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マグリットかもしれない?

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  • やがてアルンハイムの楽園がその全体像を一気に現す。魅惑的なメロディが溢れ出し、むせ返るほどに不思議な甘い芳香が漂う。目前の光景を夢まぼろしのごとくに織りなすのは、高くほっそりした東洋の樹木や、鬱蒼とした灌木群、黄金色の鳥、そして深紅の鳥の群れ、百合が周囲に咲き誇る湖、菫やチューリップ、芥子、ヒヤシンス、それに月下香、相互に絡み合う銀色の小川の一群。そして最後に、それらすべてのさなかより、いささか不条理ながら出現するのは、半ばゴシック風、半ばサラセン風の巨大な建築であり、それはあたかも奇蹟の力に拠っているかのごとく、中空に浮かんでいるんだった。真っ赤な夕日を受けてきらめくその建物には、無数の出窓や尖塔、それに小尖塔が見える。そう、これこそはおそらく熾天使たちや妖精たち、精霊たち、地の精たちが力を合わせて築き上げたまぼろしの芸術作品なのである。
    エドガー・アラン・ポー 「アルンハイムの地所」


  • 「マグリット展」(Bunkamura ザ・ミュージアム 2002)から13年振りの「マグリット展」(国立新美術館)である。東京メトロ千代田線乃木坂駅から会場までは直結している。雨風などを凌げて利便性は良いけれど、新美術館の外観を眺めることは叶わない。ルネ・マグリット(Rene Magritte 1898ー1967)の作品約130点を時系列順に「1920-1926 初期作品」「1926-1930 シュルレアリスム」「1930-1939 最初の達成」「1939-1948 戦時と戦後」「1948-1967 回帰」の5期に分けて展示したワンフロア(企画展示室2E)構成は2014年に開催された「バルテュス展」(東京都美術館)よりも見やすく、マグリットの不思議な世界に浸れる。誤算は夜間開館日(20:00まで)なので、ゆっくり観られると思っていたのに、通常の閉館時刻(18:00)を過ぎてから逆に混雑して来たこと。混雑に紛れて半券を落としたこと(係員が回収してくれた)。作品保護のためなのか冷房の効きすぎて、長時間館内にいると躰の芯まで冷えてしまうこと。美術館が防寒用のストールを貸出しているほどの寒さなのだ。

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  • ⃞ 天才の顔(The Face of Genius 1926)
  • 山高帽、林檎、鈴、キーユ(手摺柱)、ビルボケ(拳玉)、マネキン、マロット(頭部マヌカン)、カーテン、パイプ、ロウソク、仮面(アイマスク)、額縁、棺桶、窓、卵、鳥籠、鳥、空、雲、三日月、海、石、炎、植物、樹木、動物など‥‥ありふれた日常のオブジェや生物、自然などのデペイズマンとコラージュによって超現実世界を創り出す。カンヴァスの中で拡大・縮小・逆転・転位・置換・隠蔽・剥奪・結合・融合・変形された絵画は非現実なのに平易で分かりやすいが、タイトルを参照した鑑賞者は困惑するかもしれない。青黒い水面に木の板が渡され、乳白色のマロットと黒いビルボケが置かれている。マヌカンの右目と左頬は矩形に刳り抜かれ、右目の空洞に前景のビルボケから伸びた枝が入り込み、左頬から後方のビルボケの一部が見える。スキンヘッドのマロットは目を閉じて瞑想しているように見えなくもない。〈天才の顔〉は夢を見ている女性の心象風景なのだろうか。

  • ⃞ 恋人たち(The Lovers 1928)
  • 1912年2月24日未明、寝室から抜け出した母レジーナは近くの橋からサンブル川に入水自殺した。溺死体の顔は白いナイトガウンの裾で覆われていたという。お互いの躰を密着させてキスをする赤いドレスの女と黒い背広の男。2人の頭部は頭巾を被ったように白っぽい布で完全に覆われていて、全く顔が見えない。後ろ姿やシルエット、アイマスク、林檎や花などで顔を隠した肖像画はマグリットの特徴的なモチーフの1つである。〈恋人たち〉の顔が布で隠されているのは母の亡骸のイメージが投影されているらしい(マグリットは水死体を見ていないという説もある)。マグリットはロマンティックな愛の接吻を不吉な死のイメージに変容させてしまった。顔を隠すことで〈恋人たち〉の未来を暗示しているのか、それとも2人は既に心中した亡霊なのだろうか。展示室の右隣には正面を向いた〈恋人たち〉(The Lovers 1928)のタブローも架かっていた。

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  • ⃞ 人間の条件(The Human Condition 1933)
  • マグリットの絵画は一種のトロンプ・ルイユ(だまし絵)と看做して良い(「だまし絵 II 進化するだまし絵」(Bunkamura 2014)には〈赤いモデル〉や〈白紙委任状〉が出品されていた)。1933年、鳥籠の中に鳥ではなく、卵を幻視したマグリットは「問題と解答」という方法論を発見する。「蝙蝠傘とミシン」ではなく、籠と卵という親和性の高い置換。〈美しい虜〉(The Fair Captive 1931)はカンヴァスに描かれた風景画と風景が同化しているだけだが、〈人間の条件〉ではイーゼルに架かったカンヴァスを窓辺に置くことで、「窓の問題」の解答を提示している。室内の風景画が外の風景を隠していて、鑑賞者は本当の風景を見ることは出来ない。「私たちが、外部に存在するものとして見ている世界は、実は私たち自身の内部の表象でしかないのです」(「生命線」1938年)。〈野の鍵〉(The Key to the Fields 1936)では割れた窓ガラスに風景画が描かれていたという新たな「解答」を提出している。

  • ⃞ アルンハイムの地所(The Domain of Arnheim 1962)
  • 自然の事物、たとえば山や岩が何か別のものに見えることがある。三日月の真下、峻嶮な雪山の稜線に翼を広げた鷲のシルエットが現われ、前景中央の城壁に3個の卵の入った巣が置かれている。城壁の幅が余りにも狭いので、風の一吹きで卵が今にも奈落の底に落ちてしまいそうな(ハンプティ・ダンプティのような?)、鑑賞者に緊張感を強いるシチュエーション。石化した親鳥の表情も険しげに映る。タイトルはマグリットが愛読していたエドガー・アラン・ポーの短篇から採られている。「アルンハイムの地所」は百年前に亡くなったシーブライト・エリソンから21歳の誕生日に莫大な遺産を相続した青年エリソンが広大で美しい人工庭園を創造する物語。洞窟から雪山の石化した鷲を眺めた〈前兆〉(The Forerunner 1938)の左隣に架かっていた。

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  • ⃞ 炎の帰還(The Return of the Flame 1943)
  • 「戦時と戦後」の一時期、マグリットの絵画は激変する。明るい陽光が降り注ぐ印象派風の「ルノワールの時代」と粗野で荒々しい野獣派風の「ヴァッシュの時代」(ヴァッシュ(雄牛)はフォーヴ(野獣)のモジり)。前者はアンドレ・ブルトンから非難を浴びせられ、その「復讐」として描いた後者も不評だった。マグリットは妻ジョルジェットの助言を聞き入れて、それ以降は旧来の画風に回帰することになる。赤く燃え上がる印象派風の背景に巨人化した怪盗ファントマが左手で頬杖を突く。ピエール・スーヴェストルとマルセル・アランの小説『ファントマ』(Fantomas 1911)の表紙絵を流用したパロディ画だが、マグリットは右手の短剣を薔薇の花に置き換えている。赤く染まったパリの街を黒マスクの怪人が呆然と思案する?‥‥朝日新聞の読書欄に載った『マグリット事典』(創元社 2015)の「書評」(横尾忠則)は前代未聞ですね。

  • ⃞ 不思議の国のアリス(Alice in Wonderland 1946)
  • ルイス・キャロルのファンタジー『不思議の国のアリス』(1865)をモチーフにした作品。マグリットはマックス・エルンストやサルヴァドール・ダリなどのシュルレアリストたちと同じく、言葉遊びやナンセンス詩や狂った会話が横溢する「アリス」に魅了されていた。縦長のカンヴァスの左に右向きの顔(目・鼻)が描かれた樹木、右上に「オノレ・ドーミエの描いたルイ・フィリップ王の有名な風刺画」から採ったという洋梨顔(おかしな梨顔)の雲がチェシャ猫のように浮かぶ。端正な筆致のマグリットにしては珍しい、絵本やアニメのような寓話的なキャラクター。何の捻りも含蓄もないタイトル。しかし、このタブローが不思議なのは女主人公のアリスが描かれていないことである。一体アリスはどこへ行ってしまったのか?‥‥ここにも「不在の表象」という裏テーマが隠れている。

  • ⃞ シェヘラザード(Scheherazade 1948)
  • 〈不思議の国のアリス〉とは対照的に『千夜一夜物語』のシェヘラザードは美しい顔を露出している。前景左にある平らな石の上の左に鉄の鈴、中央にシェヘラザード、右に水の入ったガラスのコップ。その奥はサーモンピンクのカーテンが引かれ、遠景に青空と白い雲の風景が眺望される。右側のカーテンの手前には〈オルメイヤーの阿房宮〉(Almayer's Folly 1951)が置換され、V字型の亀裂から白い鳥たちが羽搏く。シェヘラザードの顔は福笑いのパーツのような左右の目と赤い唇だけで、真珠の連なりが顔の輪郭と胴体を宝飾品のように形作っている。〈王様の美術館〉(The King's Museum 1966)など、顔のパーツ(目・鼻・口)が空中浮游する同趣向のタブローと比べても、女性モデル(ラシェル・バース)を起用した〈シェヘラザード〉はアクセサリーのように可愛い。目や口だけを残して透明化するアイディアはチェシャ猫だったりして?

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  • ⃞ ゴルコンダ(Golconde 1953)
  • パンフレットやチケットにも使われている〈ゴルコンダ〉は空中浮游する男たちが黒い雨垂れのように見えなくもない。赤い屋根の集合住宅に降る無数の男たち。彼らは山高帽に黒いコートという匿名性を纏っているけれど、1人1人の顔は異なっている。マグリット自身も没個性化した群衆の中に隠れているのかもしれない。「ゴルコンダ」は1687年、ムガル帝国第6代皇帝アウランゼーブによって滅ぼされたインド南部の都市名。世界有数のダイヤモンドの産地として繁栄した奇想の都も、中産階級の暮らす類型的な街に変貌してしまったということなのか。《普通の男性の匿名性を表現することによって、中産階級を批判することはもちろんのこと、マグリットが普通の男性の衣装として同一の制服を採用したのは、匿名性がもっている破壊的な潜在能力を認識するためでもあった》(Anonymity 匿名性)。

  • ⃞ 白紙委任状(The Blank Signature 1965)
  • 森の中を散策する女性騎手。〈白紙委任状〉はエッシャーの〈物見の塔〉(1958)のような錯誤した遠近法で描かれている。騎手の手前の木が馬の尻を隠し、奥の木を馬が隠す。しかし、同時に奥に隠れて見えない木と背後の空間までもが騎手の前後を隠しているのだ。本来隠されて見えないものを現前させる視覚トリックに留まらず、鑑賞者の思考や想像力も試される。見えないものにこそ「真実」が隠されているというマグリットの深淵なメッセージも感じられる。非現実世界なのに〈光の帝国〉(The Empire of Lights 1954)のようにタブローとしても美しい。女性騎手にはメリーゴーランドに乗る若きジョルジェットの面影が投影されているのかもしれない。宮崎県立美術館所蔵の〈白紙委任状〉(1966)と〈現実の感覚〉(A Sense of Reality 1963)の2点は会期後半(5/13)からの展示だった。

  • ⃞ 大家族(The Great Family 1963)
  • 暗雲が垂れ籠めた不穏な空と北海の荒波に1羽の鳥のシルエットが描かれている。空を飛ぶ巨大な鳩は青空と白い雲の衣裳を纏っている。暗鬱な空模様と荒々しい海が米ソ冷戦時代の「キューバ危機」を反映しているとしたら、羽搏く鳩は「平和のシンボル」であろうか。核戦争の恐怖に脅えた暗い世界を平和の鳩が空色に切り抜く。「大家族」というタイトルもマグリットにしては分かりやすい。もしマグリットが生きていたら、紛争やテロが止まない21世紀の現代に一体どのような絵を描いただろうか。鳩のシルエットを右向きに変え、空を藍色、海を夜の滑走路に代えた〈空の鳥〉(The Sky Bird 1966)はベルギー国営航空会社サベナの注文制作によるタブロー。《サベナは、これを1966年から1973年まで大量に使用した。雑誌『私たちのサベナ』の表紙と広告、さらにまた、便箋、時刻表、搭乗券、年賀状、宣伝用品(マッチ・ケース、トランプ)》(ジョルジュ・ロック)などにも描かれた。今も世界に氾濫する「マグリットもどき」ではなく、正規の広告作品である。

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    マグリット展

    マグリット展

    • アーティスト:ルネ・マグリット(Rene Magritte)
    • 会場:国立新美術館
    • 会期:2015/03/25~06/29
    • メディア:絵画
    • 構成:1920-1926 初期作品 / 1926-1930 シュルレアリスム / 1930-1939 最初の達成 / 1939-1948 戦時と戦後 / 1948-1967 回帰


    マグリット事典

    マグリット事典

    • 著者:クリストフ・グリューネンベルク(Christoph Grunenberg)/ グレン・ファイ(Garren Pih)/ 野崎 武夫(訳)
    • 出版社:創元社
    • 発売日:2015/04/06
    • メディア:単行本
    • 目次:Absence 不在 / Abstruction 抽象画 / Alice in Wonderland 不思議の国のアリス / Anonymity 匿名性 / Apple リンゴ / Appropriation 流用 / Artifice 狡猾 / Automatism and Automatic Writing 自動作用と自動筆記 / Banality 凡庸 / Georges Bataille ジョルジュ・バタイユ / Charles-Pierre Baudelaire シャルル=ピエール・ボードレール / Bel...


    もっと知りたいマグリット 生涯と作品

    もっと知りたいマグリット 生涯と作品

    • 著者:南 雄介
    • 出版社:東京美術
    • 発売日:2015/02/28
    • メディア:単行本
    • 目次:マグリットの現代性(南 雄介)/ 母の死—模索時代 1898-1925 / シュルレアリスムへの道 1925-1930 / イメージの詩学 1930-1939 / 戦火をくぐりぬけて 1939-1950 / "マグリットへの回帰" 1950-1967 / マグリットとベルギー美術(福満 葉子)


    マグリット 光と闇に隠された素顔

    マグリット 光と闇に隠された素顔

    • 著者:森 耕治
    • 出版社:マール社
    • 発売日:2012/12/26
    • メディア: ムック
    • 目次:マグリットの素顔 / 1898-1917年 誕生・青年期 / 1918-1925年 シュルレアリスム以前 印象派から抽象画へ、そして未来派とキュビスムへ / 1925-1930年 シュルレアリスム第1期 紺色の時代 / 1930-1942年 シュルレアリスム第2期 確立期 / 1943-1948年 太陽と牡牛の時期 模索と激動期 / 1949-1967年 青空のシュルレアリスム


    大渦巻への落下・灯台 ポー短編集III SF&ファンタジー編

    大渦巻への落下・灯台 ポー短編集III SF&ファンタジー編

    • 著者:エドガー・アラン ポー(Edgar Allan Poe)/ 巽 孝之(訳)
    • 出版社:新潮社
    • 発売日: 2015/02/28
    • メディア: 文庫
    • 目次:大渦巻への落下 / 使い切った男 / タール博士とフェザー教授の療法 / メルツェルのチェス・プレイヤー / メロンタ・タウタ / アルンハイムの地所 / 灯台 / 解説 / 年譜

    ネコ・ログ #38

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  • 猫は、飼い主の足音や車のエンジン音など、耳慣れた音を覚えるし、食事時の、ナイフやフォークの入った引き出しが開く音や缶切りの音がすれば飛んでくる。耳に届くすべての音にいちいち反応していたら、猫の脳は膨大な量の情報で常にあふれてしまい、危険や食べ物、問題を意味する音を判別できないだろう。そこで猫には、重要でない音、聞き慣れた音は背景音として弱め、同時に耳慣れない音は聞こえるままにすることができる。ちょうど、電車の線路近くに住んでいる人は電車が通るのに気づかないけれど、訪ねてきた人は、いったいどうしたらこんなひっきりなしの轟音にここの住民は耐えられるのだろう、と不思議に思うようなものだ。白猫のなかには生まれつき耳が聞こえないものがいる(毛の色と関係した遺伝的な特徴である)し、年寄りの猫は晩年、耳が聞こえなくなることもあるが、その他の感覚器官のおかげで、かなり普通に生活を続けることができる。
    クレア・ベサント 『ネコ学入門』


  • #334│アナ│ノラ猫 ── 別宅の前でポーズ
    青空駐車場に屯する数匹のネコたち。I袋へ行く途中にある場所なのだが、昼間は駐車中のクルマの陰や下で微睡んでいることが多い。灰色ネコのアナちゃんは瀟洒な邸宅の前で、まるで自宅か別荘でもあるかのように前肢を揃えてポーズを取る。背後の石塀と保護色になっている。中庭には別のネコの気配もあるけれど、敷地内の様子は目隠しフェンスで仕切られていて見渡せない。飼いネコがいるのかもしれない。ここのネコたちは家族(親子、親戚、兄弟姉妹)なのか、毛色は黒、茶トラ、灰色‥‥と異なるものの、顔立ちも似ていて仲も良さそうだ。朝夕のゴハンを運んで来るネコおばさん(おじさん)もいるのでしょう。リラックスして満ち足りているネコたちを見るほど心和むことはない。彼らの夜の顔も見てみたいにゃん。

    #335│ロン│ノラ猫 ── ようこそ、スニンクスへ。
    雨の日、今日はロンに声をかけるのは止めて、中央図書館裏の遊歩道を黙って通り過ぎた。すると、どこからともなく聞こえて来るビャービャーと鳴くネコの声‥‥いつの間にかロンちゃんが足許で鳴いている(「どうして、黙って行っちゃうの?」と訴えているようだ)。呼びかける声に反応して来るのかと思っていたのだが、どこかで往来する通行人や散歩者を見張っていたのだろうか。雨に濡れた長い毛並みを撫でて、濡れないように雨傘でネコを守る。内藤陳に似た痩身痩躯のネコ・ウォッチャーはゴハンをあげないと近寄って来ない。人に馴れていないと言うのだが、ロンちゃんはゴハン目当てで会いに来るわけではない。雨の降る日に傍まで来てくれたのは挨拶のつもりなのか、それとも別の理由があるからなのか。ネコの行動は謎に包まれている。伏せのポーズは「書肆吾輩堂」の口上ロゴに似ていなくもない。新年の挨拶‥‥「ようこそ、スニンクスへ」。

    #336│クリ│飼い猫 ── 尻尾も太いのよ
    青い眼の洋ネコ。顔と尻尾、前肢の一部だけがグレーで、躰は白い。ブルーとグレー、マズルの黒との配色が美しく気品が漂う。クリちゃんと道端でバッタリ出会う。これから外回りのパトロールに出かけるのだろうか。近づいても逃げ出したりはしないけれど、自分からは擦り寄っては来ない。適度に人馴れした大型の飼いネコ。人間とのスキンシップに飽きると毛繕いを始めたり、駐車中のバイクのタイヤの匂いを嗅いだり、飼主の家の玄関ドアの方へ行ったり(家の中に入りたい?)‥‥。動作は機敏というわけではないけれど、ちょっと目を離した隙に視界から忽然と消えていたりする。少し離れた民家の塀にジャンプして奥へ進む。戻って来る時も、戻って来ない時も‥‥。行動範囲は意外と広そうだ。某クリーニング店の看板ネコちゃんである。

    #337│オキ│飼い猫 ── 玄関の前でポーズ
    三毛ネコのレナさんも昨年亡くなって、赤茶のクーちゃんも行方知れず‥‥寂しくなってしまった「ネコ横町」。飼主の表情も気落ちしているのか、いつもの生気がない。今でも健在な飼いネコは白黒のロブと老齢のオキの2匹。「憎まれっ子世に憚る」という諺もあるけれど、虐めの対象(レナ)を失ったロブの心中を慮ると複雑な気分に陥る。老ネコのオキは若い頃から「老け役」だった名俳優みたいで、若いのか年寄りなのか、黒と茶色の混じり合った顔の配色に紛れて本当の年齢が分かり難い。近づくと逃げてしまうことも少なくないが、撮影した日は機嫌が良いのか飼主の家の玄関前でポーズを取ってくれた。ここのネコたちは基本的に放し飼いで、小心者の家ネコ(まだ1度も撮れていない!)は室内に隠れていて、滅多に姿を現わさない。クーちゃん、帰って来ないかな?

    #338│タバス│ノラ猫 ── T端のネコたち
    JRT端駅は東口と西口、山手線の外と内では高低差がある。K込からT端方面へ歩いて行くと、駅前近くに金網フエンスで囲まれた空き地があった。立入禁止の広い区画に数匹のネコがいる。向かって左に茶トラ、右に白黒ツートン・カラー。横並びの2ショットに見えるけれど、ピントが合っているのは左のネコだけで、右の方はピンボケ‥‥白黒ネコは後方で寝そべっているのだ。閑話休題。「たばた〜、たばた〜」という駅のアナウンスには違和感がある。SF映画の影響なのか、いつの間にか「アバター」と聞こえるようになってしまったからだ。「うえの〜」「しぶや〜」のアクセントは語尾、「たばた〜」は語頭にあったはず。それなのに「たばた〜」はニュートラルに聞こえる。「くまモン」という突き放したような熊本県のアクセントにも違和感があるけれど、不思議なことに「ドラえもん」は昔から平坦なアクセントなのだった。

    #339│デラ│ノラ猫 ── ゾンビに注意してね!
    O無親水公園の黒ネコ2匹は躰の大きさ(大・小)で区別出来るが、単体で見分けるのは難しい。右耳先カットが大(♂)で左耳先カットが小(♀)と覚えておくと良いかもしれない。黒ネコ2匹は人懐っこい。でも、小の方は毛並みを撫でていると、不意のネコパンチに襲われることがあるので要注意。都内23区にもネコたちを虐待するゾンビどもが徘徊しているので、見知らぬ人には馴れ馴れしく近づかず、不審者には遠慮なくネコパンチで先制攻撃するべきである。「元少年A」もネコを殺していたというではないか。《あの神戸の少年のことが盛んに報道されていて、少年が猫を何匹もカッター・ナイフで殺した、ということも含まれていて、単純で猫好きのそば屋のオヤジには「中学生=猫殺し」というイメージが、ピッと焼き付けられてしまったのだっだ。オヤジがブツブツ言っているのが、すれ違いざまに聞えた。お前たち、ヤローの中学生みたら、逃げるんだよ、そばに寄ってったら、駄目だよ、わかった? 悪い子がいるんだよ。コワイ、コワイだよ、中学生は!》(金井美恵子)。

    #340│アク│飼い猫 ── 片耳折れニャンコ
    ネコと喧嘩した時の後遺症で左耳が折れたままになってしまったというアクちゃん。左耳が聴こえているのか心配です。「没後20年展三原順 復活祭」(明治大学米沢嘉博記念図書館)に行った時のこと。K華公園横の坂道を降りて行くと、どこからともなく大きな鳴き声が聞こえて来た。こんなに大声で鳴くのは尋常でない。公園前の車道を隔てた車庫のクルマの下で蹲っていた白い子ネコ。屈んで宥めても鳴き声は全く止まない。人間ならば悲鳴に近い叫び声。SOS信号を必死に発しているのに誰も援けに来ないのかと憤っていたら、近所のネコおばさんがゴハンを持って来た。1週間も見かけなかった、死んだと思っていた‥‥大声で鳴き続ける白ネコを公園へ誘導して食事を与える。「真っ白いネコは珍しい。劣性遺伝だから」と言うと、ネコおばさんは「耳が聴こえないのよ」と捨てネコの身の上話を始める。大声で鳴くのが面白いのか、子供たちが白ネコを虐める。喫茶店のオヤジも棒を持って追い回す。先天的に耳が聴こえないから、必要以上に大きな声で鳴いてしまうのだ。大人も子供も障碍のある弱者を日常的に虐待しているのだった。

    #341│マロ│ノラ猫 ── 左頬の怪我は治ったの?
    ネコ同士の激しい諍いで負傷したのか、マロちゃんの左頬がザックリと抉り取られていた。その部分だけ白い毛もなく、赤黒い皮膚(内部組織)が露出していて見るからに痛々しい。このまま治療せずに放置していて大丈夫なのかと不安で堪らなかったが、その後、マロの傷口は日々追うごとに小さくなって行き、この写真では殆ど目立たなくなるまでに恢復した。その間、1〜2週間ほどだろうか。今更ながら野生動物の自然治癒力には驚く。ノラネコも人間が思っている以上に逞しいのかもしれない。I袋駅前公園には数多くのネコたちが仲良く暮らしている。新入りのアクちゃんは性格も大人しくて、立ち振る舞いも優雅。匂い立つような気品もある。耳先カットしていないので、捨てネコの可能性も否定出来ないけれど。

    #342│ダイ│ノラ猫 ── エメラルド・グリーンの眼差し
    I袋駅前公園のダイちゃんは栄養満点の食事に恵まれているのか、いつの間にかメタボ体型になってしまったが、エメラルド・グリーンの目は相変わらず麗しい。都内23区に棲むノラネコたちにも地域格差があるらしい。大声で鳴いていたK華公園の白ネコから分かったのは中心部よりも周辺区の方が未だしも手厚く保護されているのではないかということ。C代田区やM区は住民もネコも高級そうに見えるけれど、その実体は真逆なのかもしれない。区民数も少ないし、自治会もヴォランティアも機能していない。ネコおばさんが公園のネコたちが怖がるからと注意しても(ネコがいるのなら止めようよと、子供も困惑しているのに)、聞く耳を持たない親は残りの花火を打ち上げる。そんな大人を見て育った子供たちも平気でネコを虐めるようになる‥‥ネコおばさんがの話を聞いているうちに、暗澹たる気分になってしまった。

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    各記事のトップを飾ってくれたネコちゃん(9匹)のプロフィールを紹介する「ネコ・カタログ」の第38集です。サムネイルをクリックすると掲載したネコ写真に、右下のナンバー表の数字をクリックすると該当紹介文にジャンプ、ネコ・タイトルをクリックするとトップに戻ります。ノラ猫や地域猫、飼い猫を差別しない方針で、これまでに延べ300匹以上のネコちゃんを紹介して来ましたが、こんなにも多くのネコたちが棲息していることに驚かされます。第38集の常連ネコはロン、クリ、ダイちゃん。今回も長毛種や洋ネコ、黒と白‥‥など個性的なネコたちが集まりました。今年(2015)の梅雨は長く日照時間も少なく、低温で降雨量も多い。連日の雨模様で趣味の「ネコ撮り」も中休み状態。雨の降る夜は『ネコ学入門』(築地書館 2014)や『猫的感覚』(早川書房 2014)を読んで、ネコへの知識を深めたい。外ネコたちは冷たい雨を凌いで眠っているかしら?

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    • オリジナル写真の縦横比は2:3ですが、サムネイルは3:4にリサイズしています
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    ネコ学入門: 猫言語・幼猫体験・尿スプレー

    ネコ学入門 猫言語・幼猫体験・尿スプレー

    • 著者:クレア・ベサント(Claire Bessant)/ 三木 直子(訳)
    • 出版社:築地書館
    • 発売日:2014/09/16
    • メディア:単行本
    • 目次:プロローグ / 違う世界 / 猫の言語 / 猫と暮らす / 猫との関係 / 猫の性格 / 知能と訓練 / 問題解決法 / 訳者あとがき / 索引


    猫、そのほかの動物(金井美恵子エッセイ・コレクション 2)

    猫、そのほかの動物(金井美恵子エッセイ・コレクション 2)

    • 著者:金井 美恵子
    • 出版社:平凡社
    • 発売日:2013/08/22
    • メディア:単行本
    • 目次:遊興一匹 迷い猫あずかってます トラ! トラ! トラ!/ 銀座の猫、家の猫 / 小さな虎さん / 猫を飼う / 遊興一匹 /「トラー」とはどんな動物か / 猫を去勢すること / 散歩も出来ない / 猫の戦略 / 猫には7軒の家がある / 猫のおかあさん / 猫と暮す──蛇騒動と侵入者 / エビに猫舌無し / ウサちゃん / 日だまりでの昼寝 / ピクニックに行こうと思う / 増殖...


    没後20年展 三原順 復活祭

    没後20年展 三原順 復活祭

    • 主催:明治大学 米沢嘉博記念図書館
    • 会場:米沢嘉博記念図書館1階展示コーナー
    • 会期:2015/02/06 - 06/14
    • メディア:コミック(原画)
    • 展示品:「はみだしっ子」 原画お蔵出し(全会期展示替えいたします)/ 遺された原画 / 書籍 / 付録 / グッズ / 愛用品

    F A B U L O U S F O U R A L B U M S

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  • PLEASE PLEASE ME (Parlophone 1963) The Beatles


  • ファブ・フォーのデビュー・アルバム《Please Please Me》はレノン&マッカートニー(McCartney–Lennon)のオリジナル8曲+カヴァ6曲(全14曲)という構成。2枚の先行シングル4曲を除く10曲を1日(1963年2月11日)、約10時間で録音を終えたというから驚きである。当時のレコーディングは2トラックで、トラック1にインスト、トラック2にヴォーカルを録音したため、ステレオ・ミックスは左チャンネルに楽器、右チャンネルに歌声が分離した状態で聴こえる。2...#12



  • LET IT BE (Apple 1970) The Beatles


  • 《Let It Be》はファンを困惑させるアルバムである。初心に戻って新曲のリハーサルを行ない、オーヴァ・ダビングなしのライヴ録音アルバムを制作するというコンセプトは悪くなかったが、その過程を同時に撮影したことで次第に混乱して行く。1969年1月2日、トゥイッケナム・フィルム・スタジオで始まったリハーサルはアップル本社の地下スタジオに場所を移し、30日のルーフトップ・ライヴと翌日の撮影・レコーディングで終わる。「ゲット・バック」プロジェクトは棚上げ...#11



  • HELP! (Parlophone 1965) The Beatles


  • 《Help!》はファブ・フォー2作目の主演映画のサントラ盤(邦題は『ヘルプ!4人はアイドル』)。初主演映画の《A Hard Day's Night》(1964)と同じく、A面に映画で使われた7曲、B面に新曲5曲とカヴァ2曲を抱き合わせた1枚で2度美味しい「オリジナル・アルバム」になっている。アルバム構成も、主演(リンゴ・スター)も、監督(リチャード・レスター)も1作目と同じだが、作品の内容は大きく異なる。ドキュメンタリー風モノクロ映画とスラップスティック・...#10



  • A HARD DAY'S NIGHT (Parlophone 1964) The Beatles


  • 《A Hard Day's Night》はファブ・フォーの初主演映画のサントラ盤(旧邦題は『ビートルズがやって来るヤァ! ヤァ! ヤァ!』)だが、実際に劇中で使用されたのはA面の7曲のみで、B面の6曲はアルバムのために書き下ろした新曲だった。それでも前後半が違和感なく聴けるのは全曲レノン&マッカートニーによるオリジナル・アルバムだからだろう。全13曲中10曲を手掛けたJohnが八面六臂の大活躍で、Georgeの弾く12弦ギター(リッケンバッカー)も溌溂と響く。レコ...#09



  • RUBBER SOUL (Parlophone 1965) The Beatles


  • 《Rubber Soul》のカヴァに写っているファブ・フォーは自動車のボンネットや凸面鏡に映った肖像のようにメタモルフォーゼしている。ロバート・フリーマン(Robert Freeman)が写真をアルバム大のカードにスライド投影した時にカードを少し後ろに反らしたことから偶然生まれたという。左上のオレンジ色のロゴと相俟ってサイケデリックなイメージを醸し出している。アルバム・タイトルは「ゴム底靴」(rubber sole)と、ミック・ジャガーの歌を聴いた黒人ミュージシャンが揶...#08



  • YELLOW SUBMARINE (Apple 1969) The Beatles


  • 映画『イエロー・サブマリン』の制作にファブ・フォーは殆ど関与していない。ユナイテッド・アーティスツとの契約で3本の映画を作らなければならないのに、4人には3本目を撮る暇がなかった。NYのプロデューサ、アル・ブロダックスが「最小限の労力で3本目の映画を作る方法がある」とブライアン・エプスタインに提案する。「アニメ・ザ・ビートルズ」を制作していたTVCが〈Yellow Submarine〉を映画化することになるが、アメリカナイズされたTVアニメに批判的だったフ...#07



  • REVOLVER (Parlophone 1966) The Beatles


  • 《Revolver》はファブ・フォーだけではなく、その後のロック史上にとってもエポックメイキングなアルバムである。「20世紀ポピュラー・ミュージックの金字塔」と賞讃された《Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band》(1967)もゼロ年代に入ってからは、金色の輝きに曇りが出て来た。リリースから40年以上の年月を経て、2枚のアルバムの評価は逆転(回転)してしまったのだ。逆回転ギター、テープ・ループ、アーティフィシャル・ダブル・トラッキング(ADT)‥‥など4...#06



  • ABBEY ROAD (Apple 1969) The Beatles


  • 《Abbey Road》はファブ・フォーが最後の力を振り絞って完成させた事実上のラスト・アルバムである。全17曲の後半はメドレー形式になっている。A面の6曲がシングル曲の寄せ集めのように感じられるのは、B面の11曲との対比だけでなく、〈Come Together〉と〈Something〉の2曲が両A面でシングル・カットされた影響も少なくないだろう。シングル曲はアルバムに入れないという暗黙のルールを初めて破ったアルバムでもある。想像してみて欲しい。もし、シングル曲が入...#05



  • SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND (Parlophone 1967) The Beatles


  • 《Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band》の最初のアイディアは架空バンドの疑似ライヴ・ショーではなく、「故郷や過去に思いを馳せたノスタルジックなアルバム」だった。しかし、ブライアン・エプスタインに懇願されたジョージ・マーティンは完成していた2曲、〈Strawberry Fields Forever〉〈Panny Lane〉を両A面としたシングル盤を1967年2月に先行リリースすることになる。シングル曲をアルバムに収録しないという暗黙のルールを課していたため、とっておき...#04



  • MAGICAL MYSTERY TOUR (Parlophone 1967) The Beatles


  • 1967年12月26日に英国BBCで初放映された映画『Magical Mystery Tour』は日本では翌年、武道館でプレミア上映された(1968.9.28)。メンバー4人と家族、親類、友人たちが大型バスに乗って行き先の分らない遊覧旅行をするというストーリ性の希薄な内容よりも、観客の中から失神者が出たことの方が驚きだった。当時はスクリーン上にファブ・フォーが映し出されただけで気を失ってしまう娘や少女たちがいたのだ。英オリジナル盤《Magical Mystery Tour》は2枚組EPで、...#03



  • THE WHITE ALBUM 2 (Apple 1968) The Beatles


  • 《White Album》は厳密に言うと「真っ白」ではなかった。エンボス加工された「The BEATLES」のロゴの右下に通し番号が刻印されていたのだから。「限定ナンバー」と呼ばれているものの、いわゆる番号入りの限定盤ではないし、固有のシリアル・ナンバーでもなかった。通し番号には数多くの重複があったのだ。曰く、英国盤は7桁で、米盤は数字の前にプレフィックスの「A」が付き、日本盤は「A」から始まる6桁だった‥‥とか諸説紛々としていて、真相は薮の中とい...#02



  • THE WHITE ALBUM 1 (Apple 1968) The Beatles


  • 真っ白いジャケットにエンボス加工された「The BEATLES」のロゴがレリーフのように浮き上がる‥‥リチャード・ハミルトンがデザインしたアルバム・スリーヴは素っ気ないほど簡素だった。アナログ盤2枚の他にメンバーのポートレイト4枚(29×27cm)、表裏にコラージュ写真と歌詞を印刷した6つ折りの特大ポスター(85.5×57cm)が付いている。何よりも2枚組全30曲というヴォリュームに圧倒される。その内訳はLennon–McCartney 24曲、Harrison 4曲、Starr 2...#01


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    • 「ファブ・フォー(The Beatles)」シリーズの記事一覧です

    • アルバム・カヴァ(画像)を貼り替えました^^;

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    ザ・ビートルズ全曲バイブル ── 公式録音全213曲完全ガイド

    ザ・ビートルズ全曲バイブル ── 公式録音全213曲完全ガイド

    • 編者: 大人のロック!
    • 出版社:日経BP社
    • 発売日: 2009/12/07
    • メディア:ハードカヴァ
    • 目次:英米公式全作品の系譜 / 公式録音全213曲徹底ガイド(2トラックレコーディング時代〜ライヴ演奏スタイルでの録音/ 4トラックレコーディング時代 1〜アレンジの幅が広がりサウンドに深み / 4トラックレコーディング時代 2〜バンドの枠を超えた録音の始まり / 4トラックレコーディング時代 3 〜ロックを芸術の域に高める/ 8トラックレコーディング時代へ〜サウンドと作品の多様化 / 8トラックレコーディング時代〜原点回帰...と円熟のサウンド)/ 録音技術の変化と楽曲解析方法

    鉛の飛行船 III

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  • 彼らと一緒に2回ほどギグにいったことがある。私は1人のジャーナリストという立場から、単にあらゆる物事を観察してそれを受け止めていた。ただし実際にはちょっと気後れもしていたけどね。〔‥‥〕/ リチャード・コールはどちらかと言うと無骨な間抜けという感じだったけれど、でも、ピーター・グラントにはビビったわ。変な目つきで彼の顔を見るなんて、絶対にやっちゃいけないことだった。私にとってはあのツアーが頂点だった。彼らという存在のすべて、彼らが到達したすべて、そして彼らがどれほど遠くまですべてを運んでいったのかという点でね‥‥。あの時のショーは私にとっては自分の精神に変化をもたらす体験だった。かつて人々は "ピンク・フロイドは一種のドラッグ体験をさせてくれるバンドで" 、一方で "レッド・ツェッペリンはもっと圧倒的に肉体的だ" と言っていた ── それゆえに『フィジカル・グラフィティ』というタイトルになったんだと思っている。あれは化学的な反応と肉体的な反応の違いだった。いつの間にか自分の何かが変わってしまうというわけではなかったけれど、でも、煽動され、転げ回り、そしてそれが終わるという感じだったの。セックスのようにね。
    ヤーン・ユヘルスズキ 「そこそこ悪名高き存在」


  • Led Zeppelin(Zep)の《Physical Graffiti》(Swan Song 1975)は《White Album》(Apple 1968)のように最初からアナログ2枚組アルバムでリリースする考えはなかった。1974年1月から2月、英ハンプシャー東部のヘッドリィ・グランジで録音された新曲8曲〈Custard Pie〉〈In My Time Of Dying〉〈Trampled Under Foot〉〈Kashmir〉〈In The Light〉〈Ten Years Gone〉〈The Wanton Song〉〈Sick Again〉のトータル演奏時間は54分近くもあって、アナログ盤1枚には収まり切れなかった。5thアルバム《Houses Of The Holy》(Atlantic 1973)からタイトル・トラックを外さなければならなかったのと同じ轍(過ち?)は2度と踏みたくないと思ったのかどうか、3rdアルバム以降にレコーディングしていた未発表曲7曲を追加収録した全15曲の2枚組アルバムとなった。アナログ2枚に新録4曲を割り振って、旧録7曲を混在させた構成はバランスも良く、不思議と整合性が取れている。アルバム・リリースが翌年に遅れたのは凝りまくったアートワークのためだという。

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    白い翼の生えた男性(アポロ神)が空中で仰け反る「スワン・ソング」のレーベルが盤面にプリントされたリマスターCD。音圧は抑えられていて、ヴォリュームを上げても耳障りにならない。Jimmy Pageの硬質なギター・リフとJohn Paul JonesのクラヴィネットにRobert PlantのヴォーカルとJohn Bonhamのドラムスが加わる〈Custard Pie〉。Pageの豪快なスライド・ギターが炸裂する〈The Rover〉。ディランもカヴァしたブラインド・ウィリー・ジョンソン("Blind" Willie Johnson)のゴスペルをブルーズに換骨奪胎した長尺曲(11分8秒)〈In My Time Of Dying〉。泥臭いスライド・ギターのブルーズを聴いた後でアナログ盤を引っくり返すのが億劫だったが、CDではスムースに〈Houses Of The Holy〉へ続く。〈Trampled Under Foot〉はクラヴィネットを大胆に導入したディスコ〜ファンク・ナンバーで、恐竜や巨人が人間たちを容赦なく踏み潰して行くような破壊的な爽快感さえある。ギター・リフ(3拍子)とドラミング(4拍子)による〈Kashmir〉は後半のインド風のストリングスと相俟って、非西欧世界の雄大なスケールを現前させる。

    Jonesの弾くシンセが中近東風メロディを奏でる〈In The Light〉。Pageのアクースティック・ギター(オープン・チューニング)によるインスト曲〈Bron-Yr-Aur〉。Neil Youngを想わせるウェスト・コースト・サウンド風の〈Down By The Seaside〉‥‥と後半(Disc 2)はZepの本流から逸脱した楽曲が並ぶ。ハードなサウンドの中にもノスタルジックな響きが混じる〈Ten Years Gone〉。Zep本来のギクシャクしたシンコペーションが執拗に繰り返される〈The Wanton Song〉。イアン・スチュアート(Ian Stewart)のブギウギ・ピアノが軽快に弾ける〈Boogie With Stu〉、Pageのアコギ、Jonesのマンドリン、Plantのブルーズ・ハープ、Bonhamのドラムスという編成のカントリー・ブルーズ〈Black Country Woman〉‥‥。アルバム・タイトルの「Physical Graffiti」には「アルバム制作に要する大変な肉体的なエネルギー」という意味が込められているという。2枚組となった制作過程も含めて、肉体のように生々しく、落書きのように雑多なアルバムなのかもしれない。

    過去にレコーディングした未発表曲を追加収録したためか、2枚組のヴォリュームに反して「コンパニオン・オーディオ」(Disc 3)は7曲と少ない。〈Brandy & Coke〉はPageのギターがオーヴァ・ダビングされていない〈Trampled Under Foot〉の初期ラフ・ミックス。〈Sick Again〉は〈The Rover〉と同じギター・リフから始まるインスト・ナンバー。〈In My Time Of Dying〉〈Houses Of The Holy〉もギターがオーヴァ・ダブされる前のラフ・ミックス。〈Everybody Makes It Through〉はJonesの弾くクラヴィネットの伴奏でPlantが歌う〈In The Light〉の初期ヴァージョンで、完成形とは印象が大きく異なる。〈Boogie With Stu〉はアクースティック・ギターの入ったミックス。〈Driving Through Kashmir〉は〈Kashmir〉との差異が余り認められない。インナー・スリーヴ(内袋)は1枚目(Disc 1)をネガ反転しているので、表・裏が昼なのか夜なのか判別し難い。

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    NYダウンタウンのイースト・ヴィレッジ8丁目、セント・マークス・プレイス96/98番地に建つアパートメントの外観の写真を使用したアルバム・カヴァは窓枠部分が刳り抜かれていて、インナー・スリーヴ(2面)とレコード内袋(4面)に印刷された「室内」が覗ける趣向になっている(内袋を入れ替えることで「室内」を変えられる)。表スリーヴは4階建てのアパートの白いカーテンの引かれた20の窓枠に「P・H・Y・S・I・C・A・L・G・R・A・F・F・I・T・I」という16の赤い文字が割り振られ、裏には21の窓枠に白いカーテンが降りている。スリーヴを外せば、内袋にコラージュされたメンバー4人や無声映画、ラファエル前派、ネコちゃんなどの写真や絵をカーテンの開いた窓から覗ける。同じアパートメントの表と裏ではなく、裏面は表の外観(昼)を左右反転した夜ヴァージョンである。開いた窓が1つ多いのは4階右から2つ目の金髪女性のストリップ・ショット5枚(2枚目の内袋裏)を覗き見るため。「デラックス・エディション」の裏面は表カヴァをネガ反転したデザインに統一されているので、残念ながらヌード女性を「裏窓」からは見れないのだ。

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    • 国内盤より千円近く安い輸入盤CD(Swan Song 2015)がお買い得にゃん^^

    • 「デラックス・エディション」のアルバム・カヴァは反転した裏面の画像です
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    Physical Graffiti(DELUXE EDITION 3CD)

    Physical Graffiti(DELUXE EDITION 3CD)

    • Artist: Led Zeppelin
    • Label: Atlantic
    • Date: 2015/02/24
    • Media: Audio CD(3CD)
    • Songs: Custard Pie / The Rover / In My Time Of Dying / Houses Of The Holy / Trampled Under Foot / Kashmir / In The Light / Bron-Yr-Aur / Down By The Seaside / Ten Years Gone / Night Flight / The Wanton Song / Boogie With Stu / Black Country Woman / Sick Again


    レコード・コレクターズ 2015年 03 月号

    レコード・コレクターズ 2015年 03 月号

    • 特集:レッド・ツェッペリン『フィジカル・グラフィティ』
    • 出版社:ミュージックマガジン
    • 発売日:2015/02/14
    • メディア:雑誌
    • 目次:『フィジカル・グラフィティ』オリジナル盤の“深い森"を探検! / トータリティの高さと多面性を両立させたあふれ出るまでの創作力 / 70年代初頭の録音すら成熟して聞こえる三つの理由 /「カシミール」とアナザー・ワールド / 全曲ガイド /『フィジカル・グラフィティ~スーパー・デラックス・エディション』解説 /「カシミール」にのぞき見た“時...


    レッド・ツェッペリン オーラル・ヒストリー

    レッド・ツェッペリン オーラル・ヒストリー

    • 著者:バーニー・ホスキンス(Barney Hopkyns)/ 五十嵐 哲(訳)
    • 出版社:シンコーミュージック
    • 発売日:2013/03/30
    • メディア:単行本
    • 目次:イン・スルー・ジ・アウト・ドア(出口用の扉から入る)"世界最大の正体不明バンド" / 登場人物紹介 / 心揺さぶられて / 眩い世界へ / イライラが募る時期 / 消耗して / 謝辞 / 訳者あとがき / 著者インタヴュー&出典 / 索引

    スニーズ・ラブ 6

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  • ♭ マグリット本(2015-07-04)
  • 『もっと知りたいマグリット 生涯と作品』(2015 東京美術)は80頁の薄い大型判にも拘らず、マグリットの生涯をコンパクトに纏めている。作品解説も丁寧で好感が持てる。入門書として最適だと思う。『マグリット事典』(創元社 2015)はテート・リヴァプールで開催された「ルネ・マグリット快楽原則」(2011)に合わせて編集された事典『Magritte A to Z』。ABC順に「Absence 不在」「Abstruction 抽象画」「Alice in Wonderland 不思議の国のアリス」「Anonymity 匿名性」「Apple リンゴ」「Appropriation 流用」「Artifice 狡猾」「Automatism and Automatic Writing 自動作用と自動筆記」‥‥とマグリットのキーワードが羅列されている。『マグリット 光と闇に隠された素顔』(マール社 2013)は美術史家(ベルギー王立美術館公認解説者)がベルギーに現地取材した解説書で、作品を読み解きながら、少年時代の悪童ぶりや自ら顔を隠す匿名性の謎に迫ります。

  • ♭ パーフェクト・プッシー(2015-07-11)
  • 完璧なる子ネコちゃん(Perfect Pussy)はNYシラキュースで結成された5人組のノイズ・ロック・バンド。《I Have Lost All Desire For Feeling》(Captured Tracks 2015)は2013年にリリースされた4曲入りカセットEP(デビュー・アルバム《Say Yes To Love》(2014)のフリー・ダウンロード4曲だった)の再発盤。CD化に際して〈Adult World〉(The Secret)と〈Leash Called Love〉(Sugarcubes)のカヴァ2曲を追加収録している。前者は典型的なパンク・ナンバーだが、Bjork似のヴォーカルが弾ける後者はテクノ〜エレクトロ・ノイズ風の展開を見せて刺戟的。それでも全6曲、20分に満たない。デビュー・アルバムと同じく、素っ気ない真っ白なアートワーク。この内容では「ミニ・アルバム」として魅力に欠けると思ったのか、メンバーや風景などを撮った白黒写真集(36頁)が付いています。

  • ♭ ネコ学入門(2015-07-18)
  • 『ネコ学入門』(築地書館 2014)は英国を本拠とするネコの慈善団体「インターナショナル・キャットケア」の最高責任者クレア・ベサントによる「ネコ本」。「違う世界」「猫の言語」「猫と暮らす」「猫との関係」「猫の性格」「知能と訓練」「問題解決法」‥‥「ネコ先進国」ならではの最新知識や研究成果、ネコの心理や行動原理を解説。《この本は、猫という動物がどのように機能するか、そしてそのことを、日常的に、あるいは何か問題が起きたとき、 猫と人間が絆を築くのにどう役立てられるのかを説明している。猫についてもっと知れば、あなたは猫がますます好きになるだろう──そのふるまいや能力ばかりでなく、これほど上手に、実りの多い形で私たちとともに生きることができる、という事実ゆえに。 さあ、猫との会話を始めよう》と著者が「プロローグ」に書いているように、学術的な「ネコ学」ではなく、これからペットとしてネコを飼おうと思っている人のための実践的な入門書になっている。

  • ♭ 不思議の国のアリス(2015-07-25)
  • 『Alice In Wonderland』(1985)刊行150周年記念出版。『不思議の国のアリス』(亜紀書房 2015)は高山宏の新訳と佐々木マキの描き下ろしイラスト(2色刷り)によるコラボレーション。かつてマーティン・ガードナーの『詳注アリス』『新注アリス』を訳したことのある高山宏は注釈の一切ない日本語に訳すことが長年の夢だったという。最大の難所(第7章)の日本語タイトルは「気がふれ茶った会」。佐々木マキは「羊男」のイメージが強いけれど、ジョン・テニエルの金髪少女やディズニー・アニメの美少女とも異なる眠たそうな半眼アリスも悪くない。白うさぎ、ドードー、女公爵、イモムシ、チェシャー・キャット、三月うさぎ、帽子屋、ネムリネズミ、クィーン、グリフォン、まがいタートルなど「不思議の国」の住人たちも「佐々木マキ・ワールド」のキャラとして描かれる。高山&佐々木コラボ版『鏡の国のアリス』にも期待しちゃいます。

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    • 別館ミニ・ブログ「スニーズ・ラブ」シリーズの一覧集(2015-05)です^^;

    • リンク画像が左に重なって見難いので、サイドバーを右側にレイアウトしました。「SKIN SWITCHER」でデフォルトに戻せるにゃん
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    マグリット事典

    マグリット事典

    • 著者:クリストフ・グリューネンベルク(Christoph Grunenberg)/ グレン・ファイ(Garren Pih)/ 野崎 武夫(訳)
    • 出版社:創元社
    • 発売日:2015/04/06
    • メディア:単行本
    • 目次:Absence 不在 / Abstruction 抽象画 / Alice in Wonderland 不思議の国のアリス / Anonymity 匿名性 / Apple リンゴ / Appropriation 流用 / Artifice 狡猾 / Automatism and Automatic Writing 自動作用と自動筆記 / Banality 凡庸 / Georges Bataille ジョルジュ・バタイユ / Charles-Pierre Baudelaire シャルル=ピエール・ボードレール / Bel...


    ネコ学入門: 猫言語・幼猫体験・尿スプレー

    ネコ学入門 猫言語・幼猫体験・尿スプレー

    • 著者:クレア・ベサント(Claire Bessant)/ 三木 直子(訳)
    • 出版社:築地書館
    • 発売日:2014/09/16
    • メディア:単行本
    • 目次:プロローグ / 違う世界 / 猫の言語 / 猫と暮らす / 猫との関係 / 猫の性格 / 知能と訓練 / 問題解決法 / 訳者あとがき / 索引


    不思議の国のアリス

    不思議の国のアリス

    • 著者:ルイス・キャロル(Lewis Carroll)/ 高山 宏(訳)/ 佐々木 マキ(絵)
    • 出版社:亜紀書房
    • 発売日:2015/04/25
    • メディア:単行本
    • 目次:うさぎ穴を落ちる / 涙のたまり池 / コーカサス競争と長い尾話 / うさぎがリトル・ビルを呼びつける / イモムシの忠告 / ブタと胡椒 / 気がふれ茶った会 / クィーンのクローケー場 / まがいタートルの物語 / エビのカドリール / だれがタルトを盗んだか / アリスの証言 / 訳者あとがき

    B E S T A L B U M S 2 0 1 5(So Far)

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  • BEST ALBUMS 2015(So Far)


  • Jun.
    ◎ I Have Lost All Desire For Feeling(Captured Tracks 2015)Perfect Pussy
    ◎ In Colour(Young Turks. 2015)Jamie xx
    ◎ Welcome Back To Milk(Mute 2015)Du Blonde
    ◎ Total Life Forever(Warner 2010)Foals
    ◎ New History Warfare Vol. 3: To See More Light(Constellation 2013)Colin Stetson
    ◎ Confin(Geiser Discos 2015)Lucio Mantel
    ◎ Abandon(Sacred Bones 2013)Pharmakon
    ◎ Keraaminen(Fonal 2010)Islaja
    ◎ Parle Parle, Jase Jase(Sound Pounding 2008)Donzelle
    ◎ Arcadia(Pannonica 2014)Ramona Lisa

    May
    ◎ Platform(4AD 2015)Holly Herndon
    ◎ Simple Songs(Drag City 2015)Jim O'Rourke
    ◎ Ivy Tripp(Wichita 2015)Waxahatchee
    ◎ Milagros(Union De Musicos 2013)Milagros Torrecilla
    ◎ Shackles' Gift(Bella Union 2015)Zun Zun Egui
    ◎ Asunder, Sweet And Other Distress(Constellation 2015)GSY!BE
    ◎ Cien Volando(Independent 2013)Jacara
    ◎ Em Cantos De Casa(Tratore 2014)Badi Assad
    ◎ Superultramegafluuu(Natura 2015)Erika Machado
    ◎ Impossible Spaces(Constellation 2011)Sandro Perri
    ◎ So O Amor Constroi(Independent 2012)Gustavito
    ◎ II(Barcly 2012)- M -(Matthieu Chedid)
    ◎ I'd Rather Be Naked(Crepuscule 2013)Penelope Queen
    ◎ The Great Pretend(Words On Music 2014)Should

    Apr.
    ◎ Organization Of Pop(ZTT / Razor & Tie 2013)Various Artists 2CD
    ◎ Arts & Crafts: 2003-2013(Arts & Crafts 2013)Various Artists 2CD
    ◎ The Abbey Road Sessions(Parlophone 2012)Kylie Minogue
    ◎ Boy(Constellation 2014)Carla Bozulich
    ◎ Pom Pom(4AD 2014)Ariel Pink
    ◎ Birthdays(Oak Ten 2013)Keaton Henson
    ◎ Herein Wild(Fat Possum 2013)Frankie Rose
    ◎ Hasta La Raiz(Sony Music 2015)Natalia Lafourcade
    ◎ Une(Attends-moi 2015)Luciole
    ◎ Floresta(City Zen 2014)Mia Doi Todd
    ◎ My Dreams Dictate My Reality(Babycat / Because 2015)Soko
    ◎ Lucas Nikotian, Sebastian Macchi(Shagrada Medra 2013)
    ◎ Palermo House Gang(100% Silk 2014)Magic Touch
    ◎ Sometimes I Sit And Think, And Sometimes I Just Sit(House Anxiety 2015)Courtney Barnett
    ◎ Carrie & Lowell(Ashmatic Kitty 2015)Sufjan Stevens
    ◎ Cabinet Of Curiosities(Freaks R Us 2014)The Pop Group
    ◎ We Are Time(Freaks R Us 2014)The Pop Group

    Mar.
    ◎ Vulnicura(One Little Indian 2015)Bjork
    ◎ Right From Real(Arbutus 2014)Lydia Ainsworth
    ◎ Shortwave Nights(Constellaton 2014)Hiss Tracts
    ◎ A New Nature(Nostromo 2014)Esben And The Witch
    ◎ Season On Earth(Wichia 2011)Meg Baird
    ◎ It's Like You Never Left(Beat Goes On 2014)Dave Mason
    ◎ Not Your Kind Of Music(Broken Horse 2012)Charles Douglas

    Feb.
    ◎ Citizen Zombie(Freaks R Us 2015)The Pop Group 2CD
    ◎ Sorga(Buda Musique 2015)Dupain
    ◎ The Silver Globe(Bird 2014)Jane Weaver
    ◎ Personal Record(Merge 2014)Eleanor Friedberger
    ◎ Super-Welter(De Label 2012)Raphael
    ◎ Total Exposure(Fire 2013)Las Kellies
    ◎ Adrian Thaws(!K7 2014)Tricky
    ◎ Best Of Benjamin Biolay(EMI France 2011)Benjamin Biolay
    ◎ Green Cosmos(Menlo Park 2005)Deerhoof EP
    ◎ Grassed Inn(Fire 2014)Blank Realm

    Jan.
    ◎ On Your Own Love Again(Drag City 2015)Jessica Pratt
    ◎ Elba(Universal 2013)Laura Jansen
    ◎ The Only Place(Mexican Summer 2012)Best Coast
    ◎ Will Happiness Find Me?(Not Not Fun 2012)Maria Minerva
    ◎ No Cities To Love(Sub Pop 2015)Sleater-Kinney
    ◎ Panda Bear Meets The Grim Reaper(Domino 2015)Panda Bear
    ◎ Surrender To The Fantasy(Drag City 2013)Magik Markers
    ◎ Oasis De Vidro(Independiente 2014)Rafael Dutra
    ◎ Burn Your Fire For No Witness(Jagjaguwar 2014)Angel Olsen
    ◎ Maldigo(Sony 2013)Liliana Herrero
    ◎ De Agua y Laurel(Karonte 2013)Olga Roman Canta Al Cuchi Leguizamon
    ◎ Intriguer(Universal 2010)Crowded House
    ◎ For Emma, Forever Ago(Jagjaguwar 2008)Bon Iver
    ◎ With Love And Squalor(Virgin 2005)We Are Scientists
    ◎ Post(Mother 1995)Bjork

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    • 2015年上半期(1〜6月)の「BEST ALBUMS 10」です^^

    • 上半期に購入したアルバム(輸入CD)をリストアップしました(降順)
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    Panda Bear Meets The Grim ReaperNo Cities To LoveOn Your Own Love AgainCitizen ZombieSorgaVulnicuraUneCarrie & LowellSimple SongsConfin

    ビートルズ・セール中

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  • ビートルマニアが、あきらかに芸術面にも影響を与えたとわかったのは、1964年の終わりにリリースされたアルバム「ビートルズ・フォー・セール」である。全体的に疲れが見える。そのタイトルでさえ、売れればいいだけの中身のない忘れられそうな題名で、まるで、もっといいものを考えるエネルギーが誰にも無かったとでもいうようではないか。ジャケットの表と裏は対になったビートルズの写真だが、とても陰気な雰囲気になっている。黒い服を着たジョン、ポール、ジョージ、リンゴが、まるで外の世界から身を守るかのように、固まって立っているのだ。活気のない、物憂い表情で、まっすぐにカメラを見ている。笑いかけている者は誰もいない。ジャケットの表のビートルズは、まるで親しい友人が死んだと聞かされたかのように、塞ぎ込んだ陰鬱な表情だ。裏のビートルズは、まるで天に慈悲を懇願するかのように、悲しげに空を凝視している。
    マーク・ハーツガード 「闘いに疲れて」


  • ファブ・フォーの4thアルバム《Beatles For Sale》(Parlophone 1964)は年末のクリスマス商戦を意識して、「売り出し中」というタイトルになった。《A Hard Day's Night》から5カ月、1年に2枚のオリジナル・アルバムをリリースするのは今日では考え難いことだが、60年代には特別驚くことではなかった。米英ライヴ・ツアーの合間にレコーディングしたという過密スケジュールのためか、1st、2ndアルバムと同じくオリジナル8曲、カヴァ6曲(全14曲)という構成。レコーディングの合間にロンドンのハイドパークで撮ったアルバム・カヴァの4人の表情も心なし疲れているように見えなくもない。若年のファンに同じ曲を2度買いさせない(無駄な金は使わせたくない)という配慮から、先行シングル〈I Feel Fine〉〈She's A Woman〉の2曲はアルバムに収録されていない。これも古きアナログ時代の遺物で、収録時間に余裕のあるCD時代には考え及ばないことである。

    ▢ No Reply
    米ドゥーワップ・グループ、ザ・レイズ(The Rays)のヒット曲〈Silhouettes〉(1957)の歌詞にインスパイアされたというJohnの失恋ソング。彼女の家に行っても居留守を決め込まれ、電話にも出てくれないと嘆くストーカー一歩手前の心情が歌われる。。Johnのヴォーカル(ダブルトラック)、ギター、Paulのベース、コーラス、Georgeのギター、Ringoのドラムス。ボサノヴァ風に始まり、シンバル・クラッシュの後で力強い8ビートとなる。アクースティックなサウンドで、サビではJohn、Paul、Georgeの手拍子とジョージ・マーティン(Georege Martin)のピアノ、Paulのコーラスが加わる。セッション日(1964. 9. 30)の最後に録音されたこともあってか、疲れ気味のJohnのヴォーカルにエコーがかけられた。英国ではシングル・カットされなかったが、日本では〈Eight Days A Week〉のB面としてリリースされた。

    ▢ I'm A Loser
    「僕のディラン時代」とJohn自ら語っているように、Bob Dylanの影響下で書かれた負け犬ソング。JohnのヴォーカルとPaulのハーモニーから始まるフォーク・ロック調の曲。挿入されるハーモニカも〈Please Please Me〉〈I Should Have Known Better〉などのキャッチーなリード・メロディではなく、ギター弾き語りのフォーク・ソングのスタイル。Johnのヴォーカル、ギター、ハーモニカ、Paulのベース、コーラス、Georgeのギター、Ringoのドラムス。間奏のギターはGeorgeのチェット・アトキンス奏法で、Paulのベース・ランも内省的な歌詞とは対照的に陽気で愉しげに聴こえる。「ダメな僕」という自虐的な自画像はBeckの〈Loser〉(1994)にも通底するロックの王道テーマの1つである。

    ◎ Baby's In Black
    正真正銘のJohnとPaulの共作(レノン&マッカートニー)で、ツイン・ヴォーカル。どちらが主旋律を歌っているのか判然としない3拍子(6/8)の曲である。JohnとPaulのヴォーカル(ダブルトラック)、Johnのギター、Paulのベース、Georgeのギター、Ringoのドラムス。「Baby's in black and I'm feeling blue」という歌詞が黒い服装の彼女と僕のブルー(憂鬱)な気持ちを対比している。恋人は黒い服が好きなだけで「喪服」を暗示しているのかどうかは分からないが、黒い服の女性のイメージはハンブルグ時代に出会った女性写真家で元メンバー、スチュアート・サトクリフ(Stuart Sutcliffe)の婚約者だったアストリッド・キルヒャー(Astrid Kirchherr)から得たのではないかと言われている。サトクリフは1962年に死去しているので「寡婦」に重なるけれど。「失恋男」「負け犬」「黒服女」‥‥「売り出し中」というアルバム・タイトルとは裏腹に気分の滅入るような歌詞が続く。

    ▢ Rock And Roll Music (Chuck Berry 1957)
    カヴァ・ソングが「失恋男」「負け犬」「黒服女」と続いたオリジナル曲の暗雲を吹き飛ばす。1966年のライヴ・ツアーでオープニングに演奏されたファブ・フォーの持ち歌は力強く揺るぎない。レコーディングも一発録音の1テイクで完了したという。Johnのヴォーカル、ギター、Paulのベース、Georgeのギター。ロックンロール・ビアノはジョージ・マーティンが弾いている。ニュー・アルバム1枚を制作するにはレノン&マッカートニーのオリジナル曲が足らず、仕方なく収録したカヴァ6曲の中の1つだが、ライヴ・レパートリーがスタジオ録音されたのは逆に貴重だったかもしれない。タンゴでもマンボでもなく、ロックで踊りたいというロックンロールのテーマ・ソングなのだから。

    ◎ I'll Follow The Sun
    Paulが16歳の頃、風邪で寝込んでいた日にレースのカーテン越しに窓の外を眺めながら、ギターを弾いて作ったというバラード。熱に浮かされたような過剰なエネルギーはなく、むしろ落ち着いた雰囲気が漂う。Paulのヴォーカル、ベース、JohnとGeorgeのギター、Ringoのパーカッション(ボンゴではなく膝を叩いている)。間奏のギター・ソロはGeorgeのスライド奏法。録音当日(1964. 10. 18)は録音済みの〈Eight Days A Week〉の完成を含めて、8曲のレコーディングを9時間で終えたという。しかし、お蔵入りの古いバラードを収録せざるを得なかったことに、このアルバムの内実が表われている。マーク・ハーツガードは「このアルバムを、同時期のライバルの作品と好意的に較べて、良い点をつけることもできるかもしれないが、ビートルズによって積み重ねられた全業績から比べたら、二級品だろう」と断じている。

    ▢ Mr. Moonlight (Roy Lee Johnson 1962)
    米R&B歌手のピアノ・レッド(Piano Red)がドクター・フィールグッド&ジ・インターンズ(Dr. Feelgood And The Interns)名義で発表したカヴァ曲。ライヴで演奏していたJohnのレパートリーである。冒頭のタイトル・シャウトが強烈だが、来日公演(1966)をTV放送した番組の中で、4人を乗せたクルマが夜明けの首都高速を走るシーンのBGMとして使われたことでも印象深い。Johnのヴォーカル、ギター、Paulのベース、ハモンド・オルガン、Georgeのギター、アフリカン・ドラム、Ringoのドラムス。この曲がアルバムに収録されたためなのかどうかは不明だが、同日(1964. 8. 14)のセッションでレコーディングされた〈Leave My Kitten Alone〉(Little Willie John 1959)が選曲から漏れてしまったのは残念でならない。ファブ・フォー唯一の「猫ソング」だったのに。

    ◎ Kansas City (Jerry Leiber And Mike Stoller 1959) / Hey-Hey-Hey-Hey! (Richard Penniman 1958)
    米R&B歌手ウィルバート・ハリスン(Wilbert Harrison)のヒット曲(オリジナルはリトル・ウィリー・リトルフィールド(Little Willie Littlefield)が1952年に発表した〈K.C. Loving〉)とリトル・リチャード(Little Richard)の自作曲のメドレー。この2曲をメドレーにしてリリースしたリトル・リチャードのヴァージョンをファブ・フォーは踏襲している。〈Long Tall Sally〉と同じく、Paulが得意にしていたライヴ・レパートリーの1つである。Paulのヴォーカル、ベース、JohnとGeorgeのギター、Ringoのドラムス。4人のコーラスと手拍子にジョージ・マーティンのピアノが加わる。元々は別々の2曲なのにシームレスに繋がって1曲に聴こえるので、メドレーという感じはない。カンサス・シティに行った娘を連れ戻しに来たけれど、袖にされてしまったというラヴ・ソングである。

    ▢ Eight Days A Week
    3連符のフェードインで始まるレノン&マッカートニーの共作曲。Johnのヴォーカル、ギター、Paulのコーラス、ベース、Georgeの12弦ギター、Ringoのドラムス。JohnとPaulの手拍子が効果的に使われている。英国ではシングル・カットされなかったが、アメリカでは全米シングル・チャートで2週1位になった(B面はJohnの〈I Don't Want To Spoil The Party〉)。「1週間に8日」とは名タイトルである。B面(アナログ盤)の1曲目に収録されている曲がフェードインするのは偶然ではないだろう。「リスナーがレコードをひっくり返して、B面の曲が始まるのを待っていると、歌が始まる前に音楽が‥‥それもまるで遠くから音が近づいてくるかのように、渡り鳥の群れが突然空をおおうかのように聞こえてくるのだ」(マーク・ハーツガード)。

    ▢ Words Of Love (Buddy Holly 1957)
    米ミュージシャン、SSWのバディ・ホリー(Buddy Holly)のカヴァ曲で、JohnとPaulのツイン・ヴォーカル。小型飛行機事故で早世したホリーを敬愛していた2人はライヴでも彼の曲を数多く演奏していたが、オリジナル・アルバムに収録されたのは〈Words Of Love〉1曲だけである。Johnのヴォーカル、ギター、Paulのヴォーカル、ベース、Georgeの12弦ギター、Ringoのドラムス(パッキング・ケースを叩いている?)。John、Paul、Georgeのコーラス。2人のヴォーカルも穏やかで、Georgeの12弦ギターも軽やかに響く。地味な曲ながらホリーへのリスペクトが溢れている。

    ☆ Honey Don't (Carl Perkins 1956)
    米ロカビリー歌手カール・パーキンス(Carl Perkins)のヒット曲〈Blue Suede Shoes〉のB面曲。元々はJohnのライヴでの持ち歌だったが、Ringoのヴォーカル曲をアルバムに入れる必要性から彼が歌うことになった。Ringoのヴォーカル、ドラムス、タンバリン、JohnとGeorgeのギター、Paulのベース。間奏の前にRingoが「Rock on George, one time for me!」「Rock on, George, for Ringo one time!」と2度声をかけ、Georgeはカントリ〜ロカビリー調のリード・ギターで応じている。このカヴァ曲に限らず《Fo Sale》にはカントリー・タッチの軽快な曲が多く収録されている。サウンドを特徴づけているのはGeorgeのグレッチ・ギター(カントリージェントルマンとテネシアン)である。

    ▢ Every Little Thing
    ジェーン・アッシャー(Jane Asher)邸でPaulがシングル用(結果的には採用されなかった)に書いた曲。AメロはJohn、サビ部分はPaulが主旋律を歌っている。作曲者がメイン・ヴォーカルを担当していないというレノン&マッカートニーの例外曲の1つだが、このアルバムには本来の意味での共作曲が2曲(〈Baby's In Black〉と〈Eight Days A Week〉)収録されている。Johnのヴォーカル、ギター、Paulのコーラス、ベース、ピアノ、Georgeの12弦ギター、Ringoのドラムス、ティンパニー。レコーディング当日にGeorgeが遅刻したため、イントロとソロ・ギターをピアノ、ティンパニーと共に録音したという。

    ▢ I Don't Want To Spoil The Party
    Johnによるカントリー&ウエスタン調の曲。Johnのヴォーカル、コーラス、ギター、Paulのベース、コーラス、Georgeのギター、Ringoのドラムス、タンバリン。JohnとGeorgeの2本のギター(アクースティックとエレキ)、カーター・ファミリー・ピッキングとチェット・アトキンス奏法による軽快なギター・サウンドはアルバムの主調になっている。いつまで待ってもパーティに誘った彼女が来ないので、意気消沈して途中で帰る(彼女を探しに行く)という失恋ソング。原題は「パーティを台無しにしたくないんだ」。日本語タイトルは〈パーティーはそのままに〉。

    ◎ What You're Doing
    Ringoのドラム・ソロで始まるPaulの曲。Paulのヴォーカル、ベース、Johnのギター、コーラス、Georgeの12弦ギター、Ringoのドラムス。間奏とエンディングのピアノはジョージ・マーティンが弾いている。恋人に振り回されて、嘘に泣かされるという惨めな歌詞はPaulに相応しくない。楽曲も精彩を欠くし、アレンジも中途半端。セッション最終日(1964. 10. 26)に再度レコーディングして、やっと完成させたというエピソードも含めて、アルバムの生気のなさを象徴的に露呈している。出来の良いシングル2曲、〈I Feel Fine〉と〈She's A Woman〉を敢えて収録しなかったことが裏目に出てしまったのかもしれない。もし前者がA面の1曲目に入ったら、ボツになっていた可能性が高いでしょう。

    △ Everybody's Trying To Be My Baby (Carl Perkins 1957)
    〈Honey Don't〉と同じくカール・パーキンスのカヴァで、元々はGeorgeが歌っていたライヴ演奏曲だった。Georgeのヴォーカル、ギター、Johnのギター、Paulのベース、Ringoのドラムス、タンバリン。一発録りの後、セカンド・ヴォーカルとタンバリンを追加録音している。ヴォーカル(ダブルトラック)には特殊なエコーがかけられた。「みんなが僕の恋人になりたがる」という原題の歌詞はモテ男の自慢というよりもビートルマニアへの痛烈な皮肉になっている。邦題は〈みんないい娘〉。レノン&マッカートニーだけでなく、Georgeもハード・スケジュールの中で作曲する時間がなかったのか、彼のオリジナルは1曲も収録されなかった。

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    • ▢ John Lennon ◎ Paul McCartney △ George Harrison ☆ Ringo
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    Beatles For Sale

    Beatles For Sale

    • Artist: The Beatles
    • Label EMI UK
    • Date: 2009/09/09
    • Media: Audio CD
    • Songs: No Reply / I'm A Loser / Baby's In Black / Rock And Roll Music / I'll Follow The Sun / Mr Moonlight / Kansas City/Hey-Hey-Hey-Hey / Eight Days A Week / Words Of Love / Honey Don't / Every Little Thing / I Don't Want To Spoil The Party / What You're Doing / Everybody's Tr...


    ビートルズ

    ビートルズ

    • 著者:マーク・ハーツガード(Mark Hertsgaard)/ 湯川 れい子(訳)
    • 出版社:角川春樹事務所
    • 発売日: 1997/07/18
    • メディア:単行本
    • 目次:アビイ・ロード・スタジオの中で / リヴァプールからやってきた4人の若者 / 栄光への第一歩 / ショーをやれ!/ 音楽はどこへ行った?/ ブライアンと共に / おかしなコードが聞こえた / 人気の重圧 / 闘いに疲れて / 天才たち / フレッシュ・サウンド / 4人の相乗作用 / 成熟期 /「シンフォニーのように」/ 夢の色を聴け / 僕らは世界を変えたいんだ ...


    ザ・ビートルズ全曲バイブル ── 公式録音全213曲完全ガイド

    ザ・ビートルズ全曲バイブル ── 公式録音全213曲完全ガイド

    • 編者: 大人のロック!
    • 出版社:日経BP社
    • 発売日: 2009/12/07
    • メディア:ハードカヴァ
    • 目次:英米公式全作品の系譜 / 公式録音全213曲徹底ガイド(2トラックレコーディング時代〜ライヴ演奏スタイルでの録音/ 4トラックレコーディング時代 1〜アレンジの幅が広がりサウンドに深み / 4トラックレコーディング時代 2〜バンドの枠を超えた録音の始まり / 4トラックレコーディング時代 3 〜ロックを芸術の域に高める/ 8トラックレコーディング時代へ〜サウンドと作品の多様化 / 8トラックレコーディング時代〜原点回帰...と円熟のサウンド)/ 録音技術の変化と楽曲解析方法

    ネコと歩けば 2

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  • 「世界ネコ歩き」が始まって、ほとんど毎日ネコのことを考えています。そのことがどのように身体や思考に影響を及ぼすのかはわかりません。しっかりネコを見ているつもりが、実はこちらが見られているとハッと気づくこともしばしばです。ネコに恥ずかしくないよう行動するために意識を集中したら次の動きが違ってくること、撮影もまた新たな軌道に乗り始めています。先日、カメラに近づいてきたネコがいました。顔中が汚れているので拭いてあげようとすると、手を触れさせてくれません。それでもネコは離れようとしないので、カメラを向けるとポーズをとるようにちょっと胸を張ります。気取っているようにも見えます。ひょっとしたら生まれて初めてカメラを向けられたのかもしれません。そこへいつもモデルとなってくれるネコがやってきます。わざわざカメラを向けていたネコの手前でひっくり返って、まるで私を撮りなさいといわんばかりにしなを作るのです。「え、これってやきもち?」と驚きます。ネコの自意識や喜怒哀楽について、これからもカメラを通して探っていきたいですね。ネコを撮影することは無限の可能性を秘めています。
    岩合 光昭 『世界ネコ歩き』


  • 「世界ネコ歩き」(日本橋三越本店)に行って来た。「ねこ歩き」(2013)の続編で、パリ、プロバンス、ベルギー、ノルウェー 、シチリア、クロアチア、エーゲ海の島々、ブルガリア、イスタンブール、マラケシュ、キーウエスト、ウルグアイ、ハワイ、台湾、沖縄‥‥世界15地域のネコたち、約200点で構成されている。イスタンブールのグリやサフランなど常連ネコちゃんも登場しますが、「ねこ歩き」との重複写真は1枚もなかった。会場内に設置された液晶TVでスライドショー(1分)やヴィデオ(7分)も愉しめる。いつものネコたちと印象が違う?‥‥目や髭の細部まで鮮明に写っていると思っていたら、今回の写真は全部ミラーレス一眼(OLYMPUS OM-D E-M1)で撮ったという。マイクロフォーサーズ(1628万画素)で、ここまで解像するとは驚きです。新館7階ギャラリーを出て、本館への連絡通路を渡ると、写真集、カレンダー、絵葉書など「ねこ歩き」の関連商品だけでなく、縫いぐるみ、食器、アクセサリー、小物など過去最大のネコグッズ売場が広がっていた。

    いつものようにネコの上部が輪郭に沿って切り抜かれた「世界ネコ歩き」の特製チケット。今回のモデルはポスターやチラシ、写真集の表紙などにも起用されているパリ13区シテ・フローラルのガゼットちゃん。赤レンガを背景に両前肢を鉄柵に凭れたポーズが可愛い。「モンマルトルのサクレ・クール寺院を見上げるアパルトマン」のヴェランダで窓に映った自分姿を見つめている白ネコ、ソシソン。飼主の肩に乗って買い物に同伴するメインクーン種のエスプリ(ナナちゃんに似ている!)。オペラ座前のオルガン弾きの招きネコ、イザベルとジャニス。彫刻家のアトリエで暮らすブール。プロバンス・ボニューの黒ネコ、リルー。ラブラドール・リトリーバーと戯れるルシヨンのルキー。主人の運転する自転車の前籠に乗って出かけるベルギー・ブールジェのニーナ。週末3人の女性とボートに乗って運河を行くプラリーネ。モンス近郊の母ネコと5匹の子ネコたち。ドゥネ・マツレ修道院の神父と庭を散歩するププス。

    ノルウェー・アルタのフィヨルドを散策するマイヤ・ミーオ。夏の森に棲むノルウェージャンフォレストキャットとキアーラ。白樺の木に登って、タンポポ畑で遊ぶマーシのロウジー。マーゲロイ島・カーモイヴァルのモンスン。コーフィヨルドのデブ猫ヘラクレス。イタリア・シチリアの赤いブーゲンビリアに囲まれて寛ぐドメニコ。トマト・パスタを食べて、コッレザーノのスミレ咲く高地を歩くチーズ工房の三毛。クロアチア・ドゥブロブニクの広場で鳩と共存する白ネコ、ビリー。階段のある路地でしなを作る三毛。真っ赤な車のボンネット上でイヌと微睡むネコ。エーゲ海・サントリーニ島の青い空と白い建物に調和するネコたち。イドラ島、ミコノス島のネコたち。ブルガリア・ボリコヴォで放牧中の牛と対面するネコ。シヴィノで子育てする母ネコ、ティグレ。紀元前4世紀に建てられたというプロブディフのヒサル・カピア(要塞門)の前でポーズする耳先カット猫シメオン・ハサン。5〜6世紀の建造物ネセバルのスタラタ・ミトロポリャ(聖ソフィア教会)の前で毛繕いするネコ。

    イスタンブール・アヤソフィアの寄り目ネコ、グリ。惜しくも亡くなったという香辛料店のサフラン。黄色いチューリップの植わった花壇に立つ白黒柄のパンダ。マラケシュの市場の屋根から人々を見下ろすネコ。バブーシュ(モロッコの伝統的履物)工房への階段を降りて行くネコ。アメリカ・キーウエストの桟橋を歩くベンガル種のモーガン。6本指のビッグフット。ヘミングウェイの別荘で暮らすネコたち。ウルグアイ・コロニア近郊の牧場でブタやウシと仲良しのグァランゲティ。カルメロのブドウ園で遊ぶ子ネコ。ハワイ・オワフ島の三毛ラバとイヌのスヌーピー。砂浜を散歩するトラ縞ネコ。ハワイ島のキャットコンド(ベンガルボダイジュの樹コンドミニアム)と呼ばれるベンガルボダイジュの樹に棲むネコたち。天井に無数の提灯が輝く台湾・台北の寺のネコ。九份の丘の上にある寺に来たシェイシェイ。福隆の海を見下ろす丘の家に暮らす40匹以上のネコたち。沖縄・竹富島のチクワちゃん。シーサーの横に並ぶ牝ネコ。沖縄本島の古民家カフェの三毛さん。

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    『島の猫』(辰巳出版 2014)は日本の島々で暮らすネコたちを撮った写真集。「世界ネコ歩き」の最後に展示されていた竹富島・沖縄県八重山郡から天売島・北海道苫前郡まで、全32島を南から北上して行く。元々島にネコは生息していなかったはず。最初に島へ渡ったネコたちは愛玩用のペットではなかったはず。地中海やエーゲ海の島々と同じく、ネズミ駆除や倉庫番などの実用面から島民に飼われていたと思われる。都会で飼われている家ネコや自由気儘なノラとも異なる島ネコ。それだけに島の人々とネコたちの結びつきは親密で自由度も高い。海や湖が近いからなのか、島ネコは水を怖がらないという。砂浜、海岸、漁港、道端、階段、森林、堤防、河岸、甲板、桟橋、屋根、玄関、学校跡‥‥島のいたるところにネコがいる。島の人口よりもネコの数の方が多い(ネコ密度が高い)青島・愛媛県大洲市や田代島・宮城県石巻市の島ネコにも圧倒された。島にはヒトがいて、ネコがいる。

    1998年、沖縄県から始まった日本全国のネコたちを撮る長い旅。『岩合光昭のネコ』(新潮社 2014)は隔月刊誌「猫びより」の連載を纏めた写真集『岩合光昭のネコ 47都道府県の408にゃんこ』(日本出版社 2010)の文庫版。北海道・夕張から沖縄県・座間味島まで日本列島を南下する。漁港、農家、雪道、桜、猫ちぐら、富士山、紅葉、神社、仏閣、駅舎、厩舎、城内、店先、砂浜、温泉、木の上、民家の屋根や塀の上‥‥日本各地で暮らすネコたちの生態が生き生きと捉えられている。世界のネコたちは人種や民族のように見た目の違いはないけれど、日本の風景や季節の中に溶け込むと和風(和ネコ)に見えて来るから不思議です。「文庫版あとがき」には赤レンガの上からジャンプする「とびネコ」‥‥『ネコに金星』(新潮社 2013)の表紙カヴァにもなった牝猫たびちゃんを撮った山口県・粭島を再訪した時のエピソードが披露されている。

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    世界ネコ歩き(岩合光昭写真展)

    世界ネコ歩き(岩合光昭写真展)

    • 会場:日本橋三越
    • 会期:2015/05/20~06/01
    • メディア:写真
    • 構成:パリ / プロバンス / ベルギー / ノルウェー / シチリア / クロアチア / エーゲ海の島々 / ブルガリア / イスタンブール / マラケシュ / キーウエスト / ウルグアイ / ハワイ / 台湾 / 沖縄


    岩合光昭の世界ネコ歩き

    岩合光昭の世界ネコ歩き

    • 著者:岩合 光昭
    • 出版社:クレヴィス
    • 発売日:2015/03/23
    • メディア:単行本(ソフトカバー)
    • 目次:パリ / プロバンス / ベルギー / ノルウェー / シチリア / クロアチア / エーゲ海の島々 / ブルガリア / イスタンブール / マラケシュ / キーウエスト / ウルグアイ / ハワイ / 台湾 / 沖縄 / あとがき


    岩合光昭 島の猫

    岩合光昭 島の猫

    • 著者:岩合 光昭
    • 出版社:辰巳出版
    • 発売日:2014/04/15
    • メディア:大型本
    • 目次:竹富島・渡嘉敷島・座間味島(沖縄県)/ 屋久島(鹿児島県)/ 天草下島(熊本県)/ 福江島(長崎県)/ 高島(佐賀県)/ 藍島(福岡県)/ 笠戸島・祝島・粭島(山口県)/ 宮島・因島(広島県)/ 六島・真鍋島・犬島・頭島(岡山県)/ 青島(愛媛県)/ 伊吹島・粟島・佐柳島・本島・男木島・小豆島(香川県)/ 沖島(滋賀県)/ 神島 ...(三重県)/ 佐久島・日間賀島(愛知県)/ 佐渡島(新潟県)/ 田代島・網地島(宮城県)/ 天売島(北海道)


    岩合光昭のネコ

    岩合光昭のネコ

    • 著者:岩合 光昭
    • 出版社:新潮社
    • 発売日:2014/05/28
    • メディア:文庫
    • 目次:北海道・東北 / 関東・中部 / 近畿・北陸 / 中国・四国 / 九州・沖縄 / あとがき / 文庫版あとがき / 取材地一覧

    変態イナズマン

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  • まず最初に ──「この世の中に超能力者などという者が存在するのか?」という疑問に‥‥作者は「現実にちゃんといる」と胸をはってこたえたい。そのとおり ── 信じようと信じまいと‥‥超能力者はウヨウヨいるのである。/ たとえば ── この物語の主人公・風田三郎のイナズマ放電だが‥‥1895年アメリカのミズーリ州セダリア近郊で発見された、ジェニー=モーガンなる若い娘が、高電圧の "電気人間" だったという記録がある。/ この娘は指先から火花をちらし、そのからだにふれた者を気絶させたという。ほかにもカナダのオンタリオ・ギンタンに住むカロリン=クレア、ハーマシイのメリーランド大学で調査されたルイス=ハンバーガー、アメリカ・ミズーリ州ジョプリンのフランク=マッキンストリイなどの現実に存在した "イナズマン" の名があげられる。
    石森 章太郎 「イナズマン」


  • 「イナズマン」(週刊少年サンデー 1973-74)は仮面ライダーと同系列の変身ヒーローものだが、主人公の中学生・風田サブロウはサイボーグではなく、ミュータント(超能力者)である。その変身能力によって、蛹から蝶へと羽化する。少女リオンがサブロウを窮地に追いやって超能力を覚醒させる導入部は「幻魔大戦」(1967)や「少年同盟」(1967)を想わせる。青年イライザが風田三郎に過酷な試練を課して同志に迎える後者は主人公の名前や実家(鮮魚店)、同級生のミヨッペ、少年同盟のイライザなど‥‥設定や登場キャラも重複している。「イナズマン」との相違は主人公の少年(小学生)が超能力者ではないこと、イライザがアンドロイド(人間型ロボット)であること。サブロウとミヨッペの家が隣同士で、屋根伝いに2階の窓から出入り自由という設定が「気ンなるやつら」(1965-68)と同じだからなのか、お色気カット(下着姿やヌード)も満載なのだ。

    一番早く下校する風田サブロウの後を追うミヨッペ。不良グループ3人組に絡まれるが、サブロウは一撃でボスを倒す。2人と擦れ違った異国の少女がテレパシーでサブロウに語りかける。「サ・ブ・ロ・ウ・タ・マ・ゴ‥‥」「タ・マ・ゴ‥‥ミュー・タ・ン・ト‥‥」。空き地に誘き出た少女は化け猫に変身し、「サナギカラチョウニ‥‥チョウニナル‥‥」という暗示をかけて土管をサブロウ目がけて転がす。サナギに変態して、稲妻に撃たれてチョウに羽化するサブロウ。少女リオンがサブロウをミュータントとして目覚まさせ、超能力を引き出すための荒療法だった。ミヨッペと妹のリュウ子が庭で花火をしていると、突然花火が燃え出して炎の怪人が現われる。リオンのテレパシーを受けて公園裏の神社の境内に行ったサブロウと八五郎(ミヨッペの飼い犬)は炎を操る同志イライザと対決する。サナギマンからイナズマンに変態するサブロウ。

    真の敵は旧人類を皆殺しにしようと画策している。敵のボス、バンバは旧人類絶滅作戦(日本列島沿岸に工場を持つ企業の社長を催眠操作して有害物質を流させる)を展開して「新人類帝国」を建設しようとしているとリオンがサブロウに語る。リオンとイライザの2人は世界中の突然異変人(ミュータント)を集めているバンバに対抗する「少年同盟」のメンバーだった。女教師の小巻先生が教室でサブロウに催眠術をかけて操ろうとする。飛行艇に乗って「少年同盟」の基地へ向かったリオン、イライザ、サブロウ。秘密基地に着いたサブロウは落石や吸血コウモリの大群に襲われるが、またしても同志キムによる超能力を試すためのテストだった。盟主サラーと対面した瞬間に後催眠が発動して、サブロウは老人を殺そうとする。サラーの発した火炎で黒焦げになったサブロウはサナギマンに変態して仮死状態になり、イナズマンとして真に覚醒する。

    サブロウは小巻先生を監視し、一瞬の心のスキを見つけて中へ入り込む。邪悪な記憶を消して新しい善なる記憶を植え込もうとするが、彼女は地面の中へ消えてしまう。部屋の壁から現われた全裸の「小巻先生」がミヨッペを催眠操作して、サブロウの額にハサミを突き刺させる。イナズマンに変態したサブロウは屋根の上で小巻先生と対決して倒す。その夜、「小巻先生」の幽霊(?)が父親を操って就寝中のサブロウを襲う。小巻先生の下宿へ行く途中で、サブロウは警官に拳銃で撃たれてしまう。異変を感じたエスパー犬の八五郎が寺の縁の下に身を隠しているサナギマンを発見する。八五郎を気絶させた「小巻先生」が釣り鐘の中に隠れたサブロウをナイフで刺殺しようとして瞬間移動すると、本堂の屋根に身を隠していたイナズマンから体電が釣り鐘に放射されて黒焦げになる。サブロウは八五郎に自分の意識を移して、鐘の中に幻像を浮かべていたのだ。

    小巻先生に化けた謎の超能力者との闘争でエネルギーを全て放出したサブロウは力尽きて気を失った。寺の墓地から墓石や卒塔婆が飛んで来て、墓場から小巻先生の腐乱死体が現われる。仏殿の扉が開いて飛び出した仏像がサブロウと八五郎を襲う。空中浮游した墓石に乗った坊主たちが卒塔婆を投げつける絶体絶命のピンチ!‥‥突然攻撃が止んだのは一心不乱に念仏を唱えていた(念力で墓石を浮游させながら幻像瞬間移動していた)坊主をリュウ子が殴り倒したからだった。屋根の上に舞う赤トンボの大群が「テラヘコイ」という文字を空中に描く。寺の釣り鐘の上で待ち構えていたのは住職の息子・揮大坊玲次郎だった。頭部に埋め込まれていた "超能力倍増波発信装置" が壊れて凡人と化した父親。人質に捕ったミヨッペをESP剣法で裸にすることで揮大坊はサブロウの超能力を封じようとする。しかし、ミヨッペを救出したサブロウとの闘いの最中に大木が倒れて来た。サブロウは瞬間移動で揮大坊の命を救う。

    リーダーの御子神の家に集結した桜山高校の超能力少年たち。御子神(博士)、チカメネズミ、コング大王、揮大坊玲次郎の4人は秘策を練る。川原で百合丘高校のナンパ教師と逢引していた教え子を囮にしてサブロウを誘き出す。仲間が「精神防壁」を張ってサブロウの超能力を封じる。剣道5段の揮大坊が特別製竹刀(鉄棒が仕込まれている)を振るうが、コング大王の思考を読んで空手の技を借りたサブロウに倒される。サブロウが全裸にされた女子生徒の衣服に触れると突然大爆発が起こった。洋服に仕掛けられた時限爆弾を川へ念力で飛ばした謎の女性。仲間を見殺しにした御子神の非情さに反発した揮大坊はサブロウの味方に寝返る。下校の途中、サブロウとミヨッペの前に再び姿を現わした謎の女性。後を追うサブロウ。神社の賽銭箱の前で「あなたの母親よ‥‥!!」と名乗る女性は社の中へ姿を消す。揮大坊を見殺しにしようとした御子神の作戦が気に入らなかったコング大王もサブロウたちの味方につく。

    サブロウは鮮魚店を営む「両親」から、自分が捨て子だった(家の中に捨てられていた)ことをテレパシーで知る。母親の父は動物と自由に話が出来た。父親には遺留品から行方不明者を発見する能力があり、警察の捜査に協力していた。母親には未来を予知する能力があったので、サブロウと敵味方となって死ぬことも分かっていた。しかし、サブロウが「帝国」の一員となって共に前人類を滅ぼせば自分の運命を変えられる‥‥。午前4時半、川原に呼び出されたサブロウと揮大坊、コング大王は「母親」に襲撃される。サブロウが倒し、母親が破壊した「母親」はロボットではなく、御子神が作って念力で動かしていた人形だった。首の骨を折られて死んだコング大王を母親が甦生させる。再び御子神に操られた人形が背後からサブロウに襲いかかる。躰に仕込まれていたダイナマイトが爆発し、サブロウを救った母親が犠牲になってしまう。母の遺体は塵となってサブロウと一心同体化する。サブロウは御子神を改心させて仲間にしようとするが、チカメネズミの躰の中に隠れた御子神は必死に抵抗する。仕方なくサブロウは超能力を使う頭脳の部分を破壊する。

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    作者自身が「超能力」について解説するページ(4頁)を挿み、「イナズマン」は新展開となる。「次元トリップ少年」は空飛ぶ円盤に乗って異次元から父親を探しに来た子供トリップの物語。現人類に対しては超能力を使わずに "実力" で対処することにしたサブロウはテストの成績が落ちてしまう。下校時、心配するミヨッペのスカートを "実力" で捲ると、外国の子供が真似をした。夕暮れの空に出現したUFO‥‥その夜、ミヨッペの部屋に子供が現われる。彼女が拾ったイマージョン(立体写真を入れておくロケット)取りに来たのだ。サブロウがイマージョンを操作すると父親の映像が目の前に投影される。トリップが消えた窓からリオンが飛び込んで来た。UFOに襲撃されて飛行艇を爆破され、瞬間移動で脱出したという。上空にUFOが姿を現わし、屋根の上に現われた父親とサブロウ(イナズマン)が対決する。父親のドリップは「新人類帝国」に捕まり、頭脳に指令装置を埋め込まれていたのだ。

    「狼はひとりぼっち」は狼男の血を継ぐ父子の物語。満月の夜、狼が女性を襲う夢を見た荒神牙男。翌日の朝刊には「若い女性の首なし死体 雑木林に血まみれ」という見出しの記事が載っていた。サブロウたちの通う中学に転校して来た牙男は校門前で生徒と喧嘩になる。目撃していたコング大王たちとも一触即発になるが、ミヨッペが仲裁する。その夜、ミヨッペを殺す夢を見た牙男は窓から忍び込んで、彼女を襲う。サブロウがミヨッペを救い、逃げた牙男を追う。自分に狼男の血が流れていると思い込んでいる牙男を説得していると、本物の狼男が現われてサブロウを噛み殺す。狼男の正体は牙男の父親、荒神鉄平だった。牙男に催眠術をかけて狼男の血に目醒めさせ、ミヨッペを襲わせてサブロウを誘き出したのも父親の計略‥‥サブロウを殺したのは、ある秘密結社からの指令だった。サナギマンからイナズマンに変態すると、牙男は狼男となって逆に父親を噛み殺す。

    「ギターを持った少年」はジロー(キカイダー)がサブロウ(イナズマン)と対決する「人造人間キカイダー」(1972-74)の番外編。八五郎の背中に乗って散歩していたリュウ子は寺の境内でギターを弾く少年と出会う。リュウ子が風田鮮魚店に連れて来ると、少年は催眠ギターで揮大坊やコング大王たちを眠らせてしまう。少年は「おまえを殺しに来た」とサブロウに告げる。少年のギター・ヘッドが火を吹くと、サブロウはサナギマンからイナズマンへ変態‥‥「 "新人類" が現人類を滅ぼしていいはずがない!!」と改心させようとするが、「服従回路」を埋め込まれたジローは人間の命令に背けない。イナズマンは「服従回路」を焼き切って、"感情" や "理性" に従って生きられるようにジローを解放する。「次元トリップ少年」「狼はひとりぼっち」「ギターを持った少年」の3篇は「新人類帝国」に洗脳された刺客がサブロウを殺しに来るというパターンになっている。

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    最終章の「超人戦記」は学園ドラマから時空を超えたアクション主体のストーリに転じ、今までの登場キャラも一新される(ミヨッペやリオンも登場しない)。洋上で海底火山を噴火させ、死火山を甦らせた「新人類帝国」の一味。街中で集団ストリーキングが発生する。現場から逃げた女性を追い駆けたサブロウは犬の群れに襲われて見失ってしまう。混血娘ルビイの属するアニマル・グループはJ・D・P(日本壊滅計画)ナンバー1の前に時限ダイナマイトを咥えた犬を操って、風田鮮魚店を爆破する。総統と合流したグループはJ・D・Pナンバー1を実行する。富士山頂火口底に集結した犬がダイナマイトを地中に埋め、ネズミが起爆装置の安全弁を外す。J・D・P開始の号砲だった。ルビイを発見したサブロウは鳥やネコに襲われながらも彼女のアパートを突き止め、両親を殺した仲間の居所を聞き出す。メンバーの1人、オサムに化けて集合場所へ行き、J・D・Pナンバー2を阻止する。

    瞬間移動で消えた総統の反撃が始まる。超能力バリヤー・マシンが現われ、レーザー砲でメンバーを殺し、サブロウとルビイを攻撃する。2人は心を1つにして瞬間移動するが、バリヤー・マシンも執拗に追って来る。南海の無人島に瞬間移動し、イナズマンの「超電」でマシンを破壊したのも束の間、海上から巨大カニが現われ、火口から巨人化した総統が「超能力クローン」で襲いかかる。巨人との死闘でエネルギーを使い果たしたサブロウは干涸びた老人の姿で砂浜に横たわる。しかし、サナギマンからイナズマンに戻って生き返る。海から出現したE・S・Pバリヤー・マシン軍団から瞬間移動で逃げるサブロウたち。砂漠に逃れたルビイはマシン軍団に追い詰められるが、サラーが現われて壊滅させる。サラーによって美しい蝶に変態したルビイ。老人が去った後、砂竜(ドラゴン・マシン)がサブロウたちを急襲する。分裂したサイコ・バリヤー・リングに囲まれるイナズマンたち。ルビイが自ら犠牲となってバリヤー波の "網ホール" に破れ目を作り、イナズマンが瞬間移動で真空状態にしてドラゴン・マシンを爆発させた。

    巨人ロボットを操縦して月面を徘徊する「新人類帝国」の領主バンバ(超能力を増幅する機械に接続されている)。オサムと再会したサブロウは額に念力バリヤー・ナイフを突き刺され、空飛ぶ円盤に乗せられて月の地下秘密基地へ送られる。バンバの操り人形に改造されてしまったサブロウは自らリモコン装置を主人に届ける。バンバはサブロウを救出に来た「少年同盟」たちをイナズマンに抹殺させようとする。しかし、消えた「少年同盟」が一瞬で再び現われる。彼らを元に戻したのはバンバの兄サラーだった。バンバはイナズマンにサラーを殺させようとするが、巨人ロボット内に侵入したサラーはイナズマンを解放し、弟バンバと心中(爆死)する。ドラゴン・マシンを破壊したイナズマンと「少年同盟」が月面から地球を見上げる最終カットは「幻魔大戦」のラスト・シーン(地球から髑髏シルエットの月を見上げる)と合わせ鏡になっている。

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    • OVA『キカイダー』の「ギターを持った少年」は良く出来ていますね^^

    • 「石ノ森章太郎萬画大全集」(角川書店 2006)をテクストに使いました
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    イナズマン 1 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 2-11

    イナズマン 1 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 2-11

    • 著者:石森 章太郎
    • 出版社:角川書店
    • 発売日:2006/05/31
    • メディア:コミック
    • 目次:ナゾの少女・リオン / ぶきみな先生 / 壮烈な戦い / 不死身な敵・新人類 / あやうしサブロウ / 恐怖の墓地(前編)


    イナズマン 2 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 3-8

    イナズマン 2 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 3-8

    • 著者:石森 章太郎
    • 出版社:角川書店
    • 発売日:2006/08/31
    • メディア:コミック
    • 目次:恐怖の墓地(後編)/ 邪剣・ESP剣法 / 対決!!4対1 / 非情なめぐりあい / 母と子のきずな(前編)/ イラストコレクション


    イナズマン 3 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 4-8

    イナズマン 3 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 4-8

    • 著者:石森 章太郎
    • 出版社:角川書店
    • 発売日:2006/11/30
    • メディア:コミック
    • 目次:母と子のきずな(後編)/ 次元少年トリップ / 狼はひとりぼっち / ギターを持った少年 / 超人戦記(プロローグ)/ 巻末資料


    イナズマン 4 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 4-9

    イナズマン 4 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 4-9

    • 著者:石森 章太郎
    • 出版社:角川書店
    • 発売日:2006/11/30
    • メディア:コミック
    • 目次:超人戦記

    f a v o r i t e - a l b u m s 6

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    Welcome Back To Milk

    Welcome Back To Milk

    • Artist: Du Blonde
    • Label: Mute
    • Date: 2015/05/19
    • Media: Audio CD
    • Songs: Black Flag / Chips To Go / Raw Honey / After The Show / If You're Legal / Hunter / Hard To Please / Young Entertainment / Mr. Hyde / Four In The Morning / Mind Is On My Mind / Isn't It Wild

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    スニーズ・ラブ 7

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  • ♭ ホリー・ハーンダン(2015-08-01)
  • Julia Holter、Laurel Halo、Jenny Hval‥‥Bjorkが切り拓いた前人未踏の荒野を女性たちが探検に出かける。米テネシー生まれの作曲家、ミュージシャン、音楽アーティストのHolly Herndon(灰色の瞳と赤毛の三つ編みヘアがトレードマーク)も女性探検隊の1人である。2ndアルバム《Platform》 (4AD 2015)のエレクトロ〜エクスペリメンタル系のサウンドには気味悪さと心地良さが奇妙に混在している。耳触りが良く、脳もゾワゾワする?‥‥谷口暁彦(Akihiko Taniguchi)のPVが注目された〈Chorus〉、悪名高いNSA(アメリカ国家安全保障局)のことを歌ったという〈Home〉、未知の惑星を探査する〈Morning Sun〉、彼女が親しげに語りかける〈Lonely At The Top〉は「世界の上位1パーセントの富裕層に向けて書かれたクリティカル・ASMR(Autonomous Sensory Meridian Response)(ele-king インタヴュー)だという。

  • ♭ 紙ジャケ受難日(2015-08-08)
  • 某タワレコで購入したアルバム。レジ係の女の子が厳重に包装されたヴィニールを力尽くで破いているのが気になって、検めてみたら案の定、紙ジャケの背が折れていた。クリアランスCDと雖も気分が悪いので交換してもらった。セール品の返品は不可なのだが、店員の過失ということで快く応じてくれた。セロハンテープで留めた外装は素手では意外と開け難い。どうしてカッターやハサミを使用しないのだろうか(某レコファンはカッターで慎重に開封している)。これがクリアランスCDではなく、高価な国内限定盤だったら、紙ジャケ・マニアは怒り心頭ではないかしら。駅構内に入ってから紙ジャケの背が折れていることに気づいたのだが、「お忘れ物ですか?」と訊ね、切符にスタンプを押して改札から出してくれた駅員の対応には好感を持てました。

  • ♭ 夏のクリアランス 2 0 1 5(2015-08-15)
  • 2月から断続的に続いているタワレコ・クリアランスセール。上半期はトータルで30枚以上買っただろうか。都内の店舗(渋谷、新宿、池袋、秋葉原)を回ってみたけれど、毎年正月にクリアランスを開催している渋谷店に目新しいアルバムは少なかった。ツイッターなどでセールの告知もしていないし、「ワールドミュージック」も4階から6階へ移って縮小されてしまった。面白いのは長年の勘が働くのか、セール品となるアルバムの目星が着いて来たこと。リリースされてから少なくても1年以上経った旧譜で、余り人気のなかった(1枚も売れなかった?)アルバムが対象となる。Carla BozulichやMilagros Torrecillaのアルバムは密かに狙っていたというか、セール品となることを見越して入手した。Olga BellやNinos Du Brasilも欲しかったアルバム。Kassinの立体メガネ付きアルバムも思わず2度買いしました。掘り出し物はManu ChaoのDVD《Babylonia En Guagua》(Because 2011)でしょうか。

  • ♭ ふるさとのねこ(2015-08-22)
  • 「ふるさとのねこ」(渋谷ヒカリエ)に行って来ました。ネコ写真を持参すると当日入場券が2割引になるということもあってか、写真展会場横の壁面には既に数多くのネコ写真が展示されていた。岩合さんが自選した「今日のいい子だね~」のコーナーにも可愛いネコちゃんが貼ってある。青森県津軽のリンゴ農家で飼われているコトラの産んだ5匹の子ネコたちと母ネコの子育てを撮った写真展。春・夏・秋・冬‥‥移り変わる東北の四季の中で成長する子ネコたちが生き生きと捉えられている。登場するネコたちは地域限定なので多種多彩な「ネコ歩き」の華やかさはないけれど、逆に感情移入しやすい。残念なのは写真集『ふるさとのねこ』(クレヴィス 2015)に収録されていない写真が何点かあったこと(身籠ったハナちゃんの写真が載っていない!)。2度目の春は写文集『コトラ、母になる』(クレヴィス 2015)に掲載されているのだ。

  • ♭ 競売ナンバー49の叫び(2015-08-29)


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    • 別館ミニ・ブログ「スニーズ・ラブ」シリーズの一覧集(2015-08)です^^;

    • リンク画像が左に重なって見難いので、サイドバーを右側にレイアウトしました。「SKIN SWITCHER」でデフォルトに戻せるにゃん

    • 《Sonhando Devagar》(Coquiero Verde 2011)は「BRASIL POST ROCK」(disk union)にも選出されていますね
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    Platform

    Platform

    • Artist: Holly Herndon
    • Label: 4AD
    • Date: 2015/05/19
    • Media: Audio CD
    • Songs: Interference / Chorus / Unequal / Morning Sun / Locker Leak / An Exit / Lonely At The Top / DAO / Home / New Ways To Love


    Krai

    Krai

    • Artist: Olga Bell
    • Label: New Amsterdam
    • Date: 2014/04/29
    • Media: Audio CD
    • Songs: Krasnodar Krai / Altai Krai / Perm Krai / Stavropol Krai / Krasnoyarsk Krai / Primosrsky Krai / Zabaikalsky Krai / Khabarovsk Krai / Kamchatka Krai


    Sonhando Devagar

    Sonhando Devagar

    • Artist: Kassin
    • Label: Coquiero Verde
    • Date: 2011/08/05
    • Media: Audio CD(立体メガネ付き)
    • Songs: Mundo Natural / Potássio / Fora De Área / O Que Você Quiser / Lin Quer / Lua Do Sol / Quando Você Está Sambando / Calça De Ginástica / Em Volta De Você / Sorver-Te


    ふるさとのねこ(岩合光昭写真展)

    ふるさとのねこ(岩合光昭写真展)

    • 会場:渋谷ヒカリエ
    • 会期:2015/07/25~08/31
    • メディア:写真
    • 構成:春 / 夏 / 秋 / 冬


    競売ナンバー49の叫び

    競売ナンバー49の叫び

    • 著者:トマス・ピンチョン(Thomas Pynchon)/ 志村 正雄(訳)
    • 出版社:サンリオ
    • 発売日:1985/10/15
    • メディア:文庫
    • 目次:競売ナンバー49の叫び/ 解注 / あとがき

    スニーズ・コメンツ #39

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  • 1890年のクリスマスに「柊の葉」に載った「猫のクリスマス舞踏会」と、「ロンドン画報」クリスマス号に載った「猫のパーティー」は、いずれも画期的な作品だった。/ 猫に人間と同じような振舞いをさせる擬人化の手法は、すでに「子猫のクリスマス・パーティー」にも見られたが、それでも、この絵に登場する猫たちはまだ写実的に描かれている。皿を洗ったり、楽器を奏でたりする猫もいるけれども、大半は猫らしく四足で歩いている。しかし、右の二点に於ては二足歩行をし、顔のデフォルメも際立ち、「舞踏会」では人間の衣装を着ている。/ このような「人間猫」をウェインはその後たくさん描き、かれらは「ルイス・ウェインの猫」と呼ばれた。大きな目を見ただけですぐに作者が誰だかわかる、この個性的な猫たちが、長い間、どんな画家の描く猫よりもイギリスの子供たちを喜ばせたのである。
    南條 竹則 「キャットランドの猫絵描き」


  • ♭ Pennyroyal Tea
  • モバサムさん、こんばんは。「スーパー・デラックス・エディション」は誰が買うのでしょう。ビートルズは若年のファンが同じ曲を2度買いしないように配慮して、アルバムにシングル曲を収録しなかったというのに‥‥。「セックス・ピストルズのロゴ入りクレジットカード」にも違和感あり。ロックもパンクも資本主義世界で踊らされているだけなのかしら?
    by sknys (2015-06-20 22:01)

  • ♭ ダークなトーンから一筋の光をあてるような夢想の精神、ルシオ・マンテル
  • ツイッターをやっていないので気づくのが遅れてしまいましたが、Lucio Mantelさんが2月に「ツイート」していました。弦楽四重奏と共演した《Unas Horas》(Acoua 2013)の「レヴュー」を自動翻訳で読んだのでしょう。本人が読んでいるかもしれないと思うと、いい加減なことは書けませんね。驚きです。
    by sknys (2015-07-04 21:17)

    Lucio-Mantel-Twitter2015-02-04.jpg

  • ♭ Cut Piece
  • ポールが所蔵していたというマグリットの絵は〈視聴室〉(The Listening Room 1952)だったのかしら?‥‥「リンゴ」(Granny Smith 1966)は「YES オノ・ヨーコ展」(東京都現代美術館 2004)にもありましたね。鑑賞者が手に取って、齧って食べても良かったとは知りませんでした。同じく、レノン&ヨーコの《Double Fantasy》(Geffen 1980)はアナログ盤しか持っていません。
    by sknys (2015-07-07 21:08)

  • ♭ カスバにシャムはいるのか?
  • 「猫は砂漠が原産地」(クレア・ベサント)。古代エジプト時代、女神バステト(Bastet)として神格されていたネコちゃん。岩合さんもトルコ(イスタンブール)やモロッコ(マラケシュ)のネコを撮っていますね。
    by sknys (2015-07-14 00:32)

  • 猫は砂漠が原産地なので、おそらく自分で魚を捕って食べたことはなく(魚を捕まえるのがうまい猫が一種だけインドにいる)、水槽や池の金魚を捕まえたと言う場合を除き、人間が与えた魚しか食べたことがないはずだ。
    クレア・ベサント 「ネコ学入門」


  • ♭ 麗しきネコードの世界
  • 「猫ジャケリンク」ありがとう。現在80枚‥‥10枚集まったら、更新したいと思います。
    by sknys (2015-07-17 02:34)

  • ♭ ジュラシックワールド
  • ぶーけさん、こんばんは。恐竜は絶滅して、鳥類に進化したという。ヴェランダに飛んで来る鳩や雀や翡翠ちゃんを眺めていると、ちょっと切ない気持ちになります。記録的な猛暑に力尽きたのか、冷蔵庫が8月に逝きました(享年19歳)。不眠不休の酷使に耐えて来た冷凍冷蔵庫さんの冥福を祈ります。合掌。新しく迎えた冷東麗造子さんは6ドア・タイプ。長身の色白美人。彼女の特技「自動製氷」には驚きました。
    by sknys (2015-08-22 20:32)

  • ♭ 並ぶということ
  • びっけさん、こんばんは。8月4日は新宿に出ていましたが、帰宅してからJR京浜東北の架線切断事故を報りました。最近、都心の電車が止まることが多いなぁ。安全性を軽視して事故るのは以ての外ですが、車内に長時間閉じ込められるのも苦痛。長い行列も苦手にゃん。
    by sknys (2015-08-27 20:06)

    「ネコ・アイコン」に初めて気づいてくれた人がいた!‥‥ご明察の通り、ルイス・ウェインの猫ちゃんです。CDジャーナル・ムック『ねこみみ~猫と音楽~』(音楽出版社 2012)に「猫イラストレーター、ルイス・ウェインの猫ジャケ」という記事があった。図書館から借りて読んだので、付録の「ルイス・ウェイン画 本誌オリジナル猫イラスト・エコトートバッグ」は持っていませんが‥‥。集英社新書ヴィジュアル版『吾輩は猫画家である』(集英社 2015)というルイス・ウェイン伝も推薦にゃん。
    by sknys (2015-08-30 18:58)

  • ♭ 猫皿とフェリシモ猫部の酒
  • 蝙蝠猫さん、こんばんは。猫ブランデー「CAT AT NIGHT」は昨日の新聞にも載っていました。「ヒカリエShinQs」の期間限定ショップ(2. 19~3. 4)に立ち寄ってみたけれど、人気の「ニャシュマロ」や「ニャンソウコウ」は完売。今回(8. 20~9. 2)はゲット出来るかしら。猫本専門店「書肆吾輩堂」でも「猫のアクセサリー」や「猫の置き物」を取り扱っています。
    by sknys (2015-08-27 22:21)

  • ♭ ブログ10周年
  • しーちゃん、ブログ10周年おめでとう。「10年一昔」と言いますが、長いようで短いですね(4カ月遅れのスニンクスは12月で丸10年になります)。閲覧数が少ないと落ち込む。異常に多い記事はスパム・コメントも多くて、実質どのくらいの人に読まれたのか疑心暗鬼になってしまう‥‥でも、それは本質から外れた瑣末的なこと。「好きなことをブログに書いていくことができる」幸せを噛み締めながら、ゆっくりと歩いて行きたいと思います。
    by sknys (2015-08-28 21:02)

  • ♭ サイボーグ 009ノ3(内コメント)
  • A-chanさん、初コメントありがとう。「復讐」は009だけではなく、石ノ森作品に通底するダーク・テーマの1つだと思います。たとえば、009ノ1の「古城よりの招待状」は「そして誰もいなくなった」風の復讐ミステリ、「復讐」は文字通りミレーヌに兄を殺された双子の弟のリヴェンジ‥‥。しかし、最も根源的な復讐潭はスカルマン(神楽竜生)かもしれません。父母を殺害した祖父(千里虎月)への復讐という救いようのないテーマ。親子や兄弟姉妹が「悪しき血縁」で結ばれているという石ノ森ワールドの血腥い暗渠。何の関係もない他人が復讐に巻き込まれるのは理不尽ですが、その対象が身内だったら?‥‥と考えると戦慄します。
    by sknys (2015-08-28 20:24)

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    ブログ記事に付けた「外コメント」を纏めてみたら結構面白いかも?‥‥というアイディアから生まれた再録シリーズの第39集です。コメントは原則としてオリジナルのまま時系列順に転載‥‥事実誤認(誤記)や誤字・脱字、改行の無効化、句読点や記号・顔文字の有無などを精査。内容の分かり難いコメントには補足説明(註)を加え、コメントした元記事にリンクしました。過去3ヵ月間(2015/06/01~08/31)に書いたものの中から、第三者がコメントだけ読んでも面白いものを中心にセレクトしています。コメントでも書いているように、Lucio Mantelのツイートには驚きました(スペイン語を訳せる人いませんか?)。本人の与り知らないところで記事に言及され、リンクされているという不思議。ニュー・アルバム《Star Wars》(Anti 2015)の無料配信(フリー・ダウンロード)をツイッター上で発表したWilcoにもビックリ!‥‥しかも可愛い「白猫ジャケ」なので、アルバムを買わざるを得ないのだ。

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    Confin

    Confin

    • Artist: Lucio Mantel
    • Label: Geiser Discos
    • Date: 2015/05/12
    • Media: Audio CD
    • Songs: Estrafalario / Luz del Día / Deshielo / Péndulo / Morir de Ruido / Miniatura Nro. 2 (Luna Nueva) / Otro Sobre el Tiempo / Raíz Salvaje / Es la Noche / Un Astronauta / Ahora


    Star Wars

    Star Wars

    • Artist: Wilco
    • Label: Anti
    • Date: 2015/08/21
    • Media: Audio CD
    • Songs: EKG / More... / Random Name Generator / The Joke Explained / You Satellite / Taste The Ceiling / Pickled Ginger / Where Do I Begin / Cold Slope / King Of You / Magnetized


    吾輩は猫画家である ルイス・ウェイン伝

    吾輩は猫画家である ルイス・ウェイン伝

    • 著者:南條 竹則
    • 出版社:集英社
    • 発売日:2015/06/17
    • メディア:新書
    • 目次:キャットランドの猫絵描き / ナショナル・キャット・クラブ / アメリカ行きと第一次世界大戦 / 万華鏡猫 / あとがき / 参考文献・引用出典一覧


    ネコ学入門: 猫言語・幼猫体験・尿スプレー

    ネコ学入門 猫言語・幼猫体験・尿スプレー

    • 著者:クレア・ベサント(Claire Bessant)/ 三木 直子(訳)
    • 出版社:築地書館
    • 発売日:2014/09/16
    • メディア:単行本
    • 目次:プロローグ / 違う世界 / 猫の言語 / 猫と暮らす / 猫との関係 / 猫の性格 / 知能と訓練 / 問題解決法 / 訳者あとがき / 索引


    ねこみみ 〜猫と音楽〜

    ねこみみ 〜猫と音楽〜

    • 著者:ねこみみ編集部
    • 出版社:音楽出版社
    • 発売日:2012/09/22
    • メディア:ムック
    • 目次:観て楽しむ猫と音楽 / 定番! 猫ジャケ100選 / ネコメンド! にゃんこサントラに進路を取れ! // 聴いて楽しむ猫と音楽 / 必聴! 猫ソング100選 necoTunes / 検証! 猫の好きな音楽とは? // 歩いて楽しむ猫と音楽 / ぶらり猫散歩~谷根千 嶺川貴子 / よりみち 猿山修 猫グッズ紹介 // 読んで楽しむ猫と音楽 / 猫とアーティスト/インタビュ...

    真夏のクリアランス 2 0 1 5

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  • ◎ Il(Barcly 2012)-M-
  • -M-こと、Matthieu Chedidの5thアルバム(インスト・アルバム《Labo M》(Delabel 2003)を含めると6th)。髪型だでけでなく、黄色いアイマスクや襟(?)が「M字」になったカヴァ・イラストは鉄腕アトムよりも仮面ヒーローに近いかもしれない。Vanessa ParadisのプロデュースやBrigitte Fontaineとのコラボレーションでも知られる-M-だが、今回はゲスト・ミュージシャンは迎えず、Dorion Fiszel、Brad Thomas Ackley(ベース)の3人共同でプロデュース&レコーディングしている。水の流れる音から始まるオープニングの〈Elle〉、プリンス風ファンクの〈Le Film〉、女性映画監督ベリル・コルツ(Beryl Koltz)がPVを撮ったロックンロールの〈Mojo〉、ベース、ドラムス、ピアノなどを1人で多重録音した〈La Vie Tue〉、ノイジーで狂った〈La Grosse Bombe〉‥‥。むさ苦しい風貌や奇抜な衣裳に反し、中性的なヴォイスでソフィスティケートされたサウンドを奏でる-M-。南の島や海の光景が浮かぶ目映いアルバムである。

  • ◎ Boy(Constellation 2014)Carla Bozulich
  • Evangelista名義のバンドで活動しているネコ好き女性のソロ・アルバム。彼女は90年代にThe Geraldine Fibbersというオルタナ・カントリー〜パンク・バンドを率いていたこともあり、かつて同僚だったNels Cline(Wilco)とも交流がある。ベルリンで録音、カリフォルニア(サン・ディエゴ)、モントリオールでミックスされたアルバムは、Carla(ギター、シンセ、ベース、サンプル&ループ)とJohn Eichenseer(キーボード、ヴィオラ、エレクトロニクス、ドラムス)の2人に、Andrea Belfi(ドラムス、シンセ)が参加。アート・パンクというよりも、エクスペリメンタルなポップ・アルバムになっている。2ndアルバムのタイトルだった〈Gonna Stop Killing〉は文字通りのキラー・チューン。彼女の描いたアートワーク(星と渦巻と馬のカヴァ・イラスト)は不気味ですが、中身は英米音楽メディアのレヴューで保証済み。英The Wire誌の年間ベスト・アルバム「2014 Rewind」の25位に選出されました。

  • ◎ Versions(Sacred Bones 2013)Zola Jesus
  • Zola Jesus(Nika Roza Danilova)さまの4thアルバムは自作を弦楽四重奏の伴奏で新録するという、奇しくもLucio Mantelの《Unas Horas》(Acoua 2013)と同じ趣向。共同プロデュースしたJG Thirlwell(Foetus)がストリングス・アレンジを担当したことも話題になった。全10曲中、2ndアルバム《Stridulum II》(Souterrain Transmissions 2010)から〈Run Me Out〉〈Sea Talk〉〈Night〉の3曲、3rdアルバム《Conatus》(Sacred Bones 2011)から〈Avalanche (Slow)〉〈Hikikomori〉〈Seekir〉〈Collapse〉〈In Your Nature〉〈Vessel〉の6曲が選曲されている(シングル・カットした〈Fall Back〉は新曲でしょうか)。曲によってはエレクトロ・ポップの味つけも施されているが、基本的にMivos Quartet(ヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロ)によるネオ・クラシカルなアクースティック・サウンドで、彼女の代名詞であるインダストリアルやダーク・ウェイヴ色は抑制されている。

  • ◎ Novos Misterios(Hospital Productions 2014)Ninos Du Brasil
  • 豹の皮を被ったスレンダーなヌード女性が台座の上で四つ這いになっている !?‥‥写真家マティア・ゾッペラーロ(Mattia Zoppellaro)が撮ったアルバム・カヴァからカーニヴァルの祝祭気分や高揚感は全く感じられない(Natalia Lafourcadeちゃんの「大山猫コスプレ」の方が愉しそう)。イタリアン・パーカッション・デュオ、Nicolò FortuniとNico Vascellariはサンバのリズムバトゥカーダ(Batucada)とミニマル・テクノを混淆させることで、変身前の豹女のような「新しいミステリ」を創り出す。サンバのフィジカルな熱気や狂騒を無機的なテクノが冷やし冷ます。トライバルでエクスペリメンタルなエレクトロ・ミュージック。イタリア人による「ブラジリアン・サンバ」がNYアンダーグラウンドのノイズ・レーベルからリリースされるというグローバルな展開も面白い。

  • ◎ Milagros(Union De Musicos 2013)Milagros Torrecilla
  • Mariana Barajがプロデュースしたアルゼンチン・フォルクローレ歌手のデビュー・アルバム。Milagros Torrecilla(ヴォーカル、パーカッション、クアトロ、チャランゴ、ギター)とLeo Gutierrez(ギター、ヴォーカル)に、Mariana Baraj(パーカッション、ヴォーカル)、Lucas Nikotian(アコーディオン)という小編成。タンゴ調の〈Puentecito De La Picoda〉、アクースティック・ギターが伴奏する〈He De Seguir〉、Juan Pablo Alvarezが伝統楽器の笛、アエロフォノス (aerofonos)を奏でる〈La Ollera〉、Leo Gutierrezとデュエットした〈Dueños no tengo〉‥‥。彼女のオリジナルは2曲だけだが、アルゼンチン国内に留まらず、南米チリ、ヴェネズエラ、ペルーのフォルクローレを広くカヴァ。見開き紙ジャケットの右にCD、左にセピア色に変色した古い写真を添えた歌詞カード(12枚)が挿まっている。

  • ◎ Zang Tuum Tumb Organization Of Pop(Razor & Tie 2013)Various Artists
  • ZTT Records30周年を記念したコンピレーション・アルバム(NYエディション)。この種のベスト〜編集盤が過去に何種類リリースされているのかは知らないが、30周年記念盤はレア音源リミックス集というコンセプトらしい(英・米・日で収録曲が一部異なる)。「The Organisation Of Pop」にボーナスCD「The Disorganisation Of Pop」の付いた2枚組(全27曲)で、約2時間半に渡って80年代に一世風靡したZTTレーベルのポップスを堪能出来る。Frankie Goes To Hollywood、808 State、Art Of Noise、Propaganda、Grace Jonesなどのヒット曲が収録されたDisc 1。The BugglesやLisa Stansfieldなどを除き、余り知られていないバンドやアーティストの曲が並ぶDisc 2(Lee Griffithsの〈Sweet Baby James〉はZTTらしくない)。〈Relax〉や〈Moments In Love〉はリミックスだけではなく、オリジナル・ヴァージョンも収録して欲しかったけれど。

  • ◎ Babylonia En Guagua(Because 2011)Manu Chao
  • 2002年にリリースされたライヴDVDの再発アルゼンチン盤。2001年9月、パリ(ラ・ヴィレット・グランドホール)で行なわれたライヴ「Radio Bemba Sound System」(62分)に、ツアー・ドキュメント「Babylon's Fever」(52分)、3本のパーソナル・フィルム「Kikelandia」(26、26、10分)をコンパイル。1時間で23曲という曲数に驚くかもしれないが、Mano Negra時代からManu Chaoのライヴ・パフォーマンスは曲がシームレスに繋がっている。「Babylon's Fever」にはイタリア、スペイン、フランス、アメリカ、カナダ、オランダ、ドイツ、オーストリア、イギリスのライヴやオフ・ステージなどの映像を収録。ショート・フィルム「Proxima Estacion…Esperanza」「Infinita Tristeza」「Tod@s A Genova」も力強く印象深い。トータルで約3時間、スカ、レゲエ、パンク、サルサなどが渾然一体化したミクスチャ・ロックに圧倒される。英語、フランス語、スペイン語、イタリア語、ポルトガル語字幕。NTSC、リージョン・フリー。

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    2月から断続的に続いているタワレコ・クリアランスセール。上半期はトータルで30枚以上買っただろうか。都内の店舗(渋谷、新宿、池袋、秋葉原)を回ってみたけれど、毎年正月にクリアランスを開催している渋谷店に目新しいアルバムは少なかった。ツイッターなどでセールの告知もしていないし、「ワールドミュージック」も4階から6階へ移って縮小されてしまった。面白いのは長年の勘が働くのか、セール品となるアルバムの目星が着いて来たこと。リリースされてから少なくても1年以上経った旧譜で、余り人気のなかった(1枚も売れなかった?)アルバムが対象となる。Carla BozulichやMilagros Torrecillaのアルバムは密かに狙っていたというか、セール品となることを見越して入手した。Olga BellやNinos Du Brasilも欲しかったアルバム。Kassinの「立体メガネ」付きアルバムは思わず、2度買いしちゃいました。掘り出し物はManu ChaoのライヴDVDでしょうか。

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    • ¥290(税抜 ¥269)×7=2030円の出費です^^;

    • 写真は左下から時計回りに、Carla Bozulich、 -M- 、Daniela Mercury、Milagros Torrecilla、Maria Minerva、Olga Bell、Zola Jesus、Zang Tuum Tumb、Ninos Du Brasil、Manu Chao(中央)

    • 「Tod@s A Genova」はジェノヴァ・サミット(2001)に反対するデモの映像です
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    Il

    Il

    • Artist: -M-
    • Label: Barclay
    • Date: 2012/11/20
    • Media: Audio CD
    • Songs: Elle / Le Film / Mojo / Laisse Aller / Baïa / Faites-Moi Souffrir / Machine / La Vie Tue / La Grosse Bombe / La Maison De Saraï / Océan / Oualé


    Novos Misterios

    Novos Misterios

    • Artist: Ninos Du Brasil
    • Label: Hospital Production
    • Date: 2014/05/27
    • Media: Audio CD
    • Songs: Olhar Das Folhas / Sombra Da Lua / Legios De Cupins / Sepultura / Miragem / Essenghelo Tropical / Novos Misterios


    Boy

    Boy

    • Artist: Carla Bozulich
    • Label: Constellation
    • Date: 2014/03/04
    • Media: Audio CD
    • Songs: Ain't No Grave / One Hard Man / Drowned To The Light / Don't Follow Me / Gonna Stop Killing / Deeper Than The Well / Danceland / Lazy Crossbones / What Is It Baby / Number X


    Versions

    Versions

    • Artist: Zola Jesus
    • Label: Sacred Bones Records
    • Date: 2013/08/20
    • Media: Audio CD
    • Songs: Avalanche (Slow) / Fall Back / Hikikomori / Run Me Out / Seekir / Sea Talk / Night / In Your Nature / Collapse / Vessel


    Milagros

    Milagros

    • Artist: Milagros Torrecilla
    • Label: SITE
    • Date: 2014/02/11
    • Media: Audio CD
    • Songs: Puentecito de la picada / La jardinera / He de seguir / Dona Ubenza / Duendes / La Ollera / Lazos / Dueno no tengo / El Tamalito / Tonada de luna llena


    Zang Tuum Tumb Organization Of Pop

    Zang Tuum Tumb Organization Of Pop

    • Artist: Various Artist
    • Label: Razor & Tie
    • Date: 2013/10/15
    • Media: Audio CD(2CD)
    • Songs: Slave To The Rhythm / Relax (New York Mix) / Pacific (Justin Strauss 0101 Mix) / Beat Box / Dr. Mabuse (Abuse) / If Only I Knew (Cold Stop Version / Dance Yourself To Death (Dust Brothers Radio Edit) / Sorry For Laughing (Unapologetic 12" Mix) / Cubik (Pan Ameri...


    Babylonia En Guagua

    Babylonia En Guagua

    • Artist: Manu Chao
    • Label: Dbn Records
    • Date: 2011/08/02
    • Media: DVD
    • Songs: Por Donde Saldra El Sol / Peligro / Welcome To Tijuana / El Viento / Casa Babylon / Blood And Fire / EZLN...Para Tod@s Todo... / Marihuana Boogie / Radio Bemba / Que Paso Que Paso / Pinocchio / Cai En La Trampa / The Monkey / King Kong Five / Mala Vida / Radio Bemba 2 / Que Paso Que Paso / Could Th...

    猫のコトラさん

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  • 最後の撮影が終わり、羽田行きの飛行機に飛び乗る。本当は会いたいネコもヒトもたくさんいたが、今回もまた撮影だけで精一杯だった。コトラにも、結局会えなかった。立派な母親の彼女のことだ、次の子たちのために安全な産み場所を、懸命に探しているのだろう。アメリカンは相変わらず人懐っこくすり寄ってきたが、ひっくり返るだけでなく、畑を案内するかのように、凛々しく歩いてくれた。赤ちゃんネコだったリッキーはボスネコに、ハナや他の姉妹も母ネコになろうとしている。若い命が育ち、また新しい命が生まれていく。僕は至福の思いで目を閉じた。/ 到着前のアナウンスで起こされる。いつの間にか眠っていたようだ。羽田沖の見慣れた風景が眼下に広がる。機体が着陸し、逆噴射しながら滑走路を走る。徐々にスピードが落ちていく。そして停止。シートベルト着用サインが消え、機内がざわめく。/ 僕は‥‥、動けない、動けなかった。
    岩合 光昭 「ふるさとのねこ」


  • 「ふるさとのねこ」(渋谷ヒカリエ 2015)に行って来ました。ネコ写真を持参すると当日入場券が2割引になるということもあってか、写真展会場横の壁面には既に数多くのネコ写真が展示されていた。岩合さんが自選した「今日のいい子だね~」のコーナーにも可愛いネコちゃんが貼ってある。青森県津軽のリンゴ農家で飼われているコトラの産んだ5匹の子ネコたちと母ネコの子育てを撮った写真展。春・夏・秋・冬‥‥移り変わる東北の四季の中で成長する子ネコたちが生き生きと捉えられている。登場するネコたちは地域限定なので多種多彩な「ネコ歩き」の華やかさには敵わないけれど、逆に感情移入しやすい。残念だったのは写真集『ふるさとのねこ』(クレヴィス 2015)に収録されていない写真が何点かあったこと(身籠ったハナちゃんの写真が載っていない!)。2度目の春は写文集『コトラ、母になる』(クレヴィス 2015)に掲載されているのだ。奇声を発しながら会場内を走り回っていたガキは野放し状態だった。

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    リンゴの白い花が咲く春。木に登って歩く縞ネコ。ピンク色の桃の香りを嗅ぐ白ネコ。近所の寺へ花見に来たマミ(メス17才)。弘前公園の桜の木の上で休む長毛種のミュウミュウ。5月1日、リンゴ農家の作業小屋で5匹の子ネコ(縞ネコ4匹と白ネコ1匹)を産んだコトラ(メス1才)。他の農家で産まれた木樽の中の子ネコたち。山麓に流れる小川を飛び越える白ネコ。黄色いタンポポ畑で匂いを嗅ぐ茶トラ。ネコたちの夏。コトラの子ネコたち‥‥リッキー、ハナ、オフク、シマ、「吾輩はネコ」(まだ名前が付けられていないネコ)の5匹も元気良く外へ跳び出す。青いリンゴの実った木の上で寛ぎ、摘果したリンゴと戯れる。ねぷた絵師の工房で遊ぶトラジ(オス2才)ちゃん。ねぷた祭や花火大会を背景にしたネコのシルエット。茅葺き屋根の古民家の白ネコ、ラッコ(メス2才)は女飼主が豇(ササゲ)の皮を剥ぐ作業を見守っている。

    収穫の秋。天日干しの稲穂の上で昼寝をしている茶トラのペー(オス2才)。リンゴの木に立て掛けられた脚立の上から仲間たちを見下ろすリッキー。赤く色づいたリンゴの木に登るリッキー。刈り取られたた田圃の中でイナゴを捕まえるペー。日本家屋の障子を破いて出入りする家ネコのブンコ(メス3才)。積み重なった木箱の中で休息するアメリカン(メス1才)。屋根で仲良く戯れ合うリッキーとハナの兄妹。夏の終わりにコトラが産んだ黒ネコと縞ネコの赤ちゃん。屋根の上、中秋の名月をバックにしたリッキーとハナちゃん。ネズミを捕まえたシマ。真っ白い雪に覆われた冬。剪定作業中のリンゴの木の上のネコたち。作業小屋の屋根の上のネコ。小屋の中の車の上から外を眺めるネコたち。白鳥たちを背景にして佇む港の長毛種。空飛ぶカモメと白黒ネコ。雪に埋もれた田圃を闊歩するペー。小屋の中で身を寄せ合って暖まるネコたち。リンゴの木に登って遊ぶリッキーたち。

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    『コトラ、母になる』はハンディな写文集。情報量の少ない写真集『ふるさとのねこ』を補完するサブ・テクストという位置づけ。「オオトラ、コトラ、子ネコの系図」や他のネコたち、農家の人々の一覧リスト「本書に登場するネコ・ヒトたち」は写真展の入口にあった。「世界ネコ歩き」(NHK BSプレミアム)のスペシャル番組として発案された「ふるさとのねこ」。ネコの四季を撮る企画として選ばれた場所は春夏秋冬の変化が際立ち、日本人の郷愁を誘う東北の津軽だった。弘前公園並木沿いで出遭った長毛種の三毛ミュウミュウ。最勝院の山門に登る洋食屋の看板白ネコ、マミ。はリンゴ農家・五木さんのネコ、チク、アメリカ、オッド。コトラが産んだ5匹の仔ネコたち、リッキー、ハナ、オフク、シマ、「吾輩はネコ」。岩木山麓のリンゴ農家・木田さんのシャムやペルシャ風のネコたちには名前が付いていない。稲作農家・花柳さんの2匹の茶トラ、ペーとパー(短毛と長毛)。リンゴ農家・内山さんのネコたち、アメリカン、オメメ、シロ、タヌキ、ヤケ、ゴルゴ(岩合さんが命名した「撫でさせないトラ」)‥‥。

    ねぷた絵師夫妻の家ネコ、トラジちゃんが黒田官兵衛の武者絵で遊ぶ。産んだ3匹の仔ネコを殺してしまったアメリカン。交通事故で亡くなったパー。リッキーの名付け親は「津軽の四季」を紹介する特別編のゲストに選ばれた塚本高史(「世界ネコ歩き」のナレーション担当)だった。茅葺き屋根の古民家の家ネコ、ブンコ。蔵つき古民家の白ネコ、ラッコ。オオトラ(コトラの母ネコ)が産んだ5匹の子ネコたち。漁港の長毛のボス、クマ。行方不明の白ネコ、オフク。交通事故に遭って大怪我をしたけれど、驚異的な治癒能力で回復したリッキー。コトラが産んだ新しい仔ネコ、クロとトラ。コトラが子離れしたので、岩合さんに懐くハナとリッキー。ネズミを捕るシマとリッキー。冷たい雪を嫌って岩合さんの足の上に乗るリッキーとハナ。雪穴や木の上で遊ぶネコたち。秋に岩合さんの躰を撫でさせれくれたゴルゴは冬に亡くなっていた。オオトラの子、スーはリッキーと仲良し。身籠ったハナの不思議な眼差し‥‥岩合さん、生姜焼き食べすぎです。

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    • 「ふるさとのねこ」は渋谷ヒカリエで開催されました(2015. 7. 25~8. 31)

    • リッキーはハインラインの『夏への扉』からの命名でしょうか^^;
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    ふるさとのねこ(岩合光昭写真展)

    ふるさとのねこ(岩合光昭写真展)

    • 会場:渋谷ヒカリエ
    • 会期:2015/07/25~08/31
    • メディア:写真
    • 構成:春 / 夏 / 秋 / 冬
    • 内容:世界を舞台に活躍する動物写真家・岩合光昭。彼が各国で撮影を続ける中で、見つめ続けている対象があります。それは私たち日本人の心の中の「ふるさと」です。四季それぞれの美しさが際立つ日本。春夏秋冬を通じて日本の原風景に出会う時、私たちはそこに「ふるさと」を感じるのではないでしょうか。青森県津軽地方。花咲く春、夏の祭り、リンゴ実る秋、そして深く長い冬。岩合はこの地に日本の原風景を見、1年をかけて子ネコと人との暮らしを撮影しました。津軽の四季、そこに生きる...子ネコたちの物語。それは私たちにどこか懐かしい「ふるさと」を感じさせてくれます。


    ふるさとのねこ

    ふるさとのねこ

    • 著者:岩合光昭
    • 出版社:クレヴィス
    • 発売日:2015/04/24
    • メディア:単行本(ソフトカバー)
    • 目次:春 / 夏 / 秋 / 冬


    コトラ、母になる―津軽のネコの四季物語

    コトラ、母になる 津軽のネコの四季物語

    • 著者:岩合 光昭
    • 出版社:クレヴィス
    • 発売日:2015/07/31
    • メディア:単行本
    • 目次:春 リンゴの花が咲くころ / 夏 颯爽と、夏毛のネコたち / 秋 実りの時、喜びの季節 / 冬そしてまた春 まっ白な世界、凛として


    岩合光昭写真集 ねこ輝く

    岩合光昭写真集 ねこ輝く

    • 著者:岩合 光昭
    • 出版社:辰巳出版
    • 発売日:2015/04/13
    • メディア:大型本
    • 目次:香川・男木島 / 香川(佐柳島・本島)/ 静岡・西伊豆 / 栃木(佐野・益子)/ 滋賀・奥琵琶湖 / 沖縄・竹富島 / 沖縄(今帰仁・渡嘉敷島)/ 島根(松江・大田・奥出雲)/ 広島(竹原・庄原) 広島・尾道 / 鹿児島・出水 / 鹿児島・屋久島 / 青森(青森・弘前)/ あとがき──ネコが輝くとき

    イカ部オフ会

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  • さて、漁港にネコがいると教えられて出かける。作業場にネコが集まっているのは冬の間だけらしい。冬の寒さをここで耐えしのぐということだろうか。ネコの世話をしている方に話を聞く。あるとき家に連れて帰ろうとしたが嫌がったそうだ。ネコは環境の変化を避けることがある。ここでネコ同士で暮らす空間がすべてなのだろう。それにしても吹雪があり、また晴れ間ものぞくという天候の変化は急激だ。吹雪いているときなどは風上に顔を向けると雪が痛いほどだ。ケコも顔を伏せている。雪が止むと景色の立体感が違ってくる。ネコの顔もたちまちゆるむ。漁港にはハクチョウたちも羽を休めに来る。クワッとハクチョウが鳴くとネコが顔を上げてハクチョウを見る。が、お互いに関心はあまりなさそうだ。流れる雪雲に悩まされながら、またあらためて雪国のネコのたくましさ頭が下がる思いをする。
    岩合 光昭 「ねこ輝く」


  • ⃞ 乗ると音程外すセロ弾き、浮き浮き広瀬すず、ハイテン踊るの
    金星音楽団のセロ弾きゴーシュに久し振りの仕事が舞い込んだ。少女アイドルのデビュー曲発表会で伴奏するというクラシック畑のゴーシュには似つかわしくない依頼だった。弦楽四重奏(ヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロ)という、いわゆるアン・プラグド編成になったのはデビュー曲がアイドルには珍しく、ポスト・クラシカル風のアレンジが施されていたから。ポップなデジタル・ビートと流麗なストリングスの響きがミス・マッチ的に混じり合った魅力的な曲で、音楽メディアやファンのリアクションも良かった。しかし、ライヴ発表会には一抹の不安がある。ゴーシュには調子に乗って来るとリズムに遅れて、音程を外す癖があったのだ。Aメロ〜Bメロはスムーズに進行したものの、肝腎のサビでゴーシュは音程を大きく外してしまう。演奏者だけでなく素人にも分かるミス・トーンだったが、ノリノリの広瀬すずは間奏で何事もなかったように、ハイテンションで踊り続けた。

    ⃞ 怒って四苦八苦、イライラ幾つ白紙撤回?
    女性建築家ザハ・ハディド氏のデザインした新国立競技場は2500億円という膨大な建設費用に国民やアスリートたちの非難が殺到して白紙撤回。某日本人デザイナーによる東京オリンピックの公式エンブレムもネット上に溢れた数々の盗作疑惑に黒く塗れて、同じく白紙撤回を余儀なくされた。一般の庶民や貧困家庭には想像もつかない巨額の税金投入(500億円でも相当高いと思う)に苛立ち、次から次に出て来る良く似た「オリジナル・デザイン」に多くの日本人は辟易していた。ハナから躓いてケチがついたことで、2020年の東京五輪は招致会場で湧いた高揚感も「オ・モ・テ・ナ・シ」の心遣いも一気に萎んでしまった。今や東京オリンピックそのものを白紙撤回し兼ねないシニカルな風潮である。今年(2015)の流行語大賞は「白紙撤回」に決まりでしょう。アベ政権が強行採決した安保法案も「白紙撤回」して欲しいけれど。

    ⃞ 文字・戯れ文・絵のエンブレム‥‥私も
    白紙撤回した新国立競技場と五輪公式エンブレムのデザインは改めて広く公募するという。新国立競技場の設計は素人には無理だとしても、公式エンブレムのデザインならば私にも出来るかもしれないと現役美大生のM子は思案する。招致活動中に使用された桜をモチーフにしたカラフルなエンブレムは女性美大生(当時)が描いたというではないか。そのエンブレムを転用したらどうかという意見さえあるらしい。M子は五輪マークや英語や日の丸という既成概念に捉われず、自由な発想で新しいエンブレムをイメージすることにした。意識を集中すると、脳裡に将棋の「と金」が赤く閃いた。将棋の駒は五角形で、「と」(金の略字)は「東京」の頭文字を連想させる。一介の「歩」が直進し、裏返って「金」となるのも出場選手と金メダルをイメージさせないかしら?‥‥M子は「と金」をモチーフにしたエンプレムのデザイン画を描くことに決めた。

    ⃞ 火山、余震、◯◯マンション坂
    海外から大挙して観光客が訪れるほど、日本全国各地には有名な温泉地が点在している。日本人にも国内の温泉旅行は依然として人気があるし、外国人には露天風呂や混浴風呂が珍しいのかもしれない。しかし、同時に日本は火山・地震大国でもある。いつか火山は噴火し、どこかで地震は起きる。テロや戦争は人間の英知で地上から無くせるかもしれないけれど、人知の及ばない自然災害は必ず起こるし、絶対に防げない。◯◯山の噴火による噴煙や余震で、周辺住民は不安に駆られている。火山灰や粉塵による日中の健康被害。火山性微動で眠れない夜が続く。急勾配の坂の上に建つ◯◯マンションの住人たちも不安げに黒い噴煙を吐く◯◯山の勇姿をヴェランダから眺めていた。◯◯マンションは大地震にも耐えられる構造なのか、坂の上の地盤は崩れたりはしないのか?‥‥諸事情でマンションの実名を明かせないのは残念ですが‥‥。

    ⃞ 村にて名馬、窶れて来た。奇天烈、ヤバい目で睨む
    「無事これ名馬」の格言通り、アカは村一番の名馬だった。駿馬というわけでも、賢いわけでも、美人でもない牝馬だったが、不思議と病気や事故には無縁で、村の牧場で元気に暮らしていた。しかし、ある日を境にアカは食事を摂らなくなり、見る見る痩せ細って窶れてしまった。隣村の獣医に診てもらっても原因不明だった。新種のウィルスやインフルに感染したわけでもない。心配した馬主が村の女呪い師に見てもらうと、魔女のような風貌の老婆は恋煩いではないかと占う。人間と同じように馬も恋をして思い悩む。恋い焦がれれば食欲も失せ、失恋すれば死にたくもなるのじゃ‥‥そう言えば馬主にも思い当たることが1つだけあった。先月、左前脚を骨折した牡馬のアオを獣医に頼んで密かに安楽死させていたのだった。アオとアカは仲睦まじかった。それ以来、アカの目つきが変わった。馬主が食事を与えようとすると怖い目で睨むのだ。アカの目は怒りで赤く燃えていた。

    ⃞ 辛酸なめ子、芝居は「醜女、難産死」
    マンガ家・コラムニスト、メディア・アクティビストの辛酸なめ子さんに「女優」という肩書きが1つ加わった。それも映画やTVドラマではなく、舞台女優として本格的にデビューするという。映画「ヒミコさん」(2007)にスポーツ記者役で出演したこともあったが、殆どズブの素人が主演女優に抜擢されるのは異例中の異例である。しかも、彼女の役柄が凄まじい。「シコメさん」はブス女が長い独身時代を耐え続け、艱難辛苦の末に夢にまで見た憧れの結婚を成し遂げる物語。幸せいっぱいのヒロインは妊娠する。しかし、難産の果てに呆気なく死んでしまう‥‥「不幸」を絵に描いたような救いようのない役で(無事に子供が産まれたのが唯一の救いである)、まさに「辛酸なめ子」の芸名に相応しいハマリ役だと芸能界では早くも話題になっている。

    ⃞ 凝り取るエプロン、遠路プエルトリコ
    慢性的な肩凝りに悩む女性に朗報!‥‥という海外ニュースが注目を集めている。炊事、洗濯、掃除などの家事をする際に、エプロンを身に着けているだけで肩凝りが軽減されるというのだ。中米プエルトリコ産の植物繊維で織られた特製エプロンは某衣料メーカーから発売されるや否や、世界的な人気商品となった。今でも生産が追いつかず、品薄状態が続いている。医師・科学者のアグスティン・スタール(Agustín Stahl)が母国北部の熱帯雨林で発見した新種の植物コリトルエプ。この繊維の布で枕カヴァを作った現地の女性が一晩使用したところ、翌朝起きると首から肩の凝りが嘘のように解消されたことから、その治癒効果が広く知られることになったという。「コリトル・エプロン」は日本にも限定輸入されているが、稀少品なので入手困難。重い肩凝りに苦しむ日本人女性には遠路遙々、カリブ海のプエルトリコまで買いに行く人も少なくないと聞く。

    ⃞ 朽木、津軽、箱根、能登去る冬、「ふるさとのねこ」春、活気づく
    青森県津軽のリンゴ農園で生まれた子ネコたちの四季を撮った写真展「ふるさとのねこ」。春・夏・秋・冬‥‥移り変わる季節、鮮やかに移ろう風景の中で成長する子ネコたちの生態は鑑賞者を深い郷愁へと誘う。東北の津軽地方だけに限ったことではない。日本各地には飼いネコ、ノラネコを問わず、無数のネコたちが人間と共に暮らしている。沖縄から北海道までの長い「ネコ歩き」の旅。滋賀(朽木)、青森(津軽)、神奈川(箱根)、石川(能登)など‥‥47都道府県のネコを撮り続けている岩合光昭氏は感慨深げに語る。冷たい木枯らしが吹き荒び、白い雪が降り積もる冬のネコたちは寒さに耐えている。暖かい冬毛に躰が覆われていても、肉球が地面や雪に直接触れるのを嫌う。撮影中の岩合さんの足の上に乗って冷えた肉球を暖める。「ふるさとのねこ」も梅や桃、桜の花の咲く春になると活気づくのだ。

    ⃞ 若い武士、我が抜き身失くし南無、虚しく波、鬼怒川、渋井川
    1週間も激しい雨が降り続いていた。宿場の安宿に足止めされている若い武士は恨めしそうに暗く淀んだ空を見上げる。墨絵のような雨雲が低く垂れ籠め、カフェ・オレのような濁流がゴォーゴォーとい水音を轟かせながら荒れ狂う。川の流れは警戒水域に達しようとしていた。数人の宿泊者たちが寝静まった夜半、若侍は背中が冷たく濡れていることに気づいて飛び起きた。既に川水は宿屋内に侵入していて、土間から板の間に溢れ出ていた。咄嗟に外へ出た若侍は茫然自失する。真っ暗で川面は見渡せないが、どうやら鬼怒川が氾濫したしたようだ。3・11の津波のように川水はアッという間に腰の高さにまで達し、荒波に浚われて流された時に命の次に大切な太刀を失くしてしまった。命からがら高台の土手に泳ぎ着いた若者は防水仕様のスマホを握りしめて震えていた。明るく光る液晶画面には決壊した渋井川が映し出されていた。

    ⃞ 目立つ「はみだしっ子」刺す。傷、鎖骨下、瞠った目
    グレアム、アンジー、サーニン、マックスの4人組は街中を歩いていても目立ってしまう。「はみだしっ子」たちはシャッターの閉まった商店が建ち並ぶ人気のない商店街で一夜を明かすことにした。アーケード(屋根)で覆われた◯◯銀座商店街は雨風を凌げるし、24時間営業のコンビニ店も入っている。人通りの絶えた夜中は4人一緒にいると怪しまれるので、グレアムとアンジー、サーニンとマックスの2組に分かれて行動することにした。グレアムは深夜営業の飲食店でコーヒーを飲み、アンジーは店先のベンチで煙草を喫う。アーケードの片隅で子ネコと遊んでいたサーニンは不審な男の後を尾いて行くマックスの姿を目撃した。慌ててマックスの許へ駆け寄るサーニン。男はアーケードの出口に停めていたクルマの中にマックスを連れ込もうとしていた。サーニンが男に体当たりしてマックスから引き離す。逆上した男がナイフでサーニンを刺す。鎖骨下に刺さったナイフ‥‥傷口から紅い血が流れ出た。マックスは目を大きく見開いたまま刺傷現場に佇んでいた。

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    • 回文と本文はフィクションです。一部で実名も登場しますが、該当者を故意に誹謗・中傷するものではありません。純粋な「言葉遊び」として愉しんで下さい

    • はみだしっ子回文は「スニンクスなぞなぞ回文 #41」の解答です^^

     スニンクスなぞなぞ回文 #42

     ◯△◯▽んますない◎☆◎イナズマン▽◯△◯

     回文作成:sknys

     ヒント:イナズマンを狙う新たな刺客


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    おでかけセレビッチ ヨコモレ通信 2

    おでかけセレビッチ ヨコモレ通信 2

    • 著者:辛酸 なめ子
    • 出版社:文藝春秋
    • 発売日:2007/01/30
    • メディア:単行本
    • 目次:テディベア・茶摘み体験・コスプレ居酒屋 / M‐1グランプリ・大人の塗り絵・アイスバー / IKEA・横田基地・イヤーエステ / なめ子と前世 / なめ子と子猫 / あとがき


    ふるさとのねこ

    ふるさとのねこ

    • 著者:岩合光昭
    • 出版社:クレヴィス
    • 発売日:2015/04/24
    • メディア:単行本(ソフトカバー)
    • 目次:春 / 夏 / 秋 / 冬


    はみだしっ子 1

    はみだしっ子 1

    • 著者:三原 順
    • 出版:白泉社
    • 発売日:1996/03/20
    • メディア:文庫
    • 目次:われらはみだしっ子 / 動物園のオリの中 / だから旗ふるの / 雪だるまに雪はふ / ボクの友達 / 階段のむこうには… / 眠れぬ夜 / ボクは友達 / レッツ・ダンス・オン!/ ボクと友達 / 夢をごらん / ボクが友達 / ボクも友達 / 残骸踏む音 / 解説・川原 泉

    スニーズ・ラブ 8

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  • ♭ 未開封新品(2015-09-05)
  • ディスク・ユニオンは売れ残った新譜を「未開封新品」として中古盤棚の中に紛れ込ませている。中古扱いなので、新品なのに定価よりも1〜2割ほど安い。売れ切れてしまったアルバムは「未開封新品」にはならないけれど、残りものにも福がある?‥‥先日、某店舗で2日限定の中古CD割引セールがあった。日が暮れた店内はオヤジ度が異常に高い。ユニオン独自の色別割引(オレンジ色 10%、うぐいす色 20%、黄色・ピンク色 30%OFF)だが、狙い目は黄色い値札の付いているCD。「未開封新品」が約半額で買えるのだ。Martin Newellの《Teatime Assortment》(Captured Tracks 2015)は全24曲、77分の大作。Neneh Cherryの《Blank Project》(Smalltown Supersound 2014)は9曲入りリミックスCDを同梱した「デラックス・エディション」。アマゾン(Amazon.co.jp)よりも千円以上安いし、店内で「未開封新品」を探す愉しみもある。

  • ♭ ヴィンセント・デラックス(2015-09-12)
  • NMEやThe Guardianなどで年間ベスト・アルバム1位に輝いた《St. Vincent》(Loma Vista 2014)のデラックス・エディション。オリジナル11曲にシングル〈Bad Believer〉〈Pieta〉〈Sparrow〉や〈Digital Witness〉のリミックスなど5曲を追加収録(全16曲、57分46秒)。St. Vincent(Annie Clark)の魅力はデジタル・ビートやアナログ・シンセに絡むクレイジーなヴォーカルとギター。〈Prince Johnny〉のようなバラードも美しい。既にスタンダード盤を所有している多くの洋楽リスナーの興味を惹くかどうかは微妙だが、彼女のファンは買い直すでしょう。アートワークはオリジナル・アルバムの方が良いけれど。黒いケープを纏っているAnnie Clarkの左上にあるピンク色の「ステッカー」は直接カヴァ(ブックレット)に印刷されているので、剥がせない。

  • ♭ 女のいない男たち(2015-09-19)
  • 9年振りの短編小説集『女のいない男たち』(文藝春秋 2013)はタイトル通り「女のいない男たち」をモチーフにした短編6本を収録。接触事故を起こして免許停止になった俳優・家福が専属運転手・渡利みさきを雇う「ドライブ・マイ・カー」。大学生の僕と東京生まれなのに完璧な関西弁を話す浪人生・木樽明義、ガールフレンドの栗谷えりかの奇妙な関係を描く「イエスタデイ」。美容整形外科医の渡会が人妻との恋に落ち、恋煩いで死んでしまう「独立器官」。「ハウス」に入居した羽原に「連絡係」の専業主婦が不思議な話を聞かせる「シェエラザード」。妻の浮気を目撃した木野が会社を退職、別居(離婚)して、伯母の経営していた喫茶店を引き継いでバーを開店する「木野」。「昔の恋人」の夫から妻が自殺したことを電話で報らされた僕が14歳の時に知り合ったエムに思いを巡らす「女のいない男たち」。「ドライブ・マイ・カー」と「イエスタデイ」はビートルズの曲名から、表紙カヴァ(BARと灰色の猫と柳の木)は「木野」から採られている。

  • ♭ ジム・オルーク完全読本(2015-09-26)
  • 14年振りのヴォーカル・アルバム《Simple Songs》(Drag City 2015)に合わせて出版された別冊ele-king『ジム・オルーク完全読本』(Pヴァイン 2015)はLoose Furの「アルバム・カヴァ」を描いた五木田智央の巻頭ドローイングから巻末の「未完成ディスコグラフィ」まで、丸ごとジム・オルーク特集号。ニュー・アルバムと現在の考えを語るロング・インタヴュー 、音楽評論家6人による新作レヴュー。ミュージシャン坂田明、前野健太、バンド・メンバーの石橋英子(ピアノ、オルガン)、山本達久(ドラムス)、須藤俊明(ベース)、波多野敦子(ストリングス)へのインタヴュー、ジムと五木田の対談などを収録。ソロ・ワーク、バンドへの参加、プロデュース。即興演奏、映画音楽、電子音楽、ロック‥‥一見捉えどころのないジム・オルークの音楽活動(1989~)を多面的に解明する。綴じ込み付録はフジオプロが描き下ろしたジム・オルーク(赤塚キャラ化)のポストカードなのだ。

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    • 別館ミニ・ブログ「スニーズ・ラブ」シリーズの一覧集(2015-09)です^^;

    • リンク画像が左に重なって見難いので、サイドバーを右側にレイアウトしました。「SKIN SWITCHER」でデフォルトに戻せるにゃん
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    Blank Project Deluxe

    Blank Project Deluxe

    • Artist: Neneh Cherry
    • Label: Smalltown Supersound
    • Date: 2014/12/02
    • Media: Audio CD(2CD)
    • Songs: Across The Water / Blank Project / Naked / Spit Three Times / Weightless / Cynical / 422 / Out Of The Black (Featuring Robyn) / Dossier / Everything // Everything / Spit Three Times / Out Of The Black / Everything / 422 / Everything / Spit Three Times / Out Of ...


    Teatime Assortment

    Teatime Assortment

    • Artist: Martin Newell
    • Label: Captured Tracks
    • Date: 2015/08/21
    • Media: Audio CD
    • Songs: Wake Up and Dream / Ghost Of Jenni Rainbyrd / English Electric / Sunken City / St Overdose-on-Sea / Secret Stations / All The Lights In This House / Dear Wesley / Shabby Heart / The Stars On A Tray / Back In The Day / Carol For / Essex Girls / Saturday Games / ...


    ジム・オルーク完全読本 ~ All About Jim O'Rourke ~

    ジム・オルーク完全読本 ~ All About Jim O'Rourke ~

    • 監修・編集:松村 正人
    • 出版社:Pヴァイン
    • 発売日:2015/05/15
    • メディア:単行本(ソフトカバー)
    • 目次:Tribute to Jim O'Rourke 〜 ジム・オルークに捧ぐ /『シンプル・ソングズ』と現在の考えを語る 〜 ジム・オルーク ロング・インタヴュー /『シンプル・ソングズ』合評 / 証言1 石橋英子 私たちはジムさんのトリックのなかにもりこまれて、そのときを一生懸命に生きている / 証言2 山本達久 好きなドラマーは誰ですか? 即答で「ジョン・ボーナム」...

    ネコ・ログ #39

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  • 人間よりも先に「木野」の居心地の良さを発見したのは灰色の野良猫だった。若い雌猫で、長くて美しい尻尾を持っていた。店の片隅にある窪まった飾り棚が気に入ったらしく、そこで丸くなって眠った。木野はできるだけ猫にかまわずにおいた。たぶん放っておいてほしいのだろう。一日に一度餌を与え、水を取り替えてやった。それ以上のことはしたくなかった。そして猫がいつでも自由に出入りできるように、小さな出入り口を作ってやった。しかし猫はなぜかむしろ、人と一緒に正面のドアから出入りすることを好んだ。/ あるいはその猫が良い流れを運んできてくれたのかもしれない。やがて少しずつではあるが客が「木野」を訪れるようになった。路地の奥の一軒家、小さな目立たない看板、歳月を経た立派な柳の木、無口な中年の店主、プレーヤーの上で回転している古いLPレコード、二品ほどしかない日替わりの軽食、店の片隅で寛いでいる灰色の猫、そんなたたずまいを気に入って、何度も足を運んでくれる客もできた。
    村上 春樹 「木野」


  • #343│モモ│ノラ猫 ── ネコ科の小動物
    カフェオレ色の毛並み、面長の顔立ち‥‥中央公園のモモちゃんは一般的な日本ネコからは「ネコ離れ」している。ネコというよりもネコ科の大型獣のヒョウやマウンテン・ライオンに似ているかもしれない。ゴハンを運んでくるネコおばさんも、外国種の血が混じっているのではないかと話す。陰影のある彫りの深いハーフ顔という感じだろうか。愁いを帯びた表情も耽美的で思慮深げな哲学者を想わせる。写真を撮っていると、食事係のネコおばさんは「私が近づくと逃げちゃうのよ」と不思議がる。モモちゃんに写真を見せるけれど、写真に写っている自分の姿を見ても自撮り女子のようには喜ばない。ネコは小賢しい「自己表現」とは無縁の存在である。広い敷地内を散策するモモちゃんは木立に躰を擦りつけたり、ベンチの上で毛繕いをしたり‥‥ネコ科の獰猛な肉食獣とは異なり、大人しくて人懐っこい。

    #344│ソン│飼い猫 ── 見張塔からずっと
    1歩近寄ると少し後退りをする。もう1歩進むと、また少し離れて何事もなかったように毛繕いをする。ソンちゃんとの距離は一向に縮まらない。常にヒトとの一定の間合いを保つソンちゃんの躰に触れるのは難しい。高いところが好きなので、觔斗雲に乗って空を翔け回る孫悟空から「ソン」と名付けられたという(某携帯電話会社の会長とは無関係)。地上ではシャッターチャンスはなかったけれど、民家の門柱の上に登ってからは真下に行っても逃げなくなった。下から仰ぎ見て、ソンちゃんを撮る。高い場所から周囲を睥睨するソンちゃんは城を警備する見張り番のように凛々しい。人間に媚びない姿は麗しく、光り輝いている。後日、写真を手渡すと女飼主も「ソンらしい」と、ご満悦だった。お礼に福砂屋の「キューブ・カステラ」を貰ってしまった。

    #345│ゲン│ノラ猫 ── 微睡みの午後にゃん
    久し振りに中央公園でモモちゃんを撮っていると、内藤陳さん似(痩身痩躯)のネコウォッチャーが少し離れたところにも人懐っこいネコ1匹がいると教えてくれた。陳さんに案内されて公園の奥へ行ってみると、虎縞のネコが落ち葉をベッドにして微睡んでいた。日向と日陰のコントラストが強すぎて思うような写真が撮れない。午後の陽射しは強烈で、暑苦しくて薮蚊も多い。半睡半眼のゲンちゃんは一昔前のアイドル少女のように八重歯(キバ)が口許から覗いていて可愛らしい。かつて公園内には数十匹のネコたちが暮らしていたというけれど、今では数匹しか棲んでいない(周辺住民からの苦情を請けた区の保健所が駆除したのでしょうか)。午睡の邪魔をしないように留意して公園を後にする。遊歩道は中央図書館裏へと続いている。

    #346│マグ│ノラ猫 ── 駅前駐輪場のネコ
    I袋駅前公園に併設されている駐輪場(地下と地上2F)の出入口付近にネコがいる。横に細長い公園の中程にある水天宮神社周辺に暮らすネコたちとはテリトリーが異なるらしい。植え込みブロックの上で寛いでいるリンちゃんの横に座るのは覚悟がいる。待ち構えていたかように膝の上に乗ろうとするからだ。冬は湯たんぽの代わりになるけれど、夏は重くて暑苦しい。リンちゃんを膝の上に乗せていると、地下駐輪場から自転車を押しながら出て来た子供に「いつものネコおじさんじゃない?‥‥」と不思議顔で訊ねられる。この時刻になると、停めていた自転車に乗って帰宅する母娘連れらしい。夕飯を運んで来るネコおじさんとは顔見知りなのだろう。水天宮神社の前に祭りのテントが張られると、公園のネコたちは姿を一斉に消す。花見や盆踊り、秋祭りなどに限らず、ネコたちは騒がしい年中行事が大嫌いなのだ。R.E.M.の歌の中に出て来る「騒々しい猫」(noisy cats)とは五月蝿い人間たちのことである。

    #347│ソラン│飼い猫 ── パトロールは怠らない
    黒ネコのソランちゃんとは大の仲良しで、姿を目視すると遠くの方からでもミャーミャー鳴いて挨拶に来る。足許に纏わりついて顔を見上げる。ソランとは強い絆で結ばれていると実感する瞬間である(勝手な思い込みかしら?)。それから暫くはソランのパトロールに付き合うことになる。お腹を見せてゴロニャンしたり、指先や手を舐めてくれたり、雑草や草木の葉っぱを食べたり、自転車やバイクのタイヤ(ゴム)の匂いを嗅いだり、民家の木塀や木立で爪を研いだり、バケツの中の水を飲んだり、毛繕いをしたり‥‥ソランの行動は気儘で忙しい。急に毛繕いを止めて遠くを見つめていると、少し遅れて歩行者や自転車やバイクに乗ったヒトが姿を現わす。自由奔放に行動しているようで、実はテリトリー内に異常がないかどうか注意深く見張っているのだ。

    #348│ベス│ノラ猫? ── 両耳先カット・キャット!
    往来を歩いていると横道にネコがいたので、静かに近づく。歩行者に気づいたネコは民家の前の鉢植えの陰に素速く隠れて、路地の奥の方へと逃げて行く。一瞬振り向いて迫り来るヒトとの距離を測る。これ以上近寄ると逃げられてしまう境界線上でシャッターを切った。精神的に追い詰めてしまったかもしれないという後悔の念が脳裡を過るけれど、緊張感のあるネコ写真が撮れた。画像をデジカメのモニタ画面で確認すると、ネコの両耳先がカットされていた。片耳先カット(不妊手術済みの印)されたネコは都会では珍しくない風景になっているが、左右の耳先が切られているのは見るからに痛々しい。両耳先カットとは一体どういうことなのか?‥‥と訝しく思う。耳先カットに代わる洒落た目印を考えても良いのではないかしら(黒ネコのピアちゃんは耳ピアスを付けていたけれど)。

    #349│ファブ│ノラ猫 ── みんないい子猫
    K浜東北線沿いの空き地に数匹のネコたちがいた。ノラ仲間なのだろうか、身を屈めて手招きすると半信半疑で近寄って来る。生憎の雨模様で小雨が降っている。悪条件に抗して写真を撮っていると、ネコおばさんが夕食を運んできた。ネコ缶の中身を地面に盛る。顔の一部と胸の部分だけが白い黒ネコ。未だ子ネコなのに鮮やかなオレンジ色の目に野生の精悍さが宿っている。曇りのない鋭い眼差しでカメラを真正面から見つめる。ノラとして自立しているのだろう。「ネコ歩き」の中で岩合さんは「いい子だねぇ〜」とネコ目線で語りかける。飼いネコとノラ、器量の良し悪し、性格の違いなどの分け隔てなく、「みんないい子猫」である。ちなみにファブ・フォーの〈みんないい娘〉(Everybody's Trying To Be My Baby 1957)はカール・パーキンスのカヴァだった。

    #350│アキ│ノラ猫 ──ネコとMacFan
    ファブと同じところ(K浜東北線沿い)で出会ったネコ。薄茶色の毛並みがエレガントなアキちゃんは可愛くて人懐っこい。たまたま手に持っていたMacFan(2015年6月号)が気に入ったらしく、表紙(木村文乃)の上でポーズを決めてくれた。歴代Mac OS Xのコードネームはネコ科の動物シリーズ(チーター、ピューマ、ジャガー、パンサー、タイガー、レパード、スノーレパード、ライオン、マウンテンライオン)だった。初代iMacの筐体の中で寛いでいるネコたちの画像(19 Lucky Cats Who Live In Colorful Macs)を眺めていると、ネコとMacの相性の良さを感じて幸せな気分になる。青リンゴと戯れる「ふるさとのねこ」たちも新鮮だった。OS Xのコードネームが 10.9(マーヴェリック)から、米カリフォルニア州の地名になってしまったのは残念でならない。次期OS Xの名前は大山猫(Lynx)を期待していたのに‥‥。

    #351│ミュー│飼い猫 ── チビ猫と初対面
    大怪我をしたサビくんは内ネコ(室内飼いネコ)となって、2度と外へ出してもらえないらしい。狭い車道を1匹のネコが走り抜けた。目の前を横切って行った子ネコにサビの面影があった。ひょっとしたらサビの子かもしれないと思って雀躍する。帯状の首輪もサビが巻いていたリボンと良く似ている。親交を深めて仲良くなりたいと思っているのに、ミューちゃんは民家の敷地内に飛び込んだまま一向に外へ出て来る気配がない。初対面なので警戒しているのだろうか。それとも、人見知りする内気な性格なのだろうか。その日は時間もなかったので、仕方なく鉄柵の間からズーム撮影した。逆光気味でピントも甘い。ボールのように丸い顔のミューは好奇の目でカメラを見つめている。次の出会いに期待しよう。この地区は黒ネコのソラン、茶トラのレイ、三毛のマープル、片折れ耳のアクなども暮らしているネコ密度の高い穴場なのだ。

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    各記事のトップを飾ってくれたネコちゃん(9匹)のプロフィールを紹介する「ネコ・カタログ」の第39集です。サムネイルをクリックすると掲載したネコ写真に、右下のナンバー表の数字をクリックすると該当紹介文にジャンプ、ネコ・タイトルをクリックするとトップに戻ります。ノラ猫や地域猫、飼い猫を差別しない方針で、これまでに延べ350匹以上のネコちゃんを紹介して来ましたが、こんなにも多くのネコたちが棲息していることに驚かされます。第39集の常連ネコはモモとソランちゃん。先日、都電沿いを歩いていたら、1匹の茶トラネコと目が合った。ビックリ眼の可愛いネコちゃん。これ幸いとカメラを構えたが、ネコは民家の前の鉢植えの陰に身を隠し、隣家との間の狭い路地に逃げ去ってしまった。気落ちして目を民家の鉢植えに戻すと、もう1匹のネコが興味深そうに見つめているではないか。そのネコを見て驚いた!‥‥三毛スコ(三毛のスコティッシュ・フォールド)だった。ネコとの出逢いは驚異と謎に満ちている。

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    • 記事タイトルの右に一覧リストのリンク・ボタン(黒猫アイコン)を付けました^^

    • オリジナル写真の縦横比は2:3ですが、サムネイルは3:4にリサイズしています
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    女のいない男たち

    女のいない男たち

    • 著者: 村上 春樹
    • 出版社:文藝春秋
    • 発売日:2014/04/18
    • メディア:単行本
    • 目次:まえがき / ドライブ・マイ・カー / イエスタデイ / 独立器官 / シェエラザード / 木野 / 女のいない男たち


    MacFan 2015年 06 月号

    MacFan 2015年 06 月号

    • 巻頭特集:間違いないApple Watch選び方のヒント
    • 出版社:マイナビ
    • 発売日:2015/04/28
    • メディア:雑誌
    • 特集:新生MacBookがノートブックを革新する /「写真」のおいしい召し上がり方


    Lifes Rich Pageant

    Lifes Rich Pageant

    • Artist: R.E.M.
    • Label: Capitol
    • Date: 1998/01/27
    • Media: Audio CD
    • Songs: Begin The Begin / These Days / Fall On Me / Cuyahoga / Hyena (Album Version) / Underneath The Bunker / The Flowers Of Guatemala / I Believe / What if We Give It Away? / Just A Touch / Swan Swan H / Superman

    仮面ライダーズ

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  • 「仮面ライダー」は、昆虫(バッタ)の機能を、改造によって人間に付与したサイボーグである。しかもこのヒーローを創り出したのは作者、じゃなかった、「ショッカー」なる世界の破滅、人類の支配を画策する "悪" の集団である。主人公「仮面ライダー」は、この組織から逃亡し、逆にこの「ショッカー」集団を殲滅すべく戦闘を開始する。風力を利用して変身し、戦闘マシンになる。ザッと簡単に言えば、TV映画「仮面ライダー」のコンセプトはこんなところである。が、これを深読みしていただくと、というよりは原作者の意図を汲んでいただくとすればこうなる。「ショッカー」とは、歪んだ技術文明の象徴である。その技術の付加によって甦生するのが「仮面ライダー」だ。後には自然の守護神(平和の戦士)になるが、言うなれば "技術文明の申し子" あるいは鬼っ子のモンスターである。したがって、こうなる。自然(バッタによる象徴)が直接人類(文明の象徴)に反旗を翻すのではなく「仮面ライダー」(バッタと人間のハーフ)、即ち自然と人間が協力して "悪" に立ち向かう‥‥。
    石ノ森章太郎 「愛蔵版 仮面ライダー」


  • 「仮面ライダー」(ぼくらマガジン / 週刊少年マガジン 1971)は実写版特撮TVドラマとして企画されたメディアミックス作品で、いわゆる「原作マンガ」ではない。世界支配を企む謎の組織に拉致〜改造された主人公が逃亡して逆に闘いを挑むというモチーフは「サイボーグ009」と同じだが、黒ベタを多用したダークなトーンや大きなコマ割り・1枚絵など、前半はストーリ性よりも迫力あるアクション主体の構成になっている。スリムな肢体の仮面ライダーはスタイリッシュでカッコ良いし、「ショッカー」の怪人(改造人間)たちもグロテスクに作り込まれている。「ライダージャンプ」「ライダーキック」‥‥光線銃などの武器を使用しない闘い。実写版で超有名になった「変身ポーズ」も一切描かれない。サイクロン号の車体に収納されている「仮面」がヘルメットであることにも改めて驚かされる。実写版撮影中に起こったアクシデント(藤岡弘のオートバイ事故)に準じて、「原作」も主人公が射殺されて主役が交代するという前代未聞の展開になっている。

  • 「怪奇くも男」
  • 城北大学生物学研究室に在籍する本郷猛はモトクロスのタイム・トライアル中、前後から車に激突されて意識を失う。手術台の上で目覚めた猛は選民思想とサイボーグで世界を支配しようと目論む「ショッカー」に改造手術を施されていた。5万ボルトの電流を躰に流された猛は脳改造される前に、発電室に細工をして一時的に停電させた恩師の緑川博士と共にサイクロン号に乗って「ショッカー」のアジトから脱出する。地雷の爆発で崖から海へ転落した猛‥‥怪人クモ男が博士を絞殺しようとするが、仮面ライダー(変身した本郷猛)に救出される。城北大学から下校する緑川ルリ子を立花藤兵衛(本郷家の執事)が車で迎えに来た。ルリ子に網を張っていたクモ男は先回りして埠頭50号倉庫に緑川博士を襲って殺す。倉庫の窓を破って侵入したクモ男がルリ子を拉致して逃亡する。仮面ライダーに変身した本郷猛がサイクロン号で追う。必殺技「ライダージャンプ」「ライダーキック」「ライダーチョップ」が炸裂する。4本の腕を捥ぎ取られたクモ男は崖から海へ墜ちる。

  • 「空とぶ吸血魔人」
  • ウツボ男が岩礁で倒れていたクモ男を発見する。復讐を誓うクモ男は「ショッカー」の秘密基地で再生手術を受ける。本郷家に保護された緑川ルリ子は猛が父親を殺したと思い込んでいた。友人のヒロミを電話で呼び出すが、彼女は本郷家へ行く途中で、吸血コウモリ男に襲われてしまう。本郷邸を訪れたヒロミがルリコに牙を剥き、屋根の上からクモ男が糸を放って猛の自由を奪う。藤兵衛が竹刀で助太刀すると、ヒロミは2階の窓ガラスを破って外のクモ男に激突する。隙を突いて変身した仮面ライダーはクモ男との闘いに勝利するが、コウモリ男に左腕を掴まれて宙吊りにされてしまう。しかし、空から落下することで風力エネルギーを得た仮面ライダーは軽々と地上に着地する。「ライダーキック」を食らって逃げ去るコウモリ男。自ら命を絶ったクモ男。変わり果てたヒロミの遺体からサンプルを採取した本郷猛は彼女の血液中に新種のウイルスが注入されていたことを知る。

    ヒロミの住んでいたマンションを訪ねた緑川ルリ子と立花藤兵衛は不審な住人たちに襲われてしまう。2人は本郷邸内に棺を運び込む。猛の右手に噛みつくルリ子。椅子で攻撃する藤兵衛‥‥2人を倒した猛はテスト中の「血清」を打つ。その夜、エネルギーを使い果たしてベッドで眠っている猛に、棺から出て来たコウモリ男が牙を剥く。不意を襲われた猛はコウモリ男に首を絞められて2階の窓から落下する。毒牙に倒れた猛に勝ち誇ったコウモリ男は「血清」(バット=ウイルスの解毒剤)が翼の爪の中に入っていることを明かす。しかし、猛はウイルスの感染を抑える「試薬」を自ら投与していた。折れた窓枠を翼に突き刺してコウモリ男の飛行能力を奪った猛は仮面ライダーに変身。サイクロン号に乗って逃走したコウモリ男を追走する。墓地に着いた仮面ライダーはウイルスに感染して操られた人間たちに襲撃される。追い詰められたコウモリ男の一対の翼を捥ぎ取り、墓碑の十字架で止めを刺す。

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  • 「よみがえるコブラ男」
  • 川崎公害闘争の中心人物3名がコブラ男に殺害された。謎の女に突然吠え出した正夫少年の飼い犬ダリ。ダリと正夫は土管の中に隠れていた友人の透を発見する。父親がヘビ人間に殺される現場を目撃していた透少年は東京の正夫(父親は刑事)の家に預けられていた。再び現われた女にダリが吠えかかるが、逆に操られて狂犬と化す。路上で遊んでいた幼い少女2人に襲いかかるダリを本郷猛が蹴り倒して少女たちを救う。死んで石化したダリ。「ショッカー」が目撃者の口を封じようとしていることに気づいた猛は透少年を本郷家で匿う。運び込んでおいたダリの死体が消え、透もコブラ男に拉致されてしまう。仮面ライダーに変身してコブラ男の後を追う猛。待ち伏せしていた手下に襲撃されるが「ライダーキック」や「ライダージャンプ」で反撃する。ライダーに左腕(手がコブラ・ヘッドになっている)を引き千切られたコブラ男は「ライダー大風車3段キック」を食らって、クモ男と同じように断崖から海中へ転落する。

    「TAKADA爬虫類研究所」に逃げ帰ったコブラ男は総統「ショッカー」から処刑を命じられるが、ヘビ姫メドウサの進言で改修改造手術を受けることになる。本郷家に差出人不明の小包が届く。ビックリ箱のコブラの背中に「コブラハキンノノベボウガダイコウブツ / オオサカ──ソシテトウキョウ──」という挑戦状が書かれていた。猛が広げた新聞の三面記事には「大阪第2金保管所襲撃さる!守衛2名 謎の蒸発」という見出しが踊る。東京第1金保管所の金庫から金塊を盗み出したコブラ男とヘビ姫メドウサ一味。屋上で見張っていた仮面ライダーが「ショッカー」のトラックを尾行する。東京湾の埋立て地での決戦!‥‥「ライダーキック」で窮地に陥ったコブラ男(晴彦)に元恋人のメドウサ(美代子)が加勢する。頭部から生えた無数のヘビの口からダリを発狂〜石化した毒針や光線銃を仮面ライダーに放つ。誤ってコブラ男を射殺してしまったメドウサ!‥‥ヘビ姫は絶望の余り自決する。

  • 「13人の仮面ライダー」
  • 「ショッカー」との戦いに備えて本郷邸の地下に建設された研究所。モニタ画面に緑川ルリ子の姿が映し出される。ルリ子と散歩に出た本郷猛は改造人間ゆえに彼女の愛を受け入れられない。雨の降る中、サイクロン号と仮面ライダーの新機能をテストするために外へ出た猛は12人の仮面ライダーズと対峙する。1対12の対決から逃げ切った本郷猛は1人で「ショッカー」と戦うことを決意する。ルリ子が一文字隼人と名乗る新聞記者を伴って再訪問する。緑川博士の行方不明事件を調査していると語る男の右手の甲に手術の傷痕があった。不審に思った猛は男の後を尾けるが、逆に誘き出されていた。一文字隼人は「ショッカー」の戦闘員だった。狙撃手に左腕を打たれて負傷した猛に仮面ライダーズが逼る。腕時計型リモコンでサイクロン号を呼び寄せるが、風力不足で変身出来ない猛は仮面ライダーズに取り囲まれて射殺されてしまう。頭部に止めを撃とうとすると、もう1人の仮面ライダーが現われてライダー軍団を倒す。新仮面ライダーの正体は猛との争いで頭を撃たれて正気に戻った一文字隼人だった。隼人は地下研究所で生き続ける猛の脳髄(心)と躰を共有して彼の遺志を継ぐ。

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  • 「海魔の里」
  • 故郷の水底村にサイクロン号で帰った一文字隼人は崖から海へ飛び込む人影を目撃する。海神さまの怒りを鎮めるための風習、この里に古くから伝わる儀式の1つだった。生贄になるのは生身の人間ではなく、身代わりの「人形」である。5年振りに帰郷した村はゴースト・タウンのように様変わりしていた。お六ばあさんは頭がおかしくなり、父親の松五郎は頭痛に苦しみ、幼馴染みのお美代も無言で無表情だった。空飛ぶエイの大群が隼人を襲う。村の上空を飛行パトロールしていた痺れエイは海へ戻る。断崖の上で海神祭りの仮面を着けた2人の男たちが祭り太鼓を叩いていた。何者かに脅えて、隼人に村から出て行くように懇願するお美代。村明かりが消え、野良犬の首が引き千切られる。波消しブロックのある浜辺からカニ男が出現して隼人を攻撃する。海中に落ち、落人穴に流れ込んで救かった隼人は夢の中で聞いたお美代の悲鳴で我に返った。

    4人の仮面男たちが、お美代を崖の上から突き落とそうとしていた。隼人に襲いかかる男たちの中の1人は松五郎だった。海に落ちた父親を見つめる隼人の背後からお美代が短刀で刺殺しようとする。首から下げている貝のペンダントか発生する電波によって「ショッカー」に操られていた村人たち。水底村は人類の意志を奪って世界を支配する「ショッカー」の最終目的のための集団実験に選ばれていた。再び海からカニ男と空飛ぶエイが現われて、変身した仮面ライダーと対決する。ライダーとの戦いで両腕を失ったカニ男は逃走し、隼人は海中でサメ爆弾に襲撃される。海中から退却した仮面ライダーは岩場で秘密基地の通気口を発見する。「ショッカー」の海底基地に潜入して、イソギンチャク男や雑兵を倒す。司令室に侵入してエビ男を感電死させると、カニ男はゴッド・ショッカーの自爆命令を受けて天窓に突っ込み、自爆装置のスイッチを押す。海中爆発した「ショッカー」の秘密基地。仮面ライダーは「生物兵器実験室」から脱出して、死んだクジラの腹の中から生還する。

  • 「仮面の世界(マスカーワールド)」
  • 仮面ライダーごっこをして遊んでいた子供たちが首なし死体を発見する。被害者は「日の下電子」の技術部長・山中太一だった。弟・浩二少年の見舞いに来ていた一文字隼人は姉の順子から、帰宅途中で見知らぬ男から預った手紙を渡される。「ショッカー」に関する重大な話があるという文面だった。指定場所の東栄モトクロス練習場に着いた隼人はモトクロ族に囲まれる。女性(差出人X)が駆け寄り、ヒットマンが隼人の背中を撃つ。女性Xも射殺しようとすると、仮面ライダーが現われて殺し屋を殴り倒す。予め「第2の皮膚」を身に纏っていたのだ。隼人は暴走族に絡まれていた不良少女・女番長を救う。「ショッカー」の一味だと告白する女性Xは人間をロボット化する「10月計画」が日本でスタンバイ(準備完了)していると告げる。その夜、寝入った隼人をナイフで刺殺しようとするX‥‥女の正体は毒蛾男だった。羽から大量の "ねむり粉" を撒き散らして隼人を眠らせる。

    毒蛾男はマンションの4階から宙吊りにしてアジトへ運ぼうとするが、モト狂いのライダーたちに奪われてしまう。「日の下電子」の社長・日下甲之介の家で目覚めた一文字隼人。彼を救出したのは1人娘の礼奈だった。彼女は父親と社長秘書・千草(女性X)の異変に2カ月前から気づいていた。隼人の許に届いた順子からの誕生日プレゼント。リボンを外して箱を開けると大爆発するが、仮面ライダーに変身していた隼人は難を逃れる。順子は「日の下電子」の受付嬢だった。彼女の家を訪れた隼人は白血病の弟を介護する姉の姿を目の当たりにして、一瞬でも彼女を疑った自分を責める。「日の下電子」に潜入した仮面ライダーは一足早く侵入していたFBI捜査官の滝二郎と協力してヒョウ男(ジャガーマン)を倒す。滝は5年前、日本政府から極秘に受注生産していた巨大コンピュータを調査していた。その電子頭脳は富士山の牧場にあるという。

    隼人の宿泊しているホテルの部屋を訪れた順子が発砲する。日下家の金庫を開けようとしていた礼奈を父親が絞め殺そうとする。見張っていた滝二郎が日下甲之介を倒す。気絶した父親と礼奈を伴って本郷家の地下研究所へ行く。容態が悪化した浩二少年と順子も来ていた。姉を操っていたTVと腕時計には特殊な電波を出す装置が組み込まれていた。その誘導電波の発信と管理を巨大コンピュータが処理していた。富士山麓の牧場へ向かった一文字隼人と滝は「ショッカー」の地下基地へ侵入する。誘き入れられたことに気づいた隼人は生身の滝を引き返させる。仮面ライダーと怪人プラノドン、ハエ男、ナメクジラとの対決。牧場では滝が狼男や馬男(ケンタウロス)と戦っていた。親玉ビッグマシンとライダーの最終決戦。機械に特殊超音波を放射して機能を狂わせるビッグマシンの攻撃に苦戦するが、もう1人の仮面ライダー(本郷猛)が現われる。ビッグマシン自らが巨大コンピュータを狂わせて、自爆装置が起動する。地下基地の爆発、富士山の噴火‥‥コンピュータを使って日本人をロボット化する「10月計画」が国民を番号で管理しようとする日本政府のアイディアだったとは!

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    • 「石ノ森章太郎萬画大全集」(角川書店 2006)をテクストに使いました

    • 「ショッカー」怪人の名前を平仮名(くも男、こうもり男)から、カタカナ表記(クモ男、コウモリ男)に変えています

    • 「10月計画」が「マイナンバー」という名称で45年後(2016)に実施されるとは!
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    仮面ライダー 1 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 1-12

    仮面ライダー 1 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 1-12

    • 著者:石森 章太郎
    • 出版社:角川書店
    • 発売日:2006/02/22
    • メディア:コミック
    • 目次:怪奇くも男 / 空とぶ吸血魔人 / よみがえるコブラ男


    仮面ライダー 2 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 1-13

    仮面ライダー 2 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 1-13

    • 著者:石森 章太郎
    • 出版社:角川書店
    • 発売日:2006/02/22
    • メディア:コミック
    • 目次:よみがえるコブラ男 / 13人の仮面ライダー / 海魔の里


    仮面ライダー 3 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 2-9

    仮面ライダー 3 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 2-9

    • 著者:石森 章太郎
    • 出版社:角川書店
    • 発売日:2006/05/22
    • メディア:コミック
    • 目次:海魔の里 / 仮面の世界(マスカー・ワールド)/ ラストコレクション


    仮面ライダー大全

    仮面ライダー大全

    • 編者:岩佐 陽一
    • 出版社:双葉社
    • 発売日: 2000/07/14
    • メディア:単行本
    • 目次:仮面ライダー誕生への道 / 怪奇くも男 / 恐怖 蝙蝠男 / 13人の仮面ライダー / 魔人サボテグロンの襲来 / 死斗! 怪人スノーマン対2人のライダー / 怪奇フクロウ男 / 怪人ジャガーマン 決死のオートバイ戦 / 劇場版 仮面ライダーの世界 / マスカー・ミュージック・ワールド / ゲルショッカー出現! 仮面ライダー最後の日!! / 仮面ライダー対ショッカー・ライダー / ライダー3号!その名はV3 / 仮面ライダーDATA BASE

    F A V O R I T E ー A L B U M S 10

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  • HAVE YOU IN MY WILDERNESS (Domino 2015) Julia Holter


  • Julia Holterの4thアルバムは驚くほどポップで親しみやすい。《Loud City Song》(2013)に引き続き、Cole M. Greif-Neill(Ariel Pink、Nite Jewelの夫)との共同プロデュース。キーボード、ベース、パーカッションにサックス、クラリネット、ヴァイオリン、チェロという編成は一見オーソドックスだが、ロックでもジャズでもクラシックでもない新しい音楽(アヴァンポップ)を切り拓く。浮世離れしたヴォイスは妖精のように可愛くドリーミーで、リスナーを彼女の桃源郷へ誘う 181


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    スニーズ・ラブ 9

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  • ♭ 九尾の猫(2015-10-03)
  • NYマンハッタンを5カ月間、震撼させた連続絞殺魔〈猫〉。9人の犠牲者の首に巻きついていた絹紐タッサーシルク(男は青、女はピンク色)の謎。なぜ殺された女性は全員独身なのか、なぜ電話帳に登録されている人物だけが標的になるのか、なぜ被害者の年齢が若くなって行くのか?‥‥エラリイ・クイーンの『九尾の猫』(Cat Of Many Tailes 1949)は『羊たちの沈黙』に代表されるサイコ・キラーものの嚆矢である。NY市を大パニックに陥れ、市民活動隊CAT(Citizen's Action Team)連合の大集会で起こった「猫暴動」(死者39名、重傷者115名)。市長直属の特別捜査官に任命されたエラリイ・クイーンと父親のリチャード警視が第4の被害者モニカ・マッケルの弟マッケル、第5の被害者シモーヌ・フィリップスの妹セレストの協力を得てシリアル・キラーに挑む。しかし、10人目のターゲット、マリリン・ソームズの殺人未遂で現行犯逮捕された「犯人」は自白して罪を認めたものの、第1の殺人(アーチボルト・ダドリー・アバネシー)に完全なアリバイがあった。

  • ♭ パブリック・イメージ(2015-10-10)
  • PiL(Public Image Ltd)のデビュー・アルバム《Public Image: First Issue》(Light In The Attic 2013)をアウトレットで購入した。米盤は長らく未発売だったので、正確にはリイシューではなく、初のUSオフィシャル・リリースとなる。ボーナス・ディスクに1stシングルのB面曲〈The Cowboy Song〉とJohn Lydonの「BBC インタヴュー」(1978)を完全収録した2CD。見開き紙ジャケ仕様、ステッカー2種封入。日本盤から転載した歌詞・対訳付き。英ヴァージン盤(2011)と同じリマスターを使用しているのかどうかは不明だが、音質は悪くない(ボーナス・トラックはDisc 1に収録して欲しかったけれど)。疾走するパンク・ロックの残滓はあるものの、ポスト・パンクの範疇を超えて、ポスト・ロックの先駆けとなる《Metal Box: Second Edition》(Virgin 1979)への萌芽が感じられる。

  • ♭ 秋のクリアランス(2015-10-17)
  • 継続中のタワレコ・クリアランスセールは10月に突入。1年中「閉店セール」をしている商店を想わせる季節感のなさ。目星いアルバムは買い漁られ、赤いワゴンの中は売れ残り品ばかりの不毛地帯と化していたが、積極的に情報を流して来なかった渋谷店で新規追加タイトルが密かに投下されていた。R.E.M.のラスト・アルバム《Collapse Into Now》(Warner Bros. 2011)や超絶タッピング・ギタリスト、Marnie Sternの4th《The Chronicles Of Marnia》(Kill Rock Stars 2013)など‥‥。6Fで発掘したMariana Vegaの2ndアルバム《Mi Burbuja》はJuana Molinaみたいな「ヘン顔」のアルゼンチーナかと思いこんでいたら、南米ヴェネズエラ人だった。帰ろうとして下りエスカレータで降りたら、5Fの前に新規セール品が出現!‥‥アンビエントやエレクトロニカ系が大量放出されていたのだ。

  • ♭ 川島なお美(2015-10-24)
  • 身内の不幸は哀しいけれど、芸能人(元アイドル・タレント)の早すぎる死も切ない。女子大生DJ〜女優として回顧される川島なお美には歌手時代(1981~86)もあった。キャニオンからアイドル歌手としてデビュー・シングル〈シャンペンNo.5〉(1979)をリリース後、東芝EMIへ移籍して路線変更。7枚のアルバムを発表しているが、後期の3部作はコンセプトも明確で、クオリティも高い。《銀幕のヒロイン》(1984)は映画女優、《SCOOOP!》(1985)はスキャンダル、《TOKIO APPLAUSE》(1986)は東京をテーマにしたアルバム。作曲は外注だが、歌詞の多くを「NAO美」名義で自作している。タレントとしては「お笑いマンガ道場」(1982~89)の印象が強い。女優としての転機は「失楽園」(1997)の愛人・松原凛子役ではなく、「イグアナの娘」(1996)の母親・青島ゆりこ役ではないかと思う。合掌。
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    • 別館ミニ・ブログ「スニーズ・ラブ」シリーズの一覧集(2015-10)です^^;

    • リンク画像が左に重なって見難いので、サイドバーを右側にレイアウトしました。「SKIN SWITCHER」でデフォルトに戻せるにゃん
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    九尾の猫〔新訳版〕

    九尾の猫〔新訳版〕

    • 著者:エラリイ・クイーン(Ellery Queen)/ 越前 敏弥(訳)
    • 出版社:早川書房
    • 発売日:2015/08/21
    • メディア:文庫
    • 目次:九尾の猫 / 解説「もう1つの傑作」飯城 勇三


    First Issue

    First Issue

    • Artist: Public Image Ltd.
    • Label: Light In The Attic
    • Date: 2013/06/18
    • Media: Audio CD(2CD)
    • Songs: Theme / Religion I / Religion II / Annalisa / Public Image / Low Life / Attack / Fodderstompf / The Cowboy Song / Interview With John Lydon (BBC Radio 1, Rock On, Oct. 28, 1978)


    Mi Burbuja

    Mi Burbuja

    • Artist: Mariana Vega
    • Label: Pelo
    • Date: 2013/11/26
    • Media: Audio CD
    • Songs: Mi Burbuja / Hasta 10 / Lo Que Nunca Hice Contigo / Gris / Medicinal (feat. Ale Sergi) / De Tu Voz / Cai del Cielo / Quizas / Final Feliz / La Mala Del Cuento / Camino
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