。

  • ◎ ARBOLA(Epsa)Melina Moguilevsky
  • アルゼンチンのマルチ管楽器奏者Marcelo Moguilevskyの娘、Melinaのデビュー・アルバム。Nicolas Ospina(ピアノ)、Ezequiel Dutil(コントラバス)、Mario Gusso(パーカッション)というジャズ・テイストのサウンドだが、コンテンポラリー・フォルクローレになっている。何よりも若い頃のKate Bushを想わせるMelina Moguilevskyの高音ヴォイスに魅了される(ルックスも愛くるしい)。軽快に疾走する〈Mantas〉、静から動へ転じる6拍子の〈Mis Manos, Tu Rostro〉、暗鬱な6拍子の〈Cancion Para El Yacente〉、5拍子のNicolas Ospinaとのデュエット曲〈Agua〉‥‥。自作・共作曲が大半を占めるが、2曲のインスト・カヴァ(Hermeto Pascal〈8 De Octubre〉、Egberto Gismonti〈Loro〉)ではピアノの伴奏で変幻自在のスキャットを披露する。Melina Moguilevsky嬢が緑の葉に囲まれて微睡むアルバム・カヴァも素敵です。

  • ◎ THE SEER(Young God)SWANS
  • Michael Giraさま率いるSWANSの新作は2CD(約120分)の大作。3枚組のスペシャル・エディションにはライヴDVD(100分)が同梱されている。14年振りの復活アルバム《My Father Will Guide Me Up A Rope To The Sky》(2010)の凝縮された緊張感は薄れたものの、2枚組になったことで裾野が広がった。ワイド・スクリーンで鑑賞するスペクタル巨編のように。高テンションの長尺曲2曲(32分、23分)だけでなく、Karen O(Yeah Yeah Yeahs)が歌う〈Song For A Warrior〉やMichael Giraの弾き語りも暗黒ワールドに淡色の彩りを添える。Grasshopper(Mercury Rev)やAkron/Familyなどもゲスト参加。元メンバーのJarboeもバック・ヴォーカルで復帰している。しかも「猫ジャケ」!‥‥4面デジパック仕様のアート・ワークも素晴しく、無味乾燥なデジタル・ダウンロードよりも、CDやLPで持っていたい。凶悪顔の仲間たちがいなければ「僕は幼い子猫ちゃん」(Without them I’m a kitten, an infant.)だって?

  • ◎ MELODY'S ECHO CHAMBER*(Fat Possum)Melody's Echo Chamber
  • Melody's Echo Chamberは南仏出身の女性マルチ楽器奏者、Melody Pochetのソロ・プロジェクト。彼女のデビュー・アルバムはKevin Parker(Tame Impala)が全面プロデュース&ミックスしたことで2012年を象徴する最新トレンドのサウンドになった。英・仏や米・仏ではなく、豪・仏という異色のコラボから生まれたサイケデリックなドリーム・ポップ、フレンチ風シューゲイザー?‥‥。英語詞中心だが、仏語の歌詞も2曲ある。ウィスパー・ヴォイスとアナログ・シンセのレトロな組み合わせはStereolabを想わせるところもある。サウンド面だけでなく、5拍子の〈Quand Vas Tu Rentrer〉、6拍子の〈Snowcapped Andes Crash〉など、リズムの変化も愉しい。子供のお喋り(ラップ?)を乗せたラストの〈Be Proud Of Your Kids〉も可愛いなぁ。

  • ◎ LONERISM*(Modular)Tame Impala
  • 豪パースで結成されたTame Impalaの2ndアルバムはバンドというよりも、Kevin Parkerのソロ・プロジェクトに近い。サイケデリックでドリーミーなインディ・ロックには内向的なエレクトロニカの迷路から脱出した解放感がある(孤独だけれど、引きこもりというわけじゃないよ)。アニコレの《Merriweather Post Pavilion》(Domino 2009)から一歩突き抜けたと言うべきだろうか。夢見るような浮游感とKevin Parkerの高音ヴォイス(60年代後半のJohn Lennonを想わせる)がリスナーを幸福感で包み込む。ドリーム・ポップの〈Mind Mischief〉〈Feels Like We Only Go Backwards〉、グラム・ロックっぽい乗りの〈Elephant〉、サイケなインストと化して行く〈Keep On Lying〉。3拍子の〈Sun's Coming Up〉‥‥。Dave Fridmannのミックスによって、The Flaming Lips風のサウンドになっている。英米ではなく、辺境の地オーストラリアからという出自も興味深い。

  • ◎ METZ*(Sub Pop)METZ
  • 2008年、カナダ・トロントで結成された3ピース・バンドMETZ。Alex Edkins(ギター、ヴォーカル)、Chris Slorach(ベース、ヴォーカル)、Hayden Menzies(ドラムス)の表出するサウンドは90年代のグランジやシューゲイザーを飛び越え、80年代のハードコアやポスト・パンクを思い起こさせる。約30年の時空を超えてカナダの地にタイムリープした3人組?‥‥。ノイズ、重低音、破壊音、咆哮が一体となって驀進・爆走するデビュー・アルバムはストイックでアグレッシヴ。贅肉を削ぎ落され、研ぎ澄まされている。全10曲、シークレット・トラックを含めても30分に満たない収録時間(29分50秒)も潔い。アルバム・カヴァの「METZ」というロゴは画像では白抜き文字に見えるが、実際は型押しになっていて目立たない(シングル盤〈Dirty Shirt〉は「猫ジャケ」にゃん)。

  • ◎ 'ALLELUJAH! DON'T BEND! ASCEND!*(Constellation)God's Pee
  • 1994年モントリオール・ケベックで結成されたポスト・ロック・バンド、Godspeed You! Black Emperorの4thアルバム(メディアの表記はGY!BEのままだが、アルバムにはGod's Peeとクレジットされている)。6年間の活動休止を挿んだ10年振りの新作は約20分の長尺曲2曲を含む4曲入り。3ギター、2ベース、2ドラムス、ヴァイオリンのインスト・ロック9人組(1人は16mmフィルムの担当者)で、コントラバス、チェロ、ダルシマ、ヴィブラフォン、マリンバ、グロッケンシュピール、ハーディ・ガーディなどが深い陰影を落とす。Killing Jokeみたいな無国籍ギターが炸裂する〈Mladic〉。幽玄なスロー・テンポから次第にヒート・アップして行く〈We Drift Like Worried Fire〉。〈Their Helicopters' Sing〉と〈Strung Like Lights At Thee Printemps Erable〉は6分半のドローン。カナダの鬱蒼とした奥深い森林に響き渡る大自然(風・雨・嵐・雷)のように雄大で神秘的なサウンドに身も心も揺さぶられる。極寒の地に聳立する針葉樹林のように冷たくて美しいアルバム。

  • ◎ LUXURY PROBLEMS*(Modern Love)Andy Stott
  • まるで奈落の底から聴こえて来るような深遠なヴォイス。船員たちを誘惑して海の底へ引きずり込むようなセイレーンの歌声。地を這う重低音の大蛇ベースや軋み音、大地が裂けて建物が崩壊するようなノイズや機械音が不穏に響き渡る。眠れぬ夜のBGM、悪夢のサウンド・トラック‥‥。英マンチェスターを拠点に活動するテクノ・ミュージシャンの3rdアルバムはミニマル・ダブによって暗黒の未来を創出する。本来ダブはヴォーカルを消し去ったインスト・サウンドだったが、かつてのトリップホップやドラムンベースが耽美的な女性ヴォイスを配したように、全8曲中5曲に女声ヴォーカルが入っている。彼のピアノ教師だったというAlison Skidmoreのヴォイスは幽玄で儚く神秘的で、この世のものとは想えない。アルバム・カヴァに使われた女子高飛び込み選手の写真のように、リスナーも回転しながら海底や地底へと落下して行くのだ。

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    Valeria Lobao、Oneira、Ladylike Lily、Mark Stewart、Dionysos、Saint Etienne、Beach House、Chromatics、Neneh Cherry & The Thing、Getatchew Mekuria & The Ex & Friends、Dirty Projectors、Dennis Bovell、Purity Ring、Wild Nothing、Animal Collective、Cat Power、David Byrne & St. Vincent、Flying Lotus、Rafael Martini、Orquestra Imperial‥‥も印象に残っていると言いたいところだが、未聴のアルバムも何枚かある。2012年はベスト10に挙げたSWANS、GY!BEやNeil Young with Crazy Horseなど、20分を超える長尺曲を収録したアルバムが際立った。曲単位でアルバムをバラ売りするデジタル・ダウンロードへの批判なのか、それとも単に長い曲を録音したかっただけなのかは分からないが、いずれにしろリスナーは加速・断片化する時代の流れに抗って、長尺曲をジックリと聴くことを余儀なくされる。立ち止まって、小鳥たちの囀りや教会の鐘の音に耳を澄ますように。ハイレゾ音源を収録したBlu-ray Discでリリースするアーティストも出て来た。音楽メディア(記録媒体)の未来はCDを超える高音質にあるのだろうか。

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    • 輸入盤のリリース順(国内・流通盤が出ているアルバムには *マークを付けました)

    • 個人的な年間ベスト・アルバム10枚を1年ずつ遡って行く〔rewind〕シリーズです

    • Julia HolterとLaurel Haloは〈魔女たちの饗宴〉、Mundo Livre s/aは〈エル・スールの15年〉から転載しました(一部加筆・改稿)
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    The Seer(Special Edition 2CD+DVD)

    The Seer(Special Edition 2CD+DVD)

    • Artist: SWANS
    • Label: Young God Records
    • Date: 2012/08/28
    • Media: Audio CD(2CD+DVD)
    • Songs: Lunacy / Mother Of The World / The Wolf / The Seer / The Seer Returns / 93 Ave. Blues / The Daughter Brings The Water / Song For A Warrior / Avatar / A Piece Of The Sky / Apostate // No Words / No Thoughts / Avatar / The Apostate / Beautiful Child / Jim / Sex God Sex / The Seer / I Crawled


    Novas Lendas Da Etnia Toshi BabaaEkstasisQuarantine




    ArbolaMelody's Echo ChamberLonerism




    MetzAllelujah! Don't Bend! Ascend!Luxury ProblemsMotivo

    S K N Y S ー S C R A P S 2 0 1 3

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  • S K N Y S ー S C R A P S 2 0 1 31 21 11 00 90 80 70 6




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    ネコ・ログ #28

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  • またまた会いに行ってきました! パリに住むおしゃまな猫たち、”パリにゃん”。今回もパリジャンたちとのほっこり和めるような、それでいてクスリと笑えるおかしな関係をじっくり拝見! な〜んて今では傍観者として、”パリにゃん” を楽しんでいた私ですが、フランス北西部にあるノルマンディー地方に引越しをしたところ、立場が一転してしまいました。予期もせず、田舎の家で子猫がわんさかと生まれたのです!〔‥‥〕他所の猫のかわいらしさをニヤニヤ眺めていた第三者が、まさに子猫たちに振り回されまくる当事者となってしまったから、さあ、大変! 生まれて初めて体験する猫との暮らしは、思っていた以上に大騒ぎで、思っていた以上に温かく幸せな日々でした。/ そんな猫との生活で思うことは、この不思議で魅力的な生き物に振り回されつつも愛さざるを得ない、滑稽な人間のこと。世の中は人間によって引き起こされる、ひどい事件や事故ばかりで、全体が悪い方へ、悪い方へと転がっていくようです。それでも、猫という小さな生き物に、いともあっけなく右往左往させられてしまう、哀れでお茶目な愛すべき人間でいる限り、まだまだ私たちも捨てたものではないかもしれません。
    酒巻 洋子 「猫と人間」


  • ♯244│ムンク│飼い猫 ── 目が縦に長いのだ
    アトムやドラえもんなどのマンガやアニメ・キャラみたいに縦に長い目。ネコ科の動物に限らず、多くの哺乳類の目は人間と同じようにアーモンドの形をしているはずなのに、ムンクちゃんはビックリして驚いたようなアニメ目になっている。チャコールグレーの毛色に赤い首輪(円形のプレートと丸い鈴付き)。黒い瞳の周辺部が緑色で、外周部は黄色に変化して行く。カメラと撮影者以外のもの、それが一体何かは分からないけれど‥‥を一心不乱に見つめている。ネコが目の前のカメラと撮影者以外の別の対象に意識を集中させている時は逆にシャッター・チャンスとなることが多い。目線が外れているという欠点はあるけれど、インパクトの強い印象的な写真が撮れたりする。撮影場所は民家の建ち並ぶ通りの裏路地で、背景の一部には使われなくなった古井戸が映っている。水色の井戸用ポンプのある木製の蓋の上で毛繕いをしたり、微睡んでいることも少なくない。

    ♯245│アク│飼い猫 ── 猫目のグラデーション
    1匹のネコを撮っていると、どこからともなく他のネコたちが姿を現わすことがある。この日も黒猫ソランちゃんの写真を撮っている時にムンクとアクが興味深そうに近寄って来た。ボス猫と喧嘩をしてから左耳だけがスコティッシュホールドみたいに折れ曲がってしまったというアクちゃんはミステリアスな灰色ネコ。アニメ目のムンクよりも毛色が明るく、黒い瞳の周りの緑色部分も大きく鮮やか。外周部の黄色との美しいグラデーションを形成している。眉目麗しい猫目に魅入られて惹き込まれそうになる。神秘的な目をしたネコは繊細で神経質な性格なので、躰に触られるのを極度に嫌う。手で撫でようとすると、ニャンと鳴いて拒否表示する。写真の左右にあるフィルムのような黒い帯は民家の門で、黒い鉄柵の隙間から玄関の前にいるアクちゃんを撮っている。鉄門の内側は安全地帯と心得ているらしく、逃げることもなくカメラと撮影者を見つめているのだ。

    ♯246│エル│ノラ猫 ── 原っぱで腹這いに
    自由気儘な外ネコには緑の芝生や広い原っぱが良く似合う。コンクリートの建物とアスファルトの地面に囲まれた都会では背景色が灰色のモノトーンになってしまうことも多い。無味乾燥なコンクリート・ジャングルで見上げる空は暗鬱な鉛色‥‥台風一過や強風が吹いた翌日の青空は稀なパラダイス、緑の植物は貴重なオアシスである。澄み切った青い空や赤や黄色などカラフルな花々をバックにネコを撮りたいと思っても、都心ではロケーション的にも難しい。エルちゃんも稲荷公園の原っぱで寛いでいたのは僅かな時間で、直ぐに安全な敷地内‥‥関係者以外は立ち入れない鉄柵の向こう側へ避難してしまった。相対的に両耳が大きいので子猫に見えるが、チビ猫ではない。まん丸い顔と茶目っ気のある杏色の目も魅力的に映る。ちょっとピントが甘いような気もするけれど、グリーン(緑色)の映えたネコ写真なのでアップすることにしました。

    ♯247│ポン│飼い猫? ── ボンネットの上は特等席
    I神井川沿いにあるO無親水公園で数匹のネコたちが暮らしている。ポン、モト、アビの3匹は血縁関係にあるのかどうか定かでないが、とても仲睦まじい。いつも3匹で疑似家族らしきものを形成している。大柄なポンちゃんが母ネコ役、モトが長男でアビが長女という感じ。駐車中のクルマのボンネットの上で寛ぐポン母さんとアビちゃん。黒いボンネットはエンジンの余熱で温かく、見晴しも良い。往来する人々を真横から観察出来る。ツルツル滑り易いのが唯一の難点だけれど‥‥。ワゴン車のフロントガラスとボンネットに周囲の木々が映り込んでいる。右側のポンちゃんは物思いに耽り、左奥のアビちゃんは右前肢前肢を舐めている。束の間のリラクゼーション‥‥運転手がクルマに戻って来てエンジンを始動させると、2匹は「安息地」から徐ろに跳び降りる。

    ♯248│モト│ノラ猫 ── 可愛く撮ってね
    カメラを向けても嫌がったり、無視したりで‥‥気乗りしなかったモトちゃんも漸く観念したのか、被写体として静止してくれた(歩き疲れただけなのかもしれないが)。同じネコを撮っていても最初と最後、ファースト・ショットとラストでは表情が微妙に異なる。険しい目をしていたネコも時間が経つに連れて次第に柔らかい表情へと変化していく。30分くらいネバっていると、カメラを忌避していたモトちゃんも優しい目になってくれた。まるで「可愛く撮ってね!」とカメラマンに注文をつけるアイドル・タレントのように‥‥。良い写真が撮れた時はモデルとなったネコの頭を撫でて感謝の意を表わすことにしている。「世界ネコ歩き」(BSプレミアム)でトルコ、ギリシャ、イタリアなど地中海のネコを撮っていた動物写真家の岩合光昭さんも全く同じことをしたのでTVの前で思わず笑ってしまった。

    ♯249│アビ│ノラ猫 ── 黒と茶のネコ
    黒地に茶色の斑点模様のあるチビ猫アビちゃん。ボンネットの上の写真(ポンちゃんとの2ショット)では茶と黒の斑模様に見えるけれど、実際には黒い部分の方が多い。3匹の中では人懐っこい性格で、躰を撫でても嫌がったりはしない。3匹の疑似家族が暮らす地域はJR駅にも近く、春には多勢の花見客で賑わったり、2時間TVドラマのロケ地になったりすることもあるので、人間には馴れているのかもしれない。陽の翳った夕暮れ時‥‥辺りが少し暗くなってもミラーレス一眼ならば明るく鮮明な写真が撮れる。それでもNEX-5Nの標準ズームレンズ(E18-55mm F3.5-5.6 OSS)は暗いので、2013年に出るという噂のカールツァイスの標準ズームや「レンズロードマップ」に載っている高性能標準ズーム(Gレンズ)が待たれるところ。ネコ撮り用の明るいズームレンズが欲しいなぁ。ネコの瞳の大きさからも時間帯や天候状態が判断出来るのではないかしら。

    ♯250│イチゴ│飼い猫 ── 2年振りのイチゴちゃん
    2010年の夏以来、実に2年振りのイチゴちゃん。1昨年の夏には体調を崩して注射を3本も打ったと聞いていたので、心配していたのだった。民家の門柱の上で寝そべっている姿は優雅な夕涼みという風情‥‥でも、そこから動こうとしないし、頭や背中を撫でようとするとニャンと鳴いて嫌がる素振りを見せる。人懐っこいネコが躰に触れられるのを嫌うのは体調が優れないからなのかもしれない(懐いていたトミーちゃんも嫌がった)。iPhoto(9.2)で自動補正してあるので明るく写っているが、実際には陽も落ちて周囲は薄暗い。黒・茶・白の3色がパッチワークのように美しい幾何学模様を作っている三毛猫は日本国内だけでなく世界的にも少なくなっているという。イチゴちゃんには元気になって欲しいなぁ。これからも彼女の写真を撮って行きたいと思う。

    ♯251│アル│飼い猫 ── お外に出して!
    家の中で飼っているネコを外へ連れて行く時は、イヌの散歩と同じようにリード(引き綱)を着けるのも有りではないかと思う。屋内と外界を自由に出入りする放し飼いのネコは兎も角、外の世界を知らないネコや不慣れなネコはパニックを起こしてしまうかもしれないから。交通事故や行方不明(失踪・迷子)などのリスクを考慮すると、ネコにとっては多少不自由でも飼主に繋がれた状態の方が安全ではないかしら(山岸凉子の愛猫ケイトちゃんは背中のリックの中に入り、首だけ出して移動するという)。集合住宅の半開きのドアから外の様子を窺っているアルちゃんの首輪はリードに繋がれていて、自由に通路を動き回れない。ドアの隙間から顔を覗かせたり、ドアの前で寝転がったり‥‥。ちょっと可哀想な気もするけれど、好奇心はネコ一倍旺盛で人懐っこい。アルちゃんは散歩に連れて行ってもらえるのでしょうか。

    ♯252│ソラン│飼い猫 ── ピントは左目に合っている
    一眼レフ・カメラの特徴は背景のボケ具合にある。都会の雑踏や繁華街のケバケバしい看板など、煩瑣で目障りなバックを暈して被写体だけを際立たせることが出来るのは大きな魅力でもある。しかし、背景がボケるということは逆に言うとピントの合う範囲が狭いということでもある。この写真でもピントは黒猫ソランの左目に合っているが、右目の方はボケている(真正面から撮れば左右の目に焦点が合う?)。ポートレイト写真の基本は人でも動物でも目にピントを合せることらしいけれど、顔のクローズアップは難易度が高い。それでもミラーレス一眼で最初に撮った「ソランちゃん」よりは自然で柔和な表情になっている。撮影技術が上達したというよりも、モデルの良さやネコとの信頼関係に負うところが大きいのかもしれない。身を屈めて目線をソランに合わせると前肢を衣服に凭れかけ、2本脚で立って挨拶するのだから。

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    各記事のトップを飾ってくれたネコちゃん(9匹)のプロフィールを紹介する「ネコ・カタログ」の第28集です。サムネイルをクリックすると掲載したネコ写真に、右下のナンバー表の数字をクリックすると該当紹介文にジャンプ、♯ネコ・タイトルをクリックするとトップに戻ります。ノラ猫や地域猫、飼い猫を差別しない方針で、これまでに延べ250匹以上のネコちゃんを紹介して来ましたが、こんなにも多くのネコたちが棲息していることに驚かされます。第28集の常連ネコはイチゴとソランちゃん。ムンクとアクも揃い踏みです。『パリにゃん II』(産業編集センター 2012)は仏在住のフリー編集ライターがパリのネコたちを紹介するシリーズ第2弾。コラム「ノルマン猫、"パリにゃん" になる」ではノルマンディーの家の外猫ミヌーが産んだ6匹の子猫を里子(4匹)に出す顛末が語られます。表紙カヴァでは隠れているけれど、愛猫カミーユを頭に乗せている少女チェレストの赤いキャミソールにはエミリーと黒ネコ(Emily the Strange)がプリントされているのだ‥‥ゴロニャン。

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    • 記事タイトルの右に一覧リストのリンク・ボタン(黒猫アイコン)を付けました^^

    • オリジナル写真の横縦比は3:2ですが、サムネイルは4:3にリサイズしています
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    パリにゃん II

    パリにゃん II

    • 著者:酒巻 洋子
    • 出版社:産業編集センター
    • 発売日:2012/02/20
    • メディア:単行本
    • 目次:猫と人間 / はじまりはココからパリ・猫区(9区)/ 個性派猫が住むパリ・お洒落区(1・3・7・18区)/ 猫情が溢れるパリ・下町区(10・12・20区)/ 猫ドラマが繰り広げられるパリ・家族区(13・16区)/ 猫共存のゆったり空間パリ・郊外 / COLUMN・ノルマン猫、"パリにゃん" になる

    サイバー・キャット 10

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    • 旧サイバー・ショット(Cyber-shot DSC-P8)で撮ったネコ・アルバム集です

    • 第10弾は白黒猫のゴンちゃん。未発表ショット(5枚)も蔵出し初公開!^^;
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    表参道のCAT ART

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  • 人間がまだ進化の点で我々より数万年(願わくば数億年でないように祈っておりますが)遅れている実例は、枚挙にいとまがありません。たとえば強い光を急激に人間の顔に照らしますと、顔をしかめたり、あわてて手で顔を覆ったりの反応が典型的な人間の反応で、最後にはサングラスなるものを探しだす始末ですが、我々は平然としていることができます。我々の極度に発達した目の彩孔は反射的に細まり、なんらパニックに至ることがありません。また我々は昼寝をしているときでも、後ろから何か物音がすると、我々の耳はレーダーのように後ろに反射的に回転して、その音源をモニターすることができます。しかし人間の耳は残念ながらしっかりと頭の側面に付着していて、首をまわさなければ音源をたどることができないばかりか、その固定耳のゆえに、後ろからくる僅かな音に気づくことさえないのです。水を飲むというごく簡単な作業も人間にとっては非常に厄介で複雑な仕事となるようです。まずコップを探し、それに飲み物を入れ、それを手で持ち上げて口まで運ぶという原始的な操作を未だに行なわなければなりません。どうして我々のように舌をカップの形に変えて、そのまますぐに飲むといったことができないのでしょうか。
    ウィスカー・キティーフィールド「人間と猫の相互理解と文化交流について」


  • 「CAT ART展~シュー・ヤマモトの世界~」が表参道ヒルズ内のギャラリー コーワで開催されていた(1/24~30)。ヒルズ内といっても表参道に面した1階にあるギャラリーなので、「ネコ名画」に惹かれて、たまたま立ち寄ったというネコ好きの人も少なくないかもしれない。狭い画廊に版画や原画など、20点の「CAT ART」が展示されている。ヨハネス・フェルネーコ〈真珠のイヤリングをした少女猫〉〈手紙を書く猫と召使いのワンコロ〉、ドミニック・ニャンデル〈ジュピターとテティス〉〈グランド・オダリスク〉、エドガー・ドラ〈スター(舞台の踊り子)〉、アンリ・ニャソー〈夢〉、三毛ランジェロ〈ニャダムの創造〉、ピエール・オーギュスト・ネコアール〈ピアノを弾く猫たち〉、ヤン・ニャン・エイク〈アノルフィニ猫夫妻の結婚〉、シロード・ミャネ〈着物を着たミャネ婦猫〉‥‥全12点のキャンバスレプリカ(版画)を展示・販売しているが、フェルネーコの2点は額装が異なる同一作品だった。

    猫浮世絵師・歌川猫重の「猫街道二拾三次」シリーズから原画が3点出品されていた。〈四日市〉は強風に飛ばされた笠を追う旅ネコと合羽の裾を翻す旅ネコ、〈掛川〉は塩井川の架かる橋の上でスレ違う2組の旅ネコ(江戸から来た高僧と小僧ネコ、江戸へ行く子連れ夫婦ネコ)、〈関 本陣早立〉は大名行列の出発準備をしているネコたちの様子がコミカルに描かれている。「四日市」をWindy Cityと呼ばれるシカゴ市をになぞらえるなど、作者による自作解説も面白い。ドミニック・ニャングル〈モーテシアの婦猫〉とパブロ・ピキャット〈泣く猫〉の2点は小さな原画。「日本猫 昔ばなし」シリーズ〈もにゃ太郎〉〈つるのにゃん返し〉〈かぐにゃ猫〉の3作品は12頁の「絵本」でを手漉き和紙にデジタルプリント(6頁1組)されている。猫パロディ版の「日本昔話」は登場人物をネコに替えただけでなく、時代設定も大型TVなどの家電製品のある現代に変えて痛烈に風刺する(公式サイトで「うにゃしま太郎」が読めます)。

    「CAT ART展」の白眉は3点の原画が展示されていたこと。表通りから見えるショー・ウィンドウにドミニック・ニャンデル〈グランド・オダリスク〉、ヤン・ニャン・エイク〈アノルフィニ猫夫妻の結婚〉、シロード・ミャネ〈着物を着たミャネ婦猫〉が飾られている。大きなカンヴァスにアクリルで描かれた原画は画集の図版や版画に較べると迫力満点(〈グランド・オダリスク〉と〈着物を着たミャネ婦猫〉は920×610cm、〈アノルフィニ猫夫妻の結婚〉は765×610cm)。作者が約5年間もの歳月を費やして124点の「CAT ART」を描いたことに圧倒される。どこかの美術館で「CAT ART 原画展~シュー・ヤマモトの世界~」を大々的に開催しないかしら?‥‥ギャラリー内では「ジグソー・パズル」(2542ピース)や「クリアフォルダー」(4種・A4判)、「ポスターカレンダー」(ヨハネス・フェルネーコの6作品を表裏に3点ずつレイアウトしたB2判)、「卓上カレンダー」など、「CAT ART」関連グッズも販売していた。

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    『キャット・アート ── 名画に描かれた猫』(求龍堂 2012)は名画の中に描かれた猫ではなく、絵画の中の人物をネコに変えた「猫パロディ画集」。古代 ─ 中世 ─ 東洋、ニャネッサンス、バロック、新古典主義〈ニャオクラシック〉、ロマン主義、写実主義、印象主義〈印象派〉、20世紀美術‥‥〈ニャスコー壁画〉(紀元前18000)からルネ・マグニャットの〈猫の子〉(1964)まで、古今東西のネコ名画、全124点を収録している。外国猫のはずなのに「和風」というか、どこか親しげで庶民的なネコたち。猫美術評論家・ウィスカー・キティーフィールドの巻頭エッセイ「人間と猫の相互理解と文化交流について」や作品解説も愉しい。「日の目を見るかもお金になるかもわからない猫プロジェクトに時間と労力を費やした」シュー・ヤマモト氏に脱帽する。表紙カヴァになっているヨハネス・フェルネーコの〈真珠のイヤリングをした少女猫〉(1665)はフェルメールの原画や武井咲が扮したコスプレ写真の〈真珠の耳飾の少女〉よりも可愛いにゃん。

    サンドロ・ニャッティチェリの〈猫ビーナス誕生〉、レオナルド・ニャビンチの〈モニャリザ〉、ユハネス・フェルネーコの〈牛乳を注ぐメス猫〉、ジャン=フランソワ・ファミーの〈またたび拾い〉‥‥など、子猫でも知っている超有名絵画の猫パロディも愉しいけれど、表現の枠が爆発的に広がった19世紀末から20世紀にかけてのネコ絵画が面白い。ヴィンセント・ヴァン・ニャッホ〈耳に包帯をした自画像〉、エドワード・ニャンク〈叫び〉、グスタフ・クニャムト〈キス〉、アンリ・ニャソー〈夢〉‥‥。ジョルジュ・デ・ネココ〈吟遊詩猫〉、ネコバドール・ダリダッケ〈燃える犬〉、パブロ・ピキャット〈泣く猫〉、フリーダ・ニャーロ〈いばらの首輪〉、ルネ・マグニャット〈ピレニャーの城〉‥‥などのシュルレアリスム絵画は自由気儘なネコと相性が良い(ピキャットは5点、マグニャットは4点収録されている)。ピエット・ニャンドリアン〈赤黄青のコンポジション〉やジャクソン・ポニャック〈NO.9〉などの抽象絵画で泣けるのも不思議。ラファエル前派やロシア・アヴァンギャルドなど抜け落ちているネコ画家たちもいるので、今後の新作に期待大である。

    巻末エッセイ「ユーモアと猫と美術と私」の中でシュー・ヤマモト氏は派遣学生として初めて訪れたアメリカで体験したエピソード‥‥ユタ大学の総長が広大なキャンパスを案内した時に完成間近の巨大なドーム型体育館を指差して「ジーナ・ロロブリジータ記念体育館という名が適切であると思う」と言ったジョークを紹介する。「ユーモアを忘れないアメリカ人の陽気さを思い知らされた」著者は楽天的な考え方に感化されたという。中学生の息子さん(三男)が学校で描いて来たというゴッホの自画像をネコに仕立てた絵が「CAT ART」プロジェクトの端緒となったこと。リアリスティックな絵を描きたかったのに大学でも職場でも適わなかったこと。イラストレーション・ボード(25×38cm)に描いた120枚の絵をカンヴァスに描き直したこと。完成した「CAT ART」を出版すべく直接日本の出版社へのコンタクトを試みたこと。巻末に原画の写真を載せたかったが「参照画作品リスト」に留まったこと‥‥などが語られている。拙記事の〈キャット・アート〉はネット上でオリジナル絵画を参照しながら「猫ヴァージョン」を愉しめるように作ったものです。

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    『CAT ART POST CARD CALENDAR 2013』(アップルファーム 2012)は卓上ミニ・カレンダー(16×16.2cm)。〈真珠のイヤリングをした少女猫〉ヨハネス・フェルネーコ、〈着物を着たミャネ婦猫〉シロード・ミャネ、〈ニャレーンの肖像〉P・オーギュスト・ネコアール、〈ネコピエロ〉ジャン・アントワール・ニャトー、〈スター(舞台の踊り子)〉エドガー・ドラ、〈泉〉ドミニック・ニャングル、〈アノルフィニ猫夫妻の結婚〉ヤン・ニャン・エイク、〈パラソルを持ったメス猫〉シロード・ミャネ、〈いばらの首輪〉フリーダ・ニャーロ、〈耳に包帯をした自画像〉ヴィンセント・ヴァン・ニャッホ、〈手紙を書く猫と召使いのワンコロ〉ヨハネス・フェルネーコ、〈水あび〉メアリー・カキャット、〈キス〉グスタフ・クニャムトの13枚。『CAT ART CALENDAR 2013』(求龍堂 2012)との重複はクニャムト1点のみ。卓上用にしては大きすぎるし、ポストカードとしても使えるというのなら切り取り線(切れ目)があっても良かった。画集『CAT ART』から猫画24枚+新作2枚を厳選したポストカード集『CAT ART POST CARD BOOK』(2012)も出ています。

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    CAT ART展 ~シュー・ヤマモトの世界~

    CAT ART展 ~シュー・ヤマモトの世界~

    • アーティスト:シュー・ヤマモト(Shu Yamamoto)
    • 会場:表参道ヒルズ内 ギャラリー コーワ
    • 会期:2013/01/24-30
    • メディア:絵画・版画
    • 展示作品:グランド・オダリスク / アノルフィニ猫夫妻の結婚 / 着物を着たミャネ婦猫 / モーテシアの婦猫 / 泣く猫 / 真珠のイヤリングをした少女猫 / 手紙を書く猫と召使いのワンコロ / ジュピターとテティス / グランド・オダリスク / スター(舞台の踊り子)/ 夢 / ニャダムの創造 / ピアノを弾く猫たち/ 猫街道二拾三次(四日市 / 掛川 / 関)/ 日本猫 昔ばなし(もにゃ太郎 / つるのにゃん返し / かぐにゃ猫)


    CAT ART ── 名画に描かれた猫

    CAT ART ── 名画に描かれた猫

    • 著者:シュー・ヤマモト(Shu Yamamoto)
    • 出版社:求龍堂
    • 発売日:2012/04/30
    • メディア:単行本
    • 目次:ウィスカー・キティーフィールドの横顔 / 人間と猫の相互理解と文化交流について / 古代─中世─東洋 / ニャネッサンス / バロック / 新古典主義〈ニャオクラシック〉/ ロマン主義 / 写実主義 / 印象主義〈印象派〉/ 20世紀美術 / 猫好きと美術好きと(山下裕二)/ 参照画作品リスト/ ユーモアと猫と美術と私(シュー・ヤマモト)


    CAT ART POST CARD BOOK ── 名画に描かれた猫

    CAT ART POST CARD BOOK ── 名画に描かれた猫

    • 著者:シュー・ヤマモト(Shu Yamamoto)
    • 出版社:求龍堂
    • 発売日:2012/06
    • メディア:文庫
    • 収録作品:坂田怪猫丸 / 猫ビーナス誕生 / モニャリザ / ラス・メニャーナス─宮遣い猫 / 真珠のイヤリングをした少女猫 / レースを編む猫 / 読書 / アルプスを渡るニャポレオン / グランド・オダリスク / 草上の猫餌 / 着物を着たミャネ婦猫 / フォリー=ニャンジェールの酒場 / ラ・グランドジャテ島の寝てよう日 / 耳に包帯をした自画像 / アンバサダー / ピ...アノを弾く猫たち / 叫び / LAIT PUR / ニュードを見る人々 / MEOWET & CHANDON / キス / 赤黄青のコンポジション / 夢 / 反射する球を持つ手 / 帰還 / NO.9


    CAT ART POST CARD CALENDAR 2013

    CAT ART POST CARD CALENDAR 2013

    • 著者:シュー・ヤマモト(Shu Yamamoto)
    • 出版社:アップルファーム
    • 発売日:2012/08/25
    • メディア:カレンダー
    • 収録作品:真珠のイヤリングをした少女猫 / 着物を着たミャネ婦猫 / ニャレーンの肖像 / ネコピエロ / スター(舞台の踊り子) / 泉 / アノルフィニ猫夫妻の結婚 / パラソルを持ったメス猫 / いばらの首輪 / 耳に包帯をした自画像 / 手紙を書く猫と召使いのワンコロ / 水あび / キス

    クリアランスセール 2 0 1 3

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  • ◎ Big Science(Nonesuch 2007)Laurie Anderson
  • ツンツン尖ったパンク・ヘアがトレードマークの女性パフォーマーLaurie Andersonはヨーゼフ・ボイスやナム・ジュン・パイクのパフォーマンスと共に記憶される。25周年記念盤アルバム(CD)はリマスターされただけでなく、〈O Superman〉のPV(flv. mp4)と同シングルのB面曲〈Walk The Dog〉(wav. mp3)を特典として追加収録している。Laurie Andersonが左手で握り拳(左腕で力瘤)を作った影絵が円形のスクリーンに映し出されるヴィデオは4半世紀以上を経ても強烈な光を放つ。全英チャート第2位の大ヒットとなった〈O Superman〉は仏作曲家ジュール・マスネ(Jules Massenet)のオペラ〈Le Cid〉の中で米黒人テナーCharles Hollandの歌ったアリア〈O Souverain〉と「テヘラン・アメリカ大使館人質事件」(1979)にインスパイアされたという。〈O Souverain〉は彼女に皇帝ナポレオンのワルテローの戦いを想起させ、米カーター元大統領の人質救出作戦は失敗に終わった。そしてカーター政権の凋落とレーガン主義の擡頭を齎すことになる。

    9・11の1週間後に行なわれたライヴで〈O Superman〉の「Here come the planes / They're American planes」という一節を歌ったLaurie Andersonは今まさに現在のことを歌っていると気づく。「愛」(love)が消え去ると「正義」(justice)が現われ、「正義」が去ると「武力」(force)が現われ、「武力」が去った後には「ママ」(Mom)が現われる。「ママ」を「愛」の別名と看做せば「歴史」というか「権力構造」の情緒的無限ループとなる。危ない機長が乗客に非常事態をアナウンスする〈From The Air〉、核戦争で死滅した街を想わせる〈Big Science〉‥‥。留守番電話に残された応答メッセージが語りかける〈O Superman〉は「ha, ha, ha, ha ,ha, ha, ha, ha…」という鼓動のようなループとヴォコーダで変形されたヴォイスが心地良くもあり、薄気味悪くもある。もし彼女の存在がなければ、Julia HolterもLaurel Haloも歌っていなかったかもしれない。「Big Science. Hallelujah. Yodellayheehoo.」と口ずさみながら散歩に出かけようかな。

  • ◎ Unausagesprochen(105 Music 2006)Annett Louisan
  • 赤いクルマに凭れて8ミリカメラを回すトレンチコートの女性‥‥60年代のヌーヴェルバーグを意識した4thアルバム《Teilzeithippie》(2008)が日本でも話題になった独ロリータ歌手の2ndアルバム(2005)に2曲を追加収録。全17曲、フレンチ・ポップスを想わせる小悪魔ヴォイスが可愛い。オルゴールの螺子を巻く音から始まるオープニング曲はミュゼット風の3拍子。チェロ、ウーリッツァー、ピアノ、ハーモニカ、ハーモニウム、ハモンドオルガン、アコーディオン、バンドネオン、フリューゲルホルン、トランペット、クラリネット、フルート、ヴァイオリン、スライド・ギターなどを配したアクースティック・サウンドで、曲調もミュゼット、ブルース、ジャズ、タンゴ、ボサノヴァ‥‥と変化に富む。作詞・作曲の多くはプロデュースも兼ねるFrank Ramondの手によるものだが、Annett Louisan自らも6曲で共作詞している。Vanessa Paradisが独語で歌っているような錯覚に陥るし、60年代にタイムスリップしてしまったようなノスタルジックな気分にも浸れる。

  • ◎ L'Un Empeche Pas L'Autre(Polydor 2011)Brigitte Fontaine
  • アヴァギャン婆さんの17thアルバムは全13曲中2曲を除き、ゲスト・ミュージシャンとデュエットするという趣向。新曲(未発表)は4曲のみで、オリジナル・アルバムから6曲、レア・トラック3曲を新録している。Brigitte FontaineとAreski Belkacemの作詞・作曲で7曲、Astor Piazzolla、Duke Ellingtonの曲に彼女が詞を付けたカヴァもある。彼女とデュエットするのはGrace Jones、Arno、Alain Souchon、Christophe、Matthieu Chedid、Bertrand Cantat(Noir Desir)、Jacques Higelin、Emmanuelle Seigner、Areskiの9人。妖怪婆さんと女サイボーグの最強タッグ。黒い女豹のソロ・アルバムを想わせるエレクトロ・ポップの〈Dancefloor〉とアラビックな6拍子ファンクに改変された〈Caravane〉の2曲も刺戟的。見たいような見たくないような、聴きたいような聴きたくないような(もう手遅れだが)、「老人力」というか、ゲスト陣をも含めた凄みのあるヴォイスに気圧される。まるで老魔女の悪夢の中に幽閉された草食系男子みたいに。

  • ◎ Sense And Sensuality(Castle 2002)Au Pairs
  • 1978年英バーミンガムで結成されたポスト・パンク・バンドの2ndアルバム。デビュー・アルバム《Playing With A Different Sex》(Human 1981)と2ndを抱き合わせた2枚組アンソロジー《Stepping Out Of Line》(2006)もリリースされているが、オリジナル盤をリミックス(欠陥を修正)&リマスターした赤と黒とピンクのアルバム・カヴァ(エル・リシツキーの作品を改変)の方が魅力的に映る。Au PairsがGang Of FourやThe Slitsなどと異なっているのは男女4人組(男2・女2)だったこと。 Lesley Woods(ヴォーカル、ギター)、Paul Foad(ギター、チェロ、ヴォーカル)、Jane Munro(ベース)、Pete Hammond(ドラムス、パーカッション)の4人が対等な関係にあったことである。ロック、ファンク、レゲエにトランペットやサックスが搦むサウンドは30年後に聴いてもクールでカッコ良い。1983年、Steve Lilywhiteのプロデュースで3rdアルバムをレコーディングする直前に解散してしまったことが惜しまれる。

  • ◎ Liberte(Wrasse 2009)Khaled
  • ライの帝王による《Ya - Rayi》(2004)以来、5年振りのアルバム。全17曲とクレジットされているが、5曲は次の曲のイントロなので実質は12曲、それでも演奏時間は73分もある。Martin Meissonnierのプロデュースはアコーディオン、タール(tar)、ダルブッカ、ガラル(gallal)、リュート、テナーサックス、トロンボーン、トランペット、ヴァイオリン、ガンブリ(gumbri)などにエジプト・カイロのストリングスを配したアクースティックなサウンドで、エレクトロ色は抑制されている。モロッコのグナワ・ミュージックを採り入れた〈Gnaoui〉、アルジェリア戦争の闘士アフメド・ザバナ(Ahmed Zabana)に捧げたという〈Zabana〉、父親へのオマージュの〈Papa〉、レゲエ調の〈Sidi Rabbi〉‥‥全編を通してKhaledの力強いヴォーカルを堪能出来る。彼の歌唱は日本の演歌や民謡よりも深く胸に沁み入る。聴いていると目頭が熱くなるということだ。少し長いかもしれないけれど。

  • ◎ Um Labirinto Em Cada Pe(YB 2011)Romulo Froes
  • ブラジル・サンパウロ生まれのSSWの4thアルバムは女性サンビスタDona Inahのアカペラ〈Olhos Da Cara〉から始まる。ヌーノ・ハモス(Nuno Ramos)やクリーマ(Clima)との共作を含む楽曲や贅肉を削ぎ落したサウンドは内省的でストイックなFred 04(Mundo Livre)を想わせなくもない。Arnaldo Antunesが低音ヴォイスでデュエットした〈Rap Em Latim〉、Romulo Froesがクールなラップを披露する〈Ditado〉、フリー・サックスが疾走する〈Onde Foi Que Nunca Vem〉、Nina Beckerも6曲で清冽なバック・コーラスを添えている。Guilherme Heldのスペイシーなノイズ・ギターも切れ味鋭い。アルバム・カヴァには2枚組の大作《No Chao Sem O Chao》(2010)に引き続いて、女性アーティストのタチアナ・ブラス(Tatiana Blass)の作品を採用している。

  • ◎ Otra Cosa(Sony 2010)Julieta Venegas
  • Mariana BarajやNatalia Lafourcadeちゃんだけでなく、Marisa Monte嬢まで登場したライヴ・アルバム《MTV Unplugged》(Norte 2008)が強烈だったメキシコの女性SSW、マルチ器楽奏者の5thアルバム。アルハンドロ・ロス(Alejandro Ros)の手がけた雁(?)のイラストをレオノール・フィニの仮面のようにコラージュしたデザインはシュールで妖しい雰囲気だが、Juana Molinaのようにサウンドまでエレクトロニカしているわけではない。寧ろアルバム・カヴァに反して陽気で明るいというべきかもしれない。Julieta VenegasはAlejandro Sergi(Miranda!)とAdrian Dargelos(Babasonicos)との共作曲2曲を除く10曲を作詞・作曲、ヴォーカル、バックコーラスに加えてアコーディオン、ピアノ、グロッケンシュピール、キーボード、ギター、カヴァキーニョ(cavaquinho)、バンジョー、シロフォン(xylophone)、ウクレレ、ローズ(rhodes)、メロディオン(melodion)、パーカッション‥‥とマルチ・プレイヤーぶりを発揮している。《MTV Unplugged》に付いていたライヴDVDを見れば分かるように、彼女の弾くアコーディオンは小型で可愛いのだ。

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    開場20分前にタワレコ渋谷に着いたのに、階段の7F辺りまで長い行列が出来ていた。新年早々、お暇な人たちが多いのね。もしかして地下1Fの会場もリニューアルされているのではないかという淡い期待は裏切られた。相変わらず薄暗い照明の中で、既に大量のCDやDVDを漁った中古業者らしき輩が品定めに入っている。古本などを安く買って、中古ショップやネットで転売して利鞘を稼ぐ連中のことを「せどり」と称するらしいが、洋楽リスナーや音楽愛好家には到底見えない薄汚い野郎どもの傍若無人の振る舞いには辟易するし、会場の空気も淀んでいるように感じられて不快極まりない。ここ数年来、掘り出し物を探し出すという愉しみも半減している。1人CD10枚までとか‥‥枚数制限を設ける段階に来ているのではないかしら。10枚ほど購入したものの、小躍りするようなアルバムは少なかった‥‥というわけで、旧年(2012)中に実施された各店舗のミニ・ワゴンセールで入手したアルバムも紛れ込ませることにした。

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    • デフレの影響なのか少し単価が下がって1枚(¥276)×7=1932円の出費です^^;

    • 〈O Superman〉については《Big Science》(Nonesuch 2007)のセルフ・ライナーノーツを参照しました

    • 「RSSフィード」の不具合を修正しました。「記事に使用できない文字」って何よ?
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    Big Science

    Big Science

    • Artist: Laurie Anderson
    • Label: Nonesuch
    • Date: 2007/07/17
    • Media: Audio CD
    • Songs: From The Air / Big Science / Sweaters / Walking & Falling / Born, Never Asked / O Superman (For Massenet) / Example #22 / Let X=X / It Tango / O Superman (video clip) / Walk The Dog (audio track)


    Unausgesprochen

    Unausgesprochen

    • Artist: Annett Louisan
    • Label: 105 Music
    • Date: 2006/04/17
    • Media: Audio CD
    • Songs: Das Große Erwachen (...und jetzt...) / Torsten Schmidt / Chancenlos / Gedacht Ich Sage Nein / Eve / Läuft Alles Perfekt / Wo Ist Das Problem? / Er Gehörte Mal Mir / Die Lösung / Der den ich will / Vielleicht / Widder wider Willen / Beerdigung / Ausgesprochen Unaus...


    L'un N'empeche Pas L'autre

    L'un N'empeche Pas L'autre

    • Artist: Brigitte Fontaine
    • Label: Polydor Import
    • Date: 2011/05/31
    • Media: Audio CD
    • Songs: Dancefloor / Supermarket / Rue Saint-Louis-En-L'ile / Hollywood / Pipeau / Les Vergers / Gilles De La Tourette / Duel / Caravane / Inadaptee / Dressing / God's Nightmare / Le Grand-Pere


    Liberte

    Liberte

    • Artist: Khaled
    • Label: Wrasse Records
    • Date: 2009/08/25
    • Media: Audio CD
    • Songs: Hiya Ansadou (Intro) / Hiya Ansadou / Raikoum (Intro) / Raikoum / Ya Bouya / Kirani / Gnaoui / Zabana / Libert (Intro) / Libert / Soghri / Sidi Rabbi / Yamina (Intro) / Yamina / Papa / Sbabi Nitya / Ya Mimoun (Intro) / Ya Mimoun


    Sense & Sensuality

    Sense & Sensuality

    • Artist: Au Pairs
    • Label: Castle Music UK
    • Date: 2002/03/26
    • Media: Audio CD
    • Songs: Steppin' Out Of Line / Sex Without Stress / Instant Touch / That's When It's Worth It / Shakedown / Tongue In Cheek / Intact / Don't Lie Back / America / Fiasco


    Um Labirinto Em Cada Pe

    Um Labirinto Em Cada Pe

    • Artist: Romulo Froes
    • Label: YB Music
    • Date: 2011/06/15
    • Media: Audio CD
    • Songs: Olhos Da Cara / Muro / Máquina De Fumaça / O filho de Deus / Rap Em Latim / Varre E Sai / Boneco De Piche / Tua Beleza / Ditado / Jardineira / Cilada / Quero Quero / Onde Foi Que Nunca Vem / Um Labirinto Em Cada Pe


    Otra Cosa

    Otra Cosa

    • Artist: Julieta Venegas
    • Label: Sony U.S. Latin
    • Date: 2010/03/16
    • Media: Audio CD
    • Songs: Amores Platnicos / Bien O Mal / Despedida / Debajo De Mi Lengua / Revolucin / Otra Cosa / Original / Ya Conocern / Duda / Si Tu No Estas / Un Lugar / Eterno

    C O M M E N T E D A R T I C L E S 2 0 1 3

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  • C O M M E N T E D A R T I C L E S 2 0 1 3 1 2 1 11 00 90 8

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    • コメントした記事のリンク一覧(2013)です。リンクが流れちゃうのは勿体ないよね

    • ブログ内(sknys)、ソネ風呂内(sonet)、ソネ風呂外(guest)で色分けしました

    • 写真は池袋水天宮(豊島区・池袋駅前公園内)です。左下のネコはダイちゃん^^;
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    サイボーグ 009ノ2

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  • あしたの夜、おれは地球の大気圏に突入するだろう。/ おれは燃えて灰になり、その灰は大陸に落ちるだろう。/ そのときこそ、おれは何かの役に立つ。ほんのちょっぴりでも、灰は灰。大地の足し前になるだろう。/ 弾のように、小石のように、分銅のようにホリスは落ちて行った。もうホリスの心は平静そのものだ。悲しくも嬉しくもない。ただ1つの願いがあった。すべてが終わった今、何かいいことをしたい。自分ひとりにしか分からない、いいことを。/ 大気圏に突入したら、おれは流星のように燃えるだろう。「ひょっとして」と、ホリスは言った。「だれかにおれの姿が見えないものだろうか」// 田舎の道を歩いていた少年が、空を見上げて叫んだ。/「あ、母さん、見てごらん! 流れ星!」/ イリノイ州のたそがれの空を、まっしろに輝く1つの星が走った。/「願いごとをおっしゃい」と、母親が言った。「願いごとをおっしゃい」
    「万華鏡」 レイ・ブラッドベリ


  • 久里浜の少年院から脱走した島村ジョーは怪しい男たちに拉致され、潜水艦の中で改造される。ブラック・ゴーストの9番目の戦士として。ギルモア博士を「人質」に取って幽霊島から脱出した9人のサイボーグたち‥‥「誕生編」のプロローグを描き直した「地下帝国 “ヨミ” 編」(少年マガジン 1966-7)は掲載誌を変えながら長きに渡って描き継がれた009シリーズの中でも屈指の長編である。命知らずのプロ・レーサーとして優勝を重ねるハリケーン・ジョーは駐車場で少年鑑別所時代の不良仲間3人と再会する。小さな運送会社を営んでいるという茨木、小山田、メリーは島村ジョーの家に招待されるが、室内に侵入した1匹の蠅によって和やかな空気は一変してしまう。躰に仕込まれた武器でジョーに襲いかかる彼らはブラック・ゴーストの放った刺客だった。負傷したメリーを乗せてミゼットで逃走する3人。彼らの後を追跡するジョー。アジトに辿り着いた3人はジョーとの戦いで爆死する(彼らの躰には爆弾が仕掛けられていた)。ジョーはアジト小屋の中に囚われていた少女ヘレンを救出する。彼女の父親・英科学者ウイッシュボンは「黒い幽霊団」の命令に背いて行方不明になったという。

    ヘレンを連れて自宅へ戻るスポーツ・カーの後を尾けるブ・トール‥‥垂直上昇機を操縦しているのは日本へ来た004だった。3人を乗せたブ・トールが向かった先はギルモア博士と001が2年がかりで造った水陸空地底用の船ドルフィン号だった。超音波で建物を破壊し、人間を死傷する「空飛ぶ怪獣」の出現!‥‥「黒い幽霊団」の仕業に違いないと直感したギルモア博士は中国や英国、フランス、アメリカに散らばっているサイボーグ戦士たちを招集する。しかし、アフリカで密猟取締官をしている008には「黒い幽霊団」の魔手が逼っていた。密林の中でジョーが008を発見した時、巨大アリゲータの超音波によってピュンマの下半身が失われてしまったところだった。「黒い幽霊団」は電波ジャックしてTVモニタにプテラノドンの超音波によって破壊されたNYCの映像を全世界へ流す。敵のスパイではないかと疑う004はヘレンにアクアラングを着けて船外へ連れ出す。ミサイルざめやエイの大群、超音波海獣の攻撃!‥‥危機一髪で窮地を逃れたドルフィン号。改造室から全身の皮膚が銀色の鱗に覆われた008が現われる。

    超音波怪獣を倒す対超音波砲を開発したという日本の三友工学。箱根にある社長の邸宅へ調査に向かう島村ジョー。高い塀を跳び越えて敷地内に潜入したジョーは窓の外から室内にいるヘレンの姿を目撃する。その直後、不気味な原人に頭部を殴られて気絶するが、塀の外で頭に包帯を巻かれた姿で意識を回復する。ギルモア邸に戻ったジョーは、なぜ箱根に行ったのかとヘレンを問い詰める。しかし彼女は1歩も外へ出ていなかった。海中に現われた超音波怪獣ウルスは生身の恐竜だった。ヘレンを連れて再び箱根の屋敷に忍び込んだジョー。彼女に甘えるような仕草をして戯れる水棲獣ハフ。ライフル銃で2人を威嚇する社長のバン=ボグートはジョーの疑惑に応えてカメレオンのように姿形を自在に変える変身獣レオンを見せる。インド人の顧客に変装して三友工学に乗り込んだ006と007は「黒い幽霊団」に見破られて逆に捕まってしまう。2人の安否を心配したジョー、003、005も三友工学へ行く。3人を非常口で出迎えたのはヘレンに瓜二つの娘ビーナだった。

    サイボーグマンたちを倒し、006と007を救い出し、対超音波砲を奪って帰還した一行はヘレンが催眠術をかけられ、記憶を消されて送り込まれたスパイだったこと、彼女たちが地底人であること、「黒い幽霊団」の秘密基地が地下帝国ヨミにあること、対超音波砲が100km四方の人間を狂人にしてしまう兵器であることを知る。サイボーグマンたちを引き連れたバン=ボグートがギルモア邸に現われる。009とボグートの対決はドルフィン号の援護射撃によって辛うじて引き分けに終わった。バン=ボグートの屋敷近くにある噴火口から地底へ侵入するドルフィン号。地下を掘り進んで地下洞へ出る。しかし、それは「黒い幽霊団」の計画通り、彼らの思う壷だった。鍾乳洞のような空間に着いたドルフィン号は落盤に遭い、溶岩流に呑み込まれる。009たちはドルフィン号から脱出して横穴へ逃れるが、ボグートの操縦する螺旋形の地底戦車の突進によって二手に分断されてしまう。巨大なアリ地獄のような砂漠の底に落ちてしまった009、003、005、006、001、ヘレンと、凶暴な原人(ルタール人)に襲われる004、007、008、002、ギルモア博士、ビーナとに‥‥。

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    ビーナは地底世界の元支配者だったザッタン(大トカゲ)の姿に007を変身させて窮地を脱する。一方、009たちはザッタンに催眠術をかけられてしまう。ザッタンを科学兵器で追い払った「黒い幽霊団」の思惑。地上世界の人間たちを滅ぼして地上に新しい社会を築くという地底人(プワ=ワーク人)の願い。私たち地底人はザッタンの食用肉だったというビーナ(一卵性五生児)の告白。地底海に辿り着いたギルモア博士たちはザッタン捜索用のロボット部隊や戦車に包囲され、銃を捨てて「黒い幽霊団」に降伏する。ビーナを連れて逃走した004は009たちの一行と出合うが、ザッタンに操られた009に銃で撃たれる。捕虜として地底島の神殿に引き連れられたギルモア博士たちは「黒い幽霊団」の総統(巨大な神像)に謁見させられる。囚われの身となった彼らをヘレンの妹ダフネが逃がす。逆にロボット部隊に発見されて捕まった004とビーナ。巨大なシーラカンスに船ごと呑み込まれた009たちは「黒い幽霊団」の潜水艦に攻撃されるが、目を醒ました001の超能力に救われる。

    中央闘技場で004の処刑を執行するというバン=ボグートの罠に誘き出された裏切り者の3姉妹(ダイナ、アフロ、ダフネ)。磔にされた004とビーナを救出に来た002、007、008。ザッタンの催眠術から解けた009も中央闘技場へ急ぐ。バン=ボグートとの2度目の対決。「黒い幽霊団」とサイボーグ戦士たちの闘いに乗じて、ザッタンの大群も神殿に総攻撃を仕掛ける。「黒い幽霊団」の無人戦闘機、戦車隊とザッタンの戦闘。超音波怪獣の援護攻撃に「黒い幽霊団」の対超音波砲が応じる。地底に舞い降りたザッタンが地底人兵士に催眠術をかけて味方にする。ロボット部隊(対ザッタン用サイボーグ)とザッタンの戦い。神殿から飛び立った巨大神像が熱線でザッタンと超音波怪獣を一網打尽にする。バン=ボグートが捕虜のギルモア博士とヘレン、ビーナの人質交換を要求する。裏切り者の5姉妹を容赦なく射殺するボグート。009とボグートの3度目の戦いに決着をつけたのはビーナを殺されて怒りに燃える004の一撃だった。

    黒いドクロ仮面の怪人スカールと009の最終対決!‥‥魔神像の熱線を001が防ぐ。地底国ヨミに水爆を仕掛けて火口から地上へ脱出した「黒い幽霊団」の神像内へ、001の精神移動によって009が送り込まれる。サイボーグマンとの戦い。スカールに背後から襲われて首を絞められた009は「黒い幽霊団」の正体‥‥透明な防御ケースに入った3つの頭脳を薄れ行く意識の中で垣間見る。3つの脳は009に「黒い幽霊団」が不滅であることの理由を3つ語る。電磁バリヤーによってスーパーガンが届かないこと、我々が「黒い幽霊団」の細胞の1つにすぎないこと、そして《「黒い幽霊団」ヲ殺スニハ地球上ノ人間ゼンブヲ殺サナケレバナラナイ! ナゼナラ「黒い幽霊団」ハ人間タチノ心カラ生マレタモノダカラ。人間ノ悪ガミニクイ欲望ガ作リアゲタ怪物ダカラ!》と。内部から神像を破壊しようとする009。成層圏に浮かんだ魔神像の大爆発!‥‥宇宙空間に投げ出された009は加勢に来た002に抱かれて地上へ落下して行く。夜空に輝く流れ星を発見した姉弟が願いごとをする。弟は「おもちゃのライフル銃」を。姉は「世界に戦争がなくなりますように‥‥世界中の人がなかよく平和にくらせるようにって‥‥」。

    地下洞、溶岩流、地下砂漠、地下海‥‥009たちが噴火口から降りて行く地下帝国「ヨミ」はマーシャル・ガードナーの「地球空洞説」を想わせるし、プワ=ワーク人やルタール原人などの地底人やザッタン、プテラノドンやウルスなどの超音波怪獣、ハフやレオンなどの地底動物たちも奇想天外で驚異に満ちている。彼らを利用して地球征服を企てる「黒い幽霊団」、元支配者のザッタン、サイボーグ戦士たちの三つ巴の闘いは息も吐かさぬ面白さ。2重構造になっている水陸空地底用艇ドルフィン号や螺旋紡錘形の地底戦車のデザインもカッコ良い。スパイとしてサイボーグ戦士の許へ潜り込まされたヘレンやビーナたち(一卵性五生児)の存在もミステリアスで魅力的だし、「黒い幽霊団」の幹部がバン=ボグートというネーミングにも笑える。地下世界から地上、成層圏へと垂直に視点移動するクライマックスや夜空を見上げる姉弟に視点を転じたラスト・カット(レイ・ブラッドベリの短篇からの借用)も流れ星のように長い余韻を残す。

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  • 「怪物島編」(冒険王 1967)
  • 刑務所から脱走したチンピラ3人が高い塀を張り巡らした屋敷内に侵入する。3人に襲いかかる死人、鉄喰いネズミ、巨人、凶暴鹿、毒虫‥‥。それらは獣頭人身の科学者たち(ドラキュラ博士、アリゲータ先生、コング氏、獅子頭博士、ドクターマム氏)が造り出したモンスターだった。「狂い虫」に刺されたものの、湖に飛び込んで生き延びた角丸八郎は散歩中の島村ジョーとフランソワーズに発見されてギルモア邸に保護される。「黒い幽霊団」の魔神像を成層圏で破壊した009と002は地球へ落下した。大気圏に突入して躰が燃え出し、意識を失った時に001が精神移動させて2人の命を救ったのだった。TVニュースが2人組の銀行強盗犯を捕らえたら「死体」だったと、2人は2週間前にムショを脱走した囚人だったと伝える。帰宅したジェロニモを見た少年は一瞬正気に戻る。サイボーグ戦士たちのショック療法で正気に返った少年は仲間が凶暴動物や毒虫に殺されたことを思い出す。彼らが忍び込んだという四方山林の奥に建つ別荘へ009、006、007が偵察に向かう。

    角丸八郎の姿に変身した007たちを不審に思った異形の科学者たちが「怪物」を放つ。毒虫や凶暴鹿、巨人、動く死体と009たちの戦い。屋敷から朝顔型円盤が飛び出して無差別攻撃を仕掛ける。007は鳥に変身して逃げ去る朝顔型円盤を追うが、逆襲されて大火傷をした鳥(焼き鳥のオバケ!)の姿で逃げ帰って来る。後を尾けて来た円盤の熱線攻撃でギルモア邸は全焼してしまう。地下に避難していた009たちは全員無事だったが‥‥。偵察中の002が海上に浮かぶ巨大マグロの死体を発見する。潮の流れの先に敵のアジトを見つけた002に巨大サメが襲いかかる。漁船に乗って島へ上陸するサイボーグ戦士たち。そこは巨大カモメ、巨大カニ、巨人たちなど、巨大生物を造り出していた「怪物島」だった。朝顔型円盤で島から脱出する科学者たち。同じ円盤に乗って彼らの後を追う009たち。巨大鳥の大群に襲われてジェット噴射口が故障した円盤は追跡を諦めて島へ戻る。脳下垂体成長剤と四次元光線による「ジャイアント・マシン」「死体リモコン装置」「毒虫養育器」「鋼鉄ネズミ製造機」「アニマル脳波制御マシン」‥‥怪物島は彼らの研究所と怪物製造工場を兼ねていたのだ。

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  • 「中東編」(冒険王 1967-8)
  • イスラエルとアラブ連合の中東戦争に巨人や鉄喰いネズミが現われたという噂をTVニュースで報った009たちは朝顔型円盤に乗って中東へ向かう。イスラエル群の戦車隊を引きずり込む巨大なアリ地獄、毒虫に刺されて狂ったアラブ軍兵士たち。円盤内に保護した1人のアラブ兵の口から毒虫が飛び出す。時限爆弾が仕掛けられた兵士を005が外へ投げ出す。爆発のショックで朝顔型円盤が倒れ、巨大なサソリたちが襲撃する。損傷した円盤を見捨てて果てしない砂漠を歩くサイボーグ戦士たち。丘の向こう側にある建物で休息するや否や馬賊たちとの戦闘が始まるが、005の怪力に驚いて逃走する。石造りの建物の中には遺跡調査中に捕まった考古学者ドロイタ・モウと娘のクリシーナ、人語を喋るラクダ夫婦がいた。建物の上にモーゼと名乗る怪人が現われて、ここから立ち去らなければ神の怒りが降り注ぎ、地獄に堕ちると警告する。モーゼ氏は放電ツエで建物を破壊し、砂の海を真っ2つに引き裂いて宇宙人のような巨人を出現させる。しかし、003が周囲の石壁を撃つと巨人の姿もモーゼ氏も消え去ってしまう。怪人たちは四方から放射された特殊光線の作り出した幻影だった。

    009と002はモーゼ氏の乗る飛行艇を追って砂漠の下にある秘密基地に潜入する。しかし、それもモーゼ氏の仕組んだ罠だった。004、006、007は男女2人の脳が組み込まれた二瘤ラクダ夫婦に案内されて地下基地の入口へ向かう。岩の割れ目から侵入した004たちはモーゼ氏の操る巨大怪物によって凍らされてしまう。巨人兵たちに攻撃されてギルモア博士たちも窮地に陥っていた。003の零した涙が胸に抱いていた001を永い眠りから目覚めさせる。001は落下する瓦礫を空中で止め、巨人兵たちを同士討ちさせる。さらに放電ツエに倒れた009の目を醒まさせようとするが、モーゼ氏の放った脳波攪乱機の電動波が精神波を妨害する。辛うじて意識を回復した009は加速装置で透明な檻から脱出して、攪乱機の制御装置を破壊。001が地下水道で凍りついた004たちの躰を溶かす。009と002が彼らを救助して岩の割れ目から外へ出る。最期に001が巨大怪物(冷凍ロボット)に指令を送ると、あらゆる物質は絶対零度で凍った後に破壊され、地下要塞が砂漠の中に沈む。

    「冒険王」に連載された009シリーズ「怪物島編」「中東編」は「ヨミ編」に較べると見劣りする。「怪物島編」の科学者たちはミュートス・サイボーグのようなサイボーグなのか、それとも動物のマスクを被っているだけなのか、何故かライオンやゴリラ、ワニなどの顔をしているし、怪物島から逃走した彼らは行方知れずのままで、次の「中東編」にも一切登場しない(巨大アリ地獄や巨大サソリ、毒虫は出て来るが)。盗賊に捕まった考古学者のドロイタ・モウは瓦礫の下敷きになって死んでしまうし、人語を喋るラクダ夫婦もモーゼ氏の手下に射殺されてしまう。1人生き残った娘のクリシーナが活躍する場面もない。放電ツエを振りかざし、砂漠を真っ2つに裂くモーゼ氏のパフォーマンスも虚仮威しに映る。怪物島の科学者たちが造った巨大モンスターやモーゼ氏の操る「地獄の怪物」(冷凍ロボット)のように、ストーリよりもスペクタクルを重視したシリーズになっている。「少年マガジン」よりも「冒険王」の方が読者対象年齢が低かったのだろうか?

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    • 「石ノ森シリーズ」の第11弾は「ゼロゼロナイン2」です^^

    • 「石ノ森章太郎萬画大全集」(角川書店 2006)をテクストに使いました

    • 「万華鏡」は『刺青の男』(早川書房 1976)から引用しました
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    サイボーグ 009 6 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 2-6

    サイボーグ 009 6 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 2-6

    • 著者:石森 章太郎
    • 出版社:角川書店
    • 発売日:2006/05/31
    • メディア:コミック
    • 目次:プロローグ / ハリケーンジョー / 再開 / 集合 / 黒い幽霊の挑戦 / 不信と和解と‥‥ / 攻撃開始 / 地下へ! / 扉絵コレクション


    サイボーグ 009 7 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 3-1

    サイボーグ 009 7 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 3-1

    • 著者:石森 章太郎
    • 出版社:角川書店
    • 発売日:2006/08/31
    • メディア:コミック
    • 目次:地下へ(承前)/ 地下帝国 “ヨミ” / 決戦 / 地上より永遠に


    サイボーグ 009 8 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 3-2

    サイボーグ 009 8 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 3-2

    • 著者:石森 章太郎
    • 出版社:角川書店
    • 発売日:2006/08/31
    • メディア:コミック
    • 目次:怪物島編 プロローグ・新しい事件のはじまり / 過ぎ去りし日々 / 巨人現わる / ショック療法 / 怪人屋敷 / 逆襲 / 島へ!/ 上陸作戦 / 怪物島の最期/ 中東編 中東戦争 / 襲撃 / イラストコレクション /「サイボーグ009のこと」


    サイボーグ 009 9 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 4-1

    サイボーグ 009 9 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 4-1

    • 著者:石森 章太郎
    • 出版社:角川書店
    • 発売日:2006/11/30
    • メディア:コミック
    • 目次:中東編(承前)モーゼ / 罠 / 地獄の怪物 / 絶対零度 / 移民編 交通事故 / かわいい鬼 / 小笠原・北硫黄島 / 追跡 / プログラムE / 時間砲 / 問答

    サイバー・キャット 11

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    • 旧サイバー・ショット(Cyber-shot DSC-P8)で撮ったネコ・アルバム集です

    • 第11弾は灰黒猫のサビくん。未発表ショット(5枚)も蔵出し初公開!^^;
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    スニーズ・コメンツ #29

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  • 当時のテレビはこぞってその事件を報道していた。が、無事に助かったという乗客たちは皆心神の衰弱が激しく、その記憶にも曖昧なところが多かった。そう、鷹野は記憶している。結局のところ、事件に対する明確な説明のつけようが他になかったためか、当時の報道は乗客の1人の言った『次元の狭間に落ちていた』という観点に立ち、その道の専門家が呼ばれていたのだと思う。/「『ランゴリアーズ事件』って呼ばれているんだけど、あの事件。‥‥ホラー作家のスティーブン・キングの書いた小説に『ランゴリアーズ』っていうのがあってね。それが飛行機が行方不明になる話で、状況がよく似てるからってマスコミにそう呼ばれるようになった。まぁ実際と小説とでは本当は全く話が違うんだけど」/ 清水は、自分の記憶を慎重に辿っている様子だった。/「事件の概要はさっき深月や明彦さんが言った通りなんだけど、でも1つ違うところがある。ランゴリアーズ事件は、乗客全員が助かったわけじゃないよ。犠牲者が出たというのとも少し違うんだけど、行方不明者が1人出た。‥‥ロベルト・フォードって言ったかな。ボランティアとか福祉事業なんかに積極的に携わっていたアメリカの学生で、彼だけが帰ってこなかった
    辻村 深月 「冷たい校舎の時は止まる」


  • ♭ ツタンカーメン〜空洞説(写真で綴る)
    tumuziさん、こんばんは。豊島公会堂で寺山修司の戯曲が上演されていたとは驚きです。もう何10年も行っていないけれど、確か小学校の文化祭を豊島公会堂で行なったような記憶があります。その母校も十年ほど前に廃校になりました。松潤(嵐)が小学校の後輩だったとは!(註:還暦祝いする前に建て替えるべきでしょう)
                              by sknys (2012-12-01 20:15)

    ♭『子どもたちは夜と遊ぶ』 辻村 深月
    miyucoさん、こんばんは。それにしても長いなぁ‥‥やっと読み終わりました。ワープロ(パソコン)によって作家の執筆時間は短縮されたが、読書時間は変わらない。新本格かと期待したらサイコ・ミステリ、女版・綾辻行人かと思っていたら、森博嗣だった?‥‥月子の苗字が明かされないのは「林刑事」と同じ趣向(叙述トリック)ですね。3人称の視点が目まぐるしく変わりすぎるところも。木村浅葱の独白はボルヘス言うところの「当てにならない話者」。1人称視点の「エピローグ」で描写される恭司はレクター博士や真賀田四季を想わせなくもない。エンターテイメントとしては悲惨で痛々しくないか、萩野清花が救われないじゃないか!‥‥など、不可解なところもあるけれど。次に読むべき辻村深月のミステリは?(註:「ぼくのメジャースプーン」(2006)とのことです)
                              by sknys (2012-12-28 00:51)

    ♭ 2012年展覧会回顧 ── MOMAT 60周年
    千露さん、こんばんは。2012年、東京国立近代美術館が開館60周年を迎えました。誕生日に行ったので無料で鑑賞出来た「ジャクソン・ポロック展」、冷房の効きすぎで肌寒かった「バーン=ジョーンズ展」(三菱一号館美術館)。「大エルミタージュ美術館展」は見逃してしまいました。「ポール・デルヴォー展」(埼玉県立近代美術館)には行く予定です。
                              by sknys (2012/12/31 23:57)

    ♭ あけましておめでとうございます
    miyucoさん、明けましておめでとう。巳年(2013)もよろしくね。紅白は大嫌いなU働アナが出ているので見なかった‥‥というか毎年、完全無視です。きゃりぱみゅだけは気になりましたが、少女アイドル・グループは全員口パクなのでしょうか。松潤は小学校の後輩なので、陰ながら応援しています。『冷たい校舎の時は止まる』(講談社 2004)を読み始めちゃった。辻村深月という作者と同姓同名のキャラ(「辻」のシンニュウが違うけれど)が出て来る。今のところ、超オカルト模様?‥‥無事ミステリに着地するのか不安です。
                              by sknys (2013-01-02 23:48)

    ♭ 根津神社の白蛇守り鈴 ── 白蛇抄
    トミー。さん、明けましておめでとう。巳年もよろしくね。「あなたが蛇だったのですね」(京極堂風に)。楳図かずおの『へび少女』(1966)は怖かったなぁ。クラスの女子生徒が男子に「ヘビ女」や「半魚人」を見せるわけです。根津神社の「白蛇」は可愛いけれど。
                              by sknys (2013-01-06 17:27)

    ♭ Mylene Farmer「Monkey Me」
    ぶーけさん、明けましておめでとう。Laurent Boutonnatが復帰して一安心?‥‥2人のコンビ(作詞・作曲)はマンネリのような気もしますが、アート・ワークも含めて前作よりは良いと思います。暗鬱で耽美的なミレーヌ姫が好きなので、〈Nuit d'hiver〉のような曲がもっとあっても良かったかな。〈A l'ombre〉のオフィシャルPVはグロいなぁ。Wikipediaにはコンゴ生まれの仏アーティスト、オリビエ・デ・サガザン(Olivier de Sagazan)の作品にインスパイアされたと書いてありますが。
                              by sknys (2013-01-06 20:02)

    ♭ 謹賀新年、そしてParis
    marikzioさん、明けましておめでとう。Robertさんは《Aux Marches Du Palais》(DEA DA25810)も出ていますね。思わずジャケ買いしちゃった。そう言えば、アルバムに貼ってあるステッカーに「EN CONCERT AU CAFE DE LA DANSE / LES 11 ET 12 JANVIER 2013」と記されていますね。良い旅を‥‥。
                              by sknys (2013-01-08 23:52)

    ♭ その他のあれこれ
    tumuziさん、こんばんは。Godspeed You! Black Emperorのアルバムを聴いています。ロキシーやルーは未購入ですが、ジョニ・ミッチェルの10枚組をタワレコで買いました。アマゾンだと¥2000円ぐらい?‥‥1枚、約200円という超低価格。ミラーレス(Sony NEX-5N)のキット・レンズは暗いにゃぁ。公式サイトのEマウント「レンズロードマップ」によると、2013年にカールツァイスの標準ズームと高性能標準ズーム(Gレンズ)が出そうなので愉しみ。
                              by sknys (2013-01-22 21:17)

    ♭ BLオン・ザ・ラン!
    モバサムさん、こんばんは。一昔前には「やおい」と呼ばれていた際物でしたが、いつの間にか書店(コミック・フロア)の一角を占めるまでに急成長‥‥。「レズ」ではなく、なぜ「ホモ」なのか、「ボーイズライフ」と間違えて買ったりしないか。「少女マンガ」を買いに行く時は、「BL」コーナーには近寄らないようにしていますが。ホモセクシャル(同性愛者)は煉獄〜地獄に堕ちるというオチ?
                              by sknys (2013-02-16 20:09)

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    こにゃさん、こんばんは。「未更新blogへの広告」は有料化しなくても非表示に出来ます。

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                              by sknys (2013-02-20 22:48)

                        *

    ブログ記事に付けた「外コメント」を纏めてみたら結構面白いかも?‥‥というアイディアから生まれた再録シリーズの第28集です。コメントは原則としてオリジナルのまま時系列順に転載‥‥事実誤認(誤記)や誤字・脱字、改行の無効化、句読点や記号・顔文字の有無などを精査。内容の分かり難いコメントには補足説明(註)を加え、コメントした元記事にリンクしました。過去3ヵ月間(2012/12/01〜2013/02/28)に書いたものの中から、第三者がコメントだけ読んでも面白いものを中心にセレクトしています。『冷たい校舎の時は止まる』(講談社 2004)は雪の降りしきる校舎の中に閉じ込められた高校3年生8人が1人ずつマネキン人形に姿を変えて消えて行くというオカルト・ミステリ。「吹雪の山荘」「嵐の孤島」という舞台設定。「そして誰もいなくなった」みたいなストーリ展開。学園祭の最終日に校舎の屋上から飛び降りて自殺した生徒(?)の「脳内世界」ならば、何が起こっても不思議じゃない。『子どもたちは夜と遊ぶ』(2005)よりも長いのは「叙述トリック」が2つも仕掛けられているから?

                        *


    Monkey Me

    Monkey Me

    • Artist: Mylene Farmer
    • Label: Polydor Import
    • Date: 2012/12/11
    • Media: Audio CD
    • Songs: Elle A Dit / A L'Ombre / Monkey Me / Tu Ne Le Dis Pas / Love Dance / Quand / J'Ai Essayé De Vivre... / Ici-Bas / A-T-On Jamais / Nuit D'Hive / A Force De... / Je Te Dis Tout


    Aux Marches Du Palais

    Aux Marches Du Palais

    • Artist: RoBERT
    • Label: Dea
    • Date: 2012/11/29
    • Media: Audio CD
    • Songs: Vent Frais / Où vas-tu Pauvre Boiteuse / Aux Marches Du Palais / Tu Es Laide / À La Claire Fontaine / Tue Tes Poux / Trois Jeunes Tambours / En Passant Par La Lorraine / Colchique Dans Les Prés / Il Pleut Bergère


    へび少女

    へび少女

    • 著者:楳図 かずお
    • 出版社:講談社
    • 発売日:2010/11/12
    • メディア:文庫
    • 収録作品:ひびわれ人間 / 4年めがこわい / へび少女


    冷たい校舎の時は止まる 上

    冷たい校舎の時は止まる 上

    • 著者:辻村 深月
    • 出版社:講談社
    • 発売日:2004/06/08
    • メディア:新書
    • 目次:フラッシュバック / 初雪 / きっかけの日 / 女友達 / 事件当日 / おばけなんかいないさ


    冷たい校舎の時は止まる 中

    冷たい校舎の時は止まる 中

    • 著者:辻村 深月
    • 出版社:講談社
    • 発売日:2004/07/06
    • メディア:新書
    • 目次:明るい絶望 / 消えた1人 / ガラスの森 / 暗闇から手をのばせ / 不幸自慢 / CRAZY FOR YOU


    冷たい校舎の時は止まる 下

    冷たい校舎の時は止まる 下

    • 著者:辻村 深月
    • 出版社:講談社
    • 発売日:2004/08/06
    • メディア:新書
    • 目次:スカーレット / あたしはここよ / HERO / カウントダウン / 解決編 / 冷たい校舎の時は止まる / 雪の終わり / ひとつだけ / エピローグ

    体罰撤廃だ!

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  • 4月に友人が『復興のために経済を回さないと』と、10人ほどで集まるお花見の会に誘ってくれました。桜はとてもきれいでした。そこに来ていた人に『福島はどうなるんでしょう、避難している村や町の人たちはどうなるんでしょう』と聞いたら /『1986年にチェルノブイリで原子力発電所が爆発する事故が起こり、土壌が放射線物質で汚染された。それで、土壌をきれいにするために、なのはなや麦を植えている。日本もそうすればいいと思う』そう答えてくれました。/ 家に帰ってネットで調べたら、たくさんの記事がありました。植物が、土をきれいにしてくれるのです。福島のあちこちの場所でもその試みは始まっていました。/ それを聞いて私は、仕事をしたいという意欲がわいてきました。たくさんのなのはなが咲く話を描きたいと思いました。それが希望になるといいと思いました。私にとっても、誰かにとっても。
    萩尾 望都 「なのはなと‥‥」


  • ⃞ お神酒片手で泣いた夜に、女体撫でて高樹澪
    私の生まれた福岡市では雛壇に白酒を供える風習があった。急逝した女友達を弔うために久しぶりに帰郷した私は通夜の席で白酒を飲みながら、雛祭りの日に招かれて行った彼女の家に飾られていた雛人形を懐かしく思い出す。内裏雛、三人官女、五人囃子、随身、仕丁‥‥赤い毛氈に鎮座する豪華絢爛たる雛人形たちは目映いばかりだった。雛壇の前で1匹の猫が気持ち良さそうに眠っていた。あのネコは何という名前だったかしら。今、雛人形が飾られていた場所には仏壇があり、その前に棺が置かれている。棺桶の小窓を開けて安置されている亡き友と対面する。彼女の体を強く抱きしめたいという衝動に駆られたが、歯を食い縛り震える手で彼女の顔に触れるだけに留めた。雛祭りの日が通夜になるとは!‥‥その後のことは良く憶えていない。葬儀の日、二日酔いで痛む頭の中で、あるメロディがエンドレス・テープのように繰り返し回っていた。King Crimsonの〈Epitaph〉‥‥学生時代の親友が大好きな曲だった。

    ⃞ 萎れ枯れかけた花は野中、菜の花畑、彼がレオ氏
    1986年、チェリノブイリで原子力発電所の爆発事故が起こって、土壌が放射能物質で汚染されてしまった。しかし、菜の花や麦などの植物を植えることで、汚れた土壌を綺麗にしてくれるという。植物には大気や大地を清める浄化作用があるらしい。フクシマを訪れたレオ氏は津波による被害(塩害)と目に見えぬ放射能に汚染された土地、荒れ果てた光景を前にして嗚咽を堪えることが出来なかった。黄色い花々が咲き乱れ、蝶や蜂が飛び回っていた「菜の花畑」は今や見る影もない。いつの日か必ず来るに違いない、花畑の中で愉しそうに遊び回る子供たちの姿を想像して涙ぐむ。その時にはオレも花の匂いを嗅いで、思いっ切り野原を駆け回って遊ぶんだと、連れの女性に無我夢中で語りかけるレオ氏。彼は日本語(人語)を話せなかったが、女主人にはレオくんの言っていることが良く理解出来た。

    ⃞ 絆・ワイルド・キャット、彦根のネコ、1つ焼き獲る岩魚好き
    昨年の9月某日、月がチェシャ猫の目のように細くなる「魔夜」に神社の境内で狼と大山猫(リンクス)の対決を目撃した彦根のネコ(ひこにゃん)は強敵に少しも怯むことなく正々堂々と闘いを挑んだ大山猫の勇姿に鳥肌が立つほど感動していた。出来ることならば、もう1度会いたい、会って勇気を讃えたい。いかにワイルド・キャット(大山猫)が勇敢で頼もしかったかを‥‥。ひこにゃんの願いが叶うのに余り時間はかからなかった。冬の森の中をパトロールしている時に偶然出会った大山猫は強面で近寄り難かったけれど、ひこにゃんが狼との死闘に身も震えるくらい感銘を受けたと言うと、ワイルド・キャットは気を許したのかネコ科の動物同士、直ぐに打ち解けて仲良くなった。今では川で獲った大好物の岩魚を1尾焼き、2匹で分け合って食べるほどの大親友となったのだ。ネコ族の「絆」は人間たちよりも強く堅く結ばれているにゃん。

    ⃞ 立ち眩む、竦みのベアー‥‥「アベノミクス」村朽ちた
    冬眠から目覚めた月の輪熊は不機嫌だった。人間どもの森林破壊による食料不足が祟り、就寝前に好物のドングリを腹一杯食べられなかったので、例年よりも早く起きてしまったからだ。まだ肌寒い北風が吹き荒む3月初旬、空腹のクマは森から降りて、麓の人里へ向かう。運悪く村人と鉢合せすれば一騒動あり、最悪の場合には射殺されるリスクを賭しても、空腹には逆らえない。農作物を目当てに下山して村に着いたクマは一変してしまった農村風景を一望するなり我が目を疑った。農地は荒れ果て、作物も何1つ実っていない。農家には人気がなく、農民の姿も誰1人として見かけない。これが冬眠前と同じ村なのか、寝ている間に時空が歪んで、どこか別の場所にテレポートしてしまったのか、それとも数百年後の未来へタイム・ワープしてしまったのか?‥‥「死の村」を目の当たりにして立ち眩み、竦んだのは決して空腹のせいだけではないだろう。茫然自失したクマには自分以上に凶暴で無慈悲な怪獣「アベノミクス」が日本中の農村を滅ぼしてしまったことを知る由もなかった。

    ⃞ 葛城全域危機、隕石落下!
    2013年2月15日、ロシア南部のウラル地方・チェラビンスク州一帯を襲った隕石の映像は強烈だった。負傷者約1600人、被災した家屋約7千棟という被害の大きさにも驚いたが、これだけ数多くの映像がネット上に溢れたのも前代未聞の事件だった。隕石の落下映像の多くは車載カメラの「ドライヴ・レコーダ」に記録されていたものだという。ロシア国内ではスピード違反や飲酒運転による交通事故が多発していて、事故調査や事後裁判には「ドライヴ・レコーダ」の映像が欠かせないらしい。この終末SF的な映像をTVや動画サイトで視聴した人々の多くは、もし巨大隕石が原発を直撃したら!‥‥と危惧したことだろう。地震や津波への安全対策は整備出来たとしても、空から降って来る隕石や人工衛星を防ぐことは不可能だろう。原発に墜ちる可能性は低いかもしれないが、決してゼロではない。世界の、日本のどこか?‥‥たとえば、奈良中西部の葛城市(2004年に2つの町が合併した)に隕石が落下したとしても不思議じゃない。ハレー彗星の出現を心待ちにしたり、流れ星に願いごとをするのはロマンティックなことですが‥‥。

    ⃞ 脱原発デモ東北行く、暴徒も鉄板蹴った
    3・11の東日本大震災と原発事故から早2年。数万人規模とも報道された首相官邸前で毎週金曜夜に行なわれている反原発デモも今では数百人程度に減少してしまったという。熱しやすく冷めやすい国民性ゆえなのか、先の衆院選で脱原発を標榜した第三極が票を集結出来なかった結果なのか、再び政権の座についた自民党は原発再稼働へ向けて着々と布石を打っている。しかし、官邸前から消えた反原発デモ隊は密かに北上していたのだ。フクシマを目指して東北路を行脚するデモ隊は次第に先鋭化し過激化して行った。フクシマに辿り着いたデモ隊は疲労と空腹で苛立っていた。立入禁止地区の前ではデモ隊が鉄のフェンスを蹴り、暴徒化した一部の人々は機動隊のジュラルミン製の楯(ライオットシールド)さえも蹴ったのだった。脱原発デモの是非を問う僕もデモ隊の末尾に加わって東北へ向かっていた。何故ならば「東北」は「問う僕」でもあるわけだから。

    ⃞「僕の血みどろヴァレンタイン」‥‥異端、レア、迂路と道の窪
    聖ヴァレンタインの虐殺!‥‥ヴァレンタイン・デイにチョコを1個も貰えなかった男子生徒による凶行なのか、教室の中は「血みどろ臓物ハイスクール」と化していた。左右の手に2丁のサヴァイヴァル・ナイフを握りしめた少年は1時限目の授業が始まろうとするクラスに乱入して、次々と女生徒たちに襲いかかったのだった。突然の惨劇に立ち竦む男子、悲鳴を上げながら逃げ惑う女子‥‥和やかな朝の教室は一瞬にして阿鼻叫喚の地獄絵に豹変してしまった。異端作家のレア作品を映像化したカルト・ムーヴィ「僕の血みどろヴァレンタイン」。本邦初公開の映画を観終わって名画座を後にした僕は暗澹たる気分だった。たかがチョコぐらいでキレるなんて‥‥バカバカしい。僕も女の子からチョコを1個も貰えなくて落ち込んだ年もあったけれど、そんなことで逆恨みはしなかった。映画の主人公はサイテーじゃないか‥‥歩きながら物思いに耽っていると、突然目の前の視界が暗くなり、躰が宙に浮く。次の瞬間、尻餅をついて転んだ。掘り返していた舗道の穴の中へ落ちてしまったようだ。「血みどろヴァレンタイン」で真っ赤に染まった僕の目は工事中の立て看板と迂回路の標識を見逃してしまったらしい。

    ⃞ 来た大特価ドッキリ、ワクワク割り、Kit Katいただき
    朝刊の折り込みチラシをチェックすることから専業主婦Kさんの1日は始まる。彼女の目当ては上紙質のテラテラした新築マンションの広告などではなく、安売りスーパーの薄いチラシだ。98円均一、冷凍食品半額、アイスクリーム2割引、ポイント10倍!‥‥毎朝スーパーのチラシを見てから買い物に行く店舗と夕食の献立を考えるというのだから、年期も筋金もメタボ体型の中に入っている。今日の目玉商品はスーパーMの「Kit Kat」(mini 15枚)と不二家ホームパイ(ファミリーサイズ 40枚)だ。Mは人気店だから早く行かないと売り切れちゃう!‥‥と開店前から気もそぞろで、早朝から落ち着かない。掃除、洗濯などの家事を早々に終えてスーパーMに駆けつけたのに、既に不二家ホームパイは「売切御免」だった。それでも残り少なかった「Kit Kat」をゲット出来たのだから良しとしよう。午後のティータイムの茶請けは「Kit Kat」で決まりだわ。あの2つに割る音が快感なのよねぇ〜〜と1人悦に入り、弛んだ頬も更に緩む。ところでKさん、今夜のメニューは?

    ⃞ パニクったあたしストロベリー、リベロ、トスしたアタックには
    ストロベリー・フィールズは高校時代のバレーボール部OGが母体となったクラブ・チームである。9人制の「ママさんバレー」とは違って、6人制でリベロ(守備専門の選手)も採用されている。今日は地区予選の最終日、クランベリー・ナックルズとの宿命の対決で、勝ったチームが全国大会へ進む。言い忘れたけれど、あたしはストロベリーズのエース・アタッカー市子(渾名はイチゴ、イッチャン)。モデル体型の長い手脚を武器に這い蹲らせた男子は数知れず‥‥じゃなかったわ、相手のコートへ高速スパイクを叩きつける。宿敵との試合は相譲らず伯仲していた。他のチームには大差で圧勝出来るのに、クランベリーズとの試合だけは苦戦を強いられる。「赤い悪魔」には、どんなに強烈なスパイクも脱力フェイントも拾いまくるスーパー・リベロがいたからだ。あたしの渾身のスパイクを紙一重で拾ったリベロの意表を衝く2段トス〜アタックで逆転されてしまった。次の得点が相手のマッチポイントとなる絶体絶命の大ピンチに陥ってしまったから、さあ大変!

    ⃞ 裸眼は黒ゴスロリ、お馬鹿は下りろ、双六盤から
    双六「コスプレ女王さま」はアイドル、特撮ヒロイン、美少女アニメ・キャラなどの衣裳を入手してコスプレ・クイーンを目指すボード・ゲーム。メガネっ子のMは女子校に通う傍らメイド・カフェでバイトをして、お気に入りの衣裳の購入資金を得ていた。黒縁眼鏡を外してカラー・コンタクトに変え、黒い髪をピンク色に染めてネコ耳をつける。紺色のハイソックスを黒いニーソックスに履き替え、ミニスカ制服を黒いゴスロリ・ドレスに着替える。でも私はドジってしまった。コンタクト・レンズをバイト帰りの夜道で落として、お先真っ暗少女に‥‥。顔も可愛いしスタイルも抜群なのに、ド近眼なので段差に躓いて転んだり、迷子になってしまう。最悪のシナリオは暗黒魔女の「虎の穴」に落ちてしまうこと。お前はメガネを掛けていても天然アーパー娘じゃないかって?‥‥そうかもしれない。双六道中で一緒になったお姐さま(ドラッグ・クイーン?)には「おバカは下りろ、スゴロク盤から」って、ダメ出しされちゃった。コスプレ女王への道は遠いなぁ。

                        *
    • 回文と本文はフィクションです。一部で実名も登場しますが、該当者を故意に誹謗・中傷するものではありません。純粋な「言葉遊び」として愉しんで下さい

    • 『なのはな ── 萩尾望都作品集』(小学館 2012)から引用しました

    • ゴスロリ回文は「スニンクスなぞなぞ回文 #31」の解答です

     スニンクスなぞなぞ回文 #32

     くまモン◯▢△◯△◇そ◇△◯△▢◯んも撒く

     回文作成:sknys

     ヒント:大盤振る舞いだもん


                        *


    ナーダ

    ナーダ(NADA)

    • Artist: 高樹 澪
    • Label: Pony Canyon
    • Date: 1990/10/21
    • Media: Audio CD
    • Songs: サン・トワ・マミー / 雨の巴里 / 揺られてラプソディー / NOON MOON / 夢みるコラソン / 恋の女のストーリー / 反抗~レジスタンス / ダンスはうまく踊れない / NADA


    なのはな

    なのはな

    • 著者:萩尾 望都
    • 出版社:小学館
    • 発売日:2012/03/07
    • メディア:コミック
    • 収録作品:なのはな / プルート夫人 / 雨の夜─ウラノス伯爵─ / サロメ 20XX / なのはな─幻想『銀河鉄道の夜』

    P A L I N D E X 2 0 1 3

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    P A L I N D E X 2 0 1 32 0 0 9 ー 2 0 1 22 0 0 5 ー 2 0 0 8
    pal.311お神酒片手で泣いた夜に、女体撫でて高樹澪★★★★
    pal.312萎れ枯れかけた花は野中、菜の花畑、彼がレオ氏★★★★★
    pal.313絆・ワイルド・キャット、彦根のネコ、1つ焼き獲る岩魚好き★★★★
    pal.314立ち眩む、竦みのベアー‥‥「アベノミクス」村朽ちた★★★★
    pal.315葛城全域危機、隕石落下!★★★
    pal.316脱原発デモ東北行く、暴徒も鉄板蹴った★★★
    pal.317「僕の血みどろヴァレンタイン」‥‥異端、レア、迂路と道の窪★★★★
    pal.318来た大特価ドッキリ、ワクワク割り、Kit Katいただき★★★★
    pal.319パニクったあたしストロベリー、リベロ、トスしたアタックには★★★
    pal.320裸眼は黒ゴスロリ、お馬鹿は下りろ、双六盤から★★★★

    サイバー・キャット 12

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    • 旧サイバー・ショット(Cyber-shot DSC-P8)で撮ったネコ・アルバム集です

    • 第12弾は茶虎猫のレッドちゃん。未発表ショット(6枚)も蔵出し初公開!^^;
                        *


    デルヴォーの夢

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  • けれどもあのスーツは、まさに私が着ていたものだった。熱い夜の中で気がつくと私はまた裸になっている。満月だ。学術会議の場に入るものだと思っていたが、ここは先ほどの町の柱廊だ。ただし誰もいなくなっている。それでよかった。というのも私の胸には乳房が生え、腹はさらに丸みを帯び、ももは丸く広がり、膝も緩やかになってしまったからだ。大きな目をした1人の女の身体の中に入ってしまったのだ。自分が両肩をくすぐるほど長い髪をしていることが感じられる。私はあの金髪の遊び女にさぞかし似ていることだろう。慣れない窪みのせいで歩きぶりもおぼつかない。マルクス・アウレリウスの騎馬像に出くわす。それが変装した細分化の専門家であることを見破れるかと思い、一瞬目配せや視線、馬の鼻孔のおののきを認めたようにも思えたが、像の腕は私がやって来た場所を指し続けている。幻覚は消え、私は男1人、あるいは1人の女として取り残される。伯父か、その補佐役でもいいから誰かまた見つけることができるならば、もう何をあげてもいい。けれども私は人に与えるものは本当に何も持っていない。それにいったい誰に与えるというのか。自分自身の身体さえ持ってはいないのに。たとえ骸骨でさえ、やって来るならば大歓迎だ。
    ミシェル・ビュトール 「囚われの女」


  • 8年振りの「ポール・デルヴォー展」も前回と同じく鹿児島〜府中〜下関〜埼玉‥‥と都内23区を避けて巡回している。デルヴォーやレメディオス・ヴァロなどシュルレアリスム絵画展を開催して来た伊勢丹美術館(東京・新宿)が2002年に閉館してしまったからだろうか。今回の「デルヴォー展 夢をめぐる旅」は初期の風景画から晩年の絶筆画までを油彩・水彩、習作・素描など全84点で回顧する。シュルレアリスム時代の代表作が少ないのは寂しいけれど、その不在を埋め合わせるかのように鉄道模型やオイル・ランプなど、デルヴォーの愛蔵していたオブジェ(絵の中に描かれたモチーフ)が展示されている。出品作品の約半数は日本初公開とのことなので、まだ肌寒い早春に北浦和公園内の埼玉県立近代美術館まで足を運んだ。開館時間が午後5時半まで(夜間開館日はない!)というのは残念至極だが、都内の美術館のように混雑していないし、館内や公園の空気も都心よりも凛と澄んでいるような気さえした。

    「姿見」と透明ケースの中の「パレットと絵筆」が入場者を出迎える。「第1章 写実主義と印象主義の影響」は1920年代の初期作品。一番最初に展示されている小さな肖像画〈窓辺の若い娘〉(1920)を除いて、〈グラン・マラドの水門(南側の眺望)〉(1921)、〈北海の景色〉(1924)などの風景画が続く。印象派にしては地味な色合いで、作者名を明かさなければ誰もデルヴォーも絵だとは思わないだろう。それだけに〈森の小径〉(1921)の緑色が目に沁みる。「第2章 表現主義の影響」では風景画から一転して女性像が描かれる。〈カエルのいる沼〉(1923)、〈森の中の裸体像〉(1927-8)、〈バラ色のブラウスの若い女性〉(1932)、2人の女性が寄り添う〈女友だち(ダンス)〉(1936)‥‥。ベッドの上で横たわり、右手で頬杖をつく全裸の〈バラ色の婦人〉(1934)は生身の女性というよりもマヌカン人形やアンドロイドのように見える。

    ポール・デルヴォー(Paul Delvaux 1897-1994)はベルギー・リエージュ州ワロン地方アンテイ生まれ(自宅はブリュッセルにあったが、母の実家で出産した)。小学校の音楽の授業に使われていた生物教室の人体標本(骸骨)に強く惹きつけられる。デルヴォー少年は当時ブリュッセルに開通した市電や週末や休日の家族旅行で乗った蒸気機関車にも熱中したという。高等学校ではギリシャ・ローマの古典文学を学び、ホメロスの「オデュッセイア」や父の蔵書の中にあったジュール・ヴェルヌの「地底旅行」(1864)を愛読。両親は父親と同じ職業(弁護士)に就くことを期待したが、デルヴォーはブリュッセル大学の法科ではなくブリュッセル王立美術アカデミーの建築科へ入学する。同国の先達ジェームズ・アンソールへの傾倒。ジョルジョ・デ・キリコの絵との出遭い。ブリュッセルで開催されていた見本市「スピッツナー博物館」(1934)の展示物‥‥ガラス・ケースの中に入った蝋人形「眠れるヴィーナス」に大きなショックを受ける。

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  • 女とは結局、性としての、肉体としての女が不可能な肉のまじわり(名状しがたい肉の融合といっても良い)を求めてさまよう、世界の有限の時間を越えた彷徨の道筋の起点であり、そこに流れる時間そのものである。画布の上に無垢の裸で置かれ、みずからの神秘的な魅力については沈黙と無関心を装っている女たち、それは物質化された世界(男性)に対して、感じられるものの永続性をつきつけているのだ。/ ジャン・クレールはこう言う。「なぜなら、この肥沃で茂みの深い女たちは、絵画がこれまでほとんど見せてくれなかった要素をそこにもたらしている。それは牧神のパニックであり、慄きであり、欲望なのだ。その絢爛たる毛髪、その鬱蒼とした毛叢によって、それら至高の女たちの肖像はパルメニデスが体毛について語ったことを思い出させる。毛という人体に残された不思議な要素、眩暈するほど遠いむかしの獣の記憶、そこにはどこにも還元することのできない、感じられるものの特異な領分がある」。これはデルヴォーのあらゆる作品に認めることのできる特徴だ。
    マルク・ロンボー 「女…女…女」


  • 「第3章 シュルレアリスムの影響」では室内や街中(古代都市?)で奇妙なパントマイム・ポーズで静止したかのような「デルヴォーの女たち」が登場する。しかし、油彩作品は〈訪問 IV〉(1944)と〈夜明け〉の2点しか出品されていないのだ。〈鏡の前のヴィーナス〉(1946)、〈レースの行列〉(1936)、〈眠れる街〉(1938)、〈ピュグマリオーン〉(1939)、〈純潔な乙女たち〉(1972)の5点は全て紙に墨・水彩・淡彩で描いた習作である。「第4章 ポール・デルヴォーの世界」は7つのテーマに分類されている。「汽車、トラム、駅」の〈トンネル〉(1978)は画面の中央奥にアーチ状のトンネルと汽車が描かれ、向かって右に駅舎らしき建物、左に遠近法を無視した階段が配置されている。前景の8人の女性たち‥‥右端の上半身裸と後ろ向きの全裸女性以外の6人は着飾ったロング・ドレス姿で、左の少女の姿はヴェラスケスの〈ラス・メニナス〉(1656)を想わせる姿見に映った鏡像である。同美術館所蔵の特別出品〈森〉(1948)にはアンリ・ルソー風の濃密な森の中の線路を走る汽車と官能的な表情・姿態の全裸の女性が左右に描かれている。

    絵の中の汽車、クロッキー帳に描かれた〈チョコレート色のトラム〉(1933)、タブローの傍らに置かれた「列車模型」などを眺めていると、幼い日のデルヴォー少年が熱中した市電や汽車の記憶が再現されていることに陶然とする。「建築的要素」には古代ギリシャ・ローマ風の神殿を背景にした女性たちが描かれる。〈エペソスの集い II〉(1973)は遠景に神殿や階段、中央を横切る市電、前景に4人の女たち‥‥深紅のベッドに横たわる全裸女性の左に乳房を露わにした赤いドレスの女と青い衣を羽織った全裸女が親密そうに寄り添い、右端に純白のロング・ドレスの女性が右手に持った手鏡を見つめている(彼女の左奥には鏡の嵌まっていない素通しの姿見がある)。〈夜の使者〉(1980)は遙か遠方に海や山、神殿や街並みが見渡され、大通りを市電が横断する。前景に位置する白いロング・レース姿の女性(使者)を左右の男女‥‥4人の女性とリーデンブロック教授が出迎える。白昼を想わせる明るい光景なのに、中央手前に置かれたオイル・ランプには火が点っている。この2作品と〈古代都市〉(1941)、〈アテネの気まぐれ娘たち〉(1968)の習作も展示されている。

    「生命の象徴としての骸骨」には小学生のデルヴォー少年を魅了したという骸骨たちが生身の女たちに代わって描かれる。緑色のカーテンの掛かった窓の前に座った女性と骸骨の2人が室内で全く同じポーズをしている〈会話〉(1944)。イエス・キリストの受難図を骸骨に置換(骸骨奪胎?)した〈キリストの埋葬〉(1951)や〈磔刑 II〉(1953)の習作も館内の壁に架かっている。「欲望の象徴としての女性」には列車が通過する線路沿いの舗道をオイル・ランプを携えて歩く9人の上半身裸の女性たちを描いた〈行列〉(1963)が目を惹く。大きな黒目の金髪女性たちは無表情で、一切の感情がない夢遊病者のように見えなくもない。右手に青い本を持って読書する乳房も露わな〈ローの婦人〉(1969)‥‥デルヴォーの絵の中に描かれた女性のモデルになったという妻タム(アンヌ=マリー・ド・マルトラール)の肖像画や素描、手紙なども出品されている。

    デルヴォーの絵の中には「男性の居場所」は殆どないが、「地底旅行」のエデゥアール・リウーの挿絵を忠実に模した〈リーデンブロック教授の習作〉(1958)がある。「ルーツとしての過去のオブジェ」にはデルヴォーの生まれたアンタイの家や台所。透写紙に墨で描かれた6種類の〈グリーティング・カード〉(1958)も透明ケースの中に陳列されていた。「フレスコ」はリエージュ大学動物学研究所のフレスコ〈創世記〉(1960)のための下絵(凸型のトリプレックス / 三層板)で、ヤギ、サイ、ウシ、シカなどの動物の素描もあった。「第5章 旅の終わり」には視力の衰えた晩年のデルヴォーが描いた最後の油彩〈カリュプソー〉(1986)なども展示されている。1989年に最愛の伴侶タム夫人を亡くしたデルヴォーは筆を折ったのだ。姿見、パレット、筆、オイル・ランプ、列車模型、碍子、手鏡、レースのブラウス、『地底旅行』‥‥「デルヴォーのアトリエから」と題された愛蔵品も館内の適所に置かれていた。

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  • 夜が終ろうとしている。彼方の森の方へゆるやかに、大道が登ってゆく。石だたみの道に突然、ひとりの女性が身を差し出す──街灯の光を浴びているのか、自身、その電光の源なのかよくわからない純白の登場。ここは夜も。都会の夜の雰囲気も。相変わらず夢の建築、輝く殿堂や駅のホールへの相次ぐ見通しの中に、寺院や石柱。空に浮かぶ月は丸いまま、それとも虹の光線を受けた雲に隠れている。まるで映画の中の光景で、その入りくんだ細部は、1つ1つ、記憶の底から取り出されてきては、夢想のすべての扉を開いてくれる。ここに見えるのは、手のとどかない精密な、愛欲の生み出した造形の光と陰影の回廊や通り路だ。夜の穹窿 理想の愛撫。彼女らは互いによく似ている。この女人たちみなに共通のゆるやかな動作。近寄って来るひとりも、遠ざかるひとりも、同じ身のこなし。波うつ布のまといがよりはっきりと示し出すルネッサンスの荘重。ヴェールがめくれ、露わにされた身の誘いかけに連なる奉納の手つきである。地べたに横たわってだるそうな姿勢もなく、ほんのかすかのすきのある脚間や、胸の丸みや、ときおり、絵の中心に黒々、ブロンドの三角をなす性の茂みが強調されてさえいなければ、彫像のような威厳があり得たに違いない。
    アントワーヌ・テラス 「空しくも、不毛にあらざる、されど大胆さに欠けた女人たち」


  • ミシェル・ビュトールの『ポール・デルヴォーの絵の中の物語』(朝日出版社 2011)はデルヴォーの〈挨拶〉(1938)から〈ジュール・ヴェルヌを称える〉(1971)まで、18点の絵画を触媒とした連作集(原題は「ヴィーナスの夢」)である。作品のタイトルを冠してクロノロジカルに並んだ全18章の語り手は1人称の「私」で、伯父の地質・鉱物学者を捜しに行くというストーリ構成になっている。「地底旅行」の主要登場人物、オットー・リーデンブロック教授の後を追う甥アクセル助手の物語‥‥「私」はデルヴォーの描く謎めいた女たち、「導きの女」(チチェローネ)に水先案内されて、古代都市と20世紀が混淆したような不思議な世界(地底世界?)を彷徨う。「地底旅行」や自己テクストからの引用が混じり合う。アクセル青年が追い求める人はリーデンブロック教授に他ならないが、デルヴォーの絵の鑑賞者やビュトールの本の読者がチチェローネに導かれて行く先には理想の女性(ヴィーナス)が待っているのかもしれない。「デルヴォーの夢」の中に行ってみたいなぁ。「託けを運ぶ女たちの行列」というポール・デルヴォーを偲んだ長編詩も併録されている。

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    ポール・デルヴォー展

    ポール・デルヴォー展

    • 画家:ポール・デルヴォー(Paul Delvaux)
    • 会場:埼玉県立近代美術館
    • 会期:2013/01/22-03/24
    • メディア:絵画・オブジェ
    • 展示テーマ:写実主義と印象主義の影響 / 表現主義の影響 / シュルレアリスムの影響 / ポール・デルヴォーの世界(汽車、トラム、駅 / 建築的要素 / 生命の象徴としての骸骨 / 欲望の象徴としての女性 / 男性の居場所 / ルーツとしての過去のオブジェ / フレスコ)/ 旅の終わり / デルヴォーのアトリエから


    ポール・デルヴォー(シュルレアリスムと画家叢書 骰子の7の目)

    ポール・デルヴォー(シュルレアリスムと画家叢書 骰子の7の目)

    • 著者:アントワーヌ・テラス(Antoine Terrasse)/ 與謝野 文子(訳)
    • 出版社:河出書房新社
    • 発売日:2006/07/12
    • メディア:大型本
    • 目次:物の秘密と雰囲気の表現 / 待望の森の広場に / 空しくも、不毛にあらざる、されど大胆さに欠けた女人たち / 立ち止まった大きな女人たち / 実用の仕草をはなれて内気なる彼女ら / 似ることよりさらに美しく / 待ちこがれての涙 / 死の領域に君臨する // 隣り合う女たち(瀧口 修造)


    ポール・デルヴォー(現代美術の巨匠)

    ポール・デルヴォー(現代美術の巨匠)

    • 著者:マルク・ロンボー(Marc Rombaut)/ 高橋 啓(訳)
    • 出版社:美術出版社
    • 発売日:1991/01/15
    • メディア:大型本
    • 目次:ポール・デルヴォー、絵画自身に捧げられた絵画 / 初めにフランドルの画家ありき / 30年代―影響の謎解き / スピッツナー・ショック /「メタフィジックな」イメージから / シュールレアリストの誘惑まで / 戦争期と不安の通過 / 受難の図と骸骨の再登場 / ビーナスから受胎告知へ / 女…女…女 / 電車、汽車、駅、そして少女 / フレスコとデッサン / 絢欄たるオペラ


    ポール・デルヴォーの絵の中の物語

    ポール・デルヴォーの絵の中の物語

    • 著者:ミシェル・ビュトール(Michel Butor)/ 内山 憲一(訳)
    • 出版社:朝日出版社
    • 発売日:2011/09/10
    • メディア:単行本
    • 目次: 挨拶 / 眠れる町 / ノクターン / ピグマリオン / 月の位相 I / 町の入口 / 町の夜明け月の位相 II / 不安な町 / 町の夜明け / 月の位相 III / 囚われの女 / 眠れるヴィーナス / 夜の汽車 / 十字架降下 / クリスマスの夜 / 学者の学校 / 見捨てられて / ジュール・ヴェルヌを称える / 託けを運ぶ女たちの行列 / ミシェル・ビュトールという銀河 / 訳者あとがき

    ネコ・ログ #29

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  • ペット好きには、猫派と犬派がある。よくそういわれる。/ ネコは自分の好き勝手にしている。それがなんともいえずいい。そう思う人が猫派なのだと思う。どういう人がそうなるのか。自分で好きにしたいけれども、浮世の義理でなかなかそうできない。年中どこか辛抱しつつ暮らしている。そういう人であろう。/ そういう人は、ネコに自分を託す。ネコに勝手に乗り移って、そのネコに好きにさせるのである。実人生で制約されている分を、それで心理的に取り戻そうとする。要するに「ネコになってしまう」のである。/ イヌは社会的な動物である。だから社会性が高い。犬派は猫派と違って、イヌに乗り移るわけじゃない。あくまでもイヌは他者である。ただし自分に依存させる。子どもが増えたようなものであろう。飼い主とイヌの関係は、基本的には社会的関係であり、猫派の場合のような心理的関係ではない。/〔‥‥〕私は猫派である。だから猫派の気持ちはわかるが、犬派の気持ちはややわからない。大勢集まって騒ぐより、1人でコツコツ仕事をしたほうがいい。ネコのワガママが好きで、だから自分もワガママなのだろうと思う。
    養老 孟司 「猫派と犬派の違いについて」


  • ♯253│ハッカ│ノラ猫 ── 男前に撮れました
    老夫婦が営んでいたラーメン店の前に数匹の子ネコがいた。数年後、成長して大人になったネコたちの姿とは対照的に、民家の塀沿いに並べられた夥しいペットボトルの数々‥‥。水の入ったペットボトルにネコ避けの効果があるのかどうかは怪しいけれど、この近くにネコたちがいるという目印になる。近隣住民の無言の圧力も意に介さず、ネコたちは気ままに行動していた。しかし、ラーメン屋さんが昨年閉店すると一変する。ネコたちは宿無しのノラになってしまったのだ。裏手に住む老婆の話によると、夜は主人と一緒に寝ていたというほど可愛がられていたネコたち。ハッカは細面の白黒ネコ。人懐っこいミズの躰を撫でていると、遠巻で様子を窺っていたハッカも興味深そうに近づいて来る。手足の長いモデル体型というか、洋ネコ(ハーフ?)風の気品が漂う。

    ♯254│ミズ│ノラ猫 ── 飴色の目のネコ
    ある日、ラーメン店のネコたちを撮っていると、近所の主婦らしき女が「エサをやっていないでしょうね」と疑わしい目つきで言う。勢いづいた嫌ネコ派住人の仕業なのか、「猫に餌を与えないでください」という貼り紙が、いつの間にか電柱に出現していた。「大家さんが来て、あげているようですよ」と答えると気まずそうにソソクサと立ち去って行った。夜になると自転車に乗った男性が人目を忍ぶように現われて、ネコたちにゴハンをあげているのだった。白茶ネコのミズは飴色の目が魅力的‥‥何故か「亜麻色の髪の乙女」という歌を思い出す(色違いだが「飴色」と「亜麻色」の語感は似ている)。ラーメン屋の主人と一緒に眠っていたのはミズではないかしらと想うほど人懐っこく、近寄ってスリスリして来る。閉店した店舗の前に蹲って車道を走るクルマ(ヘッドライトの光芒)を眺める夜のネコたちは一体何を考えているのだろうか。

    ♯255│ピン│ノラ猫 ── チビの背後にも白黒ネコが!
    ピンちゃんは虎縞のチビ猫。ミズやハッカに比べると躰が小さいので子供のように見える。3匹が遊んでいる光景は仲の良い「3人家族」のように見えなくもない。人とクルマに埋め尽くされた都会の片隅では数匹のネコたちが疑似家族を形成しているかのように見えることが少なくない。ピンの写真の背後には白黒ネコのハッカの姿も写っている。ところが昨年の冬以来、なかなかネコ一家の姿を見かけなくなった。依然として周辺の民家の塀沿いには汚く変色したペットボトルの数々が、電柱にも嫌ネコ派の貼り紙があることから、ネコたちが一掃されてしまったわけではないことは想像出来るけれど、それでも少し心配になる。裏手に住んでいる婆さんが寒い冬期にノラになったネコたちを不憫に思って、家の中に保護しているという未確認情報もある。暖かい春になったら、3匹の元気なネコたちの姿が見られるかもしれない。

    ♯256│ロン│ノラ猫 ── 帰って来たふわふわにゃんこ
    長毛種のロンちゃんは気まぐれニャンコ。中央図書館裏の遊歩道周辺にいることが多いけれど、暖かい日差しが降り注ぐ冬の日は階段を昇った上に建つマンションの駐車場で日向ぼっこしていることもある。すぐ近寄って来てスリスリするので、写真に撮るのは結構難しい。ロン自身は遊んでいるつもりでも、デッキの下や金網フェンスの向こう側など、人の入れないところまで行ってしまう。それでも姿が消えた方向へネコ語で呼びかけると、思いがけない場所から出て来る。遊歩道沿いの植え込みの陰に隠れるようにネコ用のダンボール・ハウスが3つあった。キャット・フードや飲み水も用意されているし、雨風を凌げるように頭上の木の枝にビニール傘も掛かっている。持って来たカリカリをベンチの下に置いた老婦人が「食べないの?‥‥贅沢なのねぇ」と苦笑して、別のキャット・フードを与える。ロンの写真はiPhotoで自動補正(Enhance)しました。

    ♯257│エル│ノラ猫 ── 未来を見つめる目
    エルも中央図書館裏にある遊歩道の植え込みの中の隠れ家(ダンボール・ハウス)の住民の1人だろうか。仲間の長毛種ロンちゃんほどには人馴れしていないので、撮ろうとして近づく前に逃げられてしまうことも少なくない。それでも鉄柵の向こう側は安全地帯と心得ているらしく、ネコとヒトの間に障害物がある時には近寄っても逃げ出す気配はない。ありがとう、隔たり!‥‥被写体との間ある距離や障害が撮影を可能にするのだ。背後に陽の沈む夕暮れ時、綺麗なアーモンド形の目を瞠って児童公園の方を見つめているエルの姿は海辺の見晴し台から泳ぐ人たちを観察しているライフセーヴァーを想わせる。スベリ台や迷路など公園の遊具に興じている子供たちを見守っているかのように。透視能力のあるというボイオテイア大山猫や未来を見通す力を持つ「仔猫の予言者」のように。

    ♯258│スリ│地域猫 ── 寝‥‥眠たいにゃん
    H山通りと平行して走る細い裏道、民家の建ち並ぶ住宅地に4〜5匹のネコたちが棲んでいる。耳先カットした白茶ネコ、麗しい美形ネコ、チビ黒ネコ、白灰サバネコなど‥‥特定の飼主はいないけれど、隣り近所の住人が世話をしている「半飼い・半ノラ」の地域ネコなのだ。茶トラのスリちゃんは襲って来る睡魔に抗えないのか、気持ち良さそうに目を細める。「お目々パッチリ開けてね!」という撮影者の声が聞こえているのかどうか、警戒する素振りも見せず地面に寝そべっている。ネコにはその気がなくても、愛くるしい表情や可愛らしい仕草に人は和み癒される。仔ネコを川に投げ捨てた男を絶対に赦さないと、ある女性ヴォランティアは語気を強めて語る。人間が近づいて来ても逃げようとしない人懐っこい性格のスリちゃんは緑がかった目の色の綺麗な「美形ネコ」なんですよと言っておこう。

    ♯259│キシ│ノラ猫 ── 動かないでね(1/10秒の世界)
    用心深かった黒ネコのキシちゃん(ぶーけさんに名付け親になってもらいました)が珍しく逃げないのはエルと同じく鉄柵の内側にいるという安心感によるものだろうか。既に夕暮れて暗くなり、手ブレ・マークも液晶モニタに表示されているので、カメラを下に固定してスロー・シャッター(1/10秒)で撮った。ピントはDMFで微調整したと思う。手ブレしないでピントが合っていても、撮影中に被写体が少しでも動くとブレてしまう。そんな時は「動かないでね!」とネコに向かって念じるしかない。「高感度番長」という異名もあるミラーレス(NEX-5N)の魅力は暗闇でもフラッシュ無しで撮れることだが、付属のキット・レンズ(標準ズーム)に泣きどころがある。もう少し明るいズーム・レンズが欲しいと思っていても、Eマウントの「レンズロードマップ」に載っているCarl ZeissレンズやGレンズが発表される気配は今のところない。2013年中に高性能標準ズームは出るのでしょうか。

    ♯260│ロリ│ノラ猫 ── I袋水天宮のネコ
    白っぽい塀で覆われていたI袋駅前公園の改修工事が今年(2013年1月)になって漸く終わった。目立った外観の変化としては従来の地下に加えて、地上2階に駐輪場を増設したことだろうか。これによって駅前や公園内の不法駐輪が少しでも減ることを願うが、長かった工事期間中は公園で憩う人たちや暮らすネコたちには不便極まりないものだった。2012年は公園内で花見さえ出来なかったのだから。いわゆる公共事業‥‥同じ場所を何度も掘り返す道路工事や神経を逆撫でする騒音には腹が立つ。公園の改修工事よりも高層マンションの方が速く建ったりしていないだろうか。それとも邪魔な塀が取り払われて視界が開けた(背後の埼京線が見渡せるようになった)だけでも良しとすべきなのだろうか。元の景観に戻っただけなんですが‥‥。いつまでも駅前公園がロリたちネコにとって暮らしやすい安楽の聖地であることを願って止まない。

    ♯261│レイ│飼い猫 ── 新参者でにゃんす
    2011年11月にトミーちゃんが亡くなったという。あれほど人に懐いていたネコが躰に触られるのを嫌がるようになったのは余程体調が悪化していたからに違いない。ネコに限らず動物(ペット)は気分や体調が悪いとか、頭や腰が痛いとか周囲の人間に訴えたりしないからね。もっと優しくトミーに接していたらと悔やまれる。逝ってしまった彼女の代わりに新入りネコを2匹迎い入れたと女飼主が言う。茶トラのレイちゃんは友好的な反面、デジカメのシャッター音にも驚いて一瞬ビクッと躰を震わせるほど繊細で敏感耳のネコ。黄味がかったオリーヴ色の大きな目がチャーム・ポイントで、遊んで欲しいのか何度も引っ繰り返ってはゴロニャンする。もう1匹の三毛ネコは姿が見えず、その日は写真に撮れなかった。不用意に近づいてはトミーに威嚇されて神妙にしてしたサビくんは相変わらず元気です。

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    各記事のトップを飾ってくれたネコちゃん(9匹)のプロフィールを紹介する「ネコ・カタログ」の第29集です。サムネイルをクリックすると掲載したネコ写真に、右下のナンバー表の数字をクリックすると該当紹介文にジャンプ、♯ネコ・タイトルをクリックするとトップに戻ります。ノラ猫や地域猫、飼い猫を差別しない方針で、これまでに延べ260匹以上のネコちゃんを紹介して来ましたが、こんなにも多くのネコたちが棲息していることに驚かされます。29集の常連ネコはロンとエルちゃん。新顔ネコも7匹初登場!‥‥『まる文庫』(講談社 2013)は『そこのまる』(ランダムハウス講談社 2010)に撮り下ろし写真を加えて再構成した文庫オリジナル写真集。養老研究所営業部長まるの写真は増えているが、安野モヨコのコラム(ジャックくん)などは省かれている。スコティッシュ・フォールドは人懐っこくて警戒心が皆無。「ネコ・ログ」で紹介したペタちゃんも、いわゆる「天然」じゃないかと心配するくらい無邪気で無防備だった。

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    まる文庫

    まる文庫

    • 著者:有限会社養老研究所(養老 孟司 / 養老 暁花)
    • 写真:関 由香
    • 出版社:講談社
    • 発売日:2013/02/15
    • メディア:文庫
    • 目次:まるギャラリー / 猫とまるに関する6つの考察
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